2017/12/05
【NPSトップ企業に聞く顧客ロイヤルティ向上の秘訣2017】
NPS®ベンチマーク調査2017、銀行業界部門において1位を獲得した住信SBIネット銀行株式会社。フィンテックのリーディング・カンパニーとしても知られている同行は、2016年にNPSを導入し、以降戦略的指標として活用してきました。NPS導入に至るまでの経緯や導入時の状況、また、なぜNPSを経営戦略の最重要指標と捉えているのかについて、お伺いしました。
― 住信SBIネット銀行様はNPSベンチマーク調査2017の銀行部門において第1位となりました。
まずは、10周年を迎えられた住信SBIネット銀行様の成長を創っている事業戦略についてお聞かせください。
円山 : 住信SBIネット銀行は、24時間365日、好条件の金利や手数料の便利なフルバンキングサービスを提供する、「お客さま中心主義」を掲げて創業しました。企業理念としては、「正しい倫理的価値観」「金融業における近未来領域を開拓し、革新的な事業モデルの追求により社会の発展に貢献する」、「最先端のITを駆使して安定的な金融システムを提供する」という3つを掲げてきました。お客さまにとって良い商品、良いサービスを提供し続ける「お客さま中心主義」や、企業理念を一貫して守り続けてきたことが、今回のNPS1位につながったと考えています。
― 事業の現状やビジョンについて教えてください。
円山 : 証券業界では、ネット証券の誕生により個人の委託売買代金の9割以上がネットにシフトするなど、大きな変化がありました。銀行業界では、これまでそのような革命は起きていませんでしたが、フィンテック革命により、銀行業界が変革していく時代になりました。我々は、フィンテックを駆使して金融業界に変革を起こすようなビジネスをしていきたいと思っています。
― お客さまにとっては、どういうベネフィットが生まれるのでしょうか。
円山 : 当行は、グループのSBI証券と連携し、ハイブリッド預金という証券口座連携の仕組みを日本の銀行として初めて提供しました。これは非常にお客さまの評判がよかった。さらに、日本の金融機関で初めてスマート認証というスマートフォンを使ったセキュリティシステムを開発しました。こういった形でテクノロジーの力を使って顧客の利便性を上げるサービスをやってきました。
金利や手数料においても、業界で最も魅力的な商品やサービスを提供し、あらゆる分野で業界ナンバー1を狙えるところまで成長してきていると思っています。預金量もこの10年間で4兆円を超え、住宅ローンにおいては、年間7000億円以上実行できる規模に大きく成長しました。
また、当行では代理店によるリアルな店舗展開もスタートさせました。「住宅ローンは対面で相談したい」といった形で、お客さまが「相談」という機能を求めている商品に関しては店舗も必要なのではないかという判断です。
― 円山社長が考えるロイヤルカスタマーとはどのようなお客さまのことでしょうか。
円山 : 一番シンプルな言葉ですと、当行のファンかどうかということです。我々のことが好きだと感じてもらえるサービスを提供できているかどうかが一番のポイントだと思います。NPSの指標はまさにそうだと思います。友人や家族に推薦できるかどうか。それはファンじゃなければしませんよね。
― 御行は次々に新しい商品やサービスや発表されていますが、そのアイデアはどのように生まれるのでしょうか。
円山 : 世界で何が起きているか、そして他の業界で何が起こっているかを、常にアンテナを張って把握するように、社員には伝えています。世界で起きている変化は必ず日本でも起きるし、他の業界で起きている変化は必ず金融業界でも起こる。それを見ていれば、おのずとやるべきことは明らかになります。そこにお客さまの声がプラスされることで、より具体的に判断できるようになると考えます。
― NPSを導入された経緯を教えてください。
円山 : 以前より顧客満足度は重視していたのですが、顧客満足度だけが上がっても業績は伸びない。そこで、我々にとって「正しい」指標を探していたときに、NPSにたどり着きました。世界の先進企業は、グーグルもアップルもNPSを導入しています。NPSは、収益との関連性が高いこと、また、指標がシンプルでスコアの出し方も世界共通だという点が素晴らしいと思いました。NPSのスコアを上げていけば、顧客満足度も結果として上がってくるのではないかと考えたのです。
― NPSはアメリカで10数年前に始まり、既に欧米ではNPSと収益の相関関係が証明されています。
円山 : アメリカのチャールズシュワブも金融機関ですが、高い値を出していますよね。業績も伸びている。我々もNPSをプラスにしていかないといけない、そうしないと生き残れないと考えています。フィンテックのサービスも同様で、いかにUI、UXが優れて、お客さまにとってより便利で、利便性の高いサービスを提供し続けていかないと、生き残れない。
― 日本は推奨度「5」の真ん中をつける人が多いのですが、その人たちは満足ではあるけれどもファンではなく、何かのきっかけですぐやめてしまいます。ただ、エッジが立っている企業ほど、推奨理由がはっきりしているので、「9」「10」が付きやすい。
円山 : だからこそ商品力が重要で、常に強い商品を出し続けないといけないと考えています。価格勝負もあるが、単純なものではない。
2016年にお客さまに当行をもっと活用していただくために、取引をたくさんしていただいた方により多くのベネフィットを還元できる仕組みである、スマートプログラムを導入しました。ロイヤルティを高め、収益性を高めるためのものです。ただ、これまでの流れからの大きな変革だったため、導入時にはお客さまにご理解いただくのに時間がかかり、一時的にですが、顧客満足度も下がりました。
― リカバリーされるのにどういう手を打たれたのですか。
円山 : ロイヤルカスタマーに効果があるキャンペーンをうち、17年4月にはスマートプログラムをより良く改定しました。お客さまが一番反応するポイントを選びながらキャンペーンを企画するなど、NPSの分析結果のデータに基づき、かなり合理的に、科学的に施策をうちました。これが失敗したらもうNPSは信用しないと思いましたね。本当に教科書通りに取り組みました。そして、現時点では、実際に結果がついてきています。
社内のプレッシャーもあったので、カスタマーロイヤルティ戦略部を1年間だけの組織として作りました。担当役員は私がやりました。日本ではまだ本当の意味でのNPSの価値が浸透していないので、NPSを知らない人たちもまだまだ多いのが実状ではないかと思います。
― 賛否両論がある中をやりきるのは、まさにトップコミットメントですね。
藤代 : そうですね。企業に新しい価値を導入するにはトップコミットメントでなければ、絶対に成功しません。それに加え、ロジカルに成果を出して、地道に社内を説得していくしかないと思います。その意味でも御社のNPSベンチマーク調査で第1位を頂戴できたことは大変ありがたく、励みになります。
円山 : これからは、商品ごとのNPSもやっていき、収益も上がっていけば、よりNPSは正しかったなという話になる。既にNPSで課題がみえてきた商品もあるので、まずはそこから対策し結果を出していきたいですね。
実際、これまでのNPS調査の数字を見ていると、びっくりするくらい納得感のある結果がでます。商品とかサービスや環境が変わると思い切りNPSが動く。
まだ1年しかやっていませんが、失敗も繰り返しながらだんだん精度をあげていこうと思っています。
― 現在、銀行業界で重要な指針となっている「顧客本位の業務運営」(フィデューシャリー・デューティー。以下、FD)へのお取組みや、それを評価するために、指標が必要になると思いますが、どのような対応をされておりますでしょうか。
藤代 : 金融庁公表の「顧客本位の業務運営(FD)に関する原則」には「金融事業者は顧客の最善の利益を図ることにより、自らの安定した顧客基盤と収益の確保につなげていくことを目指すべきである。」とあります。NPSは収益との相関性が実証されており、FDのKPIとして非常に相性が良いと考えています。お客さまの最善の利益により、当行が成長させていただき、その利益を更にお客さまに還元していくようなお客さまと当行が共に発展していくサイクルをNPSによって構築したいと考えています。
円山 : FDは、我々としてはお客さま中心主義といっている以上、以前より意識し、真剣に取り組んできたことでもあります。今回の指針がでたことで、より明確に、目標ができたと考えていますし、その対応には力を入れています。
また、指標については、顧客満足度やNPSといった公式な指標を使い、開示していこうと思っています。NPSについては1位だから終わりというわけではなく、スコアを意識しています。
― 今後のNPSへの期待を教えてください。
藤代 : まずはNPSと収益が相関することを証明していき、加えて、従業員や社会や株主など全ステークホルダーの当社に対するロイヤルティ向上にも寄与するのではないかと期待しています。また、FDを含め、変革期である銀行業界が顧客満足度を超越したNPSの競争により、業界全体のクオリティーが向上することも期待しています。
円山 : NPSは経営戦略の最重要指標です。この数値が上がれば収益も上がる、すべてに直結する指標であるということを、信じています。それを証明し続けないといけないですね。今後は、社内で体制を作って、各部門が意識して自己改善できるような仕組みにしていきます。NPSを商品やサービス毎にやっていくことで、各部署の指標、ベンチマークにしていきたいと考えています。
社員ひとりひとりが自ら問題を発見して、自ら解決する、というのが大事で、上からの指示でやっていると、達成感が出にくく、トップが変われば、NPSの取組み自体無くなってしまうかもしれません。そういった意味では、NPSを企業文化まで落とし込んでいこうと考えています。
― トップダウンでNPSを推進し、実際に成果をだしていらっしゃる住信SBIネット銀行様の素晴らしいお取組みについてお伺いさせていただき、大変参考になりました。本日は、ありがとうございました。
Net Promoter®およびNPS®、Predictive NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズ(現NICE Systems,Inc)の登録商標です。
また、eNPSは、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズ(現NICE Systems,Inc)の役務商標です。
【インタビュー後記】by NPSベンチマーク調査担当
NPSベンチマーク調査2017銀行業界の結果から読み取れる住信SBIネット銀行に対するお客さまの高い評価
NPSベンチマーク調査2017銀行では、16の要因別に満足度を聞いています。住信SBIネット銀行は、「ニーズを満たす商品のラインナップ」といった商品面、「サービスの対価に見合った合理的な手数料」といったコスト面、 「PCやスマホでの取引のしやすさ」、「手続きの簡単さ」といった利便性などで、幅広く業界トップクラスの満足度を得ていました。
また、「推奨者」の推奨理由(自由記述)としては、「金融サービスのすべてが受けられる」、「顧客の希望する商品がある」といった商品やサービス面の充実や、「金利が高い。特に外国通貨の金利がいい。また、振込手数料が無料になる特典がある」といった金利やコスト面の優位性について、コメントが多数見られました。
「お客さま目線で進化し続ける住信SBIネット銀行のサービスや商品に、ユーザーからの高い評価が見られる結果となりました。