株式会社ヌーラボ

143万ユーザーを9名のCSで支えるための「武器」。
NulabがMixpanelで実現した“組織単位”の顧客分析。

最終更新日 2026年1月20日
株式会社ヌーラボ 様

プロジェクト・タスク管理ツール「Backlog」やオンラインホワイトボードツール「Cacoo」など、チームのコラボレーションを促進するサービスをグローバルに展開する株式会社ヌーラボ(以下、Nulab)。 2015年からMixpanelを利用している同社ですが、BtoB SaaS特有の課題である「組織(企業)単位での活用状況」の可視化に長年悩まされていました。

今回は、ビジネスグロース部 カスタマーサクセス(CS)ユニットの原氏と実装に携わった金氏に、Mixpanelの「Group Analytics(グループアナリティクス)」導入の経緯から、CS活動における具体的な変化、そしてセールス/CS/開発組織を跨いだデータ活用文化について詳しくお話を伺いました。

143万人の行動ログと9名のCSチーム

- まずは、原様の現在の役割と、NulabにおけるCSチームのミッションについて教えてください。

原氏:私は現在、ビジネスグロース部という部署の中のカスタマーサクセス(CS)ユニットに所属しています。ビジネスグロース部は顧客価値の最大化を通じた事業成長をミッションとしています。その中で私たちCSチームは、導入支援(オンボーディング)から活用定着、そしてエクスパンションに至るまで、お客様の成功(サクセス)に伴走し、長期的なパートナーシップを築くプロセス全体を担っています。

現在、CSチームのメンバーは約9名です。それに対して、私たちのサービスを利用してくださっているユーザー数は、アカウント単位で見ると1,5万、ユニークユーザー単位では143万人以上(※)のアカウント登録があります。

※2025年9月末時点の有料契約内でBacklogを使用している利用者数の合計(契約者に招待されて同一スペースで使用しているユーザーを含む)

- 9名で143万ユーザーを支えているのですか? それは驚異的な数字ですね。

原氏:そうなんです。これだけの規模になると、すべてのお客様に対して人が直接対応する「ヒューマンタッチ」を行うのは物理的に不可能です。 ですから、デジタルな手段でアプローチすべきタイミングと、例外的に人が直接介入してサポートするタイミングを明確に分け、「デジタルタッチ」と「ヒューマンタッチ」を適切に使い分けることが必須条件でした。

その振り分けを行うためのフィルタリングとして、「ユーザーの行動ログ」は非常に重要な要素です。Mixpanel自体は2015年頃から導入していて、最初はトライアルユーザーが「プロジェクトを作成したか」「課題を作ったか」といった基本的なログを見て、メール配信などに活用していました。

「ユーザー」は見えても、「組織」が見えないジレンマ

- 長くMixpanelを利用されていた中で、どのような課題感から今回の「Group Analytics」導入に至ったのでしょうか?

原氏: BacklogのようなBtoB製品の特性上、「個人の行動」だけを見ていても実態がつかめないという点が最大の課題でした。 例えば、トライアルを開始したAさんのログだけを追って支援しても、実はAさんはアカウントを作っただけで、同じ組織のBさんやCさんがメインでプロジェクトを進めている場合もあります。 チームで使うツールである以上、その組織全体、私たちが「スペース」と呼んでいる単位での動きを見ないと、本当の意味での支援ができないんです。

- 確かに、個人がアクティブでも、組織として活用されていなければ解約リスクがありますね。

原氏:おっしゃる通りです。以前のMixpanelの仕様(ユーザー単位の分析)では、「このスペース(組織)はアクティブなのか?」を知りたくても、スペースに所属するユーザー一人ひとりのログを個別に見て、別途ワークシートを作って統合するしかありませんでした。

「ユーザー招待をトライアル直後にしてくれた組織は契約に至りやすい」といった肌感覚はあっても、それをデータとして「塊(セグメント)」で捉え、各セグメントごとに適切なタイミングでフォローすることが難しかったのです。

結局、詳細なデータを見たいときは、社内の基幹システムやサーバーの生データを見に行く必要があり、CSチームの手元でスピーディーに分析できないというジレンマがありました。

「データの棚卸し」で予算を捻出、導入への壁を突破

- Group Analyticsの導入にあたって、障壁などはありましたか?

原氏: 実は、2023年の夏頃に導入を検討し始めた際、2つの問題がありました。1つは、長年利用する中で取得するイベントデータが肥大化し、「契約中のイベント上限がギリギリになっている」というコスト面の課題でした。もう1つは社内でイベントやプロパティの実装を担当できるメンバーがすぐにはアサインできない状況であったことです。

- 新しいオプションを追加するには、コストの問題は避けて通れませんね。どのように解決されたのですか?

原氏:まず取り組んだのが、「イベントデータの棚卸し」です。社内のエンジニアや関係各所と協力して、取得しているすべてのイベントに対して現在も必要なのか精査しました。
その結果、不要なイベントを削減することで、コストを約20%圧縮することができたのです。この削減分を原資にすることで、会社からもスムーズに承認を得て、Group Analyticsオプション予算を確保することができました。

また、イベントの棚卸しを進める中で、開発チームに対してビジネスグロース部が目指している今後の活用方針などを相談し、Backlogの開発チームでエンジニアとして働いていた金とも連携を深めることができたタイミングで、彼がビジネスグロース部に異動することも決まったため、やっとGroup Analyticsオプションを導入する下地ができました。

- 素晴らしいですね。部署を跨いでコスト削減を進めつつ、プロダクトを熟知している人材の社内異動を実現したわけですね。

原氏:導入時には、エンジニアの協力により、想定よりも大分クイックにCSが見たい指標が正しく取れるか検証ができました。 特に重視したのは、「CSやセールスが何か施策を打った時に、お客様の行動変容を追えるようにすること」です。例えば、「ガントチャート機能が便利になりました」というメールを送った後に、実際にその組織でガントチャートの利用が増えたのかどうか。そういった「変化」を組織単位で可視化することをゴールに設定しました。

「商談前の景色」が変わった。CS現場での活用実態

- 実際にGroup Analyticsを導入されて、CSチームの業務はどのように変わりましたか?

原氏:最も大きな変化は、何かしらの施策を検討する際、仮説を立てる精度が上がったことです。例えば、「ヘルススコア」という各契約組織の健康診断のような取り組みを検討する際、組織に所属するアカウントの何%がアクティブで、課題の更新がどの程度されていれば「健康」とし、どのラインを下回っていたら「不健康」とするのか、といった仮説を立てる際にもMixpanelのデータを利用してより現実的な「あたり」をつけることができるようになりました。

その他にも、商談や打ち合わせの前に「お客様の活用状態」が一目で分かるようになったことも大きな変化です。 私たちはMixpanel上で「Company Activity」というレポートを作成し、スペースごとの主要なアクション(プロジェクト作成、課題更新、ドキュメント作成など)を時系列で可視化しています。

これを見ると、例えば「商談前はドキュメント機能を全く使っていなかった」という事実が分かります。そこで商談時にその機能をご提案し、その後のログを見て「あ、提案後にアクティビティが0から10に増えている! 使ってくれているな」といった効果検証ができるようになりました。

画面例:実際のMixpanel 分析レポート

- 提案の効果が数値で見えると、CSメンバーのモチベーションにも繋がりますね。

原氏:まさにそうです。これまでは「提案したけど、使ってくれているのかな?」と不安に思うこともありましたが、今では「商談の成果があった」と手応えを感じられます。 逆に、「このスペースはまだここが使えていないから、次の打ち合わせで提案してみよう」という仮説立案にも役立っています。以前のようにユーザー個別のログをかき集める必要がなくなり、組織単位の動きをサッと把握できるようになったのは本当に大きいです。

リテンション分析で見えた「トライアルの壁」

- 他にはどのような分析をされていますか?

原氏:金が作成したリテンションレポートも頻繁に見ています。これは、トライアルを開始した組織が、週を追うごとにどれくらいアクティブな状態を維持しているかを可視化したものです。

金氏:トライアル開始からの経過週ごとのアクティブ率を可視化することで、どこでユーザーが離脱しているかが明確になります。例えば、「4週目までは維持できているが、5週目でガクッと落ちている」といった傾向が一目で分かります。

原氏:このレポートのおかげで、施策の振り返りも正確になりました。 以前、トライアルの母数を増やすために登録のハードルを下げる施策を行ったことがありました。その結果、登録数は急増したのですが、リテンションレポートを見ると、アクティブ率が以前より下がっていたんです。 これは、「とりあえず登録はしたけれど、使い方がよく分からない」というライトな層が増えたことを意味しています。母数を増やすだけでなく、その後のオンボーディングを強化して定着率を上げないと、結局は穴の空いたバケツになってしまう。そういった議論が、データという共通言語を持ってできるようになりました。

開発チームも巻き込む「データドリブン」な文化

- CSチーム以外でもMixpanelの活用は進んでいますか?

原氏:はい、実は開発チームも積極的に活用してくれています。最近では、「プロジェクトテンプレート」という機能のリリースの際に、開発チーム自身が目標とするメトリクスを設定し、Mixpanelで成果を計測していました。 面白いことに、CSチームから大々的に「Group Analyticsが入りましたよ」と宣伝する前から、開発メンバーが自然と新しい機能に気づいて、「これ便利!」と勝手に使い始めてくれていたことです(笑)。Nulabには元々、自分たちでツールを使いこなす文化があるのですが、リテラシーの高いメンバーに助けられています。

Backlog「ドキュメント」機能を活用した、チーム間のナレッジ共有

- 分析手法やノウハウは、社内でどのように共有されているのでしょうか?

原氏:私たちのチームでは、Backlogの「ドキュメント」機能を使って情報を共有しています。 例えば、セールスチーム向けに「Mixpanelの使い方」というドキュメントを作成しておくことで、現在のメンバーへの共有はもちろん、新入社員もいつでもキャッチアップできるようにしています。「Mixpanelの立ち位置」や「アカウントの申請方法」、さらには「Company Activityレポートのどの指標を見ればよいか」といった具体的な活用方法などをまとめています。

金氏:ビジネスサイドのメンバーにとって、ツールの専門的な違いや設定は分かりにくい部分もあるので、ドキュメントに「こういう風に見てね」とURL付きでまとめています。Backlogのドキュメント機能は共同編集ができるので、会議の議事録などもそこに残して、常に最新の情報にアクセスできるようにしています。

原氏:セールスチームだけでなく、私たちCSチームもそのドキュメントを活用していますし、自分たちでも必要なナレッジをそこに蓄積しています。ツールを導入するだけでなく、こうして「ドキュメント」機能を使って運用ルールや活用法を言語化し、チーム全体で共有する文化があるのもNulabの特徴かもしれません。

Backlog の「ドキュメント」を使い、 Mixpanel 情報を社内で共有

今後の展望:LTV分析とSalesforce連携による自動化

- 最後に、今後Mixpanelを活用して実現したいことを教えてください。

原氏:やりたいことは大きく2つあります。 1つ目は、LTV(顧客生涯価値)と行動データの連携です。現在はプランごとの単価の違いまでは見ていますが、基幹システムにある売上データと連携させて、「長年利用を継続してくださっているお客様が、導入初期にはどのような行動をとっていたのか」を分析したいと考えています。 「ロイヤルユーザーの行動モデル」を可視化できれば、他のお客様を成功に導くための指標がより明確になるはずです。

- 売上データとの連携は非常に強力ですね。2つ目は何でしょうか?

原氏:2つ目は、SalesforceやMA(マーケティングオートメーション)ツールとの連携強化です。 CSのリソースは限られていますから、すべて手動で対応するわけにはいきません。Mixpanelで「特定のアクションをしていない組織」や「解約の予兆がある組織」をセグメント(コホート)化し、その情報をSalesforceに連携します。そして、Salesforceを経由してMAから自動でフォローメールが配信されるような仕組みを構築したいと思っています。

- 「必要な人に、必要なタイミングで、必要な情報を届ける」仕組みですね。

原氏:そうです。冒頭にお話しした通り、私たちは「デジタルタッチ」と「ヒューマンタッチ」の融合を目指しています。 データを見て一定レベルのアラートが出たお客様には人が介入し、それ以外のお客様には自動化された仕組みでしっかり支援を届ける。Group Analyticsによって「組織」の状態が見えるようになった今、その精度をさらに高め、より多くのお客様のチームワークを支えていきたいと考えています。

- 本日は貴重なお話をありがとうございました。

株式会社ヌーラボ 様

ヌーラボは「チームで働くすべての人に」をコンセプトに、チームのコラボレーションを促進して、仕事が楽しくなるようなサービスを開発しています。

https://nulab.com/ja/

Backlog(バックログ)は、チームで働くすべての人が使えるプロジェクト・タスク管理ツールです。マイルストーンやガントチャートなどを用いて、課題の優先付けや期限管理が簡単にできます。ソースコードの管理にも最適です。

https://backlog.com/ja/

Cacoo(カクー)は、複数人で共同作業ができるオンラインホワイトボードツールです。 URLで簡単に共有でき、操作も直感的。チームの意見をまとめたり、議論しながら目標を設計するなど、合意形成の場面で気軽にご利用いただけます。

https://cacoo.com/ja/