LTV向上施策を4つの要素から解説|成功事例や施策実施のポイントも紹介

目次

顧客との取引の開始から終了までに、企業やブランドにもたらす利益である「LTV(顧客生涯価値)」。新規顧客の獲得が難しくなり、サブスクリプションなど新しい商材が普及してくるなか、注目を集めている指標です。今後、企業は既存顧客に商品を継続して使ってもらうなど、LTVを高める施策が不可欠になっていくでしょう。

この記事では、LTVの概要や計算方法から重視されるようになった背景、LTV施策に必要な4つの要素や実施の際に欠かせない行動データ分析ツールなどを解説します。自社のマーケティングにもLTV向上施策を取り入れたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

記事の要約
  • LTV(顧客生涯価値)とは、1人あたりの顧客が生涯のうちに企業に与える利益を意味する用語。
  • 近年、新規顧客の獲得コストの増加やサブスクリプション商材の普及によって重要視されるようになった。
  • LTVが向上すれば、収益が安定して顧客ロイヤルティが向上するなど企業に多くのメリットをもたらす。
  • LTV向上施策には、購買単価や購買頻度を上げる方法、継続利用を促す方法、顧客の維持・獲得コストを削減する方法などがある。
  • LTV施策を成功させるには、ユーザーの行動を理解するのが大切で、ツールなどを活用した顧客の行動データ分析が必要になる。

LTV(Life Time Value)とは?

はじめに、LTVとはどういった概念で、なぜ重要視されているのかについて解説していきます。

LTVとは「顧客生涯価値」を示す指標

LTV(Life Time Value:ライフタイムバリュー)は「顧客生涯価値」といわれ、1人の顧客との取引開始から終了までにもたらす利益を意味する用語です。リピート購入する、高頻度で購入する、単価の高い商品を購入するなどの行動を取る顧客は、LTVが高くなります。

LTVによって実際に顧客が企業に与える利益を客観視できるため、マーケティング活動や長期的な事業成長戦略を描くうえで、確認しておくべき指標といえるでしょう。

LTVが重要視されている背景

LTVがマーケティングで重要視されるようになった背景として、新規顧客の獲得難易度が高まっている点があげられます。人口減少時代の到来、ニーズの多様化など、ビジネスを取り巻く環境は大きく変化しました。現代では、新しい顧客を獲得するよりも、従来のリピーターにさらに自社商品やサービスを利用してもらえるよう働きかけるのが大切と考えられるようになっています。

また、サブスクリプション商材の増加も理由の1つです。所有よりも必要なときだけ使うスタイルの定期購入サービスが支持される時代となり、一度きりの取引ではなく、どのように顧客に商品・サービスを継続的に利用してもらうかが、利益を向上させるうえで重要な視点になっています。

LTV向上施策が重要な理由

さまざまな理由から注目が集まっているLTV。では、LTVを向上させると実際にどのようなメリットがあるのでしょうか。企業にとって、LTV向上施策が大切な理由について解説します。

収益が安定する

LTVの向上施策によりリピート率が高まると、安定した収益を得られます。理由の1つは、一般的に「新規顧客を獲得するためには既存顧客の5倍のコストがかかる」といわれているからです。これを「1:5の法則」と呼びます。現在は広告費用が上昇傾向にあるため、よりコストがかかるようになっており、LTV向上施策の重要性が高まっています。

また、顧客離れを5%改善すると利益が最低25%改善される「5:25の法則」という考え方もあります。つまり、企業が安定した利益を創出するには、新規顧客の獲得よりも既存顧客を重視するほうがより大きなメリットを得られるのです。

顧客ロイヤルティが向上する

ロイヤルティとは「忠誠心」を指す言葉で、顧客ロイヤルティには、顧客が企業に対してもっている信頼や愛着といった意味があります。LTVの向上を目指すためには、顧客との関係構築を行って「顧客ロイヤルティ」を上げていかなければなりません。

顧客の購入単価や購入頻度の向上、長期的な商品・サービスの利用など、LTV向上には、高い顧客ロイヤルティが欠かせない要素です。逆にいえば、LTVに注力していけば、あらゆるタッチポイントの顧客目線での改善につながり、結果的に顧客ロイヤルティの向上にもつながります。

優良顧客の特定につながる

LTV向上施策の実施と計測を継続していけば、リピート率や購入単価などの客観的な指標から、自社が抱える優良顧客の特徴が明らかになります。長く自社商品やサービスを利用してくれて、購入金額や頻度も高い優良顧客は企業にとって手放したくない存在です。

LTVを活用して自社のビジネスに大きなインパクトを与える優良顧客を特定できれば、より効率的なマーケティングが実施できます。

業態別に見るLTVの計算方法

具体的なLTVの計算方法を解説していきます。LTVは扱う商品・サービスや業態によって計算方法が異なるため、ここでは3つの業界に分けてみていきましょう。

リピート商材を扱う業態

小売業や通販、D2Cなど、顧客が自社の商品・サービスを何度もリピートして購入するビジネスモデルの事業形態です。LTVは以下の式で計算できます。

LTV=平均購入単価×平均購入回数×平均継続期間

たとえば、顧客が1万円の商品を月に1回、3年間継続してリピートした場合のLTVは、36万円です。

LTV=1万円×12回×3年=36万円

平均値をもとに評価するため、成果の良い時期と悪い時期を比較する指標として活用しても良いでしょう。

BtoB商材を扱う業態

メーカーや企業向けの販売業など、BtoBでの取引を主なビジネスモデルにしている事業形態で使われるLTVです。以下のように、リピート商材の場合とはLTVの計算方法が異なります。

LTV=1つの企業あたりの年間取引額×収益率×1つの企業あたりの取引継続年数

たとえば、年間600万円の売買を5年間継続している取引先があり、収益率が25%だとすると、LTVは750万円です。

LTV=600万円×25%×5年=750万円

BtoB商材の場合は、LTVの算出において収益率が重要になってくるため、事前に自社の収益率を把握しておく必要があります。

サブスクリプション商材を扱う業態

リース業やSaaSサービス、一般向けの動画や音楽配信など、顧客が一定期間、サブスクリプションとして商品・サービスを利用するビジネスモデルの事業形態です。LTV計算は、次の式で行います。

LTV=顧客の平均単価×粗利率÷解約率

たとえば、顧客1人あたりの平均単価が5,000円のサービスで、粗利率が40%、解約率が5%の場合、LTVは4万円です。

LTV=5,000円×40%÷5%=4万円

サブスクリプション商材では、利益率だけではなく、解約する顧客の割合もLTVに大きな影響を与えます。解約率の計算方法は以下の通りです。

解約率=1ヶ月の顧客解約数÷1ヶ月の総顧客数

事前に自社の解約率を把握することで、サブスクリプション商材におけるLTVを算出できます。

LTV向上施策に必要な4つの要素

LTVの計算式に登場する数値を改善していけば、自社のLTV向上につながります。しかし、LTV向上施策を実施する際には、単に顧客単価アップを目指せば良いわけではありません。LTVの向上につながる要素を認識したうえで、それぞれに対して最適な施策を打つことが重要になってきます。

LTV向上施策において重視すべき要素は、次の4つです。

  • 購買単価を上げる
  • 購買頻度を増やす
  • 継続利用を促す
  • 顧客の獲得や維持コストを削減する

いずれもLTVに関連する重要なポイントになっており、各要素を改善していけば、自社のLTV向上が期待できます。次章からは、4つの要素に対して、具体的にどのような施策を打つのが有効かについて解説していきます。

LTV向上施策①|購買単価を上げる

LTVに欠かせない1つ目の要素は、購買単価の向上です。購買単価を上げる方法には、以下の4つがあります。

  • 付加価値を付けて単価を上げる
  • クロスセルを行う
  • アップセルを行う
  • キャッシュレス化を行う

それぞれの方法について、詳しく解説していきます。

付加価値を付けて単価を上げる

LTV向上施策として、単純に商品の単価を上げると、購買単価が上がりLTVの向上につながります。商品単価を上げる際、重要になるのがどのような付加価値を提供できるかです。

他社にはない自社商品・サービスだけの特別な価値を提供できれば、単価を上げても顧客が不満を感じる可能性は低くなります。逆に、商品は今までと変わらず価格だけ上げるといった、納得感のない値上げは顧客離れを引き起こす要因になるため、顧客目線で付加価値をつけることが大切です。

クロスセルを行う

既存顧客の購入単価を上げるには、クロスセルの導入も効果的といえます。クロスセルとは、商品の購入を検討している顧客に対し、関連商品を勧めて同時に購入してもらう販売手法です。クロスセルが成功すると、顧客の購買単価が上がり、その結果LTVも向上します。

しかし、見当外れのクロスセルは顧客に嫌悪感を抱かれる可能性があるため注意しましょう。顧客が求めている商品・サービスを勧めるためには、購買や行動に関するデータ分析が必要になります。

アップセルを行う

アップセルとは、現在、自社の商品・サービスの購入を検討している顧客に対して、上位グレードの商品・サービスに乗り換えてもらう販売方法です。成功すれば顧客単価をより高められます。

しかし、アップセルは訴求する商品・サービスに相応の魅力がないと成果を得られません。商品なら機能性の違い、サービスであれば上位プランの付加価値など、なぜ上位モデルに変更すべきなのか、違いやメリットを明確に伝える必要があります。

キャッシュレス化を行う

クレジットカードや電子マネー、QRコード決済などのキャッシュレス化を進めると、顧客の購買単価を向上させる効果が期待できるでしょう。キャッシュレスは、現金が足りない場合の機会損失防止や購入の心理的ハードルを下げる効果など、企業にとってもメリットがあります。

さらなる単価向上の施策として、各決済手段が実施するポイント還元などキャンペーンに参加するのも有効です。

LTV施策②|購買頻度を増やす

LTVに求められる2つ目の要素である顧客の購買頻度を増やす方法には、次の3つがあります。

  • 購入頻度に関連した付加価値を提供する
  • 顧客に合わせたアプローチを行う
  • 新商品の発売やマイナーチェンジのサイクルを早める

それぞれの施策について、詳しく解説していきます。

購入頻度に関連した付加価値を提供する

購入頻度が上がればお得になるサービスや要素を取り入れると、顧客に自社の商品・サービスを多く購入したいと思わせる動機づけになります。

具体的には、購入に応じてポイントが貯まるポイントカードや会員のランク制度などを導入すると良いでしょう。○○ポイントごとに特典をつける、ランクアップ時に割引や限定ノベルティを付けるなどの付加価値を提供して顧客に購入を促します。

顧客に合わせたアプローチを行う

顧客は一人ひとり性質が異なるため、購入頻度を増やすためには、それぞれの特性に応じてアプローチを変化させることが大切です。顧客の好みや利用目的などをセグメント(区分)ごとに把握して、それぞれに適切なLTV向上施策を実施します。

例えば、顧客によって案内する商品の種類を変えたり、好みの情報をメールで届けたりするといった施策が考えられるでしょう。また、顧客がどのような性質をもっているか知るためには、行動分析ツールなどを用いて顧客データを収集・分析する必要があります。

新商品の発売やマイナーチェンジのサイクルを早める

顧客が「買いたい」と思える商品の発売やマイナーチェンジのサイクルを早めることも、購入頻度を高めるために重要な施策です。現在販売中のものに加えて、ほかにも魅力的な商品・サービスを次々に発売していけば、顧客の購入数増加につながります。

このような、顧客の購買サイクルを短縮する手法を「計画的陳腐化」と呼びます。顧客のもっている商品を「古いもの」にすることで買い替えを促進させる方法です。主に次の2つのやり方があります。

  • 機能的陳腐化:新機能や性能向上など、現在よりも優れたメリットをもつ商品をリリースする
  • 心理的陳腐化:自動車のように一定の年数でモデルチェンジを繰り返し、現在の商品を「型落ち」にしてユーザーに心理的な寿命を感じさせる

ただ、購入頻度を高めるには、単に新商品を出すだけでなく、顧客が買い替えたくなる魅力的なプロダクトであるのが前提条件です。

LTV施策③|継続利用を促す

LTV施策3つ目の要素は、顧客による自社の商品・サービスの継続利用促進です。ユーザーにリピートを促す方法には、次の5つがあります。

  • 定期購入やサブスクリプションサービスを導入する
  • VOCに迅速な対応・反映を行う
  • 解約の理由を特定・改善する
  • 継続率の高いセグメントを特定する
  • コミュニティを構築する

それぞれについて、詳しく解説していきます。

定期購入やサブスクリプションサービスを導入する

商品の定期購入やサブスクリプションサービスは、一度利用を開始すると、顧客が能動的に解約手続きをしない限り継続されるためリピート促進に有効です。毎回、商品を購入してもらうビジネスモデルだと、ユーザーが忘れていたり、面倒だったりして購入しない場合があるかもしれません。

定期購入やサブスクリプションであれば、機会損失を減らせるだけでなく、解約数が顧客満足度を測る目安にもなるため、課題の改善にもつなげやすくなります。

VOCに迅速な対応・反映を行う

VOCとは、「顧客の声(Voice Of Customer)」を意味する用語です。VOCは、アンケートやネット調査、お問い合わせやクレームなどから得られます。収集したVOCに適切な対応をしていけば、顧客ロイヤルティが向上して継続利用の可能性が高まるでしょう。

従来はVOCに対して、商品やサービスの改善を通して応えるしか方法がありませんでした。しかし、現在ではSNSなどを積極的に活用して能動的なサポートを提供する方法もあります。

解約の理由を特定・改善する

顧客が継続購入やサブスクリプションを解約する理由を特定して改善できれば、継続利用の可能性を高められます。原因を割り出すには、解約時のアンケートで解約理由に関する項目を設けると良いでしょう。結果をもとに、解約してしまう顧客の行動データを分析し、解約の原因となる要素を特定・改善することで、リピート率を高められるでしょう。

解約率の分析について、さらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
解約率(チャーンレート)分析の重要性や分析・改善の流れと方法を解説

継続率の高いセグメントを特定する

ユーザーの継続率が高いセグメントを特定・分析して、ほかのセグメントとの違いを把握すれば、効果的なリピート率向上施策を立案できるようになります。

継続率の高いセグメントにターゲットを絞った新規顧客獲得の戦略を実施すれば、全体の継続率向上に効果的です。また、リピート率の高いセグメントの傾向をもとに、低いセグメントに対する施策を立案する方法も考えられます。

コミュニティを構築する

近年では、企業が自社の利益を向上させるため、コミュニティを構築するケースが多くなりました。コミュニティの構築は、ブランディングやファンの育成、サービス改善、イベント開催時の集客など、さまざまなメリットがあります。ブランドのファンサイトや顧客同士が交流できるコミュニティなど、ビジネスモデルに適した形態にすると良いでしょう。

一から独自のサイトを構築するほか、既存のSNSやコミュニティツールを活用する方法もあります。コミュニティが上手く機能すれば、企業と顧客の接点が増えたり、商品・サービスへの愛着が強くなったりと、継続利用促進に効果的です。

顧客と継続的な関係構築をもとにしたマーケティングについて、さらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
リテンションマーケティングの重要性や手法・成功事例を紹介

LTV施策④|顧客の獲得・維持コストを削減する

LTV向上に関する4つ目の用語は、顧客の獲得・維持コスト削減です。顧客に関するコストを減らすには、次の3つの方法があります。

  • マーケティングツールを導入して時間効率を高める
  • UGCを活用する
  • ターゲットを絞る

顧客獲得・維持コスト削減の方法について詳しく解説していきます。

マーケティングツールを導入して時間効率を高める

LTV施策におけるデータの収集・分析は、専用のマーケティングツールを導入することで時間効率を高められます。具体的なマーケティングツールは以下の2つです。

  • CRM(顧客関係管理:Customer Relationship Management)ツール:自社と顧客との関係に重点を置いたツール。顧客情報管理や問い合わせ機能、データ分析などが備わっている。
  • SFA(営業支援システム:Sales Force Automation)ツール:営業部門の業務プロセスや情報管理の自動化に貢献するツール。顧客の管理・分析だけでなく、営業マンの案件管理や行動管理、商談進捗管理機能などが備わっている。

導入の際にコストがかかるものの、中長期的に見ると業務効率や競争優位性の観点から効果的な方法です。

UGCを活用する

UGCとは、「User Generated Contents」の頭文字をとった言葉で、SNSの投稿やブログ、レビューサイトの評価、個人がインターネット上にアップした写真といった「ユーザー生成コンテンツ」を意味する用語です。WebやSNSの発達により、UGCがユーザーの購買行動に及ぼす影響が増加し、企業も積極的にUGCをマーケティングに活用するようになりました。

企業が一からコンテンツを作成しなくても良いのがUGCのメリットです。しかし、公式アカウント等に掲載する際は、薬機法(美容・健康関係商品などの場合)や著作権といった各種法律に注意する必要があります。

ターゲットを絞る

LTV施策を立案する際は、ターゲットを絞って費用対効果の高い顧客層に注力すれば、新規顧客の獲得コストが削減可能です。企業側が特定のユーザー層に向けた施策を実施する手法は「ターゲットマーケティング」と呼ばれます。

セグメンテーションによって顧客を分類し、自社へのニーズが高い層を特定してマーケティング施策を実行すれば、ユーザーの求める商品・サービスを提示しやすくなるため、より少ない資金で最大限の効果が得られるでしょう。

LTV向上の成功事例

続いては、実際にLTV向上施策を実行して効果をあげている企業の事例を紹介していきます。

株式会社 一休

宿泊施設予約サイト等を運営している株式会社一休は、わずか5年で時価総額100億円から1,000億円へと成長を遂げた会社です。

一休では、広告費を支払うホテル側を重視する従来の予約サイト運営を、自社の強みである高級宿泊施設に泊まるユーザーにフォーカスしたものへと方針転換。データ分析により最も自社サイトの売上に貢献している顧客層を導き出し、ターゲットが施設検索から予約までストレスなく行えるようUIの使いやすさや商品を改善していきました。

また、完全にデータだけには頼らず、実際にユーザーに会って話す機会も重視しており、顧客ニーズを確認してデータマーケティングのズレ防止に役立てています。

オイシックス・ラ・大地 株式会社

オイシックス・ラ・大地 株式会社は、有機野菜や無添加食品の定期販売サブスクリプションサービスを提供している企業です。オイシックスでは、解約率を抑えてLTVを向上させるさまざまな施策を実行しています。

初期の解約を防ぐため、特集ページや商品を選ぶ負担を軽減するためのコースなどを用意。ユーザーは自分のライフスタイルやニーズに合った商品を手間なく見つけて購入できるようになっています。また、調理前の食材を揃えたミールキットも販売。時短につながるだけでなく、自分で料理した実感も得られて顧客から人気を集めています。

このように、オイシックスでは、入会後の早い時期を勝負と考えており、ユーザーに優れた商品や体験を提供して解約率の増加を防ぎ、LTVを向上させているのです。

LTV向上施策を実施する際のポイント

実際に企業がLTV向上施策を実施する際には、次のポイントに注意が必要です。

  • LTVを基準に費用対効果を確認しながら進める
  • 新規顧客の獲得にも目を向ける
  • ユニットエコノミクスを測定する

各ポイントの詳細や重視すべき理由について解説します。

LTVを基準に費用対効果を確認しながら進める

LTV施策を実施する際は、継続的に費用対効果を検証しながら進めていく必要があります。LTV施策の評価では、CPAだけを基準にしないよう注意しましょう。 CPA(Cost Per Action)は「顧客獲得単価」を意味する用語で、コスト÷獲得ユーザー数で計算され、マーケティング施策の費用対効果を評価する際によく用いられている指標です。

しかし、CPAとリピート率にはトレードオフの関係があり、低コストで獲得できる顧客はリピート率が低い傾向があります。具体的な理由としては、CPAを下げるために購入特典をつけると、特典が目当ての新規顧客はすぐに解約してしまうからです。CPAだけで判断せず、LTVを重視した施策であるか効果の見極めが必要です。

新規顧客の獲得にも目を向ける

LTVの向上には、既存顧客への施策が重要ですが、同時に新規顧客の獲得も大切です。解約するユーザーは一定数存在するため、既存顧客への施策だけでは全体の売上が下がってしまう可能性があります。

特定のユーザー層に頼ってしまうとリスクも生まれるため、幅広い顧客を取り込む姿勢が必要です。全体的なLTV向上を狙うためには、既存顧客と新規顧客、それぞれに向けた施策にバランス良く取り組むのが大切といえるでしょう。

ユニットエコノミクスを測定する

LTV施策を実施する際には、「ユニットエコノミクス」を測定することも重要です。ユニットエコノミクス(Unit Economics)は、「単位あたりの経済性」を意味するマーケティング用語です。

「顧客1人あたり(単位)の収益性や採算性」といった使われ方をしており、次の方法で計算できます。

ユニットエコノミクス=LTV÷CAC

CAC(顧客獲得費用)は、顧客1人を獲得するためにかかるコストで、計算方法は次の通りです。

CAC=新規顧客の獲得にかかる費用÷獲得した新規顧客の数

ユニットエコノミクスが1を下回るようだと、新規顧客獲得コストを回収できず、黒字化も難しいでしょう。一般的には、3を上回る数値が健全なユニットエコノミクスの基準といわれてます。

ユニットエコノミクスを向上させる方法は、LTVを増やす方法とCACを減らす方法の2種類です。LTV施策では、ユニットエコノミクスの改善につながっているかどうかの検証も必要になります。

効果検証・改善を継続する

紹介してきたように、ひとくちにLTV施策といっても評価基準や指標となる要素は数多く存在します。各要素での施策を実施しながら、効果検証と改善を繰り返していくのがLTVを向上させる近道といえるでしょう。ひとつの指標にこだわるのではなく、データをもとにバランス良く俯瞰的な評価を行えるようにするのがポイントです。

それぞれの要素を検証する際には、客観的な数値が求められます。そのため、行動分析ツールなどを使って、しっかりとしたデータ収集・分析を実施することが重要です。

LTV施策成功のカギとなる「行動データ分析」の効果

LTV施策を成功させるために重要となるのが「行動データ分析」です。LTV施策はデータドリブンで進めていく必要があります。データドリブンとは、データに基づいた意思決定・行動を起こす方法で、実施のためには行動データ分析ができるツールの導入がおすすめです。

行動データ分析とは、運営しているサイトやアプリなどでユーザーのログを収集・分析する手法を指します。顧客の状態を確認して仮説を立て、施策に落とし込み、効果を測定して改善を実施していくためには、適切な行動データ分析が不可欠といえるでしょう。ここからは、行動データ分析の具体的な効果を解説します。

データドリブンについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
データドリブンの意味や注目される背景とは?4つのプロセスや導入事例を紹介

高い解像度での顧客理解

行動データ分析により、従来よりも高い解像度での顧客理解が可能になります。LTVを向上させるためには、まず顧客を深く理解したうえで、良好な関係を構築していかなければなりません。顧客ロイヤルティが低い状態で具体的な施策を実施しても、成果につなげるのは難しいでしょう。

しかし、データに基づかない勘や経験で、顧客が何を求めているのか理解するのは簡単ではありません。顧客の行動データを多角的に分析していけば、これまで気づけなかった顧客心理を理解でき、より効果的な施策を実施できます。

施策のパーソナライズ化

行動データをもとにした分析を導入すれば、ユーザーに合わせた施策のパーソナライズ化が可能です。すべての顧客が同じサービスを求めているとは限らないため、LTV施策では、ユーザーごとの特性を理解してパーソナライズする必要があります。

行動データ分析ツールを活用して顧客をセグメンテーションし、それぞれのユーザー層に最適なマーケティングを実施するのが大切です。行動データ分析をもとにPDCAを回して徐々に最適化していけば、LTVに関連する要素全体の底上げにもつながります。

ユーザーの行動分析に関してさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
ユーザー行動分析とは?8つのフレームワークと具体的な手法を解説

顧客の行動データを可視化する「Mixpanel」

「Mixpanel」は、データ分析を行いたいけれど、人材がいない、分析のやり方がわからない、アプリなどの統合ができないといった悩みを解決し、顧客の行動を分析・可視化できる行動データ分析ツールです。

「Mixpanel」は、インサイト分析やフロー分析など、さまざまなデータ分析に対応しています。特にLTV向上施策に有効なのは、次の2つの分析方法です。

  • フロー分析:購入前後など、特定のイベントにおけるユーザーの行動パターンを分析し、パワーユーザーの特徴を把握する。
  • リテンション分析:ユーザーの再訪や継続率を分析。ユーザー層による定着率の違いや解約の原因特定などに利用可能。

必要なデータを見やすい形式で可視化でき、操作も直感的で扱いやすい点も魅力です。さらに、担当者別のダッシュボード作成や、現在使用中のツール、データベースなどとの連携も可能です。

続いて、実際に「Mixpanel」を導入・活用している企業の事例を紹介しています。

導入事例|株式会社アマデウスコード 様

株式会社アマデウスコードは、映像制作を行うクリエイター向けにフリー楽曲のサブスクリプションサービスを提供している会社です。

アマデウスコードでは、ユーザーの行動データ分析によるサービス改善のために「Mixpanel」を導入しました。

はじめに、インサイト分析を利用した各セグメントの行動データ分析により、当時有料プランへの移行が伸び悩んでいた無料プランを廃止。さらに、インパクト分析をもとにした新機能のリリースにより楽曲のダウンロード数を6倍に増加させています。

導入事例|株式会社アマデウスコード 様

LTVの向上施策は顧客理解から始める

顧客1人が生涯のうちに生み出す利益を表す概念であるLTVは、サブスクリプションサービスの普及や新規顧客の獲得コスト増加などを背景に重要視されるようになりました。

既存顧客が継続して商品・サービスを利用してくれる状態は、企業にとって大きなメリットがあるものの、効果的なLTV向上施策には行動データの収集・分析による顧客理解が欠かせません。LTV施策実施を検討している企業は、行動データ分析ツールを導入して顧客理解の促進からスタートさせていきましょう。

「Mixpanel」の資料ダウンロードはこちらから