NTTコム オンライン、「医師と患者のコミュニケーションに関する調査(NTTコム リサーチ)」を発表
~診療満足度で両者に意識差があり、診察時間含めた医療環境の改善が望まれる~

2018年3月14日

  NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:塚本 良江、以下NTTコム オンライン)と京都大学大学院 吉田純研究室は、NTTコム オンラインが運営するインターネットアンケートサービス「NTTコム リサーチ」の登録モニターで、最近数年以内に病院等へ診察のために通院された方、および医師の方々を対象に『医師と患者のコミュニケーション』に関して調査を実施しました。
  コミュニケーションには送り手と受け手の個性や立場、教育、知識量、文化の違いなど、伝えるメッセージを歪める様々な要因が存在します。近年、医療や健康に対する関心の高まりや、患者視点重視の考え方の広がりによって、医師と患者間のコミュニケーションの問題が顕在化されてきており、診療における情報提供や満足度、信頼関係について両者が感じる意識の違いを調査しました。

調査結果の詳細はこちらからご覧ください:
https://research.nttcoms.com/database/data/002097/

■ 総括

● 患者は健康や医療への関わりに対して5~6割の方が前向きな姿勢を示していますが、実際、病気や治療、薬に関する知識は2割を切り、あまり持てていないと感じています。
● 医師が患者へ伝える病気や治療方法、薬に関する情報提供について両者の意識は、医師の4~5割が提供しているとの回答に対し、患者側は3割程度の認識で、患者側にとっては医師の認識ほど十分に提供されてないと捉えているようです。
診察においての対話や、説明に対しての同意、治療方法の選択の実施でも同様の傾向で両者間で意識差があり、「信頼関係の構築」「患者の満足度」において3割程度と低い結果に繋がっているようです。
● 情報提供の阻害要因のひとつに「診察時間の不足」があり、「時間を充分に設けている」の回答は、医師が4割以上に対して患者は2割半であり約2割の開きが見られます。
一方の医師側も人手不足に加えて、患者側に対して知識の差や、間違った情報による患者の思い込み、自己判断、クレーム対応などに不安を感じている意見があります。今後の超高齢化社会での患者数の増加に備えて、質の高い医療、患者に寄り添った診療を目指すには、待ち時間や診察時間の改善だけでなく、より一層の医師の確保と、働く医師をサポート出来るようなテクノロジーの採用、活用が進んだ診療の質の向上も望まれそうです。

■ 調査結果のポイント

1. 患者は健康・治療への関わりには前向きも、病気や薬などへの知識は持てていない

  最近数年以内に病院や医院、クリニック等にて診察を受けた医療消費者(以下、患者)に対して、健康や医療に関する以下の項目に「関わりたいか」について伺いました。その結果、「非常に/かなりそう思う」との回答は、「自分の健康は自分で管理したい」(63.2%)、 「治療に積極的に関わりたい」(61.6%)、「病気や薬の情報を積極的に集めたい」(51.2%)でいずれも5~6割であり、ご自身の健康や医療について関わりたいと考えている方が多いことが伺えます。

ご自身の健康と医療へのかかわりについて

  一方で、病気や治療に関する「知識」について伺ったところ、「病気の知識を十分持っている」(非常に/かなりそう思う)と感じている方は20.3%と低く、「治療方法」「薬の効果」の知識について十分に持っていると感じる方の割合も16.8%、17.8%と2割を切ります。治療への関わりや病気、薬の情報の習得には前向きではありながらも、現状はそれらの情報や治療方法、薬に関する知識をあまり持てていないと感じていることが読み取れます。

2. 病気や治療方法の情報が医師の認識ほど患者へは伝わっていない印象

  医師から患者への病気や治療方法の情報提供に関して、医師と患者側双方に対して情報提供されていると感じる度合い(非常にそう思う、かなりそう思う)の印象を伺いました。その結果、医師が4~5割の割合で提供していると回答しているのに対して、患者側は3割程度と、情報を受け取っている認識が1~2割は低い結果となりました。
  薬の効果や副作用など薬関連の情報提供についても同様に、提供しているとの医師が約4割であるのに対して、患者側の認識は約3割で1割程度の認識に開きがありました。
  特に治療方法の情報提供に関しては、医師と患者の間で2割近い認識に開きがあり、患者にとって十分に提供されてないと捉えられていることが伺えます。

  主な項目についての結果はそれぞれ以下の割合となりました。

◆「病気の情報を十分に提供している/されている」と思う割合

  医師側:43.2% 患者側:33.1%

「患者に病気の情報を十分に提供している」(医師)

「医師から病気の情報を十分に提供されている」(患者)

◆「治療方法の情報を十分に提供している/されている」と思う割合

  医師側:52.0% 患者側:34.7%

「最も望ましいと考える治療方法の情報を十分に提供している」(医師)

「治療方法の情報を医師から十分に提供されている」(患者)

◆「治療方法の選択肢の情報を十分に提供している/されている」と思う割合

  医師側:45.2% 患者側:29.8%

「治療方法の選択肢の情報を十分に提供している」(医師)

「治療方法の選択肢の情報を十分に提供されている」(患者)

  医師と患者間で診療内容に関しての情報提供が阻害されている要因のひとつに、「診察時間の不足」があるようです。医師側に聞いたところ、「診察時間は充分に設けている」(非常に/かなりそう思う)と回答した方43.3%でしたが、一方の患者側の回答は25.0%と低く、2割程度の開きがありました。「3時間待ちの3分診察」と言われますが医師にとっては多くの患者を診なければならない為、一人あたりの診察時間が不足し、十分な情報提供や、意思の疎通には至っていない可能性が考えらます。

◆「診療時間を充分に設けている/設けられている」と思う割合

  医師側:43.3% 患者側:25.0%

「診察時間は充分に設けている」 (医師)

「診察時間は充分に設けられている」(患者)

3. 「信頼関係の構築」は3~4割、「患者の満足度」でも3割程度と低い水準

  診察時間が短い影響は、医師と患者側にそれぞれに聞いた、『十分な対話の実施』や『説明と同意(インフォームド・コンセント)』『治療方法の選択(インフォームド・チョイス)』の実施においても両者の意識の差に表れているようです。
  『十分な対話』では、「十分に対話している」(「非常にそう思う」「かなりそう思う」)と認識している割合は医師が56.7%に対して、患者は34.8%に留まり、『説得と同意』に関しては、医師は6割以上(65.3%)実践していると高い割合で回答しているのに対して、患者側の印象は4割弱(39.7%)となります。
  『治療方法の選択』でも、医師は5割程(52.9%)の回答であるのに対して、患者側は3割程(32.3%)で、いずれも2割以上の回答結果に開きがあります。患者側は上記に項目については医師が考えるほど実施出来ていないと考えており、両者の意識で差が少なからずあることが結果から見られます。

「十分な対話ができている」(医師)

「十分な対話ができている」(患者)

「説明と同意(インフォームド・コンセント)を十分に実施している」(医師)

「医師の説明に納得し、治療を受けている」(患者)

「治療方法の選択(インフォームド・チョイス)を十分に実施」(医師)

「医師と相談しながら治療方法を選択している」(患者)

  『十分や対話』や『説明に対する同意』、『相談しながら治療方法の選択』の実施についての両者の意識差は、『質問しやすい雰囲気の醸成』や『信頼関係』『患者の満足度』にも傾向が表れています。
  『質問しやすい雰囲気を心がけている』と答えた医師が65.4%に対して、患者側の回答は31.4%で半数以下の回答となっています。『悩みや相談に十分に対応している』も医師が46.2%、患者側が28.0%であり、それら診察環境での相談しやすさについても、両者の認識には2~3割程度の差が見られます。
  患者に対して『信頼関係が築けている』と感じている医師は43.3%と決して高くはないですが、患者側の医師への信頼度はさらに低い29.9%で、3割を切る結果となっております。
  診察に対する『患者の満足度』は、医師が感じる回答が39.4%、患者側の回答は34.0%で、どちらも差がなく、高くない結果となっております。

「患者が質問しやすい雰囲気を心がけている」(医師)

「医師は質問しやすい雰囲気を心がけている」(患者)

「患者とは信頼関係が築けている」(医師)

「医師とは信頼関係が築けている」(患者)

「患者は診察に十分に満足している」(医師)

「医師の診察に満足している」(患者)

4. 医師と患者の立場、知識量や精度、文化の違いなども伝えるメッセージを歪める

  以上のような結果から、診療において相談しやすい雰囲気・環境下で、医師と患者がお互いに病気や治療に対する十分な対話や情報共有ができ、納得して治療方法の選択できるプロセスを経られることが、お互いの信頼関係や診察での患者満足度の向上の助けとなってくることが推測されます。
  今回の調査では医師と患者側双方に同様の質問を伺って両者の意識差を見ておりますが、一方、医師には別途、「診察・治療中に患者への対応で困っていること」を自由回答形式で聞いています。その回答には、患者に対して「知識差」や「間違った情報からの思い込み・自己判断」「コンプライアンスに欠ける行為」「モンスターペイシェント」に関する不安が特にあるようです。

「医師が診察・治療中に患者への対応で困っていること」(自由回答 抜粋)

  医師側としても、患者と対話し共感しながら誠実に対応することのコミュニケーションの重要性を感じていながら、患者に対しては、知識差により理解されないことへの葛藤や、診察時間を長く設けられないことによる説明不足を感じ、医療現場以外で発信される間違った情報からの患者の思い込み、自己判断に対する不安、クレーム対応に困っているような意見が回答から見受けられます。
  医師と患者それぞれの立場や、情報量、情報の精度、文化の違いなども、伝えるメッセージを歪めてしまう要因があるようです。
  医師不足といわれる背景もあり、患者に時間をかけて向き合いたくても人手不足で時間が足りない。後期高齢者が今後さらに増加する社会で、患者数の増加に伴う医師の確保も一層必要になってくる状況です。より質の高い医療や、患者に寄り添った医療を目指すためには、患者の待ち時間の削減や診察時間の改善、医師不足の課題を補完できるテクノロジーの採用、活用の進んだ診療の質の向上も望まれそうです。

《参考文献》
山内一信,真野俊樹,塚原康博,藤澤弘美子,野林晴彦,藤原尚也:医療消費者と医師とのコミュニケーション−意識調査からみた患者満足度に関する分析−.医薬産業政策研究所.2005年7月(http://www.jpma.or.jp/opir/)

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