2016/01/12

【NPS®(ネットプロモータースコア)導入編】

第1回:経営層を動かす3つのアプローチとは?

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はじめまして、NTTコム オンラインの熊谷です。このコラムでは、NPS(ネットプロモータースコア)の導入をどのように進めればよいのかお悩みの方に向けて、はじめに検討すべきいくつかのポイントについて、ご紹介していきたいと思います。

NPSは、そのシンプルで直感的に理解しやすい考え方から、多くの企業に注目されていますが、実際の導入に当たっては、考慮しなければならないポイントは多岐にわたります。単なるスコアの測定にとどまらず、具体的なアクションに結びつけるためには、自社の顧客接点を洗い出し、信頼性の高いデータを集め、組織のさまざまなレベルでクローズドループを回す体制を整える必要があります。また、調査結果から明らかとなる課題には、現場レベルで対処できるものもあれば、経営レベルでの戦略の転換が必要なものもあるでしょう。シンプルな考え方とは対照的に、NPSを活用する取り組みは、広範囲かつ地道な改善活動の連続です。そのため、NPSを導入してみたいと思っても、まず何から手を付けるべきなのか、迷われるケースも多いようです。

そこで本コラムでは、NPS導入に欠かせない、以下のテーマについて取り上げていこうと考えています。

  • 経営層を動かすアプローチ
  • 顧客体験を可視化する
  • 目的に応じて適切な調査を組み合わせる
  • 信頼性の高い回答データの集め方
  • アンケート結果の分析の方法

第1回は「経営層を動かす3つのアプローチとは?」です。

調査によって明らかとなるロイヤルティドライバー(顧客ロイヤルティに影響を与える要因)は、フロントスタッフ/マネジメント層/経営層の各レベルで対処が必要なものに分けられます。そして、NPSを単なる指標で終わらせないためには、会社全体で顧客ロイヤルティを重視する文化を醸成し、各レベルで改善サイクルをまわしていく必要があります。

そのためNPSの活用には「経営層の強いコミットメントが重要」といわれていますが、一方で、会社の中で初めに顧客ロイヤルティの重要性に気づき、実際に自社で導入したいと考える方が、皆経営層であるとは限りません。「自社の経営層をいかにその気にさせるか」、「どうやったら部門横断的な動きを作り出せるか」、悩まれているミドルマネジメントの声を多く耳にします。

そこで、ここでは経営層を動かす3つのアプローチをご紹介します。

1. 有効性をデータで示す

「顧客ロイヤルティが重要」であることに表立って異論を唱える経営者は少ないと思いますが、それではNPSという指標が本当に自社のビジネスにとって有効なのか、既存の満足度調査といったい何が違うのか、腑に落ちていない方は多いかもしれません。実際にNPSは、全ての業種やビジネスにおいて有効な万能の手法ではないことも事実です。

このような場合、継続的な取り組みを始める前に、自社のお客さまに対してアドホックな調査を実施し、NPSの有効性を検証することをお薦めします。お客さまの自社ブランド/サービスに対する推奨意向と、そのお客さまの過去の購買額や口コミ行動との相関が本当にあるのか、また推奨者が中立者や批判者と比較して確かに高い収益をもたらしているのか。これらを検証することで、自社のビジネスにとってNPSが有効な指標であるかどうかを判断することができます。

一般に、自社のサービスや商品を利用するお客さまと直接接点があり、お客さまとの関係が長期にわたるビジネスでは、NPSと業績との相関がより強く出る傾向があります。このとき、直接の購買額との相関が高い場合もあれば、継続利用期間等との相関が強く出る場合もあります。一回当たりの平均利用額、リピート率、解約率など、自社が重視しているKPIとの相関があることが検証できれば、NPSは自社にとって有効な指標であるといえるでしょう。

また既に満足度調査を実施されている場合は、既存の満足度調査の結果とNPSの調査結果を比較することで、新たな気づきを得ることができます。例えば5段階評価による満足度調査において「5点(非常に満足)」「4点(やや満足)」の合計が80%以上になるような、高い満足度を達成している場合、逆に次の打ち手を見いだせない状態に陥ります。これをNPSに置き換えた場合、よりシビアな基準で分析することになるため、今まで十分な満足を提供できていると思っていた要素が、改善すべき要素として浮き彫りになります。

2. 業界内での自社のポジションを明らかにする

調査会社の市場調査パネルなどを利用して、自社及び競合他社の評価を収集し、業界内での自社のポジションを明らかにすることも有効です。「お薦めしたいか」という心理的なハードルが高い質問は、満足度と比較して競合との差がより大きく出る傾向があり、ロイヤルティの現状に関して危機感を共有するきっかけにもなります。

また、このようなベンチマーク調査は、組織を動かすための最初のアクションとして有効であるだけでなく、本格的に運用を始めた後にも非常に重要な意味を持ちます。自社のお客さまを対象に測定したNPSは、その数値だけでは意味を持たず、時系列比較もしくは競合他社と相対比較を行う必要があります。例えば、自社のお客さまには満足されているように見える要素であっても、競合他社と比較して弱ければ、早急に改善すべきものとして解釈できます。

3. 小さく始めて短期間で成果を上げる(Small Start & Quick Win)

近年ますます多様化する顧客接点や、顧客層別に異なるカスタマージャーニーを考慮して、総合的に調査設計を行い、スムーズな運用体制を構築するには、多大なリソースが必要です。そのため、まず始めに特定の顧客層や顧客接点にフォーカスした小規模なプログラムを立ち上げ、短期間で成果を出すことをお薦めします。

一般に、おおむね満足している「中立者」を熱烈なファンである「推奨者」に育成するには、長い時間をかけて試行錯誤を繰り返す必要がありますが、一方で批判者を中立者へ移行させるには、調査によって明らかとなった具体的な不満を一つひとつ改善することで、短期的に成果を上げる可能性があります。

また、日々寄せられるお客さまからのフィードバックの中には、厳しい意見だけではなく、ファンからの感謝やはげましの声が含まれます。これらの声が日々届けられることで、現場のスタッフのモチベーションが向上し、改善の結果が目に見えることでさらに意欲が高まるという好循環を生み出すことができます。 

スモールスタートで短期的に成果を出しつつ、徐々にやり方をブラッシュアップし、対象範囲を拡大することで、全社的なプログラムをよりスムーズに運営することができるでしょう。

経営層を巻き込み、組織全体を動かすためには、このように有効性や成果を目に見える数字で示すことが不可欠です。

* Net Promoter®およびNPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

NPS®(ネットプロモータースコア)完全ガイド

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熊谷 賢一

熊谷 賢一

2003年よりネット調査gooリサーチ(現:NTTコム リサーチ)にて、マーケティングリサーチ業務に従事し、特に通信・オンラインサービス分野における新規事業の需要性調査、市場動向調査、顧客満足度調査等について多くの経験を有する。近年は顧客ロイヤルティが企業の成長に与える効果に着目し、NPS®のエバンジェライズを推進。NPS®認定資格者。

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