2015/08/24

NPS®(ネットプロモータースコア)入門・導入編

第4回 指標としてのNPSからマネジメントシステムとしてのNPSへ~クローズドループとは?~

第3回では、「NPSと企業の売上成長との関係」についてお話ししました。

第1回の「企業にとっての顧客ロイヤルティの重要性」、第2回の「顧客ロイヤルティを測る究極の質問の発見とNPSの誕生」に続き、NPSを理解する上で欠かせないポイントのひとつです。

今回は、第2回の「NPSの本質」の中で触れた「クローズドループ」について詳しくお話しします。
NPSは顧客ロイヤルティを簡単に測ることができ、売上成長と相関が高い指標という点で注目を集めがちですが、この「クローズドループ」こそ、企業の売上成長につながる原動力であることを理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。

NPSと顧客満足度調査との違い

「よくある質問に「NPSと顧客満足度調査の違いは何ですか?」というものがあります。
前回までにお話ししたとおり、NPSの特徴は以下にまとめることができます。

  1. 将来の購買および推奨行動につながる質問(「あなたは○○を友人や同僚にお薦めしますか?」)
  2. 質問に対して0-10の11段階で回答(回答(=推奨度)に応じて顧客の行動特性に違いが出やすい)
  3. 推奨度に応じて顧客を推奨者、中立者、批判者に分類(顧客毎に適切な施策を展開できる)
  4. シンプルな計算方法(推奨者の割合-批判者の割合)
  5. 売上との相関(NPSが上がると売上もアップ)

これらの「質問」、「評価尺度」、「回答結果の分類方法」、「算出方法」、「業績との相関」は従来の顧客満足度調査とは異なる特徴です。そしてこれらの方法論が過去の調査研究により実証・確立されていることが、NPSを使うメリットと言えます。

NPS®はどうやって調査するのか

NPS®は、顧客に対して製品やサービスを人に勧めたい度合によって、0~10点でアンケートによって評価 してもらいます。その結果6点未満の顧客を「批判者」、7~8点の場合は「中立者」、9~10点と付けた人は「推奨者」として分類し、推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値がNPS®となります。

しかし、第2回でも述べたとおり、NPSは単にスコアを把握して、その結果に一喜一憂して終わり、では意味がありません。NPSを上げる、すなわち、推奨者を増やし、批判者を減らすというフレームワークに沿って行動する、そのプロセスの中でお客様が推奨者(あるいは批判者)になる要因分析を行い、さらなるロイヤルティの獲得や改善活動を行うことにNPSを利用する本当の価値があります。このお客様からのフィードバックに真剣に向き合い、改善のために行動を起こし、お客様に働きかけるサイクルのことを「クローズドループ」と呼びます。

従来の顧客満足度調査はどうでしょうか?
ここまで指標を活用したアクションプランを事前に描き、実際にアクションを行い、業績向上につなげているものは少ないのではないでしょうか。

逆の見方をすると、調査後のアクションがメインではなく調査自体が目的化している、指標をアクションにどうやってつなげたらよいかわからない、売上との相関が見えないために改善活動にモチベーションを持ち続けることができない、改善したことをお客様に伝えていないため態度変容を促すことにつながらない、などの理由があるのかもしれません。

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2つのクローズドループ

それでは、クローズドループはどのように構築・運用していけばいいのでしょうか。
「クローズドループ」と一言でいっても大きく2つのクローズドループがあります。

1つは「ストラテジッククローズドループ」と呼ばれるものです。
まず、競合他社と比較した自社の強み/弱み、優先的経営投資エリアの把握を目的とする調査会社のモニターパネルを活用した業界全体でのNPSのポジショニング把握や、自社顧客を対象としたNPSの把握を行います。これに基づき、顧客ロイヤルティに影響を与える事業および組織上の要因の特定、全社横断での改善・強化施策の立案、施策への投資判断、施策実施~成果検証まで行います。これは主に経営層、マネジメント層を中心とした組織横断チームによって行います。一部門に閉じない全社的な改善アクションのため、「大きなクローズドループ」と呼ばれることもあります。ここで重要なのは、施策の成果検証後、その結果をお客様にアナウンスするというプロセスです。このお客様へのフィードバックにより、お客様に自社の取り組みを伝え、ロイヤルティを高め、他者へ自社の製品やサービスを薦めてもらうよう働きかけるのです。

もう1つは「オペレーショナルクローズドループ」と呼ばれるものです。
こちらはある特定の顧客接点において、取引直後に行ったアンケートの結果、不満や問題を訴えたお客様に対して速やかに連絡を取り、なんらかの解決アクションを取ることが最優先となります。これは批判者への対応を中心とした現場改善が目的で、現場の従業員が中心となって行います。日々の業務に組み込まれ、小さな改善をスピーディに回していくことから、「小さなクローズドループ」と呼ばれることもあります。余談ですが、Satmetrix社は極めて深刻な批判者への対応は48時間以内に行うことを推奨しています。また、その問題が現場だけでは解決できない組織的、構造的な問題である場合は、マネージャーや経営層へエスカレーションし、「ストラテジッククローズドループ」の中で解決していきます。

この2つのクローズドループを並行して回していくことで、はじめてNPSを向上させることができるのです。

マネジメントシステムとしてのNPS

これらのクローズドループの説明からもおわかりいただけるかと思いますが、NPSは単なる顧客ロイヤルティを測る指標、企業業績との相関が証明された指標ではありません。カスタマーエクスペリエンスに関するデータと顧客の声を収集・分析し、アクションを起こしていくための手法、顧客の満足を第一に考える企業文化を醸成し、事業を推進していく手法、すなわちマネジメントシステムそのものと言えるのではないでしょうか。

これを成功させるためには経営層の強いコミットメントと従業員への動機づけ、従業員自身の理解と深い関与が必要です。

NPSの考え方はとてもシンプルで、誰にでも理解できるものですが、クローズドループを構築し、運用を継続していくには、正しい知識とリソースが必要です。単に顧客満足度という指標をNPSに置き換えればいいというものでもありません。

次回は実際の導入事例から、企業がどのようにNPSを導入し、クローズドループを回し、成果を上げることができたのかについてご紹介します。

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