2019/11/26
プライバシー・法規制
前編では、これまでのデジタルマーケティングテクノロジーが大きく依存してきたCookieを取り巻く環境の変化について考えました。では、Cookieに代わる新たなアプローチとはどのようなものであるべきでしょうか。
ユーザーがCookieによる自身にひもづく行動データの収集と、そのようなデータに基づいて配信される広告への嫌悪感を高めていることで、その効果にも疑問が持たれるようになっています。一方で、これまでの連載でもみてきたように、企業が顧客に素晴らしい「体験」を提供するには、個々の顧客のニーズ・関心にパーソナライズしたコンテンツやメッセージを届けることが欠かせない時代となっています。つまり企業は、Cookieに代わる何らかの手法で顧客に関するデータを集める必要があります。
Webサイトやモバイルアプリを通じて企業が消費者とダイレクトなつながれる今、「企業が顧客からの信頼を得て、直接に顧客からデータを収集する」アプローチが改めて注目を集めています。その有効性について、三つの観点からご紹介します。
企業とのオープンかつ透明なコミュニケーションを求める今日の消費者に対し、Cookieに依存せずにデータを提供してもらう手法の一つとして「ソーシャルシンク」機能の採用が広がっています。ソーシャルシンク機能とは、ソーシャルメディアアカウントに蓄積されたデータを活用する機能で、ユーザーが自身のソーシャルメディアアカウントを使って企業のサービスに登録・ログインする「ソーシャルログイン」の際に、消費者が企業に渡してもよいデータを自身で選択するものです。
「ソーシャルシンク」機能を使うと、企業としても消費者から収集したい必要なデータだけを前もって示すことによって、不必要なデータを集めないことも可能です。結果的に、ブランドへの長期的ロイヤルティにもつながる、消費者からの信頼を勝ち取れると期待されています。
新規のユーザー登録やソーシャルログインに際して、ユーザーに自身の情報を提供するオプションを提示することで、ユーザーから許諾に基づいた価値あるアイデンティティデータにアクセスできるようになります。ソーシャルログインを通じて、誕生日・メールアドレス・好きなテレビ番組・場所へのチェックインなど、「ファーストパーティデータ」にアクセスできるようになるのです。ファーストパーティデータとはユーザーから直接に許諾を得て収集したデータであり、ユーザーでも自社でもない第三者(サードパーティ)が提供する「サードパーティデータ」とは区別して考えられます。
多くのユーザーがCookieを削除している一方、Facebookなどソーシャルメディアのアカウントは何年も使い続け、データをアップデートしています。例えば、ソーシャルシンク機能で得られるデータは、マーケターにとって最新かつ最もユーザーの人物像に近いデータとなることが期待できます。
ユーザーに通常のログインやソーシャルログインを通じてWebサイトに登録するオプションを与えることで、マーケターはチャネルやデバイスに関係なくユーザーの全行動を、一つのアイデンティティに効果的にひもづけられます。そのうえで、より包括的で正確なプロフィールデータを使った、ユーザーの好みにより近いシームレスなオムニチャネル体験を提供できるようになるのです。
ただしマーケターは、包括的なユーザープロフィールデータを手に入れるために、デスクトップとモバイルの双方をひもづけられる、ユニークなカスタマーアイデンティティを構築する必要があります。
そのためには、複数のチャネルから取得される、メールアドレスや位置情報などの構造データと、好きなテレビ番組やスポーツジャンルといった非構造データからなる大量のデータを統合したデータベースの構築が不可欠になります。この場合、データの取得だけでなく、メールやSMSなど複数の顧客接点で、データの効果的な活用のために、運用中のマーケティングツールと連携しやすいプラットフォームを選択すべきです。
企業はユーザーのプライバシー意識の高まりとオムニチャネルでのパーソナライゼーションの必要性という、一見矛盾しているかにみえる課題を解決する必要に迫られています。この実現ために、システムには以下のような変革が求められるでしょう。
ネットユーザーのプライバシー意識の高まりと技術の進化、さらには、GDPRに代表されるプライバシー規制の新たな潮流によって、Cookieに代表される、サードパーティデータのみに基づくこれまでのノウハウは過去のものとなりつつあります。ユーザーが同意したうえで提供するデータは匿名だったサイト訪問者の実像を理解するうえで不可欠になっています。企業には、Cookieだけに頼らず、カスタマーリレーションシップのあるべき本来の姿に移行する準備が求められているといえます。
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