2019/12/18

ソーシャルログイン

戦略的顧客データ管理にソーシャルログイン機能がもたらす4つのビジネスメリット(前編)

「ソーシャルログイン」とは、ユーザーのソーシャルメディアアカウントを使って企業のWebサイトやアプリへのユーザー登録・ログインを可能とする機能のことです。ユーザーには手軽に登録・ログイン手続きを完了できるメリットがあり、企業には登録率を改善できるうえにユーザーの同意の下でソーシャルメディアに登録したプロフィールデータなどを取得できるメリットがあります。
数年前から徐々に広まりつつありますが、その一方でソーシャルメディア利用率がそれほど高くなく、ログインしたいと考える利用者を阻害する可能性などから導入をためらう企業も多いようです。メリットやリスク管理などの観点から、戦略ツールとしてのソーシャルログイン機能について2回に分けて考えます。

日本におけるソーシャルメディアの利用動向

ソーシャルログイン機能の導入を検討する際によく指摘されるのは、「ソーシャルメディアの利用が特定層に偏っており、導入してもあまり利用されないのではないか」という点です。この点について、総務省情報通信政策研究所が2019年9月に公表した「平成30年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」では以下の考え方を示しています。

  • LINEの利用率は全年代で8割を超え、引き続き最も利用率が高くなっている。また、年代別で見ても、(YouTubeの利用率が最も高い)10代以外の各年代において最も利用率が高くなっている。
  • LINEに次いで利用率が高いのはYouTubeで、全年代で75.7%、Twitter37.3%、Instagram35.5%、Facebook32.8%がこれに続く。
  • Twitterは10代及び20代の若年層の利用率が66.7%、76.1%と高いが、今回調査では30代の利用率が31.7%→41.6%と大きな伸びを示すなど、10代を除く各年代で利用率が増加。
  • Instagram の利用率は全年代で、前回調査と比べて25.1%→35.5%と10ポイント以上増加し、全ての年代において前回調査よりも利用率が増加した。
  • Facebookの全年代の利用率は31.9%→32.8%と増加したものの、TwitterとInstagramの利用率の伸びには及ばなかった。ただし、Facebookの利用率は30代~60代において、引き続きLINE、YouTubeに次いで高くなっている。

この調査から、国内でもLINEをはじめとするソーシャルメディアサービスは、高年齢層を含む一般のインターネットユーザーにも広く普及していると考えてよいでしょう。特にLINE、YouTube、Twitter、Instagram、Facebookは、いずれも全年代での利用率が30%を超えています。これらのサービスのアカウントを利用したソーシャルログイン機能は、一般ユーザーに向けたものといえるのではないでしょうか。
現在の日本では、LINE、Google、Twitterのアカウントによるソーシャルログインが利用されるケースが多いと考えられます。

ビジネスメリット その1---新規登録・再ログインを増やす

ソーシャルログイン機能の普及が進んでいるグローバル市場では、既にそのビジネスメリットがいくつかの側面から整理されています。まず挙げられるのは、「ユーザーの新規登録・再ログインを増やす」側面です。
ソーシャルログイン機能により、ユーザーはメールアドレス・氏名・パスワードなどの文字を入力することなく、数回のクリックやタップだけで新規登録やログインの操作を完了できます。この簡便さは、「モバイルファースト」時代にアプリユーザーを離脱させないために重要なポイントとなります。
(参考: 「モバイルファースト」なオムニチャネルの顧客体験に求められる顧客ID統合(前編)(後編)

その効果は、既に多くの企業がケーススタディとして公表しています。例えば、フォーブス社では、自社サイトforbes.comへのソーシャルログイン機能を導入したことで、新規登録者数を倍増させしました。
さらに、新規登録者のうちソーシャルログイン機能を使って登録をしたユーザーが67%を占めるようになりました。そしてログインするユーザーの半数がソーシャルログイン機能を利用しているなど、顕著な効果があったことを公表しています。
オーストラリアで「GQ」や「Vogue」など複数メディアを運営するニュースライフメディア社も、運営する各メディアサイトにソーシャルログイン機能を導入ました。その結果、それまでに比べて登録率を8倍にも改善したとしています。
ユーザーの新規登録・再ログインの改善は、今後の顧客との関係強化を図る上で非常に重要な要素といえます。この点に大きな効果を発揮するソーシャルログイン機能の重要性は、今後いっそう増すでしょう。

ビジネスメリット その2---ユーザーの同意の下、最新かつ信頼できるデータを取得する

企業がソーシャルログイン機能を提供するメリットとして、「ユーザーの同意の下で、ユーザー自身がソーシャルメディアサービスに登録したプロフィールデータを取得できること」が挙げられます。
サイトやアプリに個人情報を登録してもらう際、企業はできるだけ多くのデータを登録するようユーザーに促しています。しかし、あまりに多くのデータを一度に登録させようとすると、ユーザーは煩わしさを覚えてしまいます。その結果ユーザーは、登録操作を止めてサイトから離脱してしまう、あるいは早く登録を終わらせようとして嘘のデータを登録するといった行為に走りがちです。
デジタルマーケティング戦略を推進する上で、信頼のおける大量のデータは全ての戦略の基礎となるものです。その半面「信頼のおける多くのデータを収集すること」と「ユーザーの利便性を損ねないこと」のバランスの見極めは非常に難しい課題となっています。

ソーシャルログイン機能は、この課題を解決する上でも非常に有効な手段といえるでしょう。ソーシャルログイン機能を通じて登録を受け付ける過程で、ユーザーはソーシャルメディア上に登録しているデータを企業が取得することに同意します。ユーザーの登録プロセスに負担を強いることなく、企業は多くのデータを取得できるのです。
特に個人がソーシャルメディアサービスに登録しているメールアドレスは、恒常的に使われている可能性が高いと推測できます。つまり、企業から送付するキャンペーンメールの到達率の向上も期待できるでしょう。
先に挙げたニュースライフメディア社は、ソーシャルログイン機能などから取得した新たなデータを基に、新たなユーザーセグメントを創り出し、広告などのパーソナライゼーションを改善しました。結果として、「広告収益率を25%改善した」と報告しています。

ここで特筆すべきは、多くの企業がFacebookアカウントを使った登録を促す戦略的な取り組みを進めていることです。Facebookは他のソーシャルメディアサービスに比べてソーシャルログイン利用時に提供するデータの種類が多岐にわたっているうえ、ユーザーが自発的にアップデートすることを期待できることから、ほかのサービスからの登録データに比べて長期的に信頼できる情報源と考えられているためと考えられます。
例えば、カナダ・オリンピックチームのオフィシャルサイト では、ユーザーが新規に登録しようとすると、まずFacebookアカウントによる登録を促すアイコンが他のソーシャルアカウントやメールアドレスによる登録アイコンに比べて大きく表示されます。これは、多くのデータを取得できるFacebookアカウントを使う登録を促すための戦略的な取り組みといえるでしょう。

一方で、ソーシャルログイン機能の利用に際して、懸念を抱くユーザーも少なくないようです。自身が登録した情報だけでなく、ソーシャルメディア上への書き込みなどを含めた全ての行動を知られてしまうというものです。実は、ソーシャルログインに際してどのような情報が企業に渡されるかは、SNSごとに異なっています。
例えばFacebookは、Facebookアカウントによるソーシャルログイン機能の利用に際して、企業が取得したいデータ項目について事前レビューを実施し、ユーザーの利益につながらないとみなされる情報の提供を防止しています。さらに実際の登録操作では、企業にFacebookから渡す情報についてユーザーが同意するステップを用意しています。ユーザーは表示された画面の内容から、受け渡してよい情報を判断できます。
ソーシャルログイン機能を提供する場合、企業は必要な情報と『なぜその情報が必要か』という理由を利用規約などで丁寧に説明しなくてはなりません。ユーザーから同意を取得するステップが必要であることを認識しておくべきでしょう。

後編では、残る2つのビジネスメリットについて解説します。

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