2021/06/21

請求書の電子化

日本の電子インボイスと準拠である欧州のペポルを解説

消費税に軽減税率が導入されて以降、税に関係する会計処理は複雑になりました。税の公平性などを維持する観点からインボイス制度が導入されます。複雑な会計処理を正確に処理するためにインボイスなどの電子化は避けられません。日本でも電子インボイス推進協議会が設立され、欧州の電子インボイスを準拠とする日本の電子インボイスを策定することになっています。ここでは電子インボイスの概要と必要な準備について解説します。

電子インボイス(制度)とは

インボイス制度導入の背景

軽減税率が導入されてから、請求書や納品書、帳票などの経理に関わる書類の整理や記載が複雑になりました。品目によって税率が異なるからです。それぞれの書類は、軽減税率に当てはまる品目がある場合にはそれを明示した上で税率ごとに分けた合計金額を記載しなければなりません。これが税率ごとの区分経理です。区分経理を行うことによって取引の透明性が高まり、ミスや不正を防いで正確な経理が可能になります。軽減税率の導入によって複数の税率があることから区分経理が求められるようになりました。

インボイス制度とは

商品の仕入れや販売の際には、請求書や納品書、領収書などを発行します。区分経理によって作成されたこれらの請求書等に記載される適用税率や税額の情報は正確です。区分経理を行った上で税務署に適格請求書発行事業者として登録した事業者が発行する請求書等のことを適格請求書といいます。貿易関係でインボイスといえば、通関手続きのために価格や運賃などの必要事項を記載した納品書と請求書を合わせた書類です。新たに始まるインボイス制度でも必要事項が記載された適格請求書をインボイスと呼びます。適格請求書発行事業者がインボイスを発行・保存する制度がインボイス制度です。

税の重複徴収を避けるための仕入税額控除

仕入税額控除という制度があります。例えば生産者Aが工場Bに1,000円の商品を納入するときにBが支払うのは消費税100円を加えた1,100円です。Bが1,200円の商品に加工して販売店Cに納入するとCが支払うのは消費税120円を加えた1,320円になります。この商品をCが消費者に1,500円で販売したとすると消費者が支払うのは消費税150円を加えた1,650円です。A、B、Cが販売の時に税金として受け取った100円、120円、150円をすべて税務署に納めると、税を重複して徴収することになります。これを回避する制度が仕入税額控除です。仕入税額控除では税額から仕入の際に支払った税額を控除することができます。先の例ではBの税額は120円ですが、仕入に100円の税を支払っていますから、控除後の税額は20円です。同様にCの税額は30円になります。

インボイス発行の必要性

売上げが1,000万円を超えない事業者は免税事業者として適格請求書発行事業者になりません。インボイス制度では仕入税額控除を受けるためにインボイスが必要です。免税事業者はインボイスを発行できません。そのため課税事業者が免税事業者を仕入先とする場合には仕入税額控除を受けられないことになります。そうなると仕入元も免税事業者からの仕入を考え直す可能性もあるでしょう。しかし、免税事業者も適格請求書発行事業者として登録することでインボイスの発行が可能になります。

電子インボイス

インボイスの発行は電子化されたデータ形式でも良いことになっています。電子化されたデータ形式のインボイスが電子インボイスです。インボイス制度では紙ベースのインボイスと電子インボイスのいずれを選択するかは企業の判断に委ねられています。しかし、軽減税率があるので経理で処理する税額は複雑です。請求書、納品書、帳簿などすべてにおいて税率ごとに計算をしなければなりません。素早いインボイスとの照合も求められます。紙ベースでは印刷、整理、保管や手作業のための人件費などにもコストが、かかるでしょう。電子化することによってコストを抑えて、さらにソフトを利用すれば計算やインボイスの作成も正確で簡単です。以上のようなことから、インボイス制度導入に向けて多くの企業が電子インボイスを取り入れようとしています。
(関連記事:インボイス制度とは?従来の請求書と何が変わる?

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電子インボイス推進協議会「EIPA(エイパ)」とは

インボイス制度は適正かつ公平な仕入税額控除を実施するためには欠かせません。複雑な経理処理をするために期待されているのが電子インボイスです。その電子インボイスは日本の法令や商慣習などに対応したものでなければなりません。さらに大企業だけではなく、中小事業者を含めて幅広く使われることが求められます。そのような電子インボイスの標準仕様を作るとともに普及することを目的として設立されたのが電子インボイス推進協議会で、略号のEIPA(エイパ)は英語のE-Invoice Promotion Associationの頭文字をとったものです。

エイパの目標

現行の商取引は標準化されるとともに全体最適化されています。電子インボイスを使用するシステムを構築して普及するためには現行の制度や仕組みから移行しやすいものでなければなりません。エイパの活動は、現行商取引からの移行が容易な電子インボイスの標準仕様を策定することによって、商取引全体の電子化と生産性向上に貢献することを目指しています。

エイパの選定した電子インボイスの仕様準拠

電子インボイスは、国際的な商取引にも対応できるように仕様のグローバル性も求められています。EUの電子インボイスは紙ベースのインボイスと同等に扱われていて加盟国間の規格統一も進んでいます。韓国でも既に電子インボイス制度が導入されています。世界的に電子インボイスの導入が進んでいることから、先行する電子インボイスとの互換性も考慮しなければなりません。国際規格のPeppolは、互換性に加えて中小事業者にとっても操作が容易で、低コストで利用できることが既に導入している各国から評価されています。エイパが仕様準拠として選んだのはこのPeppolです。

国際規格のPeppol(ペポル)の仕様

PEPPOLを管理しているのは国際的非営利組織のOPEN PEPPOLです。PEPPOLは国際的な商取引のための電子文書をネットワークを通じてやり取りするために文書の構成、ネットワークとの接続、運用のためのルールなどを仕様として定めています。今では企業間の取引にも利用されていますが、最初はEU内において政府などが民間から物やサービスを購入するときの仕組みとして導入されたものです。現在、PEPPOLを準拠とした電子インボイスはEUだけではなく国際的に利用されてます。日本でエイパが電子インボイスの仕様をPEPPOLに準拠することにした理由の一つは国際的に利用されているからです。

Pan-European Public Procurement Onlineの略

PEPPOLは英語のPan-European Public Procurement On-Lineの頭文字をとった略号です。2008年から始まった欧州委員会を中心とするプロジェクト名に由来します。プロジェクトの目的はEU内の各国が政府調達する際のプロセスを効率化することでした。プロセスを効率化するためには電子文書の交換がスムーズでなければなりません。そのためには国際的な標準規格が必要です。そのために、PEPPOLが策定されました。策定後、2012年9月にPEPPOLを管理する組織として発足したのが、非営利団体のOpenPEPPOLです。

Peppol(ペポル)の特徴

PEPPOLは、オンラインによる各種資料のやり取りができます。PEPPOL対応システムでやり取りできるのは電子インボイスだけではありません。製品の認定証や仕様書などもやり取りが可能です。また、それらに電子署名を施して授受することもできます。オンラインで繋がるのは欧州の各国政府だけはなく対応したネットワークに加入している企業も繋がってます。そうした企業相互も各種資料のやり取りが可能です。現在企業間の電子商取引に主に利用されているのはEDIと呼ばれる電子データ交換です。EDIは専用回線やインターネットを通じて繋がります。EDIがPEPPOLに対応していれば、異なるEDIネットワークでもPEPPOLのアクセスポイントを通じて相互連接が可能です。PEPPOLのアクセスポイントはPEPPOL eDelivery Networkによって繋がっているからです。

PEPPOLが想定している取引は政府と民間の取引だけではありません。政府間の取引や民間企業同士の取引も網羅しています。欧州では多くの政府機関や企業の使用しているネットワークがPEPPOLに対応済みです。送信側も受信側もPEPPOLに対応したシステムになっているので、欧州内では政府機関や企業とスムーズに商取引ができます。使用するEDIなどのネットワーク環境を国際的に普及しつつあるPEPPOLに対応させることで、すべての商取引を網羅することも可能です。

すでに導入している国々でPEPPOLは、操作がシンプルで大規模事業者だけではなく中小規模の事業者にとっても導入しやすいとの評価を得ています。その他にも、お互いにPEPPOLを使用することで企業間のデータ連係が進んで業務コストが下がったり、既存の取引システムやEDIネットワークと併用してPEPPOLネットワーク上の相手とデータのやり取りができたりする便利の良さが受けて高い評価を得ています。

Peppol(ペポル)導入国

現在Peppol導入を既に実現している国や導入を進めている国は世界中で39カ国に上ります。PEPPOLネットワークが稼働しているヨーロッパに所在する31カ国に加えてオーストラリア、カナダ、メキシコ、ニュージーランド、シンガポール、南アフリカ、米国などが主な国です。そこに日本が加わって、現在39カ国がOpenPEPPOLのメンバーになっています。

OpenPEPPOL認定のアクセスポイントはヨーロッパの29カ国とオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、シンガポール、米国にあります。これに連接するPEPPOLネットワークは295個が稼働中です。
PEPPOLをそれぞれの国に導入するためには、その国や地域の法律や商習慣と整合しなければなりません。PEPPOLを採用する国の行政機関などにPEPPOLを管理する管理局の設置が必要です。管理局があることによって、法律や商習慣と整合のとれたその国や地域のための標準仕様が策定できます。現在管理局はスウェーデンやイタリアなど15の国に配置されています。日本の場合、日本向け標準仕様を策定するはエイパです。

国や地域に適した標準仕様が必要なのは、国や地域によって電子文書やサービスに対するニーズが異なるからです。たとえば、オーストラリアにおける主要なニーズは電子インボイスでしたが、フランスの場合は電子署名や認証に重点がありました。スウェーデンの主要な要望は電子発注と電子カタログをPEPPOL上で処理することでした。これらの事項は管理局が整合をとることによって、それぞれの国の標準仕様に導入済みです。

電子インボイス「Peppol(ペポル)」に必要な企業の対応

エイパはインボイス制度が導入される時期を目標として段階的にPEPPOLを準拠とする電子インボイスの策定に必要な準備を着々と推進中です。インボイス制度の導入によって現行の仕入税額控除も段階的に廃止されて、最終的にはインボイスがなければ仕入税額控除を受けられなくなります。そのため、関係企業は早めに対応を準備することが大切です。

インボイス制度が2023年10月1日より導入

現在は仕入先が免税事業者であっても、請求書に税率ごとに区分した金額と軽減税率適用項目の記載がある請求書を受領、保管しておくことで仕入税額控除が受けられます。しかし、2023年10月1日以降インボイス制度が導入されると免税事業者からの請求書では控除が受けられません。仕入元企業にとって仕入税額控除の適用を受けるためには仕入先に適格請求書を発行してもらう必要があります。導入以降の会計処理を考えると、現在の多くの免税事業者も申請して適格請求書発行事業者にならざるを得ません。

複数の税率が存在する状況での会計処理は大変ですから、仕入元となる買い手も仕入先の売り手も処理で間違いを起こすことなく簡単にするために会計システムなどによって電子的に処理する方向に加速することが予想されます。エイパが日本向け標準仕様の準拠としてPEPPOLを選択したことを受けて政府と会計システムの開発などを手がけている民間企業との協議も開始されました。2023年10月にはどの企業も日本版PEPPOLの電子インボイスを使用した業務に移行できるように態勢構築が加速すると予想されます。また、PEPPOLに準拠していることから欧米などのPEPPOL導入地域との商取引も容易になるので、ビジネスチャンスが増えることも期待できるでしょう。

電子化に必要な準備

現行の会計処理を電子化するために必要な準備は、会計処理に必要な会計システムを導入するだけではありません。現在、適格請求書発行事業者でない免税事業者などの場合は登録することによって適格請求書発行事業者となる必要があります。この場合、適格請求書発行事業者は課税事業者となって申告納税義務が発生するので注意が必要です。会計処理を簡単にするために電子インボイスの交付を要求される可能性も高いでしょう。慣れない場合、当初は会計処理に手間取ることも予想されます。余裕を持った事前準備ができるように、早めに登録申請して準備に着手した方が良いでしょう。

仕入先などの売り手の場合、仕入元からの要求が予想される請求書や納品書などの中で、何をインボイスとするかを決めておく必要があります。電子インボイスに対応できるようにレジや会計システムなどの準備や改修なども必要です。新たに適格請求書発行事業者となった場合には仕入元などに登録したことや登録番号を連絡します。仕入元とのインボイスの様式や交付要領などの調整も必要です。インボイス制度に関係する社員の研修や教育の実施も必要でしょう。

仕入元など買い手の場合、電子インボイスに対応できるように、経理や発注に関わるシステムの準備や改修が必要になります。仕入先に対して、適格請求書発行事業者として登録しているか否かについての確認が必要です。仕入先が適格請求書発行事業者となっている場合にはインボイスの様式や発行要領を調整しておく必要があります。また、関係社員の研修や教育も必要です。

インボイス制度への移行はデジタル化によって業務を効率化する好機

インボイス制度に移行することによって仕入税額控除が厳格に実施されるようになります。この制度ではインボイスを紙ベースで提供することもできます。しかし、複数税率が存在することによって特に税の絡む会計処理は複雑になりました。インボイスは電子インボイスも認められています。電子インボイスの導入を機会に会計処理などをデジタル化することで業務の効率化を推進することができる筈です。

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