ユーザー行動分析とは?8つのフレームワークと具体的な手法を解説

目次

この記事では近年マーケティングに活用されているユーザー行動分析について解説します。ユーザーの行動をより正確に理解・把握すれば、課題を明らかにして最適な改善策へとつなげることができます。今回は主に下記のような内容について詳しく解説していきますので、ぜひご一読ください。

記事の要約
  • ユーザー行動分析とは、顧客視点のマーケティングに必要不可欠な分析手法である
  • ユーザー行動分析は、データドリブンマーケティング、ビジネスのグロース、新たなプロダクトの創出につながる
  • ユーザー行動分析には8つのフレームワークがあり、必要に応じて使い分けることで効果的な分析が実現できる
  • ユーザー行動分析をする際は、ボリュームの大きなセグメントから進め、定性的なデータ分析も取り入れるとよい

ユーザー行動分析とは?

ユーザー行動分析とは、Web上でのユーザーの行動を収集・分析してマーケティングに活用することを指します。一般的に企業が行う様々な施策は、ある仮説をもとにして実施されていることが多く、ユーザ―の実態とギャップが生じることがあるため注意が必要です。

ユーザー行動分析を実施すれば、ユーザーの詳細な行動を把握し、課題の認識や改善策の立案をより正確・適切に行えるようになります。ユーザー行動分析によってニーズや本音を深掘りして理解を深めることは、現代のマーケティングに必要不可欠な施策です。

ユーザー行動分析が重要な理由

ユーザー行動分析の具体的な分析方法やツールについて解説する前に、まずはユーザー行動分析の重要性を解説します。なぜ近年注目されているのか、どんなメリットがあるのかを理解しておきましょう。

データドリブンマーケティングを実現できる

近年では企業の競争力を高めるために、データドリブンマーケティングの導入を検討する企業が増えています。データドリブンマーケティングとは、データに基づいた意思決定を行うマーケティングや経営の手法です。勘や経験に基づいた判断は精度が低いうえにPDCAを回しにくいというデメリットがあり、結果的に企業の競争力が低下する恐れもあります。

収集できるデータの量が増加し、利便性の高いツールも現れてきた近年では、データドリブンマーケティングの有用性はさらに高まっています。そして、このデータドリブンマーケティングを実現するためにユーザー行動分析が必須なのです。

ビジネスのグロースにつながる

ユーザー行動分析は、顧客のニーズを正しく理解し、それを満たすために重要な役割を果たします。継続的に分析を重ねることにより知見が蓄積していくと、ユーザーが求めるプロダクトをより高確率で提供することが可能です。その結果、顧客満足度や顧客ロイヤルティの向上を見込むことができ、長期的なビジネスのグロースにつながります。

新たな機能やプロダクトの創出につながる

ユーザー行動分析ではユーザーの一連の体験が可視化されるので、従来は見えていなかった新たなニーズが浮き彫りになる可能性が十分にあります。

例えば、学習プラットフォームでのユーザー行動分析では、ユーザーが教材をどのように利用しているかといった点や、教材利用において苦労している点を把握することで、満足度の高いカスタマーエクスペリエンスやユーザーインターフェースを実現する新しいプランを思いつき、ヒットにつながるかもしれません。

ユーザー行動分析8つのフレームワーク

ユーザー行動分析においては複数の分析方法が存在します。ここではメジャーな分析手法である8つのフレームワークについて解説します。

1|セグメンテーション分析

セグメンテーション分析はその名の通り、ユーザーをさまざまな切り口で細分化してセグメントを作り分析する方法を指します。この分析方法は、市場における自社の立ち位置と競合との関係を明確にする「STP分析」にも活用されています。セグメンテーション分析は4つの基準で分類されます。以下にその基準を挙げます。

デモグラフィック(人口統計学的属性)

人を基準にしたセグメントです。年齢、性別、国籍、人種、家族構成、収入、職業、学歴、国籍など、これらの属性をもとに分類し、マーケティングのターゲットを明確にするための指標とします。

ジオグラフィック(地理学的属性)

地理学的な属性を基準にしたセグメントです。国・都市・地域の規模や人口密度、経済発展度、そして気候、文化、生活習慣、宗教など多様な要素をもとに分類します。

ビヘイビアル(行動学的属性)

ユーザーの行動パターンや反応を基準にしたセグメントです。購買履歴や購買パターン、購買点数、利用頻度、利用時間、商品・サービスの利用用途などをもとに分類します。

サイコグラフィック(心理的属性)

ユーザーの定性的な要素を基準にしたセグメントです。ユーザー行動の背景や前提となっている価値観や信念、パーソナリティ、ライフスタイル、趣味趣向など心理学的な属性をもとに分類します。

2|コホート分析

コホート分析とは、顧客の属性や行動データなどある条件に基づいてグループに分類し、それぞれの時間経過に伴う行動の変化を分析する方法を指します。セグメントとほぼ同義であり、例えば、NTTコムオンラインのプロダクトアナリティクスツール「Mixpanel」では、セグメント分析がコホート分析の名称で採用されています。特定の行動が継続率に影響を及ぼしているかを分析できる点や、グループごとの特性を見極めた施策の立案に用いられることが特徴です。

3|デシル分析

購買データを収集し購買金額などを基準に売上貢献度の高いユーザーを上位から10段階に分類して分析する方法です。デシルはラテン語で「10分の1」を意味します。各ランクごとの購入比率や売上に対する売上構成比率、1人当たりの購入金額などを算出し、販促施策を検討できる点がメリット。例えば、分類されたユーザーグループのうち、どのグループが最も売上へのインパクトが大きいかなど、重要視するべきグループを抽出することも可能です。

4|ファネル分析

消費者の購買行動プロセスを分解・分析する方法です。購買行動プロセスにおける課題の把握やコンバージョン率の改善などに役立ちます。特に購買に至るまでのプロセスが長く、課題抽出がしづらい場合に有効です。例えば、「アプリの起動・会員登録・支払い情報の登録・サービスの利用」という一連のプロセスにおいて、それぞれのステップでの離脱率やコンバージョン率が高い顧客を特定できます。

5|リテンション分析

特定のグループがWebサービスやアプリに再訪する頻度を分析して、どれくらいのユーザーが利用し続けているのかを一目で確認するための方法です。グループごとのリテンション率(定着率・継続率)を比較して、解約や離脱の原因を特定できる点がメリットです。さらには、ユーザーをリピーター化するために必要な要素を抽出し、施策の立案につなげることができます。例えば、キャンペーン後にリテンション率の変化を計測することで、効果的な施策を明確にすることも可能です。

6|行動トレンド分析

季節や曜日、時間帯などに着目し、ユーザーと紐づけて分析する方法です。SNSにおける時間帯別のアクティブユーザーの数や、ECサイトにおける季節ごとの売れ筋商品の変化、ユーザーがよく利用している曜日や反響のある時間など、季節や時間帯などで変化する購買数や顧客数などを分析します。どの時期にどの購買層がトレンドを形成しているか・売上が高いかを明らかにできる点がメリットで、広告配信のタイミングなどプロモーション戦略に役立つ手法です。

7|RFM分析

RFMとはRecency(経過時間)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)を意味します。これら3つの指標にしたがって顧客をセグメンテーションするのがRFM分析です。Recency(経過時間)は、顧客が最後に購入したのはいつか、Frequency(購入頻度)は顧客が何回購入したか、Monetary(購入金額)は顧客の購入金額の総額を算出します。売上貢献度の高い顧客や休眠顧客などに顧客のグループ分けを行い、それぞれに有効な施策の立案・実施に活用できます。

8|LTV分析

LTVとは「Life Time Value:顧客生涯価値」の略称で、ある1人の顧客が、商品やサービスに対して支払う生涯合計金額を意味します。一般的にLTVが高いほど「顧客の企業に対する愛着」が高いとされます。LTV分析では顧客が支払った金額を基に利益を算出し、貢献度が高い顧客を分析します。LTV分析により顧客と利益の関係性が明確になることで構造の正確な把握、無駄なコストの削減や利益ベースの施策検討などに役立てることができます。

ユーザー行動分析の手法

ここからは、ユーザー行動分析の具体的な手法・ツールについて解説していきます。

ヒートマップツール

ヒートマップツールとは、Webページの各エリアにおけるユーザーの反応や行動を可視化するツールです。データ分析初心者でも視覚的・直感的に把握できる分かりやすさが最大の魅力といえます。

従来の解析方法では、サイト内の各ページへの訪問者数や、訪問者のうち何人が商品やサービスを購入したかなどは解析できましたが、ユーザーの具体的な行動までは解析できませんでした。ヒートマップでは、ユーザーの反応や行動の度合いが色別で明確に示されます。例えばユーザーがどこまでスクロールしてどこで離脱したか、どのエリアがよく見られているか、どこをクリックしたかなどを把握することができるのです。

Googleアナリティクス

Googleが提供するユーザー行動分析ツールです。2023年7月1日から、UA(ユニバーサルアナリティクス)から、GA4(Googleアナリティクス4)に移行しており、指標がイベントに統一されています。また、進化するGoogleエコシステムに対応できるように設計されていることも特徴です。

GA4では主に以下のようなことが可能です。

  • Webとアプリの横断的な分析
  • 機械学習による予測機能を活用した分析
  • BigQuery(データウェアハウスサービス)との無料連携
  • セグメント機能を使ったユーザーのグルーピング

指標をイベント化することにより、ページ概念がないアプリにも対応できるようになりました。さらに、プライバシーを重視したデータ収集ができ、GDPR(EU一般データ保護規則)やCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)などに対応しています。

GA4とMixpanelの併用_それぞれの特性と得意領域

その他行動分析ツール

ユーザー行動分析ツールとして先に紹介したGoogleアナリティクスの存在はよく知られていますが、その他にも、より直感的に使えるものや幅広い分析ができるものなど、有用なツールは多く存在します。行動データの統合や分析レポートの作成など、多様な機能を備えているものもあり、ユーザー行動分析を効率化したい場合は有効な選択肢となります。

ユーザー行動分析の効果を引き出すポイント

前項目ではユーザー行動分析に用いられる代表的なツールをピックアップしました。ここからはそれらのツールの効果を引き出すポイントを解説します。

分析に必要なデータを洗い出す

ユーザー行動分析のために必要となるデータは企業によって異なります。分析を行うこと自体が目的になってしまわないよう、まずはユーザー分析を行う自社の目的は何か、達成したいことは何かを改めて確認しましょう。

そして、目的を達成するためにどのようなデータが必要なのかを明確にし、併せて保有しているデータの種類や数も洗い出し、現状をよく把握してから収集や分析の方法を検討することが重要です。

データの統合を進める

企業によっては、ユーザーに関するデータが部門やサービスごとでバラバラに保管されているケースも少なくありません。それらのデータは、格納されているシステムによって項目や保持しているデータの粒度が異なります。

ユーザーデータを有効に活用するには、データの項目や粒度などをクリーニングして揃えたうえで統合を進める必要があります。そうすることで、より多くのデータ、多様なシーンのデータを利用できるようになり、分析の精度向上や施策への活用の幅が広がります。

適切なツールを選定する

分析に必要なデータを洗い出しデータの統合を完了させても、ツール選びを誤ると十分な効果が得られません。自社のユーザー行動分析の目的や扱うデータの種類や量、将来的な変化を見据えながら適切なツールを選ぶことが重要です。

目的に沿った分析はできるのか、自社が利用しているチャネルに対応しているか、スケーラビリティは十分にあるかなど、ポイントとなる点をチェックしてツールの見極めと選定を行いましょう。

ユーザー行動分析をする際の注意点

ユーザー行動分析を行う際に注意すべき点がいくつかあります。下記に主な注意点を挙げてそれぞれ具体的に解説します。

ボリュームの大きなセグメントから進める

セグメントのボリュームを考慮せずに改善を行うと、コストパフォーマンスの低い選択を行ってしまう恐れがあります。例えば、いくつかの流入経路がある場合、一般的によりボリュームの大きな経路から改善を試みた方が効果は大きくなるとされています。

もちろん流入経路ごとのコンバージョン率の違いなど、より細やかな視点で改善に取り組む必要がある場合もありますが、まずはボリュームを重視して改善を行うほうが効果的です。

定性的なデータも分析に取り入れる

ユーザー行動分析だけでは具体的な消費者心理が十分に分らないことや、分析結果からの消費者心理の読み取りが上手くいかず誤解して受け取る恐れもあります。

そこで、ユーザー行動分析だけに頼るのではなく、定期的なアンケートやインタビューを実施して定性的な視点からも分析を行うことが重要となります。X (旧Twitter)やブログなどソーシャルメディア上で交わされる自然な会話に目を向けたソーシャルリスニングなどで、ユーザーの声を収集・分析する方法も検討するとよいでしょう。

ビジネスグロースにつながるユーザー行動分析ツール「Mixpanel」

NTTコムオンラインが提供しているMixpanelは、多角的な分析機能や外部ツールとの連携機能、データ統合機能を備える行動データ分析ツールです。Mixpanelの主な機能を下記リストにまとめていますのでご参照ください。併せて導入事例も紹介いたします。

  • インサイト分析:様々な視点で現在のトレンドと過去の結果を比較して分析することが可能。必要なデータをすばやく視覚化
  • フロー分析:パワーユーザーの行動パターンを見える化し他のユーザーとの違いを明確化。ユーザー体験の最適化を図ることができる
  • ファネル分析:リアルタイムにファネルを構築してユーザーの属性や行動毎に分類。最もコンバージョン率が高いユーザー層を把握できる
  • リテンション分析:Webやアプリにユーザーが再訪する頻度を可視化し、グループごとの定着率を比較したり、解約の原因を特定する
  • コホート分析:顧客の行動データやユーザー属性からユーザーを自由にグループ化。異なるグループのユーザーの行動と比較できる
  • シグナル分析:特定のコホートと各イベントがどれほど関連しているか、データの相関関係をAIが分析し可視化。最適なアクションを提案
  • インパクト分析:Webサイトリニューアルやアプリの新機能がユーザーの行動にどう影響しているかを確認。ローンチの成功具合を把握できる
  • ダッシュボード:製品のすべての主要パフォーマンス指標を1か所でモニター可能。データはリアルタイムで更新される

導入事例1|Sansan株式会社 様

法人や個人に向けて働き方を変えるDXサービスを提供するSansan株式会社 様。サービスの海外展開にあたり、低コストでユーザー分析と利用促進の仕組みを構築する必要があったため、営業DXサービス「Sansan」のデータ分析にMixpanelを活用いただきました。

導入以前はログデータが散在し、分析のため集約するだけで多大な手間がかかっていたところ、導入後は散在していたデータがMixpanelに集約されたことでデータ収集の手間がなくなり、分析のスピードが5~10倍程度早くなるという成果を実感。分析そのものの質も向上したそうです。

導入事例:Sansan株式会社 様

導入事例2|貝印株式会社 様

1908年に創業された総合刃物メーカーの貝印株式会社。ユーザーへのアプローチ方法の改善を図り、Mixpanelでプロダクト分析を実施。その分析結果を活用して、リマインドメールの配信タイミングの切り替えを行い、コンバージョン率が25%増加しました。

また、ユーザーのWeb上での行動データからコホートを作成したことでメール開封率が50%向上するなど、顧客とのエンゲージメントを高めることに成功しました。さらに、タイムセールに参加したユーザーの行動と購入した商品を分析し、休眠顧客のリピートユーザー化を図った施策を実施。その結果、リテンション8%向上を実現しています。

導入事例:貝印株式会社 様

導入事例3|Grabr 様

Grabr 様は米国サンフランシスコに本社を置く、旅行者と旅行先のユーザーとをつなぐマーケットプレイス運営企業です。リピートユーザーの購買行動を追跡し、行動パターンごとにセグメント化することで、ユーザー行動の理解を図りました。そしてユーザーが実行するアクションとその順序を正確に把握することで離脱ポイントを発見。開発予算を最小限に抑えながらサービス改善を行うことに成功しました。

また、地域ごとに売れる商品やユーザー行動の分析をすることでその特徴を抽出し、マーケティング活動を最適化。こうした結果、売上が117倍増加、既存ユーザーからの友人紹介登録が2倍増加などの成果を出しています。

導入事例:Grabr 様

ユーザー行動分析はビジネスグロースに寄与する重要な施策

この記事では、ユーザー行動分析に関する概要やその重要性、分析方法、ツールについて解説しました。本文で述べた通り、ユーザー行動分析はユーザー行動の理解、Webサイトの最適化、マーケティング効果の評価などに役立ち、現代の経営戦略の成功には不可欠とも言えます。

近年ではライフスタイルや好みなどが多様化しており、顧客をマスでカテゴライズすることは難しいため、ユーザーの行動を一括りにして考えるのではなく、様々な切り口で分析する必要があります。そのためのツールとして、ユーザー行動分析ツールの「Mixpanel」の導入をぜひご検討ください。

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