2016/08/15

NPS®(ネットプロモータースコア)入門・導入編

番外編 NPS® (ネットプロモータースコア)がマイナスになった場合の読み取り方

NPS®(ネットプロモータースコア)とは、顧客ロイヤルティを計測する指標で、「特定のブランドを友人や同僚に薦めたいですか」という非常にシンプルな質問(「究極の一問」)の回答から算出します。ここ10数年の間に欧米の主要企業での導入が進み、日本でも多くの企業が活用しはじめている指標です。

当社では、2016年7月に「NPS®ベンチマークレポート【生命保険業界】」(*1)を発表しました。生命保険企業11社のNPS®平均値は-53.4ポイント、ロイヤルティ・リーダーである1位企業の値は-38.9ポイントという結果となりました。

この結果を見ると、「顧客ロイヤルティはそんなに低いの?」「なんでマイナス?」など、疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。

本コラムでは、NPS®がマイナスの場合の指標の読み取り方や、NPS®の使い方として、相対的な見方も非常に重要となる、といった内容をお届けします。

1.中間回答を好む傾向のある日本人

日本人は中間回答を好む傾向があるといわれており、NPS®の調査においても同様の傾向がみられます。

2016年7月に実施した「NPS®ベンチマーク調査【生命保険業界】」では、「あなたはこのブランドを友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」という質問に対し、「0」~「10」までの11段階で回答いただいたところ(推奨度)、「5」(どちらともいえない)に回答が集中しました。【図1】この傾向は、2015年に当社が実施した21業界ベンチマーク調査(N=13,521名)でも同様でした。

【図1】 推奨度の分布 ※NPS®ベンチマーク調査【生命保険業界】より

推奨度は、「0」(まったく思わない)~「10」(非常にそう思う)の11段階で回答するようになっており、中間の値は「5」(どちらともいえない)となります。

このうち、
「0」~「6」をつけた方を「批判者」
「7」「8」をつけた方を「中立者」
「9」「10」をつけた方を「推奨者」 として、「推奨者」の割合から「批判者」の割合を引いた値がNPS®です。

つまり、中間回答の「5」(どちらでもない)を回答される方が多ければ多いほど「批判者」の割合が高まります。「推奨者」とカウントされるのは、「9」「10」の極めて高い推奨度をつけた方たちのみですから、「推奨者」-「批判者」で計算されるNPS®が大幅にマイナスになる要因となります。「5」に回答が集中しやすいということは、NPS®がマイナスになりやすい、ということと関連があるのがわかります。

2014年にBain & Companyが18か国で行ったNPS®調査(“Customer loyalty and the DigicalSM transformation in P&C and life insurance: Global edition 2014”)では、生命保険業界および損害保険業界のアメリカ、ヨーロッパ、アジア各国のNPS平均値を発表しています。生保業界、損保業界とも、18か国中NPS®平均値が最も低かったのは日本でした(次に低かったのは韓国)。今回のベンチマーク調査同様、平均値がマイナス50以下という結果となっています。

日本において、業界平均のNPS®が大幅なマイナスの値であることは、NPS®の仕組みを理解すると、それほど驚くべきことではない、ということが分かります。

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2.NPS®指標の日本でのとらえ方

(1) 推奨度「8」は推奨者ではないのか?

とはいえ、日本の感覚からすると“0~10の間で「8」をつければ十分に推奨者ではないか?”“、”NPS®を計算する際の定義は厳しいのではないか?“といった疑問を持たれるかもしれません。

しかし、次にご紹介する結果は、この疑問に対して大きな示唆を与えてくれます。

【図2】 推奨度別過去12か月のポジティブな口コミ人数 ※NPS®ベンチマーク調査【生命保険業界】より

【図2】は推奨度ごとに「過去12か月間でポジティブな口コミを何人にしたか」を図示したものです。これをご覧いただくと、「7」と「8」に比べて、圧倒的に「9」と「10」を回答した方のポジティブな口コミ数が多いことが分かります。これは今回のベンチマーク調査(2016年7月)からの抜粋ですが、同様の傾向は他の調査でも見られます。

“NPS®は業績との相関がみられる”との調査結果があります。ポジティブな口コミをしてくれるようなファン(=ロイヤルティの高いユーザ)を多く抱えていることが、業績にプラスの影響を及ぼすことは容易に想像がつくと思われます。こうした調査結果をノウハウとして蓄積したものがNPS®であり、推奨度「9」、「10」は日本においてもまぎれもなく「推奨者」であり、それに比べ推奨度「7」、「8」はまだまだ「推奨者」とは言い切れないといえます。

(2) 推奨度「5」は中立ではないのか?

同様に日本人の傾向を考慮すると、“「5」を批判者とするのは厳しいのではないか?”といった疑問も出てくると思います。

しかし、【図2】 にあるように、「5」はポジティブな口コミ数の点では、むしろ推奨度「0」~「2」と同じような結果となっています。また、推奨度として「5」を回答した方の推奨理由(自由回答)をみたところ、次のような特徴がみられました。

【図3】 推奨度の理由(「5」回答者のみ) ※NPS®ベンチマーク調査【生命保険業界】より

【図3】はフリーアンサーに記入された内容を言語解析した結果です。単語と単語の共起性(一緒に出現しているかどうか)を評価し、共起性の高い単語ほど近くに配置していますが、この結果を見ると「薦めない」「掛け金が高い」などの回答も散見されます。

日本的に中間回答を好み「5」や「6」と回答した方を「批判者」ととらえるからこそ見えてくるお客様のご意見もあるように感じられます。

NPS®の値を上げていくことを通じて売り上げ増につなげていく、といった観点からみると、真のブランドの推奨者(コアなファンとでもいうべき存在)のみを「推奨者」とするNPS®の考え方は、より的確に「推奨者」「批判者」をとらえているのではないでしょうか。

3.NPS®指標を相対的にとらえる

NPS®はシンプルな指標であり、目的に応じてさまざまな使い方があります。今回当社で実施したようなベンチマーク調査は、競合他社と比較しての立ち位置を知る場合や、競合に比して自社の強みや改善すべき課題などを理解する際有用になります。

一方、自社顧客に対して、顧客の声に耳を傾け、ロイヤルティを上げる・よりファンになっていただく、という意味合いでは、他社や業界の値との比較よりも、むしろ自社内での経年比較が重要となります。半年前に比べて、NPS®が上がったのか、下がったのか。「推奨者」が増えたのか、あるいは、「批判者」が減ったのか。そして、その要因はなんだったのか、といった点に着目してくことが重要となります。

そのような意味合いでも、自社、あるいは業界全体のNPS®の絶対値がどうだったか、というところにとらわれることなく、指標を使っていくことが重要であると言えます。

以上「NPS®ベンチマーク調査【生命保険業界】」を例に、NPSの値がマイナスの場合の読み取り方についてみてきました。過去のNPS®コラムにもNPS®指標の理解に役立つ様々なコンテンツがあります。「NPS®ベンチマークレポート【生命保険業界】」と合わせて、是非ご活用ください。

(*1) NPS®ベンチマーク調査【生命保険業界】概要
<調査概要>
1. 調査対象業界:生命保険業界(11社)
2. 調査対象者 :「NTTコム リサーチ」登録モニターのうち、該当の生命保険会社の契約者
3. 調査方法  :非公開型インターネットアンケート
4. 調査期間  :2016年6月9日(木)~2016年6月13日(月)
5. 有効回答者数:3,336名
6. 回答者の属性:【性別】男性:60.0%、女性:40.0%
         【年代】20代:8.5%、30代:20.4%、40代:24.9%、50代:18.4%、60代以上:27.8%

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