2019/06/19

顧客ID統合

「モバイルファースト」なオムニチャネルの顧客体験に求められる顧客ID統合(後編)

前編では、「モバイルファースト」時代のオムニチャネル顧客体験に求められる要素と、それらを実現するうえでの課題として以下が挙げられることを解説しました。

  • モバイルサイト・アプリでのコンテンツ閲覧から購買に至るカスタマー・ジャーニーの最適化
  • チャネルごとにばらばらに保管されている顧客データの統合管理=「シングル・カスタマー・ビュー」の構築
  • 一元管理した顧客データを社内各部署が導入したCRMやMAなど顧客データを必要とするシステムと接続し、シームレスかつタイムリーに必要なデータを利用できるデータ連携

SAP Customer Data Cloudは、これらの課題を解決する機能を提供できるクラウド型の「顧客ID&アクセス管理」ソリューションとして国内外で豊富な実績を有しています。

モバイルのカスタマー・ジャーニーの最適化を実現する登録・ログイン機能

例えば、EC機能を提供するサイトの場合、購買プロセスにおいて、支払いや配送に関する情報を得るために登録・ログイン機能が必要になりますが、このプロセスにおいてユーザーに負担を感じさせない顧客体験を設計する必要があります。IDやパスワードを入力させることは、特にスマートフォンでの操作においてはユーザーにとって大きな負担となりかねません。
ユーザーがLINEやYahoo! Japan, Facebookなどで利用しているアカウントを使ってサイトやアプリに登録・ログインできるようにする「ソーシャルログイン」機能は、簡単なタップ操作のみで登録・ログインを完了できるという点において有力なソリューションとなることが期待できます。過去の導入事例では、ソーシャルログイン機能の導入により、サイトへの登録・ログイン数が大幅に改善したという成果が数多く報告されています。
(関連記事:導入事例

また、複数のサイトに共通のID・パスワードでログインできる「シングルサインオン」機能も有効なソリューションとなるでしょう。
(関連記事:シングルサインオン(SSO)とは?- BtoCビジネスにおける顧客データ管理システムの観点から解説 -

「オンラインでの購買の約1/3が、パスワードを思い出せないためにチェックアウト時点で放棄されている」とする調査結果もあるなど、パスワードを用いない登録・ログインオプションを提供するうえでソーシャルログイン機能やシングルサインオン機能は有効なソリューションとなるでしょう。
(関連記事:McClatchy: Forgot your password? You have too many and stores are losing business over it

SAP Customer Data Cloud は、「シングルサインオン」や「ソーシャルログイン」などの機能を具備する、クラウド型の登録・ログイン機能 "RaaS" (Registration as a Service) を提供しています。グローバル27以上のSNS/IDプロバイダに対応済みで、LINEやYahoo! Japan, Facebookなどの主要SNSはもちろん、WeChatやVkontakteなど中国やロシア固有のSNSにも連携が可能です。RaaSには、パスワード強度などに関するポリシーを設定するセキュリティ機能も備わっており、ポリシーの変更をリアルタイムで実装したデジタルチャネルに反映させることが出来ます。利用規約やプライバシーポリシーなどに関する「同意」を収集・管理することも可能です。

「シングル・カスタマー・ビュー」の構築

デジタル化やモバイル化の急速な進展に伴い、企業が提供するサイトやアプリの数も増加しています。しかし、企業内の各部門が独自にサイトやアプリを開発し、それぞれで顧客IDシステムや登録ユーザーのデータを格納するデータベースを構築すると大きな問題が発生します。同じ企業が提供しているにもかかわらず、新しいサイトやアプリを使おうとするたびに、ユーザーはアカウント登録や属性など個人データの入力を何度も強いられる事態を招くからです。
その結果、同じユーザーであるにもかかわらず、サイトやアプリごとに複数のアカウントが存在していたり、さらにアカウントによって登録されたデータの内容が異なっていたりすることになり、企業全体として一人のユーザーに対する包括的で正確なデータを構築できていないという課題に直面するでしょう。これが、複数のサイトやアプリ、さらには店舗など企業とユーザーの接点であるタッチポイントをつなげて企業とユーザーの長期的な関係を構築・強化していく「カスタマージャーニー」をデザインする際の大きな障壁となるのです。
近年、部門ごとにユーザーデータを収集・保管している「データのサイロ化」状態を見直して、企業全体でユーザーデータを収集・保管し必要に応じて各部門がデータを使用できる「シングル・カスタマー・ビュー」を構築する動きが急速に広まりつつあります。

SAP Customer Data Cloudは、前述のRaaSを経由して認証した複数のチャネルから入ってくるユーザーのデータを、個々のチャネルレベルではなく、チャネルをまたがって一人のユーザーにひも付けてクラウド側で保管・管理することにより、「シングル・カスタマー・ビュー」を構築することが出来ます。全チャネルで共通のデータはもちろん、あるチャネルが必要とするデータのみを管理することも可能ですし、構造化データのみならず非構造化データも管理することが出来ます。SAP Customer Data Cloud内に構築された「シングル・カスタマー・ビュー」は、企業にとって信頼の置ける顧客データソースとして利用することが出来ます。

CRMやMAなど顧客データを利用するシステムとのデータ連携

システム間で実際に顧客データを統合することの難しさは、企業がデジタル戦略を進めるほど顕在化します。各事業部門・事業部ごとにバラバラの顧客登録フォームやデータテーブルの存在していたり、近年急速に技術革新が進む新CRMシステムやマーケティング・オートメーションシステムの導入を決めたにもかかわらず基幹システムとのデータ連携に不具合が見つかりデータドリブンの施策を迅速に実行できないなどの問題が起きています。このような課題を解決するために、企業の基幹データベース内での名寄せやデータ統合、定期的なデータクレンジング、さらにはBI(Business Intelligence)ツールによるデータのひも付けに着手する企業が増えています。
一方で、より抜本的な対策を求めて、上記で構築した「シングル・カスタマー・ビュー」を活用し、これを管理する顧客データベースとCRMやMAなどを連携させるアークテクチャを構築する企業が増えています。

SAP Customer Data Cloudは、グローバルで活用される多くのマーケティングプラットフォームとのデータ連携機能を備えています。それ以外にも、ETL機能などを通じて従来より使われている既存の広告・メール・SMS・CRM等の様々なシステムとのデータ連携を構築することも可能です。これらのシステムと、SAP Customer Data Cloud内に構築された「シングル・カスタマー・ビュー」とのデータ連携を通じて、データドリブンなデジタルマーケティング戦略を迅速に展開することが可能となります。

「モバイルファースト」なオムニチャネルの顧客体験に求められる顧客ID統合

顧客は自身のライフステージや、それに伴う興味関心、そしてWeb行動までを日々変化させています。例えば、利用デバイスが変化することで、これまでデスクトップPCでメールを閲覧していた顧客が、ある日を境にスマートフォンサイトに直接アクセスして商品の検討や購買をするようになるということも起こり得ます。企業側はこうした顧客の動きを的確に把握し対応できなければなりません。上の例でいえば、急にPCでメールを開封してくれなくなった顧客を離脱と判断して離脱防止プログラムに基づいた行動を取ってしまうのではなく、この顧客に対して本当に必要なスマートフォンでの顧客体験の向上を検討するべきなのです。そして、これまでPCサイトで利用していたIDと同じIDでモバイルサイトにログインし、PCサイトで登録済みの自身のデータを活用しつつ、必要なデータを追加できるようにすることが必要です。

顧客が置かれた状況や環境の変化をしっかり捉え、常に良質な顧客体験を提供できる仕組みを整備することが、「モバイルファースト」なオムニチャネル時代の競争に勝ち残るために求められています。

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