目黒区福祉総合課 様

ひきこもり相談の新たなチャネルとしてビデオトークを導入
自室から利用可能な“表情が見える”面談が、当事者とつながるはじめの一歩に

東京23区の南西部に位置し、約28万人が暮らす目黒区。高齢人口率約19.7%(令和6年7月1日現在)ですが、高齢人口率は今後も上昇する見込みです。世帯については男女とも25~34歳の年代で単独世帯に属する人の割合が50%前後、また65歳以上の一人世帯数は年々増加しています。目黒区基本計画(令和4~13年)「さくら咲き 心地よいまち ずっと めぐろ」の実現に向け、区民の皆様が安全・安心して豊かな生活を送ることができるよう努めています。そんな目黒区の福祉の総合相談窓口(福祉のコンシェルジュ)で、ひきこもり状態にある人のオンライン相談のために導入されたのが、「ビデオトーク」です。外出が難しい当事者との接点強化といった導入背景や具体的な使い方、顔が見えるビデオ通話ならではのメリットについて、健康福祉部福祉総合課「ふくしの相談係」係長の小澤氏、導入を推進した中村氏、ひきこもり相談支援員の佐藤氏に伺いました。

ひきこもり当事者からの相談ハードルを下げたいと、自室から気軽に利用できるオンライン窓口の開設を検討

― 皆さまの部署のお仕事と役割について教えてください。

小澤氏:私たち3名は目黒区福祉総合課の「ふくしの相談係」に所属しています。主な業務は、当区で「福祉のコンシェルジュ」と呼ばれる総合相談窓口として、福祉にまつわる区民の方からの相談を受け、支援につなげていくことです。

高齢者、障害者、子ども、生活困窮など、分野を超えたさまざまな課題を抱える方のご相談を、まずは丸ごと受け止め、解決に向けてサポートしています。地域包括支援センター等の関係機関と連携し、縦割りになってしまいがちな制度のはざまにいる相談者の方々に寄り添い、課題の解決に向けた支援を行っています。

また、目黒区はエリアを5つの圏域に分け、それぞれ地域に密着した活動を担う「地域包括支援センター」を有していますので、そちらと連携しての後方支援も行っています。

― 総合的な福祉相談を受ける貴部署において、ビデオトークはどのような場面で使われているのでしょうか? 導入を検討されたきっかけ・背景と合わせてお聞かせください。

中村氏:ビデオトークは、ひきこもり状態にある方のオンライン相談のために利用しています。これまでひきこもりのご相談は、他の相談と同じく電話や来庁いただいての面談、ときにはご自宅への訪問で行っていました。しかしそれらの方法だけでは、ひきこもり状態にある当事者の方が相談をしようと思ったときのハードルが高くなってしまうのではないかと……。そのハードルを少しでも下げられればと考え、2023年4月頃から新たなチャネルとして、オンラインで相談可能なツールの検討を始めました。

佐藤氏:昨年度は全ての相談方法(オンライン・電話・面談・訪問)を合わせて約400件のご相談がありました(新規・継続相談含む)。その中で、ご家族や支援者からのご相談であれば、比較的すぐに予約や来庁いただけるのですが、ご自宅から出られずにいるご本人から直接相談いただけるケースはあまり多くありません。そこで、スマートフォンやPCなど日常的に利用されているツールを使って、ご自身の部屋から気軽に相談をしていただける環境があるとよいのではと考えました。

当事者の方とご家族がきちんと対話できている家庭でしたら、ご本人以外のお話からも状況が伝わってきますが、家族との会話も減っている場合、今ご本人が何を考えながら暮らしているのかが掴みにくくなってしまいます。ひきこもりのサポートでは、そうした思いの部分を合わせて支援の目標に据え置きますので、直接お伺いできる機会は大切なのです。

SMSで送ったURLをタップするだけの手軽な通話がポイント
自治体ならではのセキュリティ課題も他部署の活用実績でクリアに

― 実際にビデオトークの導入へと至る上で、ポイントとなった点を教えてください。

中村氏:検討の段階では、当区の「区民の声課」が取り組んでいる「法律相談」において、先にビデオトークを導入していたことがプラス要素になりました。自治体で新たなツールを導入するときは、セキュリティ面の課題がつきものです。その点について、「区民の声課」でビデオトークによる相談をすでに行っていた実績は大きかったですね。

導入にあたっては、試験的にビデオトークを使わせていただき、実際に活用できそうかを検討しました。その結果、アプリのインストールやアカウントの登録が不要で、操作も非常に簡単なことが分かりました。特に、相談者の方はこちらがお送りしたオンライン面談用のURLを、スマホやパソコン、タブレットからタップするだけで簡単に通話できるところは大きな利点だと感じました。この方法ならひきこもり状態にある方でも、面倒な手間なく使えます。そうした検証と同時に、4月から冬頃までの約半年をかけて、予算の確保や機材の購入などの準備を進めました。

― 現在のビデオトークの具体的な活用方法について教えてください。

佐藤氏:ビデオトークによるオンライン面談は、目黒区にお住まいの当事者やご家族、支援者の方などが、当区の公式ウェブサイトからお申し込みいただけます。こちらは匿名でのご利用も可能で、申し込み自体は24時間受け付けています。

オンライン相談の開始にあたり、チラシをつくったり、公式ウェブサイトに掲出したりしました。お申し込み手段は専用フォームから依頼いただく方法の他に、電話・FAXからも受け付けてはいますが、ひきこもり相談の場合、最初の申し込みが特に緊張されるタイミングではないかと思いますので、基本的にはテキスト情報だけで申し込みできるようにしています。

小澤氏:1回あたりの面談時間を45分程度に区切っていますので、お申し込み時にご希望時間帯に合わせていくつかの時間枠の中から選んでいただきます。その時間に合わせて面談用のURLをSMSでお送りし、アクセスいただく形で進めています。

ひきこもり当事者のほか、遠方に住む家族からの相談も実現
表情やしぐさを見ながらの対話が安心感につながる

― 実際にビデオトークを利用してみての所感やメリットについて教えてください。

佐藤氏:2024年1月からオンライン相談をスタートし、当事者のほか、遠方に住んでいてなかなか来庁できないご家族の方にもご利用いただきました。まだ数は多くないのですが、当初想定していた外出が困難なご本人だけでなく、時間的な制約などの事情によりオンラインを必要としている方にも活用いただけています。

私自身が利用してみて感じたメリットは、電話と違い、言葉以外の形でもコミュニケーションが取れる点です。ビデオ通話の場合、こちらも相手の方の様子を伺え、相談者さんもこちらの表情や身振りを見ながらお話できるので、より安心して相談いただけているのではないかと思います。

また、ツールとしても操作が本当に簡単で、直感的にわかるため助かっています。「これは何のボタンだろう?」「ここを押したらまずいかな」と迷うような余分な機能が付いていないので、不安を覚えることなく使えます。URLの送付についても、SMSの場合、5分前に送れば確実に届いて、決まった時間にトラブルなく開始できるので安心しました。

― 今後のビデオトークの活用方法として考えられていることがありましたら、教えてください。

中村氏:現状はひきこもりに関するオンライン相談をメインに使っていく予定です。ただ、相談者さんの中には社会に出ての就業や、生活の安定に向けた取り組みを考えている方がいらっしゃいます。そうしたサポートを見越して、今後は暮らしに関わる生活相談員や就労支援員と、ひきこもりの相談員が一緒に相談に乗れるような体制づくりをしていきたい。その過程でビデオトーク活用の幅が広がる可能性はあるかと考えています。

小澤氏:このオンライン相談を通して、まずはひきこもりに悩む方の相談のハードルを下げ、私どもとつながっていただくことが大切です。今回の取り組みで相談方法の選択肢が一つ増えました。今後も広報活動を通して、こうした形のご相談を必要とされる方への認知を広めていき、利用者の数を増やしていければと。まずはオンライン相談から少しずつ関係性を深め、いずれきっかけがあれば対面での面談や、当事者同士の交流の場につながるような関わりができるよう、活用を続けていきたいですね。

課題

  • ひきこもりの相談はこれまで電話や来庁がメインだったが、外出が難しい当事者が利用するにはハードルが高かった。
  • 家族との会話が少ない当事者の場合、家族からの情報だけでは、支援の目標を定めるうえで必要な本人の考えが分かりにくいケースがあった。
  • 電話での相談は、相手の顔や様子が見えないため、安心感をもって話すのが難しい利用者がいた。

効果

  • 自室から普段使いのスマホやパソコンで利用できるオンライン面談の選択肢が増え、当事者のほか遠方に住んでいる家族からも相談を受けられるようになった。
  • まずは気軽に相談し、支援員とつながる方法を一つ増やせた。
  • 相談支援員も相談者も相手の表情やしぐさを見ながら話ができるため、より安心感をもって対話できている。

お客様プロフィール

目黒区福祉総合課様

目黒区福祉総合課 様

https://www.city.meguro.tokyo.jp/index.html

東京23区の南西部に位置し、約28万人が暮らす。JR山手線渋谷・恵比寿・目黒の各駅に近接、環状七号線等の幹線道路が通るなど交通利便性が高く、桜の名所・目黒川を有するなど自然も豊かで、住宅地と商業地の調和が取れた街として知られる。福祉総合課では、福祉のさまざまな相談をワンストップで受け止める福祉の総合相談支援を行っている。

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