2015/07/24

NPS®(ネットプロモータースコア)入門・導入編

第2回 顧客ロイヤルティを測る新指標「NPS」とは?~究極の質問の発見とその本質~

第1回では、企業にとってロイヤルティの高いお客様がなぜ必要なのかについてお話ししました。
第2回のテーマは「ロイヤルティの高いお客様をどのように見つけるか」、「顧客ロイヤルティをどのように測り、把握するか」です。

究極の質問の発見

「ロイヤルティの高いお客様」を発見するためには、お客様にどのような質問をすればいいのでしょうか?この問いは、「ロイヤルティの高いお客様」の特徴である以下の行動につがる質問を見つけることになります。

  • 自社の製品・サービスを何回も購入してくれる(=継続購入)
  • 友人などの他者へポジティブなクチコミを広めてくれる(=推奨)

ベイン・アンド・カンパニー社のフレッド・ライクヘルド氏は、6つの業界(金融・CATV/通信・eコマース・自動車保険・ISP・PCハードウェア)の計4,000の顧客を対象に、いくつかのロイヤルティを測る質問に対するスコアを調査し、次いで6-12ヶ月後に実際の行動を調査しました。その結果、全ての業界において将来の顧客行動に対してトップまたは2番目に高い相関を示すひとつの質問を発見しました。(*1)

それが「この会社を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」という究極の質問と呼ばれるものです。

では、この質問からどのように「ロイヤルティの高いお客様」を見つければよいのでしょうか?

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顧客は3つのセグメントに分類できる

このシンプルな質問に対し、0から10の11段階で回答してもらい、顧客行動を調べてみたところ、以下の3つのセグメントに分類できることがわかりました。

1) 推奨者(プロモーター)(9-10)

再購入比率が群を抜いて高く、紹介客のうち、このセグメントの顧客に薦められた顧客が80%を超えている。

2) 中立者(7-8)

受け身でも満足している。再購入比率と推奨率が推奨者より大幅に低く、50%以上も差がつくことも多い。ロイヤルティや熱意よりも惰性が動機付けとなっているので、この層の顧客は他社が好条件を提示するまでは留まる可能性がある。

3) 批判者(0-6)

否定的なクチコミの80%以上を占める。彼らの一部は、会計上、収益性が高く見えるかもしれないが、彼らの批判や否定的な態度によって企業の評判は傷つき、新規顧客の購入意欲に水を差し、従業員の意欲をそぐ。企業の活力を奪いとってしまう存在。

引用:『ネット・プロモーター経営 顧客ロイヤルティ指標NPSで「利益ある成長」を実現する』p.78

この「1) 推奨者」こそが「ロイヤルティの高いお客様」なのです。

第1回でも書いたとおり、企業経営者にとって「ロイヤルティの高いお客様」をつなぎとめることには大きな意味があります。加えて、「ロイヤルティの高いお客様」を新たに創り出すことも企業の成長にとって必要不可欠です。

この「ロイヤルティの高いお客様の維持・新規創出」という企業活動を促進することができ、上記の顧客分類に基づき生み出されたのがNPS(ネットプロモータースコア)です。

NPSとは?

NPS(Net Promoter Score:ネットプロモータースコア)とは日本語で「推奨者の正味比率」を意味します。

NPSの計算方法は以下のとおりです。

NPS=推奨者の割合(%)-批判者の割合(%)

NPSは批判者しかいないことを示す-100から全員が推奨者であることを示す100までの間に収まり、この計算方法を見てもわかるとおり、NPSは推奨者が多く、批判者が少なければ高くなります。  
そして、NPSを上げるには、推奨者を増やし、批判者を減らす必要があります。すなわち「ロイヤルティの高いお客様の維持・新規創出」という企業活動を継続していく上で、NPSを継続的にモニターすることで、推奨者を増やし、批判者を減らすという行動が取れているかどうかを一目で確認することができます。

NPSの本質

もうお気づきかと思いますが、NPSは一度調査を行い、スコアを得て、その結果に一喜一憂して終わり、では意味がありません。

NPSの向上、すなわち、推奨者を増やし、批判者を減らすというフレームワークに沿って行動する過程で、お客様が推奨者になってくれる要因把握を行い、さらに強化する、または批判者が出ている原因分析を行い、それを取り除くように改善活動を行うことに意味があるのです。

このお客様からのフィードバックに真剣に向き合い、改善のために行動を起こしお客様に働きかけるサイクルのことを「クローズドループ」と呼びますが、これを全社挙げて組織的に行っていくこと、 単なるスコアではなく、「ロイヤルティの高いお客様の維持・新規創出」のためのマネジメントシステムとして活用することがNPSの本質と言えるのではないでしょうか。

NPS®はいくつ以上が適正か?

NPS®は推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値なので、推奨者が多いほどスコアが高くなります。日本においては、中間点を回答する傾向にあるため、NPS®がマイナスになるケースが多くみられます。2021年に実施した日本の18業界の調査では-51.4%~-0.4%です。

NPSを上げることは本当に売上アップにつながるのか?

今回はNPSの誕生とその本質についてお話ししました。  
第1回と合わせて、顧客ロイヤルティを上げることが企業の売上および成長につながる、NPSはそのための企業活動を支える仕組みであることが「なんとなく」ご理解できたでしょうか?

次回はNPSが注目を浴びている大きな理由のひとつである「売上との相関」について詳しくお話しします。

(*1)Satmetrix社 『THE POWER BEHIND A SINGLE NUMBER』より

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