2015/08/06

【NPS®(ネットプロモータースコア)入門】

第3回 NPSの向上は本当に企業の成長につながるのか?

第2回では、顧客ロイヤルティを測る新指標NPS(ネットプロモータースコア)の誕生と、その本質についてお話ししました。

第3回のテーマは「NPSと売上・成長との相関」です。これは、昨今NPSが注目を浴びている、大きな理由のひとつといっても過言ではないでしょう。そしてNPSを導入する際ほとんどの企業で、意思決定者が必ず気にするポイントではないでしょうか。

NPSと企業の成長との関係

前回、顧客の「再購入」「推奨」行動につながる究極の質問の発見について、どのような調査が行われたかについて簡単に触れました。その出典元であるSatmetrix社のホワイトペーパー「THE POWER BEHIND A SINGLE NUMBER」では、CATV/通信業界において、究極の質問に対する回答(=推奨度)により、顧客の購入やクチコミ行動が大きく異なることが示されています。

図1:推奨度と顧客行動の関係

このホワイトペーパーでは、「推奨度と個々の顧客の行動との関連」というミクロな視点での調査だけではなく、「推奨度と企業の成長との関連」というマクロな視点での調査結果も示されています。

複数の業界の400社以上の企業/ブランドに関して、延べ15万人以上からの評価を分析した結果、NPSは企業の売上高成長率と高い相関があることがわかりました。特に航空業界の主要企業においては、NPSと5年間の売上高成長率との間に、相関係数0.89という強い相関があるという結果が出ました。

図2:航空業界でのNPSと売上高成長率

また、ベイン・アンド・カンパニーの別の調査(*1)では、おおよその業界においてNPSでトップを走る企業(=ロイヤルティ・リーダー)は、競合他社の2倍の売上高成長率を上げているとも言われています。

これらの調査結果から、「お薦めするか?」という問いに対する回答(=推奨度)は、個々の顧客の行動だけではなく、最終的には企業の成長とも強い関係があることが明らかになりました。

推奨者と批判者のライフタイムバリュー

NPSと企業の成長には強い関係があることは、上で述べたとおりですが、これを具体的にイメージするために顧客のライフタイムバリューという観点で考えてみましょう。

ライフタイムバリュー(Life Time Value、以下LTV)とは、「顧客が取引期間を通じて企業にもたらす価値」すなわち「顧客生涯価値」です。第2回で推奨者、中立者、批判者の行動の特徴についてお話ししましたが、この行動を具体的な金銭的価値に置き換えると、どうなるでしょうか。

Satmetrix社のホワイトペーパー「NET PROMOTER ECONOMICS:THE IMPACT OF WORD OF MOUTH」からB2Cのコンピューターハードウェアメーカーのケースをご紹介します。

まず、LTVは以下のように算出されます。

LTV = 購買換算価値 + クチコミ換算価値

顧客ロイヤルティのもたらす行動には「再購入(契約の継続)」「追加購入」「ポジティブなクチコミ」「建設的なフィードバック」の4つがありますが、購買換算価値はこのうち「再購入(契約の継続)」「追加購入」によって、その顧客自身が直接もたらす価値になります。

調査の結果、推奨者の購買換算価値は$1,818、批判者の購買換算価値は$1,457となりました。平均は$1,615であるため、推奨者は平均より$203高く、批判者は$158低いという結果になります。

次にクチコミ換算価値を算出してみましょう。このホワイトペーパーでは以下のような算出モデルにより計算しています。

  • クチコミ換算価値 = クチコミインパクト × 支出金額平均
  • クチコミインパクト = クチコミした割合 × クチコミした件数 × 成約率(機会損失率)

こちらの算出モデルを用いたところ、推奨者のクチコミ換算価値は$816、批判者のクチコミ換算価値は-$1,352になりました。

以上から、推奨者および批判者のLTVは以下のグラフで表すことができます。

図3:LTV(ライフタイムバリュー)

推奨者のLTVは$2,634、批判者のLTVは$105となります。
 第2回で、NPSを上げるためには推奨者を増やし、批判者を減らす必要があると書きましたが、仮に批判者から推奨者へ移行させることができた場合、その経済的価値は一人当たり$2,634-$105で$2,529になります。

この数字から、NPSの向上が企業にとって大きな経済的価値があることが、おわかりいただけるのではないでしょうか。

NPS向上による業績へのインパクト

最後にNPS向上による業績へのインパクトについて簡単にご紹介します。

イギリスで2005年に実施された調査(*2)においては、業界により差異はありつつも、全体的にNPSと成長率との間に関係性がみられ、調査対象の業界全体では以下の結論が得られました。

  • NPSの7ポイントの上昇は、1%の成長率アップにつながる
    (金額換算すると、NPSの1ポイントの上昇は882万ポンド相当の売上アップに相当する)
  • ネガティブな口コミの2%の減少は、1%の成長率に相当する
    (金額換算すると、ネガティブな口コミの1%の減少は2,484万ポンド相当の売上アップに相当する)
  • NPSがゼロを上回り、かつ、ネガティブな口コミの比率が25%未満の企業の成長率は、NPSがゼロを下回りネガティブな口コミの比率が25%を上回る企業の4倍以上

まとめ

今回は「NPSの向上は本当に企業の成長につながるのか?」というテーマで、各種調査から具体的な数字を引用して、「NPSと企業の成長との関係」、「推奨者と批判者のライフタイムバリュー」、「NPS向上による業績へのインパクト」についてご紹介しました。これらの調査結果から、「推奨度」ひいては「NPS」には一定の有用性があると考えられるのではないでしょうか。加えて、単純で、わかりやすく、回答者に負担をかけずに回収できるという特徴は、ビジネスで使う上でも有用と言えるでしょう。

細かい数字や見慣れない算出モデルがあり、入門編としては若干難しかったかもしれませんが、数字により顧客セグメント毎のLTVやNPS向上によるインパクトを把握しておくことは、経営層の理解を得ながらスムーズな導入を進める上で必要不可欠です。そして、これらの調査結果はNPSが有用なものであるというひとつの根拠ではありますが、NPS導入にあたっては現状把握も含め、自社における有効性検証を行ってみてはいかがでしょうか。

NTTコムオンラインでは、NPSリサーチにて競合他社とのベンチマーク調査および推奨度ごとの経済的価値の検証をご提供しています。ご興味のある方は是非お問合せください。


【参考資料】
(*1)BAIN & COMPANY 「How is Net Promoter Score℠ related to growth?」
(*2)London School of Economics and The Listening Company 「Advocacy Drives Growth」(2005.9)

* Net Promoter® および NPS® は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

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