2021/11/26

顧客データ活用・管理

顧客データは統合・分析こそが重要。基礎知識を解説

企業がマーケティングにおいて取り組むべき課題の1つに「顧客を理解すること」が挙げられます。その1つの方法として挙げられるのが、顧客データの活用です。つまり、あらゆる顧客データを収集し、統合・分析を行えば、より効果的なマーケティング施策を企画・実行できるでしょう。顧客データをマーケティングに活用するための具体的な取り組みについて解説します。

顧客データの必要性と種類

近年は、顧客に関するあらゆるデータの収集・統合・分析を行い、マーケティングに活用する「データドリブンマーケティング」という手法が広く用いられています。一見、難しく感じるかもしれませんが、平たく言うと「顧客データを分析し、売上の向上につなげる」ことです。つまり、顧客データを活用してマーケティングを行うことで「1人1人の顧客にあった商品の提案ができる」「時間限定セールや特別な割引券の発行ができる」「顧客の”生の声”を元に商品・サービスを改善できる」「顧客の動向に応じて社内業務の効率化・見直しができる」などのメリットがもたらされます。

利用するデータは多岐にわたりますが、データの性質で大まかに分けた場合、次の2つが主に利用されると考えましょう。
1つ目は、定量データです。簡単に言うと「数値化できる情報」のことで、顧客の住所・年齢・年収・家族構成・購入履歴などがこれに当たるでしょう。2つ目は、定性データです。簡単に言うと「数値化しにくい情報」のことで、クレームの内容やSNSでの紹介文などがこれに当たります。

定量データの場合、社内で収集する体制さえ整えば、比較的数は集まりやすいです。一方、定性データの場合、必ず数は集まるとは限りません。しかし、定量データでは難しい「顧客が何を考えているのか」という深い情報も読み取れます。定性データと定量データを掛け合わせて分析すれば、より効果的なマーケティング施策の立案に役立つでしょう。

顧客データの収集と管理

顧客データをマーケティングに活用する際に必要なことは「まずは集めること」です。つまり、どうやって必要十分な量の顧客データを収集するのか、理解する必要はあります。まず、定量データの場合ですが「会員登録をしてもらう」「顧客にアンケートに答えてもらう」が挙げられます。また、販売管理システム上の注文履歴や受注履歴から購買履歴データを取得することもできますし、Webサイトへのアクセスログを使い、行動履歴データを入手しても良いでしょう。

一方、定性データの場合は「顧客にアンケートに答えてもらう」方法が広く用いられています。また、自社サイトの口コミページへの投稿やSNS投稿の分析、問い合わせ履歴からも有用な定性データが取得できるはずです。そして、データ収集を行うにあたり、最初に考えるべきことがあります。それは「集めたデータを何に使うのか」という基本的な方針です。「まずは数を集めたい」とデータを収集するだけでは、結局活用できず「宝の持ち腐れ」になることだって考えられます。

また、収集したデータを何に活用するかによっても、データ基盤やシステム、社内での業務フローなどが全く違ってくるのです。そういう点からも「集めたデータを何に使うのか」は、予め社内の担当者間で認識をすり合わせておきましょう。特に、Webサイト上の細かいアクセス解析をしたいのであれば、Googleアナリティクスなどのアクセス解析ツールを使わないといけません。さらに、収集したデータの扱いにも気を付けましょう。データを流出させないのは基本中の基本です。しかし、より効果的に顧客データを活用するには「どうやって管理するか」も重要になります。一般的に用いられる方法をいくつか紹介しましょう。

表計算ソフト

ほとんどの企業において、通常の業務でも使われる頻度が高いものであることから、導入もスムーズにできるでしょう。社内で管理ルールを決め、そのルールを反映した見やすいシートを簡単に作れるのが大きなメリットです。しかし、設定によっては同じデータを何度も入力しないといけないため、手間がかかるのはデメリットと言っても良いでしょう。さらに、顧客管理システムのように「メールが自動で配信されるようにする」設定を行うのは難しいです。

顧客管理システム

専用のシステムを導入すれば、多種多様な顧客データを一元管理できます。また、異なる部門・部署での共有も簡単なため、有効活用できれば業績の大幅アップも見込めるはずです。特に「自社での商品の購入歴が10回以上の人には特別セールの案内をする」など、属性やセグメントを絞り込んだ施策を行いたいなら、顧客管理システムがあると効率的に進められるでしょう。
ただし、どんな顧客管理システムを使うかにもよりますが、導入コストは決して安くありません。また、導入前から保有している顧客データを、新規で導入する顧客管理システムに導入するためには、それなりに時間と労力がかかります。

営業支援システム

営業支援システムとは、企業の営業部門における業務プロセスを自動化し、営業活動に付随する情報全般をデータ化して、蓄積・分析することができるシステムを指します。当然、営業活動に付随する情報の中には顧客データも入ってきます。メリットとしては、従業員間でのコミュニケーションが活発になり、情報共有がスムーズになることが挙げられるでしょう。多くの営業支援システムには、従業員間でコメントを残す機能があるためです。一方、顧客管理システムと同じで、導入コストは決して安くないのがデメリットとして挙げられます。

CDP・プライベートDMP

CDPとは「カスタマー・データ・プラットフォーム(Customer Data Platform)」の略で、個々の顧客の属性データや行動データを収集・統合・分析するデータプラットフォームを指します。一方、プライベートDMPの「DMP」とは 「Data Management Platform(データ・マネジメント・プラットフォーム)」のことです。自社における顧客一人ひとりの属性データ、購買履歴や行動履歴といったマーケティングデータを収集・統合・分析するプラットフォームと考えましょう。

これらのシステムは、Web接客ツールや社内システム、マーケティングオートメーション(MA)など、様々なシステムと相互接続できます。つまり、複数のシステムのデータを統合的に管理し、データ活用をスムーズに行えるのが大きなメリットです。ただし、導入コストは決して安くない上に、他のシステムと連携させるにあたっては綿密な計画を立てる必要がある点には注意しましょう。

顧客データの分析方法

また、顧客データは「集めて適切に管理している」だけでは意味がありません。大事なのは「読み取れる情報を使い、売上に繋がる施策を行う」ことです。分析方法と活用方法についても考えてみましょう。

まず、一般的な分析方法をいくつか紹介します。

セグメンテーション分析

「セグメンテーション分析」とは、顧客を一定の指標に基づきグルーピングすることです。
「年齢・性別・住所」「業種・会社所在地・ポジション」「国・地域・人口」など、正確なデータがはっきりわかるものはもちろん、「価値観・趣味・ライフスタイル」「行動履歴・購入履歴」など属人的なものも用いられます。

セグメンテーション分析を行うことで、そのセグメントに属する顧客に合ったマーケティング施策を立案・実行できるはずです。たとえば「この住所の近隣には大学が多くあるため、学生向けのプランを充実させる」「20代、30代の顧客が集まっていないのでWeb広告、SNS広告の出稿を増やす」などが考えられます。

バスケット分析

「バスケット分析」とは、顧客の購入履歴、POSの購買データを分析することです。バスケット、というのが「買い物かご」を指すと考えるとわかりやすいでしょう。顧客の購入時の志向がわかるため、分析結果を活用して「特定の層に薦めると買ってもらえそうな商品」を提案することにもつなげられます。たとえばXとYという商品が一緒に購入されることが多かったとしたら「おまけつきのセットにして単品で買うよりお得感を出す」「セット販売こそ行わないものの陳列場所を隣同士にする」などの方法が考えられるでしょう。

RFM分析

「RFM分析」とは、最終購買日(Recency)と購買頻度(Frequency)と購入金額(Money)を用いて分析する方法です。これらの3つの指標を「高(High)・中(Middle)・低(Low)」の3つにグループ分けします。ランクが高いグループほど、自社にとっては優良な顧客、つまり「自社の商品・サービスを買ってくれる可能性が高い人たち」という意味になるのです。「買ってくれる可能性が高い人たち」と「現時点では可能性が低そうな人たち」とでは、実施すべきマーケティング施策は全く異なります。そのため「何をすれば買ってもらえるのか」を考える上で重要な情報が手に入る分析手法と言っても良いでしょう。

デシル分析

「デシル分析」とは、購入履歴をもとに、すべての顧客の購入額を洗い出して、分析する手法を指します。具体的には、購入履歴データを用いて、すべての顧客を「購入金額が高い順」に並べ替えます。その上で、顧客を10等分して10個のグループに分け、個々のグループの売上構成比がどれだけあるかを算出するのが基本的な流れです。これらの作業を行うことで、自社の売り上げへの貢献度がわかるため「どこの層に属する顧客に対し、何をすべきか」というマーケティング施策が立てやすくなります。

顧客データの活用方法

分析したデータは、今後のマーケティング活動に活用しなくてはいけません。具体的な活用法をいくつか紹介します。

クロスセル

クロスセルとは「顧客が購入しようとしている商品と別の商品や、購入を希望する商品と組み合わせられる商品を提案し、購入を検討してもらうこと」を指します。

アップセル

アップセルとは「商品の購入を検討している顧客や、過去に購入してくれた顧客に対し、乗り換えという意味で高額な商品を提案すること」を指します。もちろん、クロスセルやアップセルで効果を出すためには「顧客に適切な提案を、タイミングよく行うこと」が必要不可欠です。日ごろから、社員全員が顧客や自社の商品・サービスに対する理解を深めるのはもちろん、「いつ、何をするか」という情報共有を密に行うのが望ましいでしょう。

また「行動データの活用」も有効な手法です。簡単に言うと「顧客に適したタイミングで、営業をかける」といったところでしょう。例えば「初回に購入してもらった商品を使い切りそうなタイミングで次回の購入を促すメールを送る」「スマートフォンのアプリのプッシュ通知を使い、一定期間アプリを立ち上げている様子がなかったら”久しぶりにログインする人にポイントをプレゼント!”などの特典を案内する」などの施策もこれに含まれます。

顧客データの統合が重要なのはなぜか

ここまで、顧客データの収集・管理・分析・活用について触れてきましたが、実はさらに大事なことがあります。それが「統合」です。つまり、バラバラになっているものを1つにすることが挙げられます。ほぼ個人商店に近いレベルの小規模な企業ではなく、ある程度規模のある企業であれば、複数の営業所や店舗が存在しているはずです。そして、営業所や店舗には「いつ、どんな人が、何を買ってくれたか」というデータが日々蓄積されていくことでしょう。しかし、そのような「顧客データ」を、特定の店舗や営業所だけで抱え込んでいたのでは、会社と顧客との関わりについての全体像が見えてきません。

つまり「顧客が何を求めていて、何をすれば良いのか」が正確にわからないため、適切なマーケティング施策を考えられないのです。根拠もなく、ただ「何となく良さそうだから」と施策を行っても、あまり意味はないでしょう。そのため、顧客データをマーケティングに活用するには情報共有をすること、つまり統合することがとても重要になります。なお、統合するためにはやはりツールを使うのが効果的です。CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)を活用すれば、顧客の様々なデータを紐づけて管理分析することができます。つまり、「どんな顧客が、自分たちの会社の商品・サービスに関心を持っているのか」という全体像が分かるため、的外れにならないマーケティング施策も実行できるのです。

また、昨今では企業が様々な形で顧客との接点を持ち、やりとりをするのは珍しくありません。旧来からある実店舗やカタログはもちろん、ECサイトやSNS、アプリを運営している企業は数多く存在します。顧客とのつながりを増やせるという意味では画期的ですが、盲点もあるので注意が必要です。端的にまとめると「いつ、誰が、どんなものを買ったのかがわからなくなる」 ことでしょう。

例えば、Aさんという人が、これまではカタログを見て買い物をしていたものの「こっちの方が便利だから」とECサイトやアプリを使って買い物をし始めたとしましょう。企業の方で、顧客データの収集・管理・分析がうまくいっていれば「カタログで買い物をしてくれたAさん」と「アプリやECサイトで買い物をしてくれたAさん」が同一人物であるとわかるはずです。

しかし、うまくいっていなければ「カタログで買い物をしてくれたAさん」と「アプリやECサイトで買い物をしてくれたAさん」が一緒なのかはわかりません。そのため、本来は1部送れば良いはずのカタログを送ってしまったり、アプリをインストールするよう連絡してしまったりと、本来ならやらなくていいことをしてしまうおそれもあります。

また、ECサイトとアプリでログインID・パスワードが違っていた場合は、Aさんにとっても大変です。1つ1つ几帳面に管理できるならともかく、忘れてしまうのも珍しくないため、混乱につながります。結局のところ、顧客にとっても企業にとっても「招かれざる事態」になるのです。

これを防ぐためには、CIAM(Consumer Identity and Access Management、顧客ID&アクセス管理) の導入が有効です。平たく言えば、1つの共通のIDで、複数サイトやアプリの各サービス要件に応じた情報取得と、、顧客データ管理を一元化するシステムを指すと考えましょう。企業にとっては「顧客の状況に合わせた適切なマーケティングができるようになる」というメリットが、顧客にとっては「たくさんのIDやパスワードの管理で混乱しない」というメリットがもたらされます。

顧客を理解することがマーケティング成功への第一歩

マーケティングにおいては「必要としている人に商品・サービスを届けること」が重要な目標になります。そのため、まずは「自分たちの商品・サービスに関心を持ってくれる人はどんな人か」をしっかり理解しないといけません。その手法として顧客データの分析は有効です。しかし、全社を挙げて取り組まないとなかなか効果も出ないので、まずは「顧客と会社の関わりを全体として分析できる」体制を築きましょう。

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