「理想の姿を叶える」を経営理念として掲げ、女性本来の美しさを引き出す商品を手掛ける株式会社HRC。売上拡大により多忙を極める同社のコンタクトセンターで、業務負担の軽減やリソースの最適化のために導入されたのが「モバイルウェブ ビジュアルIVR」でした。ここではその経緯と導入後の活用方法や成果について、同社CS課サポートチームの加藤 美久氏に、コンタクトセンター領域において深い知見を持つCXMコンサルティング株式会社 代表取締役社長 秋山 紀郎氏がお話を伺いました。
売上拡大に伴いコンタクトセンターへの入電数が倍増、応答率低下や業務圧迫が深刻に
入電の一部をビジュアルIVRへ誘導、電話からの遷移率は約19%、うち約56%がWebで自己解決している
コール応答率も順調に回復、オペレーターは得意分野を活かした対応に注力できるように
高水準の応答率や対応品質を保ちつつ、お問い合わせ1件あたりにかかる費用を削減
秋山氏: はじめに、貴社の事業と加藤様のご担当業務についてお聞かせいただけますか。
加藤氏:
弊社は通販事業を軸としておりまして、現在主に扱っている商材は女性向けのナイトブラ、ご自宅で快適に過ごすための“おうちブラ”といったバストケア用品、インティメイトケア用品です。最も多いユーザー層は40代ですが、20代~70代まで幅広いお客様がいらっしゃいます。
私はショップのカスタマーサービス、つまりお客様からのお問い合わせを主に扱う部署に所属しておりまして、お客様の応対満足度を改善するための業務や、外部委託しているコンタクトセンタースタッフのフォローを担当しています。
秋山氏: コンタクトセンターの運用状況はどのようになっているのですか?
加藤氏: 現在、お客様からの問い合わせのお電話は、多い日ですと1日1000件以上の日もあります。コールセンターについては外注しており、4社と契約しているのですが、人員が足りずに応答率が課題になっています。
秋山氏: その席数で4社となると、かなり細かく委託先を使い分けていらっしゃるのですね。とはいえ、そこまでオーバーしている状態ですと、応答率などにも影響があるのではないですか?
加藤氏: はい。実際、弊社はもともと目標応答率の達成をしていたものの、売上拡大とともにやむを得ず下がってきてしまい、業務も圧迫されてしまうことが従来の課題となっていました。
秋山氏: では、応答率の改善や、業務負担を軽減するために「モバイルウェブ ビジュアルIVR」を導入されたのですね。
加藤氏: はい。お電話をくださるお客様のうち何割かの方は、ポータルサイトなどWeb上で課題を自己解決していただければ、おそらくお客様にとってもより手軽で、時間もかかりません。そういったお客様が増えることで、お電話が必要なお客様も、回線が混み合わずつながりやすくなります。
秋山氏: なるほど。導入のきっかけはどういったことだったのですか。
加藤氏: まず2021年末から「空電プッシュ」を導入し、お電話くださったお客様に「弊社のポータルサイトで自己解決していただける内容もあります」、「チャットボットをご用意しています」というご案内をしてきました。しかし、いよいよそれだけでは賄いきれないほど入電が増えてきましたので、「さらに強力な解決策はないですか」とご相談したのです。その際に「モバイルウェブ ビジュアルIVR」をご案内いただきまして、翌3月より導入しています。
秋山氏: 社内で導入の決裁をもらうのに苦労するようなことはなかったですか。
加藤氏: はい。オペレーターがコールを1件受けるごとにかかる費用と、ビジュアルIVRの利用1件あたりの費用、もちろん初期費用やランニング費用を含めた上で比較しても、ビジュアルIVRを導入した方が外注費を削減できます。なにより「お客様にとって、よりお電話がつながりやすくなる、問題解決がスムーズになる」ということが決め手になりました。
秋山氏: お客様は、ビジュアルIVRをどのように利用していらっしゃるのですか。
加藤氏:
弊社では、分岐IVRを「1:注文」、「2:(定期購入コースの)解約」、「3:その他」のように設置しております。「3:その他」を選択された方の中からご希望に応じてSMSを送信し、ビジュアルIVRへ移行していただくよう誘導しています。
2022年5月のデータを例にとると「3:その他」を選択された方の中でビジュアルIVRへ移行された割合、いわゆる遷移率が約19%、そのうち無事ビジュアルIVRで問題を解決された割合、つまり解決率は約56%となっています。もちろん、コールの応答率も回復しました。
秋山氏: コールの応答率に加えて、ビジュアルIVRの効果も数値データでしっかり追っているのは素晴らしいですね。ちなみに「3:その他」で多いご用件はどのようなものなのですか。
加藤氏:
商品のカラーや数量など「注文内容の変更」、定期購入コースのお客様による「お届け日の変更」、そして「ダイレクトメール、メールマガジンの登録情報の変更」、アパレル商品ですので「サイズのご相談」もあります。
こういったご用件は概ねお客様自身で解決していただけるようになっていまして、注文内容の変更についてはWebフォームへのリンク、お届け日や登録内容の変更もWebフォームやLINEへのリンクを入れ、操作方法をご案内しています。
秋山氏: なるほど。そうした事情を加味しますと、運用状況としては順調と見ていいのでしょうか。
加藤氏: はい。導入当初は遷移率が10%を切る回線もありましたが、現在は遷移率25%にまで至ることも出てきました。目標としては遷移率30%、解決率60%を達成したいですね。
秋山氏: 解決率は間もなく達成できそうですね。目標達成のために、どのような施策をしていますか。
加藤氏: ポータルサイトのページ改修、ガイダンスやSMSの見直しを進めております。例えばガイダンスは分岐IVRの「3:その他」に寄せられたお問い合わせ内訳を毎週確認していまして、お問い合わせが特に多い内容の大まかなジャンルを見つけ出し、さらに細かく、配送関連だったら「お届け状況が分からない」なのか、「配送業者を変更したい」なのかといったことを洗い出し、ポータルサイトでの解決方法があることをガイダンスに入れ込んでいます。
秋山氏: 「この問題は電話をしなくてもWebで解決できる」ということを周知するために、商品の同梱物にビジュアルIVRの情報を載せるといったことは難しいでしょうか? 例えば、IVRの分岐イメージやメニューの内容と一緒に2次元バーコードを載せれば、電話を経由せずとも直接アクセスしていただけますよね。
加藤氏: 実は、「商品の明細書に載せる」というアイデアも一度出たのですが、現状の弊社の状況を考え、今行うべきではないということで見合わせています。ただ、お客様にはぜひビジュアルIVRを知っていただきたいので、なんらかの手は考えたいですね。
秋山氏: お電話をくださったお客様にビジュアルIVRのことをお伝えしてみるのもいいかもしれません。「この手続きはWebサイトでもできるのですが、ご存じでしたか?」といった風に。知らないお客様には周知できますし、知っているお客様であっても「あえてお電話された理由」をヒアリングできそうです。
秋山氏: 分岐IVRの「1:注文」、「2:解約」については、引き続きオペレーターが応対されるのですね。
加藤氏: はい。お電話を受けるオペレーターには、定期購入コースの引き上げやアップクロス、解約抑止、継続促進といった応対に強い「専任契約」の方もいます。商材の良さを知っていただくためにも、「1:注文」「2:解約」はできるだけオペレーターがお受けして、定期購入コースのご注文や、ご継続をおすすめしたいのです。ナイトブラやおうちブラは、1枚だけ買うよりも、3カ月、4カ月と継続して使用してくださるお客様のほうが「ケアによる違いを実感できた」と喜んでくださいます。せっかく始めるのですから、そこまで続けて、良さを実感していただきたいということで、オペレーターからしっかり説明をすることに注力しています。
秋山氏: なるほど、つまりビジュアルIVRへの遷移率、解決率が高まるほど、オペレーターにも得意分野に注力していただけて、ご注文や継続促進につながり、お客様にもより満足していただけるわけですね。
加藤氏: はい。入電数を減らしながら、全体の応答率95%を達成するために、これからもビジュアルIVRをどんどん活用していきたいですね。
秋山氏: 業務効率化やリソースの最適化においても、自社の都合ではなく、まずお客様を主体に考えていらっしゃることがお話の端々から伝わってきました。お客様の「理想の姿を叶える」ことに、みなさん真摯に取り組んでいらっしゃるのですね。本日はありがとうございました。
<インタビュアーについて>
代表取締役社長 秋山 紀郎氏
マーケティング、セールス、サービスなどCRMソリューションを専門として、20年以上のコンサルティング経験があり、特に、顧客接点であるコンタクトセンターに関しては、戦略策定、設立・統合、ベンダー選定、評価、BPR、教育、業務改善など幅広い経験を保有。セミナーおよび寄稿も多数。