マスターデータ管理によるデータ再構築で、データドリブンな組織づくりを推進していきたい

大和ライフネクスト株式会社 様

マンション管理・ビル管理を主事業に、建設、警備、運送、コールセンター、保険代理店など幅広く事業を展開する大和ライフネクスト株式会社は、デジタル化やデータ利活用を全社的に推し進める中で、「TIBCO EBX®(以下EBX)」によるマスターデータ管理をスタートさせました。ここではEBX導入の経緯と現在の活用ぶり、今後の展望について、デジタル統括本部 デジタル推進部・デジタル運用部 課長(兼任)の天田氏、デジタル運用部 IT保守課の崎山氏、安川氏にうかがいました。

[お話を伺った方]
大和ライフネクスト株式会社
デジタル統括本部 デジタル推進部 デジタル企画開発課 課長
兼 デジタル運用部 IT保守課 課長
天田 穣氏

大和ライフネクスト株式会社
デジタル統括本部 デジタル運用部 IT保守課
崎山 大介氏

大和ライフネクスト株式会社
デジタル統括本部 デジタル運用部 IT保守課
安川 有紀氏

左から「天田氏」「崎山氏」「安川氏」

目的
  • システム再構築とデータ利活用推進のため、データ共通基盤によるマスターデータ管理を行いたい。
課題
  • レガシー化が進む基幹システムの再構築、ならびに共通基盤を持たないまま整備されたさまざまなシステムに固有のマスターデータが散在している状態の解消。
  • マスターデータの一元管理ができていないことがデータ利活用推進の障壁に。
効果
  • EBXにより中央集積型のマスターデータ管理を実現したことで、システムの維持管理業務がシンプルになり、業務負担も軽減。
  • データのクレンジング、データ整理と付加価値の付与が進み、データ利活用の動きが活発化。

マンション管理・ビル管理を軸として多角的にさまざまな事業を展開

― ご所属先と、担当されている業務について教えてください。

天田氏 : 私は、デジタル統括本部のデジタル推進部とデジタル運用部の課長を兼務しています。
いわゆる情報システム部的な部課は従来、管理本部に含まれていたのですが、約3年前に経営層のDXに対する強い意志のもと、デジタル統括本部が立ち上げられました。今期より代表取締役社長が本部長を兼任するなど、会社自体がデジタル化をもっと加速させたいという方針で動いています。

崎山氏 : 私は、社内システムの運用保守を行うデジタル運用部 IT保守課に所属しております。今回はプロジェクトリーダーとして主にEBXの導入に携わりました。

安川氏 : 同じくデジタル運用部 IT保守課に所属しております。私は同時に導入されたデータ仮想化ソリューション「TIBCO® Data Virtualization(以下TDV)」のプロジェクトリーダーを務めていますが、EBXのプロジェクトにも携わっています。

天田氏 : 当社の主事業はマンション管理・ビル管理と言えますが、他にもさまざまな事業を多角的に運営しています。例えば建物の大規模メンテナンスのための工事を請け負っていますし、商業施設・物流施設等への警備員派遣も行います。また法人のお客様の事務所移転先を探す、法人顧客の社員のみなさんのお引越しを支援する、事務所内のレイアウト変更を支援する、といったことも承ります。賃貸マンションやホテル、研修施設、社員寮、学生寮などの運営も行っています。コールセンター運営やホテル運営の実績が豊富なことから、そのノウハウをお客様に提供する事業もあります。マンションの入居者様に火災保険や生命保険を提供する保険代理店の事業もありますし、浄水器などの物販を提供する事業もあり……といった具合で、今後もさらに事業を拡大していこうとしているところです。

肥大化したシステムを統合するには、データの在り方から考え直す必要があった

― 今回は基幹システム刷新プロジェクトの一環としてEBXをご導入いただいたとのことですが、事業内容のお話から「きわめて多角的に事業を手掛けられている」ことがその背景として大きいのではと感じました。

崎山氏 : そうですね。当社の基幹システム「CLOMBS(コロンブス)」には大きく3つの課題がありまして。1つは「マンション管理に特化した設計が、その後拡張した事業の業務内容に合っていない」こと。2つ目は「15年以上改修を重ね続けて肥大化・複雑化したいわゆる『レガシーシステム』であること」、3つ目は「事業拡大でさまざまなシステムを扱うようになることが想定されていなかったので、他のシステムと連携できる造りになっていない」ことでした。

― 具体的にはどのようなことで困っていらしたのでしょうか。

天田氏 :基幹システムは多角化する事業に対応できる柔軟な作りにはなっていなかったため、新しい事業がそこにフィットしないとなると、別のシステムを立てることになります。さまざまなシステムが雨後のタケノコのように“生えて”きて、その間でデータをつなぎ渡し、マスターデータをバケツリレーして……という具合で複雑化していました。つぎはぎだらけで保守性が低く、改修はもとより影響調査だけでも大変で、正直皆が口を揃えて「もう限界だよね……」という状態だったのです。
この状態のシステムを統合するためにはデータを整えていく必要がある、整えるにあたってデータの在り方も考え直そうというところから「データ共通基盤」という考え方につながりました。

― 現行の基幹システムと同等の機能を持った新システムを開発することは考えなかったのでしょうか?

崎山氏 :それも検討したのですが、まず開発に3~5年かかるというので、そこまで時間をかけて同じものを作ってどうする?と。今後も事業が増えていくと見込まれている中では、とても現実的ではなかったですね。
また、現行の基幹システムには本来基幹システムに持たせる必要がないような機能もそれなりにありまして、そういったものは外へ切り出していこうというのもありました。マスター管理機能もそのひとつで、マスター管理専用のサービスや製品を使ったほうがいいだろうというので、マスターデータ管理の製品導入を検討し始めたのです。

EBXはマスター管理に特化した上で拡張性も高く、提案内容も充実していた

― プロジェクト立ち上げ時の体制はどのようになっていたのでしょうか。

崎山氏 : 当社では5人のプロジェクト体制を組みました。プロジェクトにはプロジェクト推進のエキスパートに業務委託で入ってもらい、プロジェクトを進めていきました。私もインフラ設計を中心に推進しながら、業務にも少し関わりました。
加えて取引先マスターの主管部門である経理財務部を中心に、取引先マスターの利用部門である事業部とも連携しながら進めました。

― ここまで多角的に事業を展開されていると、取引先マスターで扱うデータの種類もかなり多かったのではないですか。

崎山氏 : まず「請求先」は、大まかには「法人・個人・組合」の3種類です。例えばビルなどの管理を受託しているオーナー企業様、物販を購入されている個人のお客様、マンションの管理を受託している管理組合様というとわかりやすいでしょうか。

天田氏 : そして「支払先」は主にお仕事をお願いしている「協力会社」ですね。例えば建物を管理するために足場を組んでいただく企業様、電気工事をお願いする企業様……ということで、NTTコム オンライン様も当社のお支払先として取引先マスターに含まれています(笑)。
今回取引先マスターを基幹システムから切り離すにあたっては、データの見直しも同時にやりながら進めてきました。
今後のデータ利活用のため、データモデルの再定義、また、外部の法人企業データベースサービスと突き合わせて、データのクレンジングをしながらマスターを切り出していくといった具合です。

― さまざまなツールがある中で、EBXを選んでいただいた決め手はどのようなことだったのでしょうか。

崎山氏 : 当初複数社から提案をいただきまして、それぞれ違う製品の提案でした。そこから製品の機能面、ユーザー向けライセンス体系と費用といった条件面から2社まで絞りました。
ただ、もう1社の提案は「ノーコードツールとRDBを組み合わせてマスター管理的な運用を行う」といったもので、マスター管理専用の、いわゆるマスターデータ管理製品ではなかったのです。EBXはマスター管理に特化していて拡張性も高く、提案の内容もしっかりしていたので、そこが決め手になりました。

― その後、EBXはどのように利用されているのでしょうか。

崎山氏 : もちろんマスター管理に活用していますし、加えて各事業の現場担当者が取引先マスターを新しく登録する際の申請を一元化しました。新規登録・更新の責任部門、マスターの項目毎の分担がワークフローで明確になり、データ品質が向上しました。また、登録後はシステム毎に必要なマスターデータを自動連携します。

天田氏 : いわゆる中央集積型のマスターデータマネジメントですね。例えば2024年1月、静岡県浜松市が行政区の再編を行ったので、浜松市に所在する取引先の住所変更作業が発生しまして。従来だとそれぞれのシステムで変更を行っていたのですが、EBX導入後はマスターを変更すればそこから必要なところすべてにデリバリーされるので、漏れ抜け誤りのないデータメンテナンスができています。

― EBXを含めた将来的なシステムの全体像を模索されているところなのですね。

天田氏 : そうですね。EBXに関してはマスターを扱う範囲をもっと拡張していきたいと考えています。当社の業態においては、やはり「建物」がコアな情報なのです。
現在、建物の情報は基幹システムを入口にして、さまざまなシステムに“撒いて”いる状態です。ひとつデータを変更したら、その情報がシステムの中でバケツリレーをして、間にバッチプログラムも介在しているのですが、ここで障害が発生すると影響範囲特定に一苦労といった状況があります。あれやこれやが介在してデータがやり取りされている。これを、ひとつ変更すれば自動で同期するようにしていきたいですし、建物のデータ自体もクレンジングが必要な状態なので、整備しながら、付加価値をつけながらやっていこうと考えています。

データドリブンな組織の実現へ向けて、強い思いでデータの再構築を進めていく

― EBXを導入したことによる効果は見えてきていますか。

崎山氏 : 基幹システムで持っている取引先マスターの機能を別のシステムに移管することと、データモデルを見直すことで、デジタル統括本部のメンバーの業務効率化が実現できています。

天田氏 : 今まで何か所にも目を光らせなければならなかった作業が、マスターデータマネジメントを中央集権型とするアーキテクチャへ転換したことで、EBXだけ見ながら進められるようになりましたから。そういった意味で私たちのシステム維持管理のポイントが減っていますね。
何よりもデータの整理ができたこと、データは整備していくという考え方が社内に浸透したのが良かったと思います。

崎山氏 : そうですね。例えば、基幹システムには法人とその事業所を分ける概念がなかったので、同じ会社でも銀行口座が違う場合は別途「新しい取引先」として登録することになっていたのです。今は、口座を分けたい場合は口座だけ登録すればいいので、無駄な重複がなく、効率化と業務品質が向上しています。

― NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションの支援体制はいかがでしたか。

天田氏 :EBXプロジェクトにおける定例ミーティングへの積極的な参加など、プロジェクト全体を通してご協力をいただきました。それに、製品の奥深い技術的側面まで丁寧にご指導いただいたことも、私たちにとって非常に価値がありました。貴社の専門知識のおかげで、製品に対する理解が深まり、より効果的な活用が可能になりました。

― 今後、EBXをどのように活用していきたいとお考えですか。

天田氏 :他のマスターデータへ展開、拡張を進めます。取引先の次は「建物」に紐づくさまざまなデータを、例えばマンションの「部屋」、そこに紐づく「設備」、お部屋にお住いの「居住者」といった具合にマスターデータを段階的に整理し、メンテナンスしていきたいと考えています。
これが実現すれば、例えば「設備の交換サイクルに応じて適切なタイミングで営業をかける」といったデータドリブンな事業展開も見込めます。「居住者」に限定せずに「顧客」、そこに紐づく「契約」や「商品・サービス」の各種マスターを整備していく先にCRMの整備拡充も見据えていきたいと考えています。
冒頭でもお話ししましたが、経営層、特に社長は「アナログ対応」から「デジタル化・データ活用」への構造転換に対する強い思いを持っていまして。その社長のもと、EBXを通じてデータの再構築を進めていきたいと考えています。

― データドリブン的な組織を構築するプラットフォームとしてEBXを選んでいただき、我々も大変光栄です。1日も早くこの構想を実現できるよう、引き続きサポートに努めてまいります。本日はありがとうございました。

※掲載内容は2024年12月時点の情報です。

会社名
大和ライフネクスト株式会社
事業内容
マンション、ビル等の管理事業、建設業、警備事業、貨物利用運送事業、コールセンター事業、損害保険、生命保険代理店事業
設立
1983年3月8日
従業員数
8,402人(2024年3月31日現在)
URL
https://www.daiwalifenext.co.jp/