2020/01/24

市場動向

顧客IDの課題解決: マーケティングのための顧客ID

弊社のお客様が顧客IDの認証基盤を刷新する背景として、「IDのあり方の見直し」を検討されている企業が少なくありません。その観点の1つが、「誰に顧客IDを発行するのか?」という命題です。
Webサービスアプリにおける顧客ID(ログインID)は、下記の例のように、基本的にはサービスの購入をしているユーザの認証、識別の為に用いられます。

  • サービスに必要なユーザの情報を保存しておくため(例:ECにおける住所や買い物かご等)
  • 契約状況に応じたサービス提供内容の判断(例: 動画コンテンツサイトにおける、「標準会員」「プレミアム会員」等)

これに対して、サービス購入前のユーザに対して、企業が関係を構築・維持するためにIDを活用するケースがあります。このIDは、将来サービスを購入してもらうためのIDなので、「マーケティング用ID」と呼ぶことにします。

マーケティング用IDの具体例を挙げてみます。

  • ケース1:お試し会員
    動画コンテンツのお試し会員登録で一ヶ月は無料、等
  • ケース2:保険会社の見積サービス
    見積結果を保存しておくために,メールアドレスとパスワードを登録
  • ケース3:飲料メーカによるキャンペーンサイト
    ペットボトルに付いているシールにコードが書かれており、それを登録すると1ポイント→10ポイントでプレゼント応募が可能。ポイントを覚えておくためにログインIDが必要)

それぞれにおける目的とメリットを簡単に整理いたします。

ケース1:お試し会員

代表的なユースケースは、動画や音楽系コンテンツのサブスクリプションサービスです。
「お試し会員」の場合は、まずそのサービスを使ってもらって、メリットを理解してもらうことが狙いであり、ユーザもどんな動画や音楽コンテンツが楽しめるのか、品質などを確認できますので、win-winといえます。
お試し期間以降は自動的に本登録となる設定で、お試し会員であっても、クレジットカードを登録する必要があるケースもあります。

ケース2:保険会社の見積サービス

保険会社のWebサイトで即座に見積をすることができる場合があります。
これをその場限りとせず、後日サイトを訪問しても保存しておくことができるサイトもあります。
これを仮に「My見積」とすると、このサービスを利用するためにはメールアドレスとパスワードの設定が必要になる、という立て付けです。
このサービスを提供することにより、見積を保存=保険購入度合いが高い、というユーザをメールアドレス付きで獲得することができます。さらに、見積を再確認したタイミングをWeb行動から把握して、即座にオファーするということが可能になります。最終的な失注ケースであっても、損害保険のような年次更新であれば、マーケティングオートメーション(MA)を活用して1年後に再度ご案内をするということも可能になります。

ケース3:飲料メーカによるキャンペーンサイト

従来プレゼントキャンペーンは、商品のマス認知が目的であって、個人情報の利用目的からも、「キャンペーンのためにユーザを集めては捨てる」という作業を繰り返していました。デジタルマーケティングツールの成熟と普及によって、ユーザを会員として囲い、例えるなら「いけす」といえる場所を用意し、キャンペーンを打つ際に集客のコストを削減しつつ、顧客にとっても、プレゼント応募が楽になる、というメリットがあります。

上記で紹介したようなケースは、マーケティングのIDを獲得して、「本サービス/購入」に繋げることがデザインされています。ユーザ=「ニーズが健在化している見込み客」といえます。これに対して、見込み客とも言えない対象のユーザと繋がろうとするケースも出てくるようになりました。

ケース4: KUVO(Pioneer DJ)

https://kuvo.com/
Pioneer DJ(株)はDJ機器のグローバル・トップブランドですが、このKUVOというサイトは、「クラバーのためのSNS」となっています。このサービスは、DJ機器販売には強く紐付いておらず、「DJ文化を広めていく」という同社の使命を推進するためのものと言えます。多くのユーザは見込み客ではないかもしれませんが、このサイトには、プレイヤーであるDJや、DJに憧れてエントリーモデルDJ機器に興味をもっているユーザもいる可能性があります。Pioneer DJでは、購入者向けのPCソフトダウンロードサイトやサポートサイトの顧客IDを統合しているため、ロイヤルカスタマーとKUVOの利用状況の関連などを分析することが出来るようになっています。

ケース5: SOMPO Park(損保ジャパン日本興亜)

https://park.sjnk.co.jp/
保険大手によるポイントサイトですが、実際に会員登録をして利用してみた限りでは、保険サービスに全く関連性を持たせていないサイトなっています。損害保険サービスは購入後、事故や災害が発生しなければ、顧客接点が発生しません。これを克服するために、「日常的にユーザ(購入前/後に限らず)と繋がる」ためのWebサービスと捉えることができます。

これまでご紹介したケース1~5に対して、対象ユーザをどこに設定しているかを図1に整理をいたします。

図1:各サービスと顧客ID発行の対象者の範囲

図1:各サービスと顧客ID発行の対象者の範囲

ユーザの横軸に、態度変容を記載しています。一番左の「実サービス関連性低い」という状態は、ブランドの認知しておらず、かつ保険サービスとも関連が低いという前提です。損保ジャパン日本興亜であれば、全く知らないということはないかもしれませんが、位置づけとしては、この状態のユーザとのつながりを得るために顧客IDを発行しているといえます。2つめの「関連性高い ブランド未認知」は、クラブには行くがPioneer DJを認知していないユーザを囲っていくという位置づけになります。

DX(デジタルトランスフォーメーション)を各社が検討・推進していく課程で、顧客IDをどう位置づけるかというテーマは非常に重要であり戦略の成功を左右するといっても過言ではありません。本コラムがその検討に少しでもお役に立てれば幸いです。

顧客IDの統合や基盤の刷新において、ライトな会員制度(ソーシャルログインや、携帯電話番号で簡単にメンバー登録してもらい、将来はパスワードつきの正規メンバーに移行する、等)をご検討いただいている方は、下記のリンクからお気軽にお問い合わせください。

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