
2019/05/22
顧客ID統合
「モバイルファースト」なオムニチャネルの顧客体験に求められる顧客ID統合(前編)
モノやサービスがあふれる現代、消費者が企業から買っているのは、「モノ」や「サービス」そのものではなく、それらがもたらす「カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)」になったといわれています。顧客にとって最適な顧客体験を設計・提供することに成長した企業が大きな成長を遂げる反面、「顧客体験」の重要性についての認識が遅れ、消費者に追いつけていない企業も少なくありません。
米国オラクル社の調査によれば、『酷い顧客体験により顧客は乗り換えるか?』という問いを企業幹部と消費者に投げかけたところ、「YES」と回答した企業幹部は49%に留まったのに対し、「実際にそうしたことがある」と回答した消費者は89%にも上ったそうです。また、『より良い顧客体験のために顧客は支払いをするか?』という問いについては、「YES」と回答した企業幹部は44%なのに対し、「実際にそうしたことがある」と回答した消費者は86%となりました。(関連記事:Oracle “Global Insights on Succeeding in the Customer Experience Era”)
このことからも、企業が認識する以上に「顧客体験」は重要なものであり、顧客をつなぎ止めるためにも、企業には自社が提供する顧客体験を常にレビューしその改善に向けて不断に努力していくことが求められている、と言えるでしょう。
顧客体験は、いまやオンライン・オフラインを問わずあらゆるチャネル(タッチポイント)を行き来するカスタマー・ジャーニーを通じて形成されます。数多くのタッチポイントの中でも急速に重要性を増しているのが、モバイルアプリやモバイルサイトです。Facebookでは、既に2016年のホリデーシーズン(11月末からクリスマスまでのショッピングシーズン)においてモバイルからのコンバージョンが51%を記録し、初めてデスクトップからのコンバージョンを上回っています。(関連記事:Facebook Business "Moving at a Mobile Minute")
また、アイルランドのWeb解析企業スタットカウンターが公表しているOSのシェアに関するデータによれば、2019年3月時点において、Androidが38.11%, iOSが13.77%を占めているのに対し、Windowsは37.41%, OS X(macOS)が6.72%となっており、モバイル機器向けのOSがシェアの面でも優位を確立しています。(関連記事:statcounter: Operating System Market Share Worldwide)
いまや、デジタルタッチポイントでの顧客体験を設計・構築するに当たって、モバイルの顧客体験に最適化させる『モバイルファースト』時代に入っている、といえるでしょう。
モバイルを活用したオムニチャネルでの顧客体験における課題
モバイル顧客体験の最適化のためには、どのような要素を考慮すべきなのでしょうか? 一つには「時間感覚」が挙げられます。Akamai社は、モバイルサイトにおける顧客の時間間隔の厳しさについて、以下のような調査結果を公表しています。
- サイトのロード時間が0.1秒(100ミリ秒)遅れることで、コンバージョン率が7%低下する
- サイトのロード時間が3秒以上かかることで、サイト訪問者の53%が離脱する
(関連記事:Akamai Online Retail Performance Report: Milliseconds Are Critical)
また、前述のFacebookの調査によれば、よくモバイルで買い物をする消費者の90%が、「『チェックアウトをスムーズにできること』が同じ企業からもう一度買う動機となる」と回答しています。このように、モバイルにおける顧客体験には、「時間」と「スムーズさ」が大きな要素となる、といえるでしょう。
そして、消費者がデジタルメディアを使う時間が増えることで、オンラインとオフラインのチャネルを組み合わせるオムニチャネル戦略も「顧客体験」に重要な影響を与えています。米国の調査会社Aberdeen Groupは、優れたオムニチャネル戦略を展開する企業の顧客リテンション率は83%, 顧客満足度は29.8%であるのに対し、そうでない企業の顧客リテンション率は53%, 顧客満足度は1.3%に留まる、との調査結果を公開しています。(関連記事:Aberdeen Group: OMNI-CHANNEL CUSTOMER CARE: HOW TO DELIVER CONTEXT-DRIVEN EXPERIENCE)
一方で、優れたオムニチャネル戦略を構築することに苦闘している企業も少なくありません。オラクル社が運営するサイトSMARTERCXの記事「オムニチャネルでの素晴らしい顧客体験への4つの共通課題」において、第一の課題として「チャネルごとにばらばらに構築されている「データのサイロ化現象」の解決」を挙げています。(関連記事:SMARTERCX: 4 Common Barriers to Great Omnichannel Customer Experience)
つまり、CRM(顧客関係管理システム)やERP(統合基幹業務システム)、マーケティング・オートメーションといった消費者とのチャネルを担う個々の業務システムが活用する顧客データの統合・連携が欠かせないということなのです。
以上から、「モバイルファースト」時代のオムニチャネル顧客体験の最適化における課題として以下を考慮する必要があるといえるでしょう。
- モバイルサイト・アプリでのコンテンツ閲覧から購買に至るカスタマー・ジャーニーの最適化
- チャネルごとにばらばらに保管されている顧客データの統合管理=「シングル・カスタマー・ビュー」の構築
- 一元管理した顧客データを社内各部署が導入したCRMやMAなど顧客データを必要とするシステムと接続し、シームレスかつタイムリーに必要なデータを利用できるデータ連携
後編では、上記の課題を解決するうえで役立つ SAP Customer Data Cloud の機能について解説します。
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