2023/01/30

顧客データ活用・管理

D2Cマーケティングのメリットや3つの手法・成功事例を紹介

長期的に顧客と良好な関係を構築することで、顧客ロイヤルティを高め収益率を高めるビジネスモデルとして「D2Cマーケティング」が注目されています。D2Cマーケティングは間に問屋や小売店、ECサイトを介さずに、直接、企業と顧客がつながるという仕組みです。マージンもいらず、これから事業を展開したい企業に最適な手法ともいわれ注目を集めていますが、メリットが多い一方で注意しなければならないこともあります。この記事ではD2Cマーケティングの詳細やメリット、注意したいポイント、必要なシステムについて解説していきます。

D2Cマーケティングとは?

D2CマーケティングはSNS時代に適したビジネスモデルだとも言われ、アパレルや化粧品、食材など幅広いメーカーが採用しています。まずは特徴について紹介します。

D2Cマーケティングの意味やビジネスモデルの特徴

D2C(DtoC)マーケティングとはDirect to Consumerの略で、製造者が問屋や小売店を介することなく、直接顧客に販売するというビジネスモデルです。

現在、一般的にはメーカーが物を作って売りたいと考えた場合、消費者へ届くまでに問屋や小売店などが入ります。

D2Cマーケティングはそのような複雑な仕組みを用いず、シンプルに消費者に製品を届けるという仕組みです。世界的なトレンドとなっており、アパレルや家電、食品など幅広い分野でD2Cマーケティングが行われています。

販売方法は自社のECサイトを使用し、時には直営店やポップアップショップなどで対面式の販売も行います。また、SNSを利用して消費者とエンゲージメントを高めるという手法をとっている事例が多いのも特徴です。

ECとの違い

インターネットを使った販売としてはD2Cマーケティングよりも前から「EC」という言葉をよく耳にしたかと思います。D2CマーケティングとECにはどのような違いがあるのでしょうか。

D2CマーケティングはビジネスモデルのことでECとは販売する方式のことです。ECはElectronic commerceの略で、日本語では電子商取引と言われ、オンラインで製品やサービスを販売することを指します。

D2Cマーケティングを行う企業もネット上にショップを開設して取引を行うので、D2CマーケティングはECに含まれると考えても良いでしょう。

また、一般的なECとの違いとしては、D2Cマーケティングはブランドの世界観や顧客との関係を重視するという特徴があります。

BtoB・BtoCとの違い

製品やサービスを提供するためのビジネスモデルとして、BtoBやBtoCという言葉があります。D2Cマーケティングとの違いは取引相手を限定しているかどうかという点があります。

BtoBは(Business to Business)の略で、企業間での取引を表しています。企業で使う備品や資材を販売する場合はBtoBです。

BtoCはBusiness to Consumerの略で、企業が個人と取引をすることを示し、小売店やスーパー、ネットショップなどで販売する場合にはBtoCとなります。

一方、D2Cマーケティングは取引対象を限定していません。

D2Cマーケティングが注目される背景

D2Cマーケティングがトレンドとなっている背景として、以下の点が挙げられます。

  • SNSやECプラットフォームの発達、普及
  • デジタルネイティブ世代の増加
  • モノ消費からコト消費への転換

SNSやECプラットフォームの発達で、売る側が小売店などを介さずとも顧客とつながれるようになったのが、D2Cマーケティングが普及した理由の一つです。また、ECプラットフォームやSNSを自然に利用できるデジタルネイティブ世代が、メインの消費者となってきたこともD2Cマーケティングが行いやすくなった要因でしょう。

さらに、商品・サービス自体に価値を見出す消費スタイルである「モノ消費」から、商品・サービスによって得られる「体験・経験」に価値を見出す「コト消費」の時代へのシフトも、D2Cマーケティングが発展する要素となっています。「コト消費」においては、ブランドとのエンゲージメントから得られる体験や、購入した商品・サービスから得られた自分の体験がSNSを通じてシェアすることで「いいね」やコメントを得ることからの満足感も大きなウェイトを占めています。これらはD2Cマーケティングとの親和性が高いといえるでしょう。

D2Cマーケティングのメリット

D2Cマーケティングを採用するメリットについて紹介していきましょう。事業をスタートさせたばかりの、規模の小さなブランドに適したメリットが数々あります。

小規模から事業を始められる

D2Cマーケティングはメーカーの立ち上げ時点で、多くの経費を必要とせずに始められる点が大きなメリットです。

まずD2Cマーケティングでは実店舗を用意する必要がなく、家賃などの諸経費がかかりません。また、外部の問屋や販売店、ECサイトに支払うマージンも発生しません。

生産、制作から販売までをメーカーが担うことで多くの経費を節約できることから、新たにビジネスを起こしたい人が小規模でも参入しやすく、既存の企業が新規の事業に乗り出す際にも活用しやすい仕組みだと言えます。

顧客ロイヤルティが高まりやすい

顧客ロイヤルティを高めるのにもD2Cマーケティングのビジネスモデルは有効です。

小売店を通じて販売する場合、消費者ではなく小売店が望む商品を作ろうとする傾向があります。その結果、顧客ニーズとズレが生じ、顧客ロイヤルティの向上につながらない場合がありました。

しかし、D2Cマーケティングでは消費者に直接販売することで、SNSやオウンドメディアで顧客のニーズをダイレクトに受け取りやすくなるのがメリットです。顧客の意見を商品・サービスに反映させることで、ロイヤルティが高まりやすくなります。

利益率・LTVが高まりやすい

上述の通りD2Cマーケティングでは中間マージンが不要なため、メーカーが得られる利益が多くなります。

また、顧客と積極的にコミュニケーションを取り信頼関係を築くことでリピーターを創出し、LTVが高まりやすいとされています。LTVとはLife Time Valueの略で、「顧客生涯価値」のことです。

一人の顧客が取引中にどれだけの利益をもたらしたかを算出したのがLTVですが、D2Cマーケティングでロイヤルティを高めていくことでLTVも上がりやすくなります。

マーケティングの自由度が高い

従来のビジネスモデルでは、ECモールや小売店、代理店などの方針に左右され、キャンペーンを始めとしたプロモーション方法に制約がありました。

その点、自社で販売まで行うD2Cマーケティングであれば、キャンペーンやセール、プロモーション、価格設定などにおける自社の裁量が大きくなります。顧客の反応を見ながら、素早いプロモーション内容の改善も可能です。その点、自社で販売まで行うD2Cマーケティングであれば、キャンペーンやセール、プロモーション、価格設定などにおける自社の裁量が大きくなります。顧客の反応を見ながら、素早いプロモーション内容の改善も可能です。

アンケートへのレスポンスやSNSでの反応などで顧客ニーズを直接知り、製品を改良していくことで、自社のブランドを育てることもできます。

自社ECから顧客データを収集できる

従来の販売方法では直接顧客とつながるわけではないので、販売チャネルによっては詳細な顧客データをメーカー側が収集できないことがありました。

しかし、自社ECを起点とする場合、顧客のさまざまなデータを収集してマーケティングに活用できます。たとえば、会員登録の際に顧客の氏名や年齢、性別、アドレスなどを獲得でき、キャンペーン時にDMで案内することが可能です。

また、サイトの滞在時間や、サイト内でユーザーが回遊する導線などの調査ができ、顧客の趣味趣向も把握できます。購入までのプロセスも確認できるので、自社の販売戦略やキャンペーンの企画にも役立てられます。

D2Cマーケティングに重要な顧客データの活用・管理

D2Cマーケティングの展開・成功のためには「顧客データの活用・管理」が重要であり、実現するための顧客データ管理システムの導入が求められます。

D2Cマーケティングのような顧客との直接のつながりを強化する戦略を採用する場合「顧客第一の視点を持ちながら、顧客一人ひとりが本当に望む体験を得られるように手助けする」ことを目指していく必要があります。つまり、顧客が望む体験を提供し長期的な関係を構築することが、ますます激化する競争環境に勝ち残るためのカギなのです。

顧客が望む体験を知るためには、顧客データの正しい収集・活用・管理が必要ですが、その実現に向けてはいくつかの課題があります。

ここからは、上記の目的を実現するために必要な要素・管理システムの機能を解説していきます。

利便性が高くセキュアな認証・ログイン機能を活用する

多くの顧客データを収集・管理するためには、セキュリティ面と利便性を兼ね備えた認証・ログイン機能が必要です。情報漏えいや不正アクセスなどのセキュリティインシデントを防止するための施策をとらなければなりません。

また、複数のECサイトやモバイルアプリを展開する場合などにおいては、それらのサイトやアプリなどをまたがって、自社のタッチポイントに流入する顧客を、同一の人物として正しく認証できる認証・ログイン機能であるシングルサインオン(SSO)の導入による利便性の向上が求められます。

これまで採用されてきた認証・ログインシステムには、IDとパスワード方式が主流となってきましたが、不正アクセスなどによる顧客情報の流出の原因の一つともなってきました。そこで、生体情報を使ったFIDO(ファイド)など、新しい認証システムも普及が始まっています。

データの「サイロ化」を防ぐ

業務プロセスや使用するアプリケーション、システムが増えていくと、部門ごとに顧客情報をバラバラに所有してしまい、情報同士が紐付けられていない、データの「サイロ化」が起こります。例えば自社内の事業部門ごと、あるいは、商品・サービスごとにECサイトを立ち上げ、それぞれのサイトが個別に顧客データを収集してしまうと、同一のユーザーについて複数のID・顧客データが存在する、という状態になります。バラバラに情報が存在すると、どの情報が最新かつ正しいものか分からなくなるなどの弊害が生じ、業務が非効率になり、顧客へのサービスも不十分になりやすいため、対策を講じなければなりません。

データのサイロ化を防ぎ、複数のタッチポイントから登録される顧客データを正しく一人の顧客に紐付けて管理するには、「シングル・カスタマー・ビュー」(顧客360度ビュー)を提供できるデータ基盤の構築が必要です。

シングル・カスタマー・ビューとは各部門が所有している顧客マスタデータを一つに統合し、社内で業務に携わる誰もが正しい顧客情報に基づいて自身のタスクを実行できるという考え方です。

サイロ化を防ぎデータを統合するためには、シングル・カスタマー・ビューを実現できるシステム構築を急ぐ必要があります。

顧客データ管理の高度化に対応する

個人情報の利活用に関する規制が強まる中、これまでのようなやり方では利活用の実態が不透明であるとしてレピュテーションリスク(評判リスク)が高まるだけでなく、マーケティングへの活用にも支障をきたす恐れがあります。

リスクを避けるには、利用規約やプライバシーポリシー、パーソナライズアクションなどへの顧客からの同意を正しく管理するのがポイントです。ドキュメントのアップデートに際しては適切に再同意を依頼し、顧客が同意の撤回を望んだ場合にアクションを停止する高度な同意管理機能を備えなければなりません。

EUにおけるGDPR(General Data Protection Regulation=一般データ保護規則)のように、海外の法規制ではすでに個人データの収集・利用に関する同意の管理が極めて重視されていますが、日本企業も対応を進めていく必要があります。

プライバシー法制度が強化されていくと対応の複雑さが増しますが、D2Cマーケティングを効果的に行うためには避けては通れません。顧客にもプライバシー法制度への積極的な対応を理解してもらったうえで、必要最小限の個人情報の提供を受け、マーケティングに活用することが事業成長に不可欠です。

ハイパー・パーソナライゼーションに向けたデータ連携を確立する

競争に勝つためには、パーソナライズを超えた「ハイパー・パーソナライゼーション」の実現も視野に入れなければなりません。ハイパー・パーソナライゼーションとは、顧客データに基づいて、リアルタイムに適切なアクションを実行するという概念です。

データをもとに、高度にパーソナライズされた製品・サービスを素早く提供していくことが、自社の成長を実現するうえで重要となります。

ハイパー・パーソナライゼーションの実行には、複数のCRM(Customer Relationship Management=顧客関係管理)やマーケティング活動を自動化・効率化するマーケティング・オートメーションシステムなどとのデータ連携の確立が必要です。

「SAP Customer Data Cloud」は顧客IDのスムーズな登録・認証を実現します。また、CRMやマーケティング・オートメーションシステムとの連携機能をクラウド上で提供することで、ハイパー・パーソナライゼーションの実現に導きます。

企業のD2Cマーケティング成功事例

すでにD2Cマーケティングを成功させている企業は多数あります。ここからは3社の事例を見ていきましょう。

snaq.me(スナックミー)

snaq meは自然素材(リアルフード)を使ったおやつを定期的に届けるサブスクリプションサービスを展開しています。

顧客と密なコミュニケーションを取っているため「こういうおやつが欲しい」という声が届きやすくなっています。具体的には、リクエストや評価システムから収集したユーザーのアクションデータにより、届けるおやつを最適化する仕組みです。

プロモーションについては大規模な広告を打っているわけではありませんが、SNS上で影響力のあるインフルエンサーがサービスを紹介する度に拡散され、口コミの力によっても広く知られてきたそうです。

FUJIMI

パーソナライズ美容ケアの「FUJIMI(フジミ)」もまた、日本のD2Cマーケティングを牽引しています。主力商品はサプリメントとフェイスマスクですが、オンラインでの販売を通じてパーソナライズされた商品を届け、顧客満足度を高めています。

美容系の商品を購入する際、百貨店などでは肌診断やカウンセリングを受けることで顧客体験ができますが、FUJIMIではそのプロセスをオンラインでできるようにしています。肌診断の質問に回答した顧客データを基に、パーソナライズされた製品を受け取れるようになっています。

BASE FOOD(ベースフード)

26種のビタミンやミネラル、タンパク質、食物繊維など、栄養が詰まったパンやパスタをオンライン販売し、家庭に届けているBASE FOODは、食領域のD2Cマーケティングの先駆け的存在で幅広い顧客を獲得し、アメリカにも進出しています。

オンライン上のコミュニティ「BASE FOOD LAB」を設け、ベースフードのアレンジ法や健康に関する情報交換ができるようにし、「購入」だけではなく「体験」を提供しているD2C企業です。

また、20食をベースフードに置き換えた体験をSNS上にハッシュタグを付けてつぶやくと管理栄養士がアドバイスをくれる「BASE FOOD CAMP」なども運営しています。

D2Cマーケティング成功のポイント

D2Cマーケティングでは、ただ商品を販売するのではなく、SNSや自社サイトなどを使った仕掛けをすることが成功のポイントです。顧客目線で仕組みを作り上げていくことが重要となります。

明確なブランドの世界観を確立する

D2Cマーケティングにおいては、大量生産による製品・サービスの提供ではなく、明確にブランドの世界観を確立しながらの展開が成功のカギになります。

D2Cのメインターゲットはミレニアム世代、Z世代ですが、この世代は特にブランドの世界観・価値観を重視する傾向があります。社会的問題に意識を向ける事も多く、環境問題にも敏感です。パーソナライズされた製品を好み、コト消費を重要視する傾向もあります。

そこで、自社ブランドにしかないオリジナリティや、世界観・価値観を顧客に伝えるためのカスタマージャーニーの設計が重要となってきます。世界観を明確に定義してプロダクトの制作やプロモーションに取り掛かることが成功のポイントとなります。

SNSを効果的に活用する

D2CにおいてSNSは、重要なマーケティングチャネルです。

ライブ配信やアンケート機能、コメント、DMでのやり取りなど、双方向のコミュニケーションによって、信頼関係の構築ができます。自然に顧客の目に入り商品・サービスをアピールできるSNS広告の活用なども効果的です。

ユーザーによって生成されたコンテンツであるUGC(User Generated Contents)の活用も集客に有効です。UGCはレビューや、SNS、掲示板などに投稿されたコメント、写真などが含まれますが、客観性が強く共感を得やすいため、ユーザーに商品・サービスを訴求するために重要なコンテンツとなります。

UGCを生み出すには、顧客とのコミュニケーションやハッシュタグキャンペーン、体験モニターなどの施策を考えても良いでしょう。

SNSの公式アカウントやECサイトなどでUGCを掲載し、顧客獲得につなげられるよう検討してみてください。

顧客データの適切な収集と管理

顧客との直接のつながりを重視するために高度なパーソナライゼーションを求められるD2Cマーケティングでは、パーソナライゼーションの基礎となる顧客のファーストパーティーデータの活用をサポートする顧客ID管理基盤が欠かせません。

複数のタッチポイントにまたがる認証・ログイン機能と、それらのタッチポイントから流入する顧客データを適切に管理しシングル・カスタマー・ビューを構築できる顧客ID管理基盤を導入することで、顧客データを一元管理し、D2Cマーケティングの各タッチポイントにおいて適切なアプローチが可能になります。

個人データの利用について顧客自身が管理できる「同意管理機能」を備えるシステムを導入することも、顧客との信頼関係に好影響をもたらしてくれるでしょう。

D2Cマーケティングは長期的なブランドの成長に効果的

D2Cマーケティングは、顧客とコミュニケーションを図り関係性を強めることで、ロイヤルカスタマーの創出を目指すビジネスモデルです。D2Cマーケティングを成功させるためには安全かつ効率のいい顧客データの管理や活用が必要になります。利便性の高い認証・ログインシステムを導入するとともに、シングル・カスタマー・ビューを実現するシステムを導入し、データのサイロ化を防ぐことも重要です。そして、収集したデータをもとに、パーソナライズされた製品、サービスをリアルタイムに提供していくことでD2Cマーケティングを成功へと導くことができます。

また、顧客ID・アクセス管理を一元化し、ユーザーエクスペリエンスを大きく向上させる「SAP Customer Data Cloud」の導入もご検討ください。「SAP Customer Data Cloud」はユーザーの認証・ログインに関する機能をクラウドで提供し、顧客IDのスムーズな登録・認証を実現します。利用規約やプライバシーポリシーなどに関する高度な同意管理機能や、CRMやマーケティング・オートメーションシステムとの顧客データ連携機能もクラウドで提供します。「SAP Customer Data Cloud」による顧客ID管理基盤は、個人データの利用・管理を高い次元で実現し、D2Cマーケティングの成功に貢献します。

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