eNPS℠業界別分析レポート

従業員エンゲージメントを測る指標であるeNPS(Employee Net Promoter Score)を分析したレポートです。
10業界を対象に従業員エンゲージメントに影響を与える要因や、eNPSと顧客ロイヤルティの関連などについてまとめております。
是非ご覧ください。

対象業界(以下10業界)
エネルギー(電力・都市ガス)、銀行、クレジットカード、航空・トラベル、自動車メーカー、スーパーマーケット・GMS、生命保険、製薬、損害保険、通信キャリア(MVNO含む)

<調査結果のポイント>

1. 全10業界で最もeNPSが高いのは製薬業界、10業界の平均は-62.5

eNPSは従業員の職場に対する信頼や愛着度など従業員エンゲージメントを測る指標となります。就職先として自身の職場を薦めたいか?」という就職先としての推奨度合いを聴取し、回答結果から「推奨者(「9」~「10」の回答者)」、「中立者(「7」~「8」の回答者)」、「批判者(「0」~「6」の回答者)」に分類し、推奨者の割合から批判者の割合を引いた値をeNPSとして算出します。

図:eNPSの算出方法

図:eNPSの算出方法

今回、「NTTコムオンライン NPSベンチマーク調査」(https://www.nttcoms.com/service/nps/report/)の調査対象から、10業界・117の企業に勤務している方を対象にeNPSの調査を実施しました。最も高いのは製薬業界の-55.4ポイントとなり、10業界全体のeNPS平均は-62.5ポイントとなりました。

図:eNPS業界比較(10業界)

図:eNPS業界比較(10業界)

2. 経営・管理職層への信頼や会社の将来性、理念・経営方針への共感が従業員エンゲージメント向上の鍵に

対象とした10業界全体における従業員エンゲージメントに与える要因について、「経営」、「人事施策」、「労働環境」、「リーダーシップ」、「連帯感」、「顧客志向」、「自分の仕事」の7つの観点から、会社に対する評価について40項目で分析を行いました。その結果、従業員エンゲージメントを醸成する要素としては、会社の社会に対する貢献実感や、会社の目標に対する理解に関する項目(「自分の会社は社会に貢献していると感じる」など)となりました。また人事施策や労働環境に関連した項目(「性別・年齢・雇用形態等の属性を問わず公平に発言ができる」など)も従業員エンゲージメントを高めている要素となりました。

一方でエンゲージメントを阻害し、今後の改善が求められる項目としては経営側に対する信頼や共感、将来性についての項目「経営・管理職層を信頼している」など)となりました。また、職場の連帯感(「あなたの職場は、個々の個性や能力が活きるような仕事ができる」など)やキャリア形成に関連した項目(「現在の会社で、自分の目指すキャリアパスを実現することができる」)のほか、職場の風土や上司からの評価などで不満がみられる結果となりました。

図:全10業界の従業員エンゲージメントの要因分析(ドライバーチャート)

図:全10業界の従業員エンゲージメントの要因分析(ドライバーチャート)
※詳細はダウンロード資料をご参照ください:https://www.nttcoms.com/service/nps/report/employee-engagement-specialreport/inquiry/

自由記述においても、推奨者では「世の中に良いことをする仕事だと思う(製薬、50代男性)」といった仕事を通じた社会への貢献実感や、「人材育成がしっかりやられていてスキルアップできる(自動車、50代男性)」などの成長機会があること、また「社内の風通しがよく、上司や同僚、部下とのコミュニケーションが取りやすい(銀行、30代男性)」などの社内コミュニケーションが良好であることなどが推奨理由としてみられました。

一方、批判者の自由記述では、「現時点で経営状態は問題ないが、将来的に不透明(損害保険、50代男性)」、「誰もが名を知る大企業だがそのせいか経営層が従業員層のことを理解していない気がする(通信キャリア、30代女性)」といった、経営層との信頼関係や会社や業界の将来展望に関する不安などが上がっており、経営層が会社の将来を見せられることができていないことがうかがえるものとなりました。また、「サービス残業が多い、DXなどIT化を進めるのに非常に消極的(スーパーマーケット・GMS、50代男性)」や、「人間関係が複雑で新しいものを拒む体質だから。(クレジットカード、40代女性)」といった労働環境や人間関係に対する不満の意見もみられました。

3. 会社の方向性や社会に対する貢献性、また仕事のやりがいへの評価は役職別で大きく乖離

役職別(管理職未満・管理職以上)にeNPSを分析したところ、管理職以上の役職についている回答者のeNPSは-48.8ポイントと、管理職未満(-66.5ポイント)よりも高くなりました。

図:役職別のeNPS ※契約社員は除く

図:役職別のeNPS
※契約社員は除く

役職別に従業員エンゲージメントに影響を与える項目の評価を比較したところ、管理職以上の回答者の評価はいずれの項目でも管理職未満の回答者の評価を上回りました。最も差分が大きくなったのは「会社が立てている戦略・目標を理解している」となり、次いで「自分の会社は社会の貢献していると感じる」、「現在の仕事にやりがいを感じる」といった項目が続きました。従業員エンゲージメントにも高い影響を与える項目である、会社の方向性や社会に対する貢献性、また仕事のやりがいにおいて、役職間での評価が大きく乖離している結果となりました。

図:従業員エンゲージメントの要因項目の評価比較

図:従業員エンゲージメントの要因項目の評価比較
※差分が大きい上位5項目について掲載
※契約社員は除く

4. 顧客ロイヤルティが高い企業のeNPSは高く、eNPSと業績は連動している

自社に対するエンゲージメントが高い従業員は、顧客に対しより高品質で優れたサービスを提供したいという気持ちや熱意をもって仕事に取り組むとされています。その結果、顧客ロイヤルティが向上し、結果として企業の業績が上がる好循環を作ることができます。

図:eNPSとNPSおよびビジネスパフォーマンスの循環

図:eNPSとNPSおよびビジネスパフォーマンスの循環

弊社では顧客ロイヤルティを測る指標であるNPSを用いた「NTTコムオンライン 業界別NPSベンチマーク調査」(https://www.nttcoms.com/service/nps/report/)を2016年から実施しており、毎年各業界のNPS上位企業を公表しています。

「NPSベンチマーク調査」の調査結果のNPSランキング別にeNPSを分析したところ、「NPSベンチマーク調査」でNPSランキングの上位企業のeNPSは-56.0ポイントと中位・下位企業よりも高く、顧客ロイヤルティが高い企業ほど従業員エンゲージメントも高い傾向がみられました。

「NPSベンチマーク調査」の顧客ロイヤルティランキング順位別eNPS

「NPSベンチマーク調査」の顧客ロイヤルティランキング順位別eNPS
※1:ランキングの順位は各業界で実施した最新の調査結果を参照(製薬会社は循環器部門を対象)
※2:上位/中位/下位の分類は各業界のランキング対象社数に応じて等分になるよう分類した。

また、例として生命保険、銀行、損害保険、およびエネルギー(電力・都市ガス)の業界の企業を対象に、各社の売上の年平均成長率(2018年度~2022年度)とeNPSとの関連を分析したところ、eNPSが高い企業は売上の年平均成長率も高くなる傾向がみられました。

eNPSが高い企業の顧客ロイヤルティは高い傾向となり、また結果として売上などのビジネスパフォーマンスの向上にもつながっていることがうかがえる結果となりました。

eNPSと売上の年平均成長率の相関

eNPSと売上の年平均成長率の相関
※1:例として生命保険・銀行・損害保険・エネルギー業界のうち、n=30以上の回答が回収できた15社を対象に分析
※2:売上高は各社IR資料などを参照(生命保険は保険料等収入を対象、また売上には連結を含む)

5. 職場推奨度が高いほど、継続勤務意向も高くなる

今後も同じ職場で働きたいと思うか、継続勤務意向を0~10の11段階でたずねたところ、「推奨者」は平均8.8ポイント、「中立者」は平均7.5ポイント、「批判者」は平均4.4ポイントとなり、推奨度が高いほど継続勤務意向も高くなる結果となりました。

図:推奨セグメント別継続勤務意向

図:推奨セグメント別継続勤務意向

<調査概要>

  • 調査対象業界(50音順):
    エネルギー(電力9社、都市ガス5社)、銀行(12行)、クレジットカード(14社)、航空・トラベル(15社)、自動車メーカー(9社)、スーパーマーケット・GMS(4社)、生命保険(13社)、製薬(18社)、損害保険(12社)、通信キャリア(MVNO含む)(6社)
  • 調査対象者:インターネットリサーチモニターのうち、上記業界の「NTTコムオンライン NPSベンチマーク調査」対象の企業にお勤めの方
  • 調査方法:NTTコム リサーチ*による非公開型インターネットアンケート
  • 調査期間:2023/10/6 (金)~ 2023/10/11(水)
  • 有効回答者数:2,153名
  • 回答者の属性:
    • 【性別】男性:73.9%、女性:26.1%
    • 【年代】20代以下:6.7%、30代:18.6%、40代:26.8%、50代:36.9%、60代:11.0%

従業員エンゲージメント調査

本レポートからもeNPSを向上させることで、良い製品・サービスの提供を生み、結果として顧客ロイヤルティも高まることが伺えます。

自社の従業員エンゲージメントの阻害ポイントを明確にし、改善点を明確にするeNPS・従業員エンゲージメント関連ソリューションを提供しています。

Net Promoter®およびNPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズ(現NICE Systems,Inc)の登録商標です。
また、eNPSは、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズ(現NICE Systems,Inc)の役務商標です。