自動車保険を専門に扱うダイレクト型損害保険会社の三井ダイレクト損害保険様。同社では、事故現場や損害の写真をお客様から受け取る手段として、画像アップロード機能をカスタマイズ開発したモバイルウェブのWebフォームを導入、2026年3月から運用を開始しました。導入の背景や仕組みづくりのこだわり、効果について、損害サポート業務部の大屋氏に伺いました。
事故現場や損害状況、車検証などの写真を受け取る手段が、メール添付のみだった
どの案件かわからない写真が届き、事案と照合する作業がしばしば発生していた
各センターの代表アドレスを事務担当が常時監視し、担当者へ手作業で転送していた
お客様に広く提供するフォームとして、セキュリティ面で安心して利用できた
SMS送信時にフォームへ識別番号をパラメータ付与でき、事案と自動で紐付けられる
通知メールの仕様など、約300名の事故担当の運用実態に合わせたカスタマイズに対応できた
画像の提出を依頼するメール運用がなくなり、代表アドレスの監視・転送業務を廃止できた
画像の照合作業がゼロに。RPAで業務システムへの登録まで自動化できた
現場は業務フローを変えずに移行し、スムーズに定着。デジタル推進の取り組みとして社内で表彰された
― まず、事業内容と担当されている業務について教えてください。
大屋氏: 当社はMS&ADインシュアランスグループの一員として、主に個人向けの自動車保険を扱う損害保険会社です。代理店を介さずにお客様と直接契約する、いわゆるダイレクト(通販)型損害保険であり、グループの中では唯一のBtoC事業を展開しています。
近年は、消費者行動のオンライン化や価格感応度の高まりを背景に、ダイレクト保険市場が急速に成長しています。私たちはこの変化に迅速に対応するため、DXやAIを活用しながら利便性や業務効率を大きく向上させ、「お客様から最も選ばれるネット損保」を目指します。
私が所属する損害サポート業務部では、保険金をお支払いする部門のバックオフィス業務を担っており、その中で業務プロセスの改善、DX推進を担当しています。具体的には、保険金支払システムの保守・管理や開発時のシステム要件の整理に加えて、今回の取り組みで導入したモバイルウェブといった業務システムの管理などを手がけています。
― 画像受付のWebフォームは2026年3月の運用開始ですが、モバイルウェブ自体はそれ以前から導入いただいていたと伺いました。以前はどのような経緯でご活用されていたのでしょうか。
大屋氏: 当社ではまずお客さまセンター部が先行してモバイルウェブを契約し、電話応対後のアンケートに活用していました。私たちの部門で使い始めたのは2024年頃からで、お客様とのコミュニケーションツールとして活用していました。
以前から導入していた空電プッシュ のSMSで担当者名や連絡先を案内する際に、モバイルウェブで作成したWebフォームをお送りするといった使い方です。具体的には「ご不明な点は、こちらからお問い合わせください」とご案内しており、これが事故査定から支払い処理までを担う事故担当にとても好評でした。今まではお電話がつながらないとお客様に確認できなかった各種情報が、フォーム経由で確認できるようになったのです。
そこから、事故後対応に必要な情報をご入力いただく専用フォームなど、事故担当の実務に合わせたフォームを次々に増やしていきました。
― 事故対応では、事故現場や車検証などの写真をお客様から受け取る場面も多いと伺いました。導入前、画像の受け取りにはどのような課題があったのでしょうか。
大屋氏: お客様から事故担当へ写真を送っていただく場面はとても多く、たとえば事故現場の写真や車の損害がわかる写真、車検証などが挙げられます。従来は画像受領用のメールアドレスをお伝えし、添付ファイルで送っていただく方法を長年続けていました。
ただ、このメールによる写真受付の運用では、お客様が件名や本文に「私は誰で、何の事案か」を書いてくださらないと、どなたから届いたものなのか特定できません。実際に「どのお客様かわからない車検証が届きました」というメールが支払センターに届き、各事故担当が自分の事案ではないかと確認する、といったイレギュラー対応がしばしば発生していました。
しかも受信するのは各センターの代表アドレスのため、事務担当が常にメールボックスをチェックし、着信のたびに担当者へ転送する作業も必要でした。私自身、過去に事故担当をしていた頃から、この仕組みはベストではないなと感じていたのです。
― 今回カスタマイズ開発された画像アップロード機能の導入は、どのような流れで進んだのでしょうか。
大屋氏: 事故担当の実務に合わせて専用フォームを増やしていく中で、「お客様からの写真も、アンケートフォームで受け取れたら」と考えるようになりました。世の中でも、デバイス画面で必要事項を入力して書類や画像をアップロードするタイプのWebフォームが増えてきている実感があったことも、こうしたアイデアの背景にあります。
お客様の情報と画像がしっかり結びついた状態で受け取れれば、大きな業務効率化につながると考えていたところに、モバイルウェブのWebフォームで画像アップロードができるようになるというご案内をいただき、ぜひやりたいとご相談したのが始まりです。
― 他のツールやソリューションとの比較検討はされましたか。
大屋氏: 今回はほとんどしていません。社内で先行してモバイルウェブを導入している実績があり、グループ内でも同様の活用を把握していたことが大きかったですね。新しいツールを一から契約するとなると、セキュリティチェックなどのハードルがどうしても高くなります。そうなると、お客様へ提供するまでのスケジュールも後ろ倒しになってしまいます。
汎用のWebフォームツールで実現できるのではという声もありましたが、広くお客様に向けてお出しするものとしてセキュリティの観点から適切かどうか判断できないところがあり、検討には至りませんでした。
― 画像アップロード機能を組み込んだアンケートフォーム構築で、こだわった点はどこでしょうか。
大屋氏: 一番重要だったのは、個別の事案に自動で紐付けられることです。フォームからお客様のメッセージや画像を受け取れても、事案に紐付かなければ結局手作業で一つひとつ登録することになります。
営業担当の方にご相談したところ、空電プッシュでSMSを送る時点で、フォームに受付番号のような識別番号をパラメータとして付与できると教えていただきました。それなら狙い通りの仕組みが構築できると、開発と導入を決定しました。
もうひとつは画像の確認方法です。当初の仕様では管理画面にログインして画像を取得する形でしたが、当社では画像を確認するのは約300名いる事故担当です。全員が管理画面で自分の案件を探すのは現実的ではありません。そこで、画像の参照先リンクを記載した通知メールを送信する仕様をお願いしました。
さらにその通知メールの内容を、RPAで業務システムの該当事案のページへ自動登録する仕組みを当社側で構築しています。要望をしっかり聞いて実現していただき、事故担当の業務にジャストフィットする仕組みができたと思います。
― 2026年3月の運用開始から数か月が経った現在、どのような成果が得られていますか。
大屋氏: お客様に画像の提出をお願いする場面では、メールでのやり取りはほとんどなくなり、同時に代表アドレスをチェックして事故担当へ転送する業務もなくなりました。識別番号で事案に自動で紐付くため、「どのお客様の、どの事案の写真かすぐにわからない」といったトラブルも起こりません。以前は届いた画像を事案へ紐付ける手作業がどうしても発生していましたが、そこが一通り自動化できました。
事故担当にとっては、普段使っている業務システムの画面を見ていれば、お客様から画像が届いたことがわかり、そこから画像を確認できます。今までの業務フローを大きく崩すことなく移行できたことは大きなポイントですね。システムを変えるときは現場から不評が出ることも多いのですが、今回はそうした声もほとんどなく、受け入れてもらえました。
実際の利用状況を見ても、画像アップロードフォームからの送信件数は、運用開始の翌月にあたる2026年4月がおよそ1,000件、7月はおよそ1,500件と、4か月で約1.5倍に増えています。受信したデータの件数も、およそ1,400件からおよそ2,200件へと伸びました。事故担当が無理なく使えており、お客様にも問題なくご利用いただけていると考えています。
― 社内からはどのような評価を受けていますか。
大屋氏: 当社は、デジタルによる利便性を最大限に優先して提供する一方で、有人でのサポートが必要なお客様には、真に必要な場面で質の高い丁寧な対応を行うことで、先進的なダイレクト保険会社にふさわしい顧客体験の実現を目指しています。お客様にとって必要なご説明は丁寧にお電話で行い、ご用件のみで十分な内容についてはデジタルで対応するという考え方です。ご契約者様にはマイページ内で当社とやり取りができるメッセージツールをご案内し、ご契約者様以外の事故のお相手の方などにはSMSとWebフォームをご活用いただく。この両輪で、デジタルでのやり取りを増やす取り組みを続けてきました。
私たちの部門でもこの2年ほどデジタルシフトを主導してきており、今回の画像アップロード機能もその取り組みのひとつに位置づけています。もし今、今回の機能が使えなくなったら事故担当の業務には大打撃でしょう。SMSを送ってWebフォームで写真を送っていただく流れが、日々の業務に定着しています。
こうした一連の取り組みは、電話の件数を減らしてデジタルでの対応を増やせたことが評価され、社内で表彰いただきました。当社には年に一度、各部から推薦された取り組みの中から、経営層が特に全社に貢献できていると判断したものを表彰する制度があり、さまざまな部門の取り組みの中から選んでいただいた形です。
このとき示したのが、2025年度の事故受付件数と通話件数の推移です。事故受付件数は前年度比110%と増加した一方で、通話件数は同104%にとどまりました。事故が増えれば、従来どおりの電話中心の対応では通話件数も同じように増えるはずですが、デジタル活用によっておよそ6ポイント抑えられた計算になります。
SMSの活用そのものも広がっています。以前のWeb画面から送信していた頃は、部門のSMS送信数は月に約1万4,000通でしたが、業務システムとのAPI連携で送信内容の登録まで自動化されてからは、月に約2万7,000通、1日あたり約1,200通と、ほぼ倍増しました。送信の手間が減ったことでSMS活用がさらに進み、Webフォームでお客様から返していただけるメッセージも増えていきます。
― 今後、モバイルウェブでどのような取り組みをしていきたいですか?
大屋氏: 現在はRPAで業務システムへの自動登録を行っていますが、毎日かなりの件数の回答メッセージがウェブフォーム経由で届くため、処理能力には限界があります。将来的にはWebフォームと業務システムをAPIで直接連携し、即時に反映できる形にしたいと考えています。画像も、参照先リンクから確認するだけでなく、自動でダウンロードしてドキュメント管理システムに格納するところまで自動化するのが理想です。
また、モバイルウェブの携帯サイト作成機能で、お客様向けのご案内サイトも作っています。おケガをされた方がいらっしゃらない事故などでは、お電話に代えてSMSで必要事項をご連絡し、詳細はサイトをご覧いただく取り組みも始めており、こうした活用も今後広げていきたいですね。