2022/08/26

顧客データ活用・管理

モバイルアプリのパーソナライゼーションの重要性と、その実現に必要なシステムとは

Webサイトやモバイルアプリにおいて「パーソナライズ」されたユーザーエクスペリエンスを提供することの重要性は、既に多くの調査・レポートなどで指摘されているところです。Googleによれば、米国のマーケッターの89%はWebサイトやモバイルアプリのパーソナライゼーションが収入の増加をもたらすとしているそうです。
一方で、「モバイルアプリのパーソナライゼーション」とは具体的にどのようなものなのか、そして、それがビジネスに何をもたらすのかという点についてまだ十分に理解されていないという一面もあるように思われます。Webサイト"STORYLY"に掲載された記事は、この点について解説しています。
(STORYLY: Mobile App Personalization: The Future of User Experience"

この記事では、まずモバイルアプリのパーソナライゼーションを「個々のユーザーに固有のデータを活用し、ユーザーの行動や嗜好に関する詳細なインサイトをマーケッターに提供すること」と定義しています。これにより、マーケッターはモバイルアプリを通じて高品質のパーソナライズされたメッセージやエクスペリエンスを届けることが出来るのです。これらのデータには、デモグラフィックスやライフステージ、興味・関心、行動、時間、ロケーションに関するデータなどが含まれます。そして、ユーザーが「ただのユーザー」ではなく「特別なお客様」として扱われていると感じられるような関係を築くことが可能になる、としています。

特に、「パーソナライゼーション」と、カスタマイゼーションやセグメンテーションとの違いを理解することが重要である、と強調しています。
まず、パーソナライゼーションとカスタマイゼーションの重要な違いは、誰がエクスペリエンスを作り上げるのかにある、としています。つまり、パーソナライゼーションでは、企業側が顧客から収集したデータに基づいて顧客向けのアイテムを作成・変更するのに対し、カスタマイゼーションではユーザーが自分の好みに基づいて自分で変更を加えることに違いがある、としています。
パーソナライゼーションとセグメンテーションの違いはフォーカスにある、としています。セグメンテーションにおいては、マーケティング担当者は、デモグラフィックスやサイコグラフィックス、ロケーション、行動などに基づいて特定のタイプのオーディエンスを識別することで、異なる顧客グループに対して適切なマーケティング情報を配信し、最適な結果を得ることができます。一方、パーソナライゼーションは、各セグメント内の特定の顧客にフォーカスした、より顧客中心的なものである、としています。パーソナライゼーションでは、顧客のニーズや課題に基づいて調整されたエクスペリエンスを提供することが求められます。そのためには、顧客一人ひとりを理解し、ブランドとのインタラクションのたびに変化する顧客個人の意図に基づいたエクスペリエンスを提供することが必要です。つまり、パーソナライゼーションとは、ビジネスが個々の顧客についてできる限り多くを学び、その顧客にとって最適なエクスペリエンスを提供することである、としています。

記事では、モバイルアプリのパーソナライゼーションがもたらすメリットとして以下を挙げています。

ユーザーリテンションのアップ

多くのユーザーは、アプリを1回使っただけで止めてしまうということを常に意識し、初めて使用するユーザーに確かな第一印象を残すことが必要です。パーソナライズされたアプリは、適切なレコメンデーションやオファーなど他にはないパーソナルな体験を提供することでユーザーが定期的にアプリを使用し続けるよう促す、としています。

アプリ内での購買の増加

ユーザーは、よりパーソナライズされたメッセージ、オファー、レコメンデーション、ディスカウントに遭遇すると、アプリ内で商品を購入する確率がはるかに高くなります。例えば、eコマースアプリのアプリ内購入を促進するために、カートに商品を入れたものの最終的に購入プロセスを放棄したユーザーをセグメント化し、このようなユーザーにパーソナライズされたプッシュ通知を送信して再訪問を促したり、次回以降の購入につながるようなオファーをプッシュしたりすることができます。また、パーソナライズされたアプリ内ストーリーを使用して、ユーザーに直接語りかけ、再訪問を促すこともできます。このようなメッセージは、本当に自分に向けられていると感じられれば、より受け入れられやすくなる、としています。

カスタマーエクスペリエンス全体の改善

理想的なレベルの利便性と効率性を備えた独自のエクスペリエンスを享受したいと考えるユーザーはますます増えています。その結果として、顧客は、消費者ではなく人間として自分たちをよく理解してくれていると感じ、それによってリピーターを増やすことができる、としています。

認知の拡大

アプリの認知度を高めるには、ユーザーがアプリのどこを楽しんでいるのかを把握する必要があります。アプリのどのような点が人々を惹きつけているのか、また、どのような点を改善すればよいのか、これらの質問に答えるには、ユーザーデータを収集・分析し、ユーザーがアプリをどのように使っているかを把握する必要があります。収集したユーザーの情報を使って、特定のイベントやアップデートなど、ユーザーが見たいと思う情報に関連した通知を送ることもできます。しかし、広告の頻度と同じように、通知の出し過ぎは避けなければならない、としています。

顧客ロイヤリティのアップ

モバイルアプリのパーソナライゼーションによって、ユーザーのブランドロイヤリティを大幅に向上させることができる、としています。顧客ロイヤリティには、リピート販売だけでなく、友人や家族に勧めてくれたり、アプリストアでアプリの好意的なレビューを残してくれるなどの大きなメリットがあります。顧客ロイヤルティの向上は、収益の増加、そしてアプリの成長をさらに加速させる、としています。

高いレベルのエンゲージメント

ユーザーがパーソナライズされたアプリ体験を提供するアプリを使い続ける理由の一つとして、「人間同士の交流のような錯覚を覚えること」を挙げています。個人的なレコメンデーションや提案により、アプリの向こう側にいる人とつながっているように感じ、アプリ開発者がユーザーエクスペリエンスを本当に大切にしていると感じるのです。その結果として、自身が求めるものを的確に提供していると思うことが出来ればアプリとのエンゲージメントを継続し、そのことを通じてリードや売上の増加にもつながり、収益を向上させることができる、としています。

記事は、アプリを成功させユーザーとの強い結びつきを確立するためにはモバイルアプリのパーソナライゼーションが不可欠であり、パーソナライズされたアプリ体験を導入することで、まだ導入していない多くの競合他社から差異化できる、と結んでいます。

この記事では、モバイルアプリのパーソナライゼーションを定義したうえで、そのもたらすメリットから重要性を訴求しています。特に、ややもすれば混同されがちな「パーソナライゼーション」「カスタマイゼーション」「セグメンテーション」の概念を明確に分け、パーソナライゼーションを「個々のユーザーのデータに基づいて個々のユーザーに向けて開発側が設計・提供するエクスペリエンスである」点が注目されます。パーソナライゼーションの重要性への注目が高まっている中で、この定義を理解することは有用と思われます。
「DX対応で注目される「ハイパー・パーソナライゼーション」とは」

 そして、パーソナライゼーションを推進するうえで最も大切な基礎は、顧客一人ひとりに関する正確なデータと、得られた顧客データに基づいて適切なアクションを実行できるシステムです。特に、Cookieをはじめとするサードパーティデータにより顧客を「推測する」モデルに限界がささやかれる昨今において、適切な同意のもとに顧客から提供されるファーストパーティデータの収集・活用することの重要性がますます高まっています。
「eコマース成功のカギを握るパーソナライゼーションに求められる顧客ID基盤とは」

SAP Customer Data Cloudは、ファーストパーティデータの活用を支える顧客ID管理基盤として、これらの要素に応える様々な機能を提供します。
まず、ユーザーの新規登録を容易なものとしたうえで、リレーションシップの進展につれて、ユーザーからの同意のもとに徐々にデータを集め、「シングル・カスタマー・ビュー」としてセキュアに管理するための様々な機能を提供します。
まず、「Light Registration」機能により、ユーザーにメールアドレスのみの入力を要請する画面を表示することができます。カスタマー・ジャーニーの最初の段階で「ライトな」リレーションシップを構築するうえで有用な機能となります。
「Light Registration]でメールアドレスを登録したユーザーが本登録したいと考えた場合は、登録済みのメールアドレスを用いてパスワードを設定するかたちで本登録に進むことも可能です。 この際に(あるいはその後に)「Progressive Profiling」機能により、ユーザーに対して徐々にデータの提供を要請する画面を表示することも可能です。もちろん、利用規約やプライバシーポリシーなど必要な「同意」を取得するための機能や、登録ユーザーが自身の「同意」や個人データの内容を確認し、いつでも「同意」を撤回したり、個人データを修正したり、削除を要請するといった機能も備わっています。
d さらに、Identity Syncと呼ばれるデータ連携機能を通じて、収集したデータをスピーディーにデジタルマーケティングシステムに連携させることが可能です。

当社は、SAPのパートナー企業としてSAP Customer Data Cloudの導入支援に豊富な経験を有しています。DX対応に関心をお持ちの方は、グローバルで高い評価を受けるSAP Customer Data Cloudの国内における豊富な導入支援実績を有し、高い評価を受ける当社にどうぞご相談ください。

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