2020/01/24
技術・アーキテクチャ
自社にマーケティングオートメーションツールを導入するためには、当然ながらそれを受け入れるための体制が必要となります。
この体制にはプロジェクトマネージャのみならずシステム開発者(社内ITチームやベンダ等)が含まれますが、せっかく十分な技術者を確保していても、ある点を見落としてしまうことで、計画していたリリースを迎えられないことが起こり得ます。
本コラムでは、マーケティングオートメーションツール「Salesforce Marketing Cloud(以下、SMC)」を例に、プロジェクト進行において見落としやすい3つのシステム設定に関する要素をフォーカスしてご紹介します。
設定したシステムからメールを配信するためには、事前に「送信元アドレス」を決定し、DNS設定やドメイン調達を完了している必要があります。
送信元アドレスはFromアドレスとも呼ばれ、受信したメールのFrom欄に表示されるメールアドレスのことを指します。
SMCでは、以下の3つの方法から送信元アドレスのドメインを決定することが可能です。
① 自社ドメイン(新規サブドメイン)を利用 | 自社ドメインからSMC専用のサブドメインを新規取得し、管理を製品提供元のSalesforce.com社に委任します。 設定が容易かつ自社独自のドメインを使用することができるため、最も推奨している方法となります。 |
② 自社ドメイン(既存ドメイン)を利用 | 自社の既存ドメインに指定のレコードを登録し、自社が管理します。 高度な設定や自社メンテナンスが必要となるため、十分な作業期間と管理体制を要する方法となります。 |
③ 新規ドメインを利用 | ドメインの新規取得・管理を製品提供元のSalesforce.com社が実施します。 最も容易な方法ではありますが、既に取得されているドメインを使用することができないため、自社ブランディングを適用できない場合があります。 |
上記のいずれの方法においても、作業実施には社内システム部門や製品提供元のSalesforce.com社の協力が必要になります。
そのため、滞りのないプロジェクト進行には自社部門だけでなく、他関係者のリソースや作業期間を事前に確認・確保しておくことが大切です。
SMCのライセンス調達時に「SSL Certificateオプション」を購入すると、メールを受信したお客様に安全な接続を提供することができます。
本オプションはメールの本番配信前に有効化しておくことを推奨しており、この作業によって、以下の要素がセキュアなプロトコルであるHTTPSに対応するようになります。
前段で説明したDNS設定と同様、この作業には製品提供元のSalesforce.com社の協力が必要です。
そのため、プロジェクトの開始時には送信元アドレスの決定に加え、本作業を先行して着手することが円滑なプロジェクト進行に繋がるでしょう。
新規に取得したIPアドレスからメールを大量配信する場合、事前にIPウォーミングを実施しておく必要があります。
IPウォーミングとは、メールの送信量を段階的に増やすことでISP(インターネット・サービス・プロバイダ)からのIPアドレスの信頼性を高め、お客様のメール到着を確実にする手法です。
Marketing Cloudでは、ISPごとにおよそ20,000通の配信を超過する場合を目安にIPウォーミングを実施し、以下は配信計画の例となります。
ドメイン | 1週目 | 2週目 | 3週目 | 4週目以降 |
---|---|---|---|---|
Gmail | 20,000 通 | 40,000 通 | 80,000 通 | 160,000 通 |
Yahoo! | 20,000 通 | 40,000 通 | 80,000 通 | 120,000 通 |
OCN | 20,000 通 | 40,000 通 | 60,000 通 | 60,000 通 |
So-net | 10,000 通 | 10,000 通 | 10,000 通 | 10,000 通 |
メールの配信到達性を向上させるためには、配信に使用するIPアドレスがISPから信頼されていることが重要な指標となります。
メールの配信を辞めてしまうと信頼性が低下する恐れがあるため、IPウォーミングが完了した後も定期的なメール配信を続けることを推奨しています。
以上、プロジェクト進行において見落としやすい3つのシステム設定に関する要素をフォーカスしてご紹介させていただきました。
プロジェクトスケジュールにはこれらのタスクを必ず考慮し、また、自社のみならず社外(Salesforce.com社)の作業によって進行がスケジュール通りにいかない可能性もあるため、十分な期間を確保してから計画を立てることを推奨しています。
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