KPIの意味や効果とは?参考例や設定方法・グロースにつなげるポイントを解説

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KPIとは、ビジネスを継続して成長させるために欠かせない指標です。企業の最終目標となるKGIから逆算して導き出し、優先度設定や効果測定を実現します。この記事では、KPIの意味や効果、設定方法などについてわかりやすく解説します。またあわせて、KPIをグロースにつなげるポイントもお伝えするのでぜひ参考にしてください。

KPIの意味とは?

「KPI」とはKey Performance Indicatorの頭文字をとった略称で、目標の達成度合いを定量的に計測するための指標です。日本語では「重要業績評価指数」と訳されます。KPIを測定することで目標までの進捗を把握でき、また目標までの到達率を数値で可視化することで組織の活動を活性化できます。KPIの内容は、業界や目的によっても異なります。例えば、営業部門で使用されるKPIには受注率や商談数などの指標があり、これらを測定することで受注数や売上などの最終目標を達成しやすくなります。

KPIと類似した指標との違い

以下は、KPIと類似した指標「KGI」「OKR」「KSF」「KDI」の概要や、KPIとの違いについてまとめたものです。

概要 KPIとの違い
KGI
(Key Goal Indicator)
  • 最終的な経営目標(重要目標達成指標)
  • KPIは目標達成までのプロセスを評価する指標
  • KGIは企業全体の最終目標
OKR
(Objectives and Key Results)
  • 達成目標と主要な成果
    (目標の設定・管理方法の一つ)
  • GoogleやFacebookなどの大企業が取り入れている
  • KPIは具体的な数値を設定
  • OKRは一部定性的な目標設定を行うケースもある
  • KPIの達成率は100%が望ましいが、OKRは60~70%程度で成功とみなす
KSF
(Key Success Factor)
  • 重要成功因子(目標達成のためにどのような要因が必要かを特定する)
  • KSFはKGIを達成するために欠かせない成功因子
  • KSFが決まると自ずとKPIも決まる
KDI
(Key Do Indicator)
  • KPI達成のために必要な要素
    (どのような行動をどのくらい行うかを設定する)
  • KPIは結果をコントロールするのが困難
  • KDIはアクションの指標なので比較的コントロールしやすい
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KPIを設定することの効果

ここでは、KPIを設定することによって得られる主な3つの効果について解説します。

個人目標の明確化

企業全体の目標を達成するためには、個人が明確な目標を持つことが必要不可欠です。KPIを設定することで、社員一人ひとりの目標が明確になりやすくなります。何をすればよいかがはっきりすると業務の効率化が図れるため、行動がしやすくなるのもメリットです。また、個人目標の明確化はPDCAサイクルをスムーズに回すことにもつながります。

成果が出ていない場合は、改善点を可視化できるのがポイントです。適宜振り返りを行い、設定した目標が適切であったかを確認することもできます。

プロセスの明確化

KPIの指標を定めることで、目標達成までのプロセスを可視化できます。目標達成のためにどのようなプロセスが必要かが見えるので、社員が行動しやすくなるでしょう。後述するKPIツリーなどを用いると、さらに見える化が進みます。プロセスが明確になるとPDCAを効率良く回せるうえ、モチベーションを保ちながら業務を遂行できます。

特に規模が大きい企業の場合、各タスクの進捗状況を把握しにくいという傾向があります。KPIを設定してプロセスを可視化できれば、チームの進捗状況を把握しやすくなるのがメリットです。

評価基準の統一

KPIで数値化できる指標を設定することで、客観的な見方が可能になります。例えば、売上目標を2,000万円としていた場合、単純に売上が2,000万円に到達すれば目標達成、到達しなければ目標が達成できなかったことになります。明確な数値を設置しておくことで誰もが納得できる評価基準を定められ、公正な評価を下せる、属人性を排除できるなどの効果に加え、成果が出たあとの振り返りもラクに行えます。

評価基準が曖昧で、かつ体系化できていない場合、社員が不満を持つかもしれません。社員のモチベーションを上げるためにも、業務の可視化に加え、評価の見える化も実施する必要があるでしょう。

KPIとして設定される指標の参考例

ここでは、企業の各部門でKPIとして設定される指標の参考例を見ていきましょう。

インサイドセールスで活用されるKPI

インサイドセールスとは、見込み客に対して電話やメールを利用して営業活動を行う部門です。また、顧客へヒアリングを行い、顧客の課題を洗い出して検討段階に移行させるといった見込み客の育成も行います。インサイドセールスでは、以下のようなKPIがよく設定されます。

  • メール開封率
  • 商談件数
  • 商談単価
  • 受注件数
  • 架電数

インサイドセールスでは、営業活動に必要なアクションや、アクションからのアウトプットを評価することが重要です。また、担当者ごとにばらつきが出ないよう、架電数に対する商談発生率などをサブ項目として追うケースもあります。

コンテンツマーケティングで活用されるKPI

コンテンツマーケティングとは、単に自社の商品やサービスを売り込むのではなく、ユーザーにとって役立つコンテンツを発信する間接的なプロモーションのことです。ユーザーとの関係性を構築しながら、潜在的な顧客候補になってもらうことを視野に入れた活動を行います。KPIとして、以下のような指標で効果を確認できます。

  • 資料ダウンロード数
  • SNSのフォロワー数
  • キラーコンテンツへの遷移数
  • セミナー参加者情報取得件数
  • 登録後のメルマガ発信許可件数

カスタマーサクセスで活用されるKPI

カスタマーサクセスとは、リピート顧客化を目指し、顧客のフォローを行う部門です。特にサブスクリプションビジネスが主流になっている昨今、新規獲得した顧客と長期的に安定した取引をすることが求められています。企業から顧客へ積極的にアプローチし、顧客の満足体験を引き出し提案を行うのが役割です。カスタマーサクセスでは、KPIに以下のような項目が設定されます。

  • 解約率(チャーンレート)
  • NPS(顧客推奨度)
  • オンボーディング完了率
  • アップセル/クロスセル率
  • ライフタイムバリュー(LTV)
  • 平均顧客継続契約期間

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KPIの設定方法を5STEPで解説

KPIの設定時に欠かせないのがKGIとKSFの分析です。これら2つの指標とKPIを関連づけることで一貫性のある施策を実施できます。ここでは、KPIの設定方法を5STEPで解説します。

STEP1|KGIの設定を行う

初めに行うのが最終目標であるKGIの設定です。KPIはあくまでKGIを達成するためのプロセスであるため、KGIを明確にすることで一貫性のあるKPIが設定できます。企業が達成したいゴールや目的を据え、何を実現したいのか、企業全体で共通認識を持つことが重要です。そうすることで、社員の目標達成への意欲も変わります。

同時に、KGIを設定する際には定量的に計測でき、達成可能な指標を用いることもポイントです。KPI設定時にKGIから逆算できるよう、達成すべき売上や利益率、販売数など、なるべく具体的な数値として定義しておきましょう。

STEP2|KGIを構成するKSFを洗い出す

続いて、KGIを構成する要素であるKSFを洗い出します。KSFは上述したとおり、事業を成功に導くために必要となる重要な要因のこと、つまり「カギとなる成功因子」です。KSFを洗い出すことは、限りある資源を有効活用し、効率良く結果を出すために欠かせません。成功因子とそれ以外を明確に区別し、成功因子に資源を投入する必要があるでしょう。

例えば、有名なKSFの事例として、携帯電話会社の「顧客獲得スピード」や紙おむつ業界の「価格の安さ」などが挙げられます。「顧客獲得スピード」をKSFにした理由は、一度契約すると他者に乗り換えにくいという携帯電話サービスの特性があるからです。本体の無料販売や、営業・店舗店員の強化など、顧客獲得スピードを向上させる戦略を講じることで、大きな成果を生み出した事例といえます。まずはKGIを細分化しながら自由にアイデアを出し合い、KGI達成に欠かせない重要な要素を絞り込んでいく作業が必要です。

STEP3|KPIで目標数値を可視化する

続いて、洗い出したKSFをもとにKPIを設定します。これはKSFで導き出した成功因子を、KPIで可視化できる目標数値に落とし込む作業です。設定する際には関係者間でディスカッションを行い、合意のうえで設定するようにしましょう。また、KPIをあまりにも多く設定しすぎるとかえって作業効率が落ちる可能性があるため、本当に重要なプロセスのみを設定しなければなりません。

とはいえKGI達成までにはさまざまなパターンがあるため、最適なKPIを見極めるのは容易ではありません。後ほどご紹介する「SMARTの法則」は、KPI設定の際によく使われる手法なのでぜひ参考にしてください。

STEP4|KPIツリーを作成する

KPIの設定が終わったら、KPIツリーを作成しましょう。KPIツリーとは、最終目標のKGI を頂点に、KPIを樹形図で可視化したものです。KPIツリーを作成することでKGI、KSF、KPIの関係性が明らかになり、組織間で共有しやすくなるというメリットがあります。作成する際のポイントは、「KGIを頂点にしてピラミッド型にKPIを設置する」「論点や粒度を揃える」の2つです。KPIを可視化したKPIツリーは、目標達成への指標を整理するために役立ちます。

STEP5|定期的に効果測定と見直しを行う

KPI設定後は、定期的に進捗率や妥当性などを評価し、見直しを行うことが重要です。初めに設定した目標を問題なく達成するのが理想ですが、実際にはKPIの数値が適正ではなかった、進捗率が悪くKPIの修正が必要になったなどのケースもあります。KPIの精度を高めるためにはPDCAサイクルを回すことが有効です。計測・評価の施策を実施し、見直しを行うことで最適化されていくはずです。

KPI設定は「SMART」を意識する

KPI設定時によく使われるのが「SMARTの法則」です。現実的な視点を取り入れながら目標を設定できるため、目標達成の可能性が高まります。ここでは、「SMART」についてそれぞれ解説します。

Specific(具体的な)

「Specific」には「具体的な」「明確な」という意味があります。目標を立てる際には、明確でわかりやすい指標を設定することが重要です。KPIは本来、個人の視点ではく、社内やチーム間で共有するものです。そのため、「誰が見ても同じ認識を持てるほど明確な指標であるか」が問われます。

例えば、「ヒット商品を生み出す」という目標を掲げたとしても、ヒットの定義は人それぞれです。KPIの効果を高めるためにも、「年間で1,000万円売上を上げる」「製品を5,000個販売する」など、より明確な目標が必要になります。

Measurable(測定可能な)

「Measurable」は「測定可能な」という意味の言葉です。KPIの設定において、評価基準を明確にするためにも、目標の達成度が測れるかどうかは重要な指標となります。この場合、曖昧な目標値の測定ではなく、進捗具合や現状の数値の測定を指します。

KPIが測定可能であれば、課題の発見やPDCAの効率化につながります。曖昧な目標設定では進捗具合が測れず、正しい評価は行えません。数値化しにくいものをKPIに設定すると、目標の達成度を確認しにくいケースもあるので気をつけましょう。

Achievable(実現可能な)

「Achievable」には「実現可能な」という意味があり、KPIの設定において「達成可能な目標か」を判断します。達成困難なKPIには、社員のモチベーション低下やプロセス設定が困難になるといったデメリットがあります。目標が低すぎても成長が難しいため、現状より少し上のレベルを設定するのがおすすめです。「努力すれば達成できる目標か」を目安にするとよいでしょう。まずは達成可能なKPIを設定し、その後に具体的なアクションプランを策定します。

Relevant(関連性のある)

「Relevant」には「関連性のある」という意味があります。KPIは企業の目標達成のために設定するものなので、最終目標であるKGIと直結していることが必要です。同時に、他部署のKPIとも関連させて設定する必要があります。また一方で、Relevantには「自分の利益に関連しているか」という視点もあります。昇給やボーナスなど自分の利益を考慮することでモチベーションを維持でき、自己成長にもつながると考えられます。

Time-related(期限が明確な)

「Time-related」は期限が明確なことを指し、目標に期限が設定されているかの指標として用いられます。達成期限が曖昧だとアクションプランの構築が難しく、目標達成が先延ばしになってしまう可能性があります。「〇〇(いつ)までに△△を終わらせる」と具体的に計画することでやるべきことが明確になり、作業効率の向上も期待できます。

KPIを設定する際に注意するべきこと

KPIを設定する際には、いくつか注意するべきポイントがあります。まずは、KPIをシンプルな設計にすることです。例えば、1つのKPIに多くの要素を盛り込んでしまうと、優先する要素が曖昧になり迷いが生じてしまいます。誰が見ても理解できる、単純化した指標を設定するようにしましょう。

また、制御可能な要素を設定することも重要です。自己の努力や活動量で成果が出にくい要素を盛り込んでしまうと、失敗時の分析がしにくいというデメリットがあります。継続することや、スキルアップで実現できる項目にすることが必要です。

さらに、変化に合わせてKPIを追加・変更していくことも求められます。テクノロジーの進化や時代の変化に合わせて適宜KPIを追加することは、競合企業への優位獲得性にもつながります。最初に設定したKPIを無理に継続させるのではなく、柔軟な対応が必要です。

ビジネスグロースに貢献するKPI設定に重要なこと

KPIをビジネスグロースにつなげるためには、自社のビジネスモデルと指標への深い理解が必要です。ここでは、それらを踏まえてKPI設定に重要なことを紹介します。

North Star Metric(北極星指標)を見極める

「North Star Metric(北極星指標)」とは、ビジネスグロースに貢献し、KGIを達成するための重要な指標です。一般的な売上目標などとは異なり、「顧客視点」を加味しているかがポイントです。North Star(北極星)はかつて、磁石がなかった時代に人々が方角を知るための指標でした。North Star Metricを見極めることにより、会社やチームのメンバーが同じ方向を見て業務を遂行でき、チーム内に一体感が生まれます。

自社の商品やサービスの特性を分析したうえで顧客の行動を理解し、関連性のある顧客体験や戦略を割り出しながらNorth Star Metricを見極めていきましょう。唯一の優先事項ではなく最優先事項と認識し、他のKPIも加味して戦略を考えることが必要です。

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指標の内容を自社に最適化する

適切な指標をKPIに設定したとしても、必ずしもどの企業も成功するとは限りません。企業や組織ごとに最適なKPIは異なるため、より成功率を高めるには、自社のビジネスモデル固有のものを認識して設定することが重要です。成功事例のある他社を真似するのではなく、組織全体で「自社にとって最適なKPIは何か」を考えていきましょう。

高効率・高精度なデータ収集・分析をする

自社に適したKPIを設定するためには、正確な情報把握や適切なNorth Star Metricの見極めが必要です。それらを行うためには、顧客の行動データを高い精度で分析する必要があります。さまざまな分析を視覚的に理解し、顧客の行動パターンを見える化する分析ツールの導入が効果的です。プロダクトの構築、販売に重要なKPI設定をさらに詳しく知りたい方は、以下の「Mixpanelプロダクト指標ガイド」をダウンロードしてみてください。

https://www.nttcoms.com/service/mixpanel/seminar/download04/

KPI設定に役立つデータ分析ツール「Mixpanel」

Mixpanelはユーザーの行動を理解し、満足度向上を実現するためのデータ分析ツールです。新規ユーザーやリピートユーザーなどの行動を分析することでその推移を把握し、企業の商品やサービスの改善に役立ちます。これらのデータ収集・分析は、North Star Metricの効果を最大限に引き出すことに加え、顧客理解、適切なKPI設定の助けとなります。

Mixpanelはあらゆる業種に最適な指標の追跡・管理・向上を実現するために設計されたユーザーアナリティクスソリューションを構築しています。また、直感的なUIを採用しており、ユーザーフレンドリーな点も魅力です。

最適なKPI設定でビジネスグロースを目指す

KPIはKGIに向かって何をするべきなのかを見える化した指標です。KGIとの関係性をしっかりと理解して最適なKPIを設定できれば、企業力の向上やビジネスグロース、社員のモチベーションアップなども期待できます。何から始めればよいかわからないという場合は、行動データ分析ツール「Mixpanel」の導入がおすすめです。NTTコム オンラインがプラニングから導入、運用までサポートし、KGI達成のための最適なKPI設定を支援します。

『Mixpanel』
https://www.nttcoms.com/service/mixpanel/