
データウェアハウス(DWH)とは?データレイクとの違いや活用例などを紹介
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データウェアハウス(DWH)は、膨大なデータを効率的に統合・管理し、精度の高い分析に活用するためのシステムです。近年では企業や組織が収集するデータ量が爆発的に増加しており、DWHの重要性がますます高まっています。DWHを利用することで、部門やシステムを横断したデータを集約し、整理された形で分析に活用することが可能となります。
本記事では、DWHの概要や主要機能、構築手順、さらに活用例について詳しく解説します。データに基づいた意思決定を目指す方や、より高度なデータ活用を実現したい方にとって参考になる内容となっていますのでぜひ参考にしてください。
- 記事の要約
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- DWHは膨大なデータを統合し、効果的なデータ分析を支援するツール
- DWHの主な機能は、データを効率的に整理し、長期的に保管すること
- DWHを選ぶ際は、クラウド型とオンプレミス型の違いを考慮しながらニーズに合うものを見極めることが重要
- DWHを構築する際は、手順に従い段階を踏む必要があるが、実装が難しい場合は外注も検討する
データウェアハウス(DWH)とは?概要をわかりやすく解説
まずはデータウェアハウス(DWH)について、その概要を解説します。さらにデータベース、データレイク、データマートなど、さまざまな類似システムとの違いについても解説します。
データウェアハウス(DWH)とは「データを集約・整理し分析の効率・精度を高めるシステム」
データウェアハウス(DWH)は直訳すると「データの倉庫」で、その名の通り、膨大なデータを格納するシステムを指します。DWHの概念は、アメリカ合衆国のコンサルタントであるWilliam H. Inmon氏によって提唱されました。同氏はDWHを「意志決定のため目的別に編成され、統合された時系列で、削除や更新しないデータの集合体」と定義しています。
企業はDWHを導入することでさまざまなデータソースから収集したデータを一元管理して整理し、分析の効率と精度を高めるために活用することができます。部門やシステムを横断したデータ活用も可能となるため、データドリブン経営を実現するための基盤をつくることができます。
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データベースとの違い
データベースはリアルタイムでのデータ管理やトランザクション処理に特化したシステムです。また、特定のアプリケーションやシステムで使用されるデータを管理するためのシステムとしても機能します。
一方、データウェアハウス(DWH)は、複数のデータベースから大量のデータを集約し、分析用に最適化された形式でデータを保存します。また、DWHは分析のためのクエリを迅速に実行できるように設計されています。
つまり、データベースはリアルタイム処理をより重視したシステムで、DWHはデータ分析を重視したシステムです。
データレイクとの違い
データレイクとは前処理がされていない生データをそのまま保存するためのシステムで、構造化データ、非構造化データ(電子メール、テキストファイル、画像、動画、音声データなど)を問わず、大量のデータをそのまま取り込むことができます。
データを未整理のまま保存するということは、異なるソースや形式のデータをそのまま保存できるという点で柔軟性が高いという利点がありますが、その反面、データの整理や検索が難しくなる恐れがあります。
一方、データウェアハウス(DWH)は、データを事前に整理し、分析に適した形式で保存します。そのためデータの活用においてより利便性の高いシステムといえます。
データマートとの違い
データマートとは特定の業務部門やチームのニーズに応じて設計されたシステムで、特定のビジネスユニット(事業)や、「顧客管理」「販売管理」など個別の目的に必要なデータセットを提供します。これにより、迅速なデータへのアクセスと分析が可能となります。
一方、データウェアハウス(DWH)は企業全体のデータを統合し、一元的なデータ管理を実現します。
DWHとデータマートを併用すると、DWHが複数のデータマートを統合する基盤として機能し、より広範なデータセットの管理と分析が可能になります。
BI(ビジネス・インテリジェンス)との違い
BI(ビジネス・インテリジェンス)とは、企業などの組織のデータを収集・蓄積・分析・報告することにより、経営上の意思決定をサポートする専用ツールや技術を指します。
一方、データウェアハウス(DWH)はデータを集約・整理し一元管理するシステムであり、データ活用や意思決定に主眼を置いたシステムではありません。
DWHとBIは補完関係にあり、DWHがデータの蓄積と管理を担う基盤となります。BIはDHWからデータを取り出して分析し、レポート作成やダッシュボード作成などによって可視化することで意思決定に貢献します。
CDP(カスタマーデータプラットフォーム)との違い
CDP(カスタマーデータプラットフォーム)は、顧客データを一元管理し、マーケティングや営業活動、顧客対応に活用するためのプラットフォームです。
データウェアハウス(DWH)と同様にデータを集約・統合しますが、CDPは顧客の購買履歴、顧客の行動データなどあくまで顧客データに重点を置き、パーソナライズされたマーケティング活動、細やかなアプローチを支援します。
一方、DWHは企業内にある各領域のさまざまなデータの統合を目的とし、幅広い分析やレポート作成を実現するためのシステムです。
データウェアハウスが注目される背景
近年、データウェアハウス(DWH)が注目されるようになった背景には、データのサイロ化によるリスクの認識と、データ活用の重要性の高まりが挙げられます。この2つの背景について解説します。
データのサイロ化によるリスクが認識されてきた
データのサイロ化とは、企業内のデータが異なる部門やシステムごとに分断・断絶され、統合や共有が困難になる状態を指します。データのサイロ化が進んでしまうと、データの一貫性の欠如や非効率的な意思決定を招いてしまう恐れがあります。
こうしたリスクが認識されるようになり、その課題の解決策として、データウェアハウス(DWH)が注目されるようになりました。
DWHを導入すれば、全てのデータを統合し、企業内での情報共有、全社的なデータ活用を効率的に行うことが可能になります。
競争力の維持・向上におけるデータ活用の重要性が増している
近年のテクノロジーの進化により、企業はさまざまな経路、データソースからデータを収集することが可能になりました。それに伴って企業の競争力を維持・向上させるため、収集したデータを効率的に分析・活用し、効果的なマーケティングを行うことがますます重要となっています。
データドリブンにシフトしている現代のビジネスにおいて、データを十分に活用できないことは競争力の低下を意味します。さらに、データ管理や分析の技術は高度化しており、従来の方法ではデータを有効に活用することが難しいという課題があります。
このような理由から、整理された高品質データを提供するデータウェアハウス(DWH)の需要が高まっているのです。
データウェアハウス(DWH)の主要機能
データウェアハウス(DWH)は、データを効率的に管理して分析するための機能を備えています。ここでは、4つの主要機能をピックアップし、それぞれ解説いたします。
サブジェクト(データ項目)ごとに整理する
データウェアハウス(DWH)には、データをサブジェクトごとに整理する機能があります。サブジェクトとは主題・テーマのことで、例えば、商品、売上、顧客などのデータ項目が該当します。
そのような項目ごとにデータを整理することで、散在するデータをまとまったデータとして扱えるようになり、特定の分析ニーズに応じたデータを効率的に抽出することが可能となります。企業は整理されたデータから必要なデータを迅速に取得し、効率的に分析を進めることができます。
データの重複を排除し統合する
通常、複数のデータソースからデータを収集するとデータの重複が生じます。データが重複すると、分析の精度が下がり、分析結果も不正確になる恐れがあるでしょう。
データウェアハウス(DWH)には、複数のデータソースから収集されたデータを統合する際にデータの重複を排除する機能があり、無駄のないデータを提供することができます。これにより、データの一貫性を保つことができ、正確で信頼性の高いデータ分析が可能です。
時系列でデータを整理する
データウェアハウス(DWH)にはデータを時系列で整理する機能があります。これは、データを収集した日付や期間に基づいてデータを構造化するということを意味します。
最新のデータだけではなく過去のデータまで体系的に保存しているため、時間の経過に伴うデータ変化を追跡することが可能です。例えば、月ごとの売上データを分析することで、季節的な顧客ニーズの変動を理解することができます。
また、過去のデータに基づいて将来の予測を立てたり、長期間にわたるトレンドや傾向を把握したりすることも可能です。
長期的にデータを保管する
データウェアハウス(DWH)には、長期間にわたりデータを保管する機能があります。
保存されたデータは削除されることがなく、トレンド分析やレポート作成のために長期間利用することができます。そのため、企業は長期のデータを必要に応じて参照し、ロングスパンで経営を見直して効果的な意思決定に役立てることができます。
もちろん、データが膨大に蓄積し負荷が大きくなった場合には、一部データを削除したりアーカイブしたりということも可能ですが、基本的には長期的にデータを保管できることがDWHの優れた点です。
データウェアハウス(DWH)の選定ポイント
データウェアハウス(DWH)を選定する際には、いくつか重要なポイントを考慮しておく必要があります。ここでは、必ず押さえておきたい選定ポイントを4つ紹介します。
クラウド型とオンプレミス型を確認する
データウェアハウス(DWH)には、クラウド型とオンプレミス型の2つのタイプがあります。まずは、それぞれのメリットとデメリットを理解し、企業のニーズに最適なタイプを選定することが重要です。
クラウド型 | オンプレミス型 | |
---|---|---|
メリット | ・初期コストが低め ・導入が迅速に行える ・スケーラビリティ(拡張性)が高い |
・セキュリティが高い ・社内で完全にデータを管理できる |
デメリット | ・継続的にコストがかかる ・システムがインターネットに依存している |
・初期コストが高め ・導入や運用がやや複雑 |
クラウド型はインターネットを介してサービスを利用するタイプで、導入が比較的簡単です。利用状況や需要の変化に対応して柔軟にリソースを追加・削減することもできます。
しかしクラウドサービスの利用料が継続的に発生するため、長期的にはコストがかさむ恐れがあります。また、インターネット接続が必須であり、ネットワーク障害が発生した場合、システム運用に支障をきたすリスクがあるため注意が必要です。
オンプレミス型は自社のサーバー上で運用されるタイプで、データを外部に出さずに済むためプライバシーやコンプライアンス上のリスクを低減できるのがメリットです。
しかし初期コストが高く、運用には専門的な知識が必要でシステムの管理にも手間がかかるというデメリットがあります。
処理速度やデータ容量に問題はないか
データウェアハウス(DWH)は、既存のデータベースの処理速度では対応できない膨大なデータを分析するために開発されたシステムです。
そのため、DWHを選定する際には処理速度とデータ容量が十分であることを確認する必要があります。
企業が生成する膨大なデータを迅速かつ大量に処理できるシステムを選ぶことで、効率的で安定したデータ分析も継続的に行えるようになります。
また、保管されるデータ量は日々増加していくため、容量の拡張性も確認しておくとより安心です。
ユーザーインターフェースが使いやすいか
データウェアハウス(DWH)は、一部の専門家だけでなく一般の業務を行う従業員も活用しやすいことが重要です。
そのため、理解しやすい階層構造を持ち、直感的に操作できるユーザーインターフェースが求められます。
また、カスタマーサポートが充実しているかどうかも確認しましょう。使いやすいDHWを導入することが、データ活用の効率を大きく向上させます。
外部システムとの連携性は十分か
データウェアハウス(DWH)はあくまでデータを整理・統合するためのシステムであり、データを分析・活用するためには別の専用ツールが必要です。つまり、外部システムとの連携を必要とします。
例えば、プロダクトアナリティクスツール(ユーザー行動分析ツール)やBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールと連携することで、データの分析・活用が可能となります。
データの移行やフォーマットの変換に対応できるかを事前に確認し、外部システムとスムーズに連携できるDWHを選ぶことが重要です。
データウェアハウス(DWH)の構築手順
データウェアハウス(DWH)を構築する際は、いくつかの手順を踏む必要があります。ここからは、各ステップについて順番に解説します。
1.データウェアハウスの要件定義を行う
まずは、データウェアハウス(DWH)を導入する目的を明らかにして、要件を明確に定義します。例えば、顧客体験の最適化や従業員のパフォーマンス向上など、具体的な目的を掲げます。
その上で、必要なデータの種類やデータソース、データボリュームなどを定義しましょう。また、データの収集頻度やセキュリティ要件、データ保持期間など細かい要件についても定義します。
どのようなデータをどのように収集するかを具体化する要件定義は、DWHの設計・実装の基盤となり、プロジェクト成功に向けた重要なステップです。
2.設計を行う
次に、要件定義に基づいてデータウェアハウス(DWH)の設計を行います。具体的には、データの集約、整理、保存の方法を決定します。この設計がうまくできると、データのクエリ(検索や分析)が効率的になり、データ分析のスピードと精度が向上します。
さらに、ETL(Extract・Transform・Load:抽出・変換・ロード)プロセスやデータの取り込み方法、変換ルールを定義します。ETLプロセスは、データを抽出して変換しDWHにロードするための重要なプロセスです。
こうした設計を行い、導入するシステムを選定したら、セキュリティやデータガバナンスの要件を設計に組み込みます。適切な設定をきちんと行うことで、この後に続く実装や運用がスムーズになります。
3.実装を行う
設計が完了したらいよいよ実装です。このステップでは、設計に基づいてデータウェアハウス(DWH)を物理的に構築します。
まず、DWHのホスティングに必要なサーバーやストレージをセットアップします。クラウドの場合は、適切なサービスを選定しましょう。
設計したDWHにデータを取り込み、 データベースを構築します。次に、ETLプロセスを設定し、データの抽出、変換、ロードを自動化します。初期ロードが完了したら、システムの性能や機能が設計通り正常に動作するかどうかテストを行いましょう。そしてデータの品質や一貫性を確認し、必要に応じて調整や修正を行います。
このようなDWHの設計・実装が社内で難しい場合は、外部の専門家やベンダーに依頼することも検討しましょう。
4.運用を行う
最後に、データウェアハウス(DWH)の運用を開始します。並びに、継続的なメンテナンスを行います。
データ更新やパフォーマンスの監視、ETLプロセスの監視を行い、システムのバグなどトラブルがあれば迅速に対処しましょう。機能の改善・拡張などを定期的に行うことも運用業務の一部です。また、データ保護やコンプライアンスの強化にもしっかり取り組みましょう。
必要に応じてDWHを最適化しながら運用を適切に行い、システムの安定性と効果を長期間維持することが重要です。
データウェアハウス(DWH)の活用例
データウェアハウス(DWH)の代表的な活用例をおおまかに紹介いたします。
例えば、小売店では膨大な顧客行動データをDWHで一元管理し、分析によって購買パターンや嗜好を把握し、マーケティング戦略に活用しています。
小売店がWebサービスやアプリを運営している場合は、顧客の属性や購買に関する情報とWebやアプリ内での行動情報を紐づけることで、詳細なデータ分析が可能です。これにより、パーソナライズされたマーケティング施策の実行やサービスを提供できるでしょう。
さらに、クレジットカード業界においてもDWHが活用されています。膨大なトランザクションデータを集約してリアルタイムで分析を行うことで、不正利用の兆候を迅速に検出し、適切に対応することができます。
データウェアハウスと連携可能なプロダクトアナリティクスツール「Mixpanel」
NTTコム オンラインが提供するMixpanelは、多角的な分析機能を備えたプロダクトアナリティクスツールで、データウェアハウス(DWH)との連携も可能です。
Mixpanelの主な分析機能には、ユーザーの離脱ポイントを把握するファネル分析、柔軟に数字を可視化できるインサイト分析などがあり、これらを活用することで、ユーザー体験の最適化、ローンチ後の成果の評価、新しい施策の立案などをより効果的に行うことができます。
柔軟かつ高度なデータ分析機能を提供するMixpanelは、顧客がどの要素に価値を見出しているのか、どのような価値を提供すべきかなど、プロジェクト進行において貴重な洞察を与えます。これにより、事業における重要な判断やスムーズな意思決定の実現をサポートするツールです。
また、新たな機能として「warehouse Connectors 」をリリースしました。主要なDWHである「BigQuery」「Snowflake」「Redshift」「Databricks」に対応しており、SQLを必要とせず、さらにただ可視化するだけでなく、Mixpanelが得意とするセルフサービスで分析が行えるようになる機能です。
ぜひ以下のリンクから詳細をご確認ください。
Warehouse Connectorsの詳細はこちら(英語)
導入事例|Sansan株式会社 様
Sansan株式会社様は、営業DXサービス「Sansan」や、キャリアプロフィール「Eight」など、幅広い企業向けDXサービスを提供する企業です。
Mixpanel導入以前は、ログデータが散在し、分析のために集約するだけで多大な手間がかかっていました。さらに、サービスの海外展開にあたり、低コストでユーザー分析と利用促進の仕組みを構築しなければいけないという課題もありました。
導入後は、「散在していたデータが集約されて一気にラクになった」、「分析のスピードが体感で5~10倍ほど早くなった」「細かな条件でデータ分析ができ、分析そのものの質が上がった」といったさまざまな変化を実感されています。
導入事例:Sansan株式会社 様
データウェアハウス(DWH)は
データの統合・活用が求められる現代に有用なシステム
この記事では、データウェアハウス(DWH)の概要や類似システムとの違い、そして選定ポイントや活用例などについて解説しました。DWHは、収集した膨大なデータを整理・統合し、企業が効果的な分析を行うための重要なツールです。DWHを適切に選定・構築し、運用することは、データドリブン経営を支える強力な基盤となります。
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検討に役立つ資料は以下からダウンロード可能です。