2019/10/18

顧客ID統合

顧客IDの課題解決:顧客ID統合の2つのアプローチ

複数のサービス/事業においてバラバラに管理されていた顧客IDを統合することによって、顧客の利便性を高めつつ顧客データを統合して質の高いデータとして活用することができます。

顧客ID統合の2つのアプローチとは?

顧客IDの統合には大きく2つのアプローチがあります。
1つは、「企業による一括名寄せ」です。既存の顧客IDを企業側が名寄せして統合し、新たなIDとして移行するアプローチです。ID統合というと、多くの方はこちらを想定されているかと思います。
もう1つは、「ユーザによる随時名寄せ」です。既存の顧客IDの運用は維持しつつ、新しく統合IDを用意して、エンドユーザが自分で名寄せをします。(図1)

図1:ID統合の2つのアプローチ

図1:ID統合の2つのアプローチ

ここではその2つのアプローチについて、主な特徴とメリット・デメリットについて解説します。

1. 企業による一括名寄せ

既存の顧客IDを企業側が名寄せして統合し、新たなIDとして移行するアプローチです。ID統合というと、多くの方はこちらを想定されているかと思います。この方式のメリットは、大きく2つあります。名寄せ可能な範囲でIDが統合されるので、統合データをすぐに得ることができます。また、ユーザがID統合について余計な手間をかける必要がありません。デメリットや注意点としては、名寄せの作業を行うためのコストが発生することと、非アクティブな(今後のログインが見込めないような顧客)のデータも移行しなくてはなりません。

2. ユーザによる随時名寄せ

既存サービスの顧客IDを維持しつつ、統合のために新しいIDを立ち上げます。新規ユーザは原則この新規IDの登録のみを受け付け、既存ID保持者に対しては、新IDの登録と紐付けを促します。この方法のメリットは、まず名寄せの作業が不要であることと、非アクティブなユーザを新ID体系に移行する必要が無いことです。デメリット・注意点としては、既存の顧客IDを維持する必要があること、統合される顧客IDの割合がかなり低くなる可能性があることと、そして統合されたデータが得られるまでに一定の時間を必要とすることです。

各アプローチのメリット、デメリットを表にまとめます。

表1:各アプローチの特徴

1.企業による一括名寄せ 2.ユーザによる随時名寄せ
部門間調整のコスト 高い 低い
統合データの母数 多い 少ない
既存IDの廃止 可能 不可
新IDのリリースから統合顧客データ獲得までの時間 すぐ 時間が必要
IDのクレンジング 不可 可能

どちらの方法を選ぶべきか?

表1を見ると、一見「企業による事前名寄せ」のほうが理想的でよさそうにも見えますが、どちらが自社にとって最適であるかは、状況によって異なります。例えば、多くのサービスを跨がったIDがある場合、それぞれの事業部門と調整を進めなくてはなりません。それは事業側の意志決定者だけではなく、システム担当者も巻き込んだ形となります。全社的なトップダウンプロジェクトとしてそれを進めるケースもありますが、ID統合のプロジェクトチームの権限範囲等によっては、この調整が中々進まずにプロジェクトが頓挫してしまう可能性もあります。一方、ユーザによる随時名寄せの方式であれば、各サービスとの調整は新IDとの紐付けの方法だけに絞られます。ID統合の目的を全ユーザではなく、アクティブなユーザにフォーカスできるのであれば、リーズナブルな方法となります。
また、リアル店舗での会員という資産がある場合に、会員証をアプリ化して新IDとして管理し、これにオンラインのIDを紐付けてもらうというアプローチも可能になります。このアプローチで有名なのが、無印良品のMUJI Passportです。MUJI PassportアプリをインストールするとIDが自動的に発行され、そこにECサイトのIDやクレジットカード、SNSのIDを紐付けることが出来るようになっています。このプロジェクトの担当者の方によれば、実際に紐付け(名寄せ)をしてくれる会員は2~3割程度だったそうですが、施策に利用するには十分なデータが得られたという評価をしています。(出典1)
また、統合対象のIDを持つブランドが多数に及ぶ場合、一度に統合できず、フェーズを分けて段階的に統合を行うケースもあります。そのロードマップも加味してどのようなアプローチで統合を進めるのかを決める必要があります。

出典1:奥谷孝司 (著), 岩井琢磨 (著)「世界最先端のマーケティング 顧客とつながる企業のチャネルシフト戦略」日経BP社

ID統合のグランドデザインが重要

弊社の事例においても、顧客IDの統合のタイミングでSAP Customer Data Cloudの導入をされているお客様が何件かありますが、プロジェクトの進行に大きく影響するのが、ID統合を何のために行い、どのようなゴール像を想定するのか、というグランドデザインです。このグランドデザインによって、今回説明したどちらのアプローチでIDを統合するのかが決まってきますし、さらに様々なIDに関する仕様が影響を受けます。逆に言うと、このグランドデザインが曖昧であったり、確定せずにブレたりするとプロジェクトが頓挫したり、手戻りをすることになります。顧客ID統合を検討する企業に方は、是非、この点をご留意いただければと思います。

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