ユーザーセグメントとは?セグメントの種類や作り方、企業の事例を紹介

目次

マーケティングの成果を上げるためには、ユーザーの特性や行動を踏まえてアプローチする必要があります。そのためには「ユーザーセグメント」を押さえることが大切です。

この記事では、ユーザーセグメントの基礎知識を踏まえつつ、セグメントの種類や作り方、企業での活用事例などについて解説します。ユーザーセグメントの知識を詳しく学べる内容なので、ぜひお読みください。

記事の要約
  • ユーザーセグメントとは、ユーザーの年齢や行動パターンといった特性に基づいて分けられたグループのこと
  • ニーズの多様化や取得データ量の増加により、ユーザーセグメントの重要性は高まっている
  • ユーザーセグメントは人口動態変数・心理的変数・地理的変数・行動変数の4種類
  • ユーザーセグメントを作る際は、データ収集→セグメント定義→ターゲティング・効果測定の順に取り組む

ユーザーセグメントとは?

ユーザーセグメント(顧客セグメント)とは、ある特性に基づいて区分されたユーザー(顧客)のグループのことです。ユーザーを区分するプロセスは「セグメンテーション」と呼ばれています。

基準となる特性はさまざまであり、年齢や性別といったわかりやすい要素、商品購入やサイト閲覧といった行動をパターン化した要素などがあります。

セグメンテーションの実施により、これまで漠然としていたユーザー像を細分化することが可能です。事業内容に合ったターゲティングやマーケティング施策のパーソナライズが主な目的であり、各ユーザーの特性に応じた個別のマーケティングを目指します。

ユーザーセグメントの効果

ユーザーセグメントには、ユーザーに対する理解を深める効果があります。具体的に説明すると、ある事業に最もインパクトのあるユーザーセグメントや離脱するユーザーの特徴などがわかるということです。

セグメンテーションを行うことにより、特定のユーザーセグメントにどのようなアクションを起こすべきか認識できるようになります。

また、マーケティング施策のパーソナライズにも効果的です。ユーザーセグメントごとに適切な施策を実施できるうえ、顧客ロイヤルティの醸成やCVRの改善も見込めます。マーケティングの無駄を省けるので、業務効率化にもつながるでしょう。

ユーザーセグメントの重要性が高まる背景

ユーザーセグメントの重要性が高まっている理由としては「ニーズの多様化」と「取得できるデータ量の増加」が挙げられます。

ニーズの多様化

従来のマーケティング手法は、テレビCMや新聞広告といった不特定多数に向けたマスマーケティングが主流でした。しかし、近年はニーズの多様化にともない、マスマーケティングの効果は薄れています。

ユーザーのニーズが多様化した要因としては、スマートフォンをはじめとする個人情報端末の普及、動画プラットフォームやSNSの隆盛などが挙げられます。

細分化したニーズを捉えるためには、セグメンテーションをきちんと実施し、適切なアプローチを行うことが大切です。

取得できるデータ量の増加

テクノロジーの進化により、企業はSNSやオウンドメディアなどを通じて、より多くのユーザーデータを容易に取得できるようになりました。それに伴い、データをもとにユーザーのセグメンテーションを行うことが一般化しているので、現状に対応しなければ競争力を維持することが難しい環境になっています。

闇雲にマーケティング施策を実施しても、コストに見合った効果は期待できません。増加したユーザーデータを活用するために、ユーザーセグメントが必要不可欠です。

ユーザーセグメントの種類

ユーザーセグメントを作成する場合、以下の4種類の方法によってユーザーを区分します。それぞれ概要や例をまとめました。

人口動態変数(デモグラフィック)

人口動態変数(デモグラフィック)とは、ユーザーの客観的な要素を基準にセグメンテーションする方法です。例として、以下のような要素が挙げられます。

<人口動態変数の例>

  • 年齢
  • 性別
  • 家族構成
  • 職業
  • 年収
  • 学歴

年齢なら20代や30代、年収なら400万円台や500万円台といったカテゴリで区分します。また「独身で一人暮らし」のように、より細かく区分されるケースもあります。

このような人口動態変数のデータは比較的取得しやすいので、使用頻度も高めです。

心理的変数(サイコグラフィック)

心理的変数(サイコグラフィック)とは、ユーザーの心理的な要素を基準にセグメンテーションする方法です。ニーズの多様化に伴い、今まで以上に重要性が高まっています。

<心理的変数の例>

  • パーソナリティ
  • 価値観
  • ライフスタイル
  • 趣味嗜好

パーソナリティなら高級志向と庶民派、ライフスタイルならアウトドア派とインドア派といったカテゴリで区分します。

人口動態変数が同じであっても、心理的変数が異なるケースは多いので、よく組み合わせて活用されています。

地理的変数(ジオグラフィック)

地理的変数(ジオグラフィック)とは、地理的な要素を基準にセグメンテーションする方法です。例として、以下のような要素が挙げられます。

<地理的変数の例>

  • 地方
  • 市区町村
  • 人口密度
  • 気候

地方なら関東と関西、人口密度なら都市と郊外といったカテゴリで区分します。

デジタルマーケティングにおける地理的変数の使用頻度は低めですが、気候や地域特性といった要因で売れ行きが変化する事業ではよく活用されています。他の方法と組み合わせれば、さらにマーケティングの精度を高めることが可能です。

行動変数(ビヘイビアル)

行動変数(ビヘイビアル)とは、ユーザーが商品やサービスを購入した際の行動パターンを基準にセグメンテーションする方法です。

<行動変数の例>

  • 購入履歴
  • 購買頻度
  • 購入目的
  • 購入時間帯

上記の要素で分類すると、以下のように区分できます。

  • ロイヤルカスタマー:自社のブランドや商品に対する忠誠心が高い顧客
  • リピーター:リピート購入している顧客
  • トライアラー:新規顧客

行動変数は主にECサイトのデータなどで活用されており、ユーザーの状態ごとにセグメントしてアプローチできます。

ユーザーセグメントの具体例

前項で解説した内容を踏まえつつ、ユーザーセグメントの具体例も紹介します。

例えば、女性用化粧品メーカーの場合、ECサイトに訪れるユーザーを以下のように分類します。

ユーザーA ユーザーB ユーザーC
年齢 20代 30代 40代
家族構成 独身 2人暮らし(夫) 4人暮らし(夫・子供2人)
職業 フリーター 看護師 事務職
購入頻度 低い 高い 低い
肌の悩み 肌にハリがない 肌荒れがひどい シワが気になる
表の続き →

なお、ユーザーセグメントを作成する際は、グループの規模に注意しなければなりません。規模が大きすぎると競争も激しくなり、逆に小さすぎると売上向上などの成果も上げにくくなります。

ユーザーセグメントを活用するSTP分析

STP分析とは、Segmentation(セグメンテーション)・Targeting(ターゲティング)・Positioning(ポジショニング)の頭文字をとって命名された分析方法です。

ユーザーセグメントを作成する際は、あらかじめSTP分析についても理解する必要があります。STP分析はセグメンテーションをベースに、ターゲティング・ポジショニングを実施するためのものです。

ターゲティング・ポジショニングの概要もまとめたので、ぜひご確認ください。

ターゲティング

ターゲティングとは、セグメンテーションした中からマーケティング施策の対象となるグループを選ぶことです。自社の商品やサービスの立ち位置、事業への適性や顧客の数、将来性などを考慮しつつ選定します。

また、ターゲティングは自社の商品やサービスに適した領域を選ぶという目的もあるため、競合他社の動向を押さえることも大切です。

自社の強みを最も発揮できるグループ(市場)を選択すれば、マーケティング施策の効果も向上します。

ポジショニング

ポジショニングとは、自社がどのような立場でビジネスを展開するか決めることです。セグメンテーション・ターゲティングで決定した要素(商品・市場)をもとに、自社の強みを発揮できるポジションを確立します。

市場でポジションを探す際は、競合他社に対して優位性があるか見極めることが重要です。特定のユーザーセグメントの中で独自のポジションを確立できるか、商品の品質や差別化できるポイントなど、あらゆる視点から検討する必要があります。

ユーザーセグメントの作り方

ユーザーセグメントの作り方は、以下の通りです。

  • ユーザーデータを収集する
  • ユーザーセグメントを定義する
  • ターゲティングを行う
  • 施策の実施・効果測定を行う

それぞれ詳しく解説します。

1|ユーザーデータを収集する

ユーザーセグメントを作成する場合、まずはセグメンテーションに必要なユーザーデータを集める必要があります。

ユーザーデータは企業が使用しているCRM(顧客管理ツール)に保存されているほか、行動分析ツールでトラッキング、ソーシャルリスニングやアンケートなどによる調査でも収集可能です。

また、定量的なデータだけではなく、数値化できない定性的なデータも集める必要があります。ユーザーへの理解を深めるにあたり、定性的なデータが役立つためです。

トラッキングとは?活用のメリット・追跡方法・危険性や今後の潮流を解説
https://www.nttcoms.com/service/mixpanel/column/article014/

2|ユーザーセグメントを定義する

ユーザーデータを集め終わったら、事業の目的に応じてユーザーセグメントを定義します。

例えば、女性用化粧品を取り扱う企業の場合、「居住地域」や「人口密度」といった要素で区分してもあまり意味がありません。「購入頻度」や「肌の悩み」など、商品コンセプトや施策内容との関連性が深い要素を選んで区分することで、効果的なマーケティングにつながります。

セグメントに必要な要素を選定し、組み合わせながら複数パターンのユーザーセグメントを定義しましょう。

3|ターゲティングを行う

ユーザーセグメントを定義したら、マーケティング施策を行うセグメントを決めるためのターゲティングに移ります。

ターゲティングを行う際は、判断内容が適切かどうかチェックするための原則「4R」を活用することが大切です。4Rとは、以下の4つの指標を指します。

  • Rank(優先順位)
  • Reach(到達可能性)
  • Response(測定可能性)
  • Realistic(規模の有効性)

これらの指標について解説します。

Rank(優先順位)

Rank(優先順位)とは、ユーザーセグメントの重要度に応じて順位付けを行い、対応の優先度を決めるための指標です。「自社の強みを発揮できるか」「競合他社はどのように動いているか」といった観点を踏まえつつ、どのセグメントからターゲティングすべきか優先順位を付けます。

優先順位を付けて判断・対応しなければ、せっかく区分したユーザーセグメントをうまく活用できないので、マーケティングの効果も下がってしまう可能性があります。

Reach(到達可能性)

Reach(到達可能性)とは、特定のユーザーセグメントに自社の商品やサービスを届けられるか、広告やWebサイトによるプロモーションを実施できるかチェックするための指標です。物理的な距離やターゲットが使用するプラットフォームを踏まえつつ、アプローチの可否を判断します。

例えば、ターゲットが海外に住んでいる場合、配送やコミュニケーションが難しく、商品やサービスを提供できない可能性もあるので、場合によっては対応を断る必要が出てくるでしょう。

Response(測定可能性)

Response(測定可能性)とは、セールスやプロモーションを行ったあと、ユーザーの反応を測定できるかどうかチェックするための指標です。

マーケティングの効果を高めるためには、施策後の効果測定が欠かせません。効果測定を実施することで、その施策が購買などにつながったかどうか確認できるので、以降の改善に取り組みやすくなります。

なお、施策内容を検証するためには、反応を測定できるユーザーセグメントを選択することが大切です。

Realistic(規模の有効性)

Realistic(規模の有効性)とは、あるユーザーセグメントをターゲットに設定した際、十分な売上や利益が見込めるかどうかチェックするための指標です。

確度の高いセグメントであっても収益性が期待できなければ、ターゲティングすべきではありません。特に市場規模が小さい場合、収益を得られるだけのボリュームがないケースが多いので、ターゲットの候補から外す必要があります。

収益性とターゲットの母数を確認し、採算が取れるかどうか見極めましょう。

4|施策の実施・効果測定を行う

選定したターゲットにマーケティング施策を実施したら、引き続き効果測定も行います。施策がユーザーに与えた影響、商品購入やサービス申し込みといった成果を分析・評価します。

PDCAサイクルに沿って施策と効果測定を繰り返せば、改善すべきポイントがわかるので、マーケティングの効果をさらに高めることが可能です。また、効果測定の結果から施策の要否も判断できるようになるため、コストや工数の削減にもつながるでしょう。

効果的なユーザーセグメントには顧客分析ツールが必要

ユーザーセグメントを作るためには、多様なデータを収集することはもちろん、そのデータを多角的に分析することも重要となります。ただし、十分なノウハウがなければ、収集したデータを有効活用できません。

高度な分析機能を備えた顧客分析ツールを導入すれば、さまざまな視点でユーザーセグメントを作成できるようになります。さらに、外部のデータベースや各種ツールと連携させて、分析の精度を高めることも可能です。

また、顧客分析ツールにはデータの可視化や共有、フロー分析といった便利な機能が備わっているため、業務の品質向上や効率化につながる点も魅力です。

企業におけるユーザーセグメントの活用事例

実際にユーザーセグメントを効果的に活用した企業の事例を2つ紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

パナソニックの「レッツノート」

パナソニック(旧・松下電器産業)はユーザーセグメントを活用した施策により、2006年頃から法人向けパソコンの売上向上を実現しています。

従来、パソコンは法人向けの製品が中心でしたが、1990年代後半~2000年代前半にかけて個人でもパソコンを使用する方が増加しました。各企業はスペックや価格で激しい競争を繰り広げていましたが、その状況下でパナソニックは外回り営業に特化した法人向けパソコン「レッツノート」を発売したのです。

軽さ・長時間バッテリー・セキュリティなど、外回り営業というセグメントが求める機能を追求。その結果、2019年にはモバイルノートパソコン(13インチ未満)のシェア率が75%にまで到達しています。

資生堂の「ワタシプラス」

資生堂は長年にわたり会員制度「花椿CLUB」を運営していましたが、2012年にオウンドメディア「ワタシプラス」をリリース。ここでユーザーセグメントを活用することにより、事業成長へとつなげています。

ワタシプラスでオンラインの消費者行動履歴を、花椿CLUBでオフラインの消費者行動履歴をチェックしながらユーザーデータを収集。そのデータに基づいて美容への意識を「モーメント」というセグメントで区分したのです。

タイミングやデバイスも踏まえつつ、各ユーザーのモーメントに合致するマーケティング施策を実施した結果、ユーザーとの信頼関係構築や商品購入を実現しています。

ユーザーセグメントの作成・分析には「Mixpanel」

先述の通り、効果的なユーザーセグメントを作成するためには、高機能の顧客分析ツールが必要です。

「Mixpanel」はデータ収集・分析に関する機能が充実しています。現在のトレンドと過去の結果を比較・分析し、必要なデータをすばやく視覚化できる「インサイト分析」や、パワーユーザーとその他ユーザーの違いを明確にし、ユーザー体験の最適化ができる「フロー分析」、行動データや属性からセグメンテーションし、異なるセグメントの行動と比較できる「コホート分析」など、ユーザーセグメントに役立つ機能も満載です。

また、Mixpanelのダッシュボードは目標と結果をスムーズに共有できるうえ、カスタマイズも簡単なので、トレンド把握やチームの意思決定を促進します。

Mixpanel と Google Analytics の違いとは?
https://www.nttcoms.com/service/mixpanel/column/article001/

導入事例|Grabr様

Grabrはアメリカに本社を構える、旅行者と旅行先のユーザーをつなぐマーケットプレイスです。2015年にサービスを開始し、会員登録者数は200万人を超えています。

幅広い地域で利用されているGrabrですが、ユーザーのアクションを調査・分析してサービス改善を図るため、Mixpanelを導入しました。リピートユーザーの行動パターンをセグメンテーションしたり、ユーザーの離脱ポイントを発見したりするなど、数々の対策を行った結果、売上が117倍も増加しています。

また、既存ユーザーからの友人紹介登録も2倍増加し、さらなる事業成長を実現しています。

導入事例:Grabr 様

ユーザーセグメントは現代のマーケティングに必須の要素

ユーザーセグメントは年齢や行動パターンといった特性ごとに区分されたグループであり、ユーザーへの理解を深めてくれる要素です。的確なターゲティングやマーケティング施策のパーソナライズに役立つので、現代のマーケティングに必須といっても過言ではありません。

ユーザーセグメントを作成する場合、人口動態変数やSTP分析を押さえつつ、作り方を学ぶ必要があります。また、データ連携や業務効率化の観点を踏まえると、高機能の顧客分析ツールも活用すべきです。

「Mixpanel」はユーザーセグメントに関する分析機能を数多く搭載しています。詳細は以下のリンクもご確認ください。
https://www.nttcoms.com/service/mixpanel/seminar/