2019/10/23

【カスタマー・アイデンティティ市場動向】

岐路に立つCookieと広告、顧客データはどこに求めるべきか(前編)

これまで、多くのWebサイトではユーザーの行動を把握し、ターゲティングの精度を向上させコンバージョンを高める目的で、ブラウザーを個別に識別する「Cookie」を広く活用してきました。しかし、個人のプライバシーに対する意識の高まりなどを背景に、Cookieに基づいた広告配信に依存するデジタルマーケティング戦略に疑問が投げかけられています。

Cookieを忌避し削除するユーザー

ユーザーがCookieに基づいたターゲティングを嫌う背景には、ユーザーがCookieによる情報の収集を許諾したという意識が乏しいままで、サイトの閲覧履歴などの情報を収集・利用し、プライバシーを侵害しているようにみえることがあります。
 その傾向については、ここ数年にわたって多くの議論があり、多様なデータが公表されています。マイクロソフト社の委託によりIpsos社が実施し2013年1月に公表した調査結果によると、ユーザーの85%は自身のプライバシーを守るために何らかのアクションを起こしています。
 中でも最も多くのユーザー(65%)が取っているアクションが「Cookieを削除する」でした。次いで「ターゲティング広告をオプトアウトする」(44%)、「アプリをアンインストールする」(41%)、「Webサイトがトラックできないようにブラウザーの設定を変更する」(39%)などが挙げられています。

DIGIDAY(英語版)は、2013年4月にCookieの削除や利用制限に関して、複数の企業が公表したデータを集めた記事を公開しました。具体的には以下の内容です。

  • ● ユーザーの3分の1は毎月Cookieを削除している
  • ● Cookieを削除するユーザーは平均して月に4回削除を実行している
  • ● 調査対象の60%は、Webサイトがユーザーに関する情報を集めることを禁止する「トラック禁止法」を望んでいる
  • ● 調査対象の40%は、広告によって運営されているWebサイトはユーザー情報を売る可能性があると考えている
  • ● 広告ブロックソフト「AdBlock」のダウンロード回数は2億回、「AdBlock Plus」のダウンロード件数は4200万回で、AdBlock Plusのデイリーアクティブユーザー数は1580万人
  • ● 家庭にあるPCの60%以上は複数の人が使用しており、すなわちCookieもシェアされている

これらの調査結果より、ますます多くのユーザーが、Cookieに代表される技術によって、自分が知らない間に自身に関するデータを収集されることに嫌悪感を抱くようになっており、そしてそれに対抗するためのアクションを取る傾向が強まっている、といえるでしょう。

広告ブロックの拡大

加えて、広告ブロックソフトの利用が拡大している現象にも注目が集まっています。comScore社が2016年第1四半期に公表したAdvertising Benchmarkでは、以下のようなデータが紹介されています。

  • ● 若年層(18歳から24歳)の広告ブロックソフトの利用性向は、平均的なネットユーザーに比べて男性で100%、女性で42%高い
  • ● グローバルな傾向として、平均的なネットユーザーに比べ高額所得層の広告ブロックソフトの利用率が上がる

Adobe Systems社がPageFair社と共同で2015年8月に公表した調査報告では、以下のようなデータを紹介しています。

  • ● 広告ブロックソフトのユーザー数はグローバルで1.98億人
  • ● 広告ブロックソフトの過去12カ月間の成長率は41%

以上から、広告ブロックソフトは急成長を遂げており、既にインターネットユーザーが広く使うようになっている、と考えるべきでしょう。

Intelligent Tracking Prevention (ITP)

Intelligent Tracking Prevention (ITP) とは、Apple社がiOSやmac OSのSafariブラウザに実装した新しい機能で、ユーザーのプライバシー保護のためにCookieの機能を抑制するものです。既に、運用型広告やリターゲティング広告に影響が出ていることが知られておりましたが、最新バージョンにおいてはファーストパーティCookieにも影響があるとされています。(参考記事
 日本では、スマートフォンにおけるiPhoneのシェアが高いこともあり、特にモバイルサイトやアプリにおいてCookieに依拠することのリスクは無視できないものといえるでしょう。

Cookieに依存したターゲティングテクノロジーの将来

例えば、自宅のPCを子どもたちが使った後、その後数週間にわたって、名前も知らないアーティストや全く関心のない商品の広告がいろいろなサイトで繰り返し表示される、といった経験をされた方がいるかもしれません。こうした現象はユーザーの不満や不安感を招くだけでなく、マーケターには広告予算の無駄遣いを強いています。
 企業はWeb広告配信のために様々なロジックや推測モデルを活用しています。ただ、その基となるデータには、上記に示したユーザーによる気まぐれや、突発的な行動による結果も含まれてしまいます。
 Cookieに依存したこれまでのターゲティングテクノロジーは、いわば“推理ゲーム”のようなものです。ユーザーを推測するための唯一の手掛かりはブラウザーの履歴情報にすぎず、それだけでユーザーの全体像を浮かび上がらせるには情報不足といわざるを得ません。特に、趣味、関心、「いいね!」と思うものやそうでないもの、交際ステータスといった、本来マーケターが必要としている情報は得られないのです。

Cookieは、ユーザーが一つのデスクトップPCだけで行動する時代では、広告やコンテンツのターゲティングに有効だったことは事実です。しかし、現在のモバイルテクノロジーの急速な広がりはCookieによるターゲティングの有効性を急速に下げています。
 モバイルデバイスの機種、OS、ブラウザー、アプリはあまりにも多く存在しており、一人のユーザーがこれらをいくつも使います。こうなるとチャネルやデバイスを俯瞰してユーザーアクティビティを理解することは非常に困難となります。
 eMarketerの調査によると、オンラインやモバイルに加えて、実店舗のショッピングを統合することを望んでいる消費者は45%にも上ります。その一方でマーケターは消費者がますます多くのタッチポイントを通じて企業と接点を持つにつれ、それらのチャネルをまたいだ顧客をシングルビューとして把握することはますます難しくなっていきます。

後編では、Cookieに代わる新たなアプローチについて考えます。

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