パーソルグループの特例子会社として障害者雇用に関する幅広い事業を展開するパーソルダイバース株式会社。同社が、2025年7月から9月にかけて実施した施策が、NTTコムオンラインの「統合IDソリューションアドバイザリー支援」でした。複数のサービスを統合IDで管理するため、まずは与件の整理や、計画づくりに着手。約2か月半で、方針やおおよそのプランが定まったと言います。プロジェクトの詳細について、事業戦略部 ゼネラルマネジャーの戸田幸裕氏にお話をお聞きしました。
― パーソルダイバース様の特徴や事業内容についてお教えください。
戸田氏 : 当社は、パーソルグループの特例子会社です。主に、グループ会社からバックオフィス業務などを受託して実行する「グループ障害者雇用事業」と、外部企業の障害者雇用を支援するサービスや障害のある個人の方の就転職を支援するサービスを提供する「対外支援事業」の、ふたつの事業を展開しています。
特徴は、障害のある社員の数が多いところです。現在、約3,100名の社員が在籍しており、うち約2,100名が障害のある社員という内訳になっています。日本国内でもトップクラスの在籍数で、非常に規模の大きな特例子会社と言ってよいのではないかと思っています。
業務の範囲も幅広く、例えば、「グループ障害者雇用事業」では、バックオフィス業務だけでなく、焼き菓子の製造やカフェの運営、養蚕業などの伝統産業を障害者の力で支援する取り組みも行っているんですよ。
「対外支援事業」のほうでは、障害者のための就職・転職支援サービス「dodaチャレンジ」、就労移行支援「ミラトレ」、先端IT領域に特化した就労移行支援「Neuro
Dive」をはじめとする複数のサービスを運営しています。
これらの事業やサービスに通底しているのが、パーソルグループのグループビジョンである「はたらいて、笑おう。」と、当社のミッションである「障害者雇用を成功させる。そして、その先へ。」の精神です。私たちは、仕事に就くことがゴールなのではなく、その先──、定着、活躍、成長が目指すべきところだと考えています。障害のある方も会社側もともにはたらいて笑えるような雇用関係が続くように、長く伴走し続けたいと思っています。
― 戸田様の業務内容についてお聞かせください。
戸田氏 : 私は対外支援事業の領域で、システムやコンプライアンス関連の企画業務、マーケティング業務などに携わっています。ほかに、新規事業のフィージビリティスタディを担当することも。対外事業を横断して、外部のお客様向けに提供するサービスを支えて強化するような取り組みを行っています。
今回のプロジェクトには、統合IDの実現性を検討するところから、調査、パートナーの選定まで、一貫してプロジェクトオーナーとして関わりました。
― どのような課題があって、複数のサービスを統合IDで紐づけることを考え始めたのでしょうか? 検討のきっかけや経緯についてお聞かせください。
戸田氏 : 冒頭で触れた通り、当社は、就職・転職支援サービス「dodaチャレンジ」、就労移行支援「ミラトレ」をはじめとする複数のサービスを運営しています。ただ、これらのサービスが、顧客情報をそれぞれで保有・個別の管理しており、バラバラに動いている状態でして……。ですから、ひとりの方が複数のサービスを利用していた場合に、それが同一人物だと認識する術がなかったのです。確認するには個別に連絡を取るしかなく、しかも個人情報保護などの観点から、直接、情報をお聞きしてはいけないことになっていまして、「あるURLに行って、そこで手続きをして、担当者にAとBのサービスを両方使っていますと伝えてください」とお願いするしかありませんでした。こうした煩雑な手続きをお願いすることは、お客様にとっても、我々スタッフ側にとっても、非常に大きな負担になっています。
そもそも、AというサービスとBというサービスを使っていることが把握できていないということが失礼と言いますか……。例えば「ミラトレ」を使って就労した方が、数年後に新しいステージで活躍したいと思って「dodaチャレンジ」の利用を開始した場合などに、我々側は「はじめまして」と挨拶することになってしまうんですよね。ユーザーからすると、「えっ、数年前にあんなに利用したのに」となるわけで、これは体験として非常によろしくないなとずっと思っていました。
なにより問題なのが、ひとりの方の職業人生を、継続して伴走支援できていないところです。就労移行支援、転職支援、スキルアップなどさまざまなサービスがあるにも関わらず、人生の時系列に沿って必要なときに必要なサービスを提供するような動きができていませんでした。こうした課題があって、複数のサービスを統合IDで管理したいと考えるようになったのです。
― NTTコムオンラインのアドバイザリーサービスを導入された経緯についてお聞かせください
戸田氏 : 課題を解決するため、最初の頃は、自力でIDの統合をしようと考えていました。まずはエンジニアやコンプライアンス関連の知見のあるグループ会社の担当者に相談して回り、それを踏まえて、社内の各事業に携わるメンバーを組織。どのような順番でなにをすればよいか整理しようとしたのですが……。やってみると、あまりに複雑で論点が多く、なかなか進まなかったのです。
特に、私たちは、障害者の方に関するセンシティブな個人情報を預かる会社ですから。少しでも手順ややり方を間違えると、規約違反であったり、重大な不備が発生する可能性をはらんでいました。
半年ほど試行錯誤した結果、「これを自分たちだけで完璧にやり切るのは、やっぱり無理だよね」と。リスクが大きすぎるということで、外部の専門家の力を借りようということになった次第です。
そして、ちょうどそんなときに、メンバーのひとりが見つけてきたのが、NTTコムオンラインの統合IDに関するセミナー動画でした。「とにかくこれを見てくれ」と言われ、1本60分~90分の動画4本を渡されて、当初は「重いな~」と思いながら見始めたのですが(笑)……。この動画に、まさに我々の悩みやその解決法が詰まっていたんですよね。IDを統合する際に問題になりがちなことや、難しさ、事例などが紹介されていて、非常に参考になりました。この動画を見て、NTTコムオンラインに声を掛けさせていただきました。
― 他社もご検討はされましたか? 差支えない範囲で、当時のご検討状況についてお聞かせください。
戸田氏 : 御社を含めて4社ほど検討しました。1社はシステムやデータベースの構築に強みのあるベンダーで、もう1社はマーケティングに強みがある広告代理店。他に、コンサルティング会社にも問い合わせをしました。
NTTコムオンラインに決めたのは、質の高いアドバイザリー業務と、その先のソリューションがしっかりとあったから。アドバイスやコンサルティングには強いけど実装には弱いという会社ですとか、その逆の会社もあったのですが、NTTコムオンラインはバランスがよく、一気通貫で、どちらもしっかりお任せできると感じました。
あとは実績ですね。誰もが知るような大手企業さんの実績をたくさんお持ちで、「これだけの規模の企業で統合IDを実現してきたということは、相当な知見をお持ちなのだろう」と思いました。一方で、大規模な企業以外の実績もしっかりお持ちでいらっしゃった。最初は「ウチのようなグループ子会社の案件には対応していただけないのではないか」と思っていたのですが、中小人材派遣会社でのご経験もあり、安心しました。
― 2025年7月~9月にかけて、約2か月半で、統合IDを実現する際の計画や論点の整理を進められたとのこと。具体的にどのように進めて行かれたのかお聞かせください。
戸田氏 : ほぼ毎週定例会を行い、テーマを決め、議論して、出てきた課題やタスクをNTTコムオンラインと当社で調査したり整理したりして、次の定例会で確認する、ということをしていました。
一緒にやってみて有難かったのが、見通しが明確なところ。全8回のテーマはこれで、今日議論するのはこの内容、いついつまでにこれをやって、次のステップに進む、といった流れを最初からしっかり提示してくださり、とても安心感がありました。我々がやることも明確で、説明も具体的でわかりやすく、ほとんど迷うことなく進められました。
また、営業やアドバイザーのレスポンスがとにかく早いところにも好感を持ちました。なにか質問を投げかけると、すぐに、整理された適切なメールが返ってくるのです。待たされることがまったくなく、気持ちよくプロジェクトを進められました。
こういうやり取りの積み重ねがあったからか、毎回の定例会で出てくる提案の質も、素晴らしく高かったですね。我々がなかなか言語化できずに困っていたことを言葉にしてくださり、「そうそう、そういうことです!」「それがやりたかったんです!」と膝を打つようなことばかりで。こちらの思いや考えをよく汲んで、しっくりくる、腹落ちするような形にしてくださいました。
ただ、毎週1~2時間の会議をして、そのあと持ち帰りの課題を確認したり整理するのは大変でした。複数のサービスをひとつにしようという取り組みなので、なにかを確認しようとすると、多くの担当者を巻き込まなければならなくなってしまう。そうやっていろいろ調べて行った結果、妙案が出てこないということも多々ありました。答えがわからないなかで模索を続けていかなければならず、そういう意味では難しいプロジェクトだったなと思います。
― 現在は、統合IDを進める際の方針や、与件、論点、計画などが一通り整理できた状態だとお聞きしています。改めての評価と、今後の展望についてお聞かせください。
戸田氏 : IDの統合化や共通化というのは、非常に広い概念です。どこまでやるか、どう考えるかだけでも議論が紛糾しますし、なにを論点にしてどう進めるかという道筋についても簡単には決まりません。そんななか、NTTコムオンラインが、高度な知見と経験をもってして交通整理をしてくださいました。おかげで形になり、具体的な方針や計画が見えるところまできて、とても満足しています。
今回のプロジェクトは、とても我々だけでは成し得ないものだったと思っています。いったんは計画を作るということで完了となっていますが、どこかで必ず実装する必要が出てくるはず。その際にも、お力添えをいただけると嬉しいですね。
また、統合ID以外の部分でもお世話になりたいと思っています。既にマーケティングの領域においてもご支援いただくことになったのですが、より幅広い領域で、伴走いただけると有難いなと思っております。