フィットネスクラブを運営しているティップネスでは、継続して利用いただける会員を増やすための施策として、入会2年以上の会員様に継続プログラムのインセンティブの一環として施設利用券を提供しています。
以前は印刷した紙ベースのご案内やチケットを対象会員に郵送していましたが、2015年1月から「モバイルウェブ」の導入に踏み切り、大幅にコストを削減することに成功。
ご担当の馬渡さんに、導入によるメリットや今後の課題などについてお話しいただきました。
株式会社ティップネス 店舗サポート部 馬渡潤一氏
新規入会キャンペーンなどは、当社に限らず、どのクラブでも古くから実施しています。
しかし、全国的にフィットネスクラブやスポーツ施設の普及が進んだ昨今では、入会施策によって会員数が目に見えて増えるということはなくなりました。
このため、当社では、新規会員獲得と併行して、既に会員になっていただいているお客様にも注力し、継続利用によるティップネスへのロイヤルティを感じ取っていただけるような取り組みを展開することにしました。
その一環として2012年から開始したのが、ティップネス.ライフタイムパートナー.プログラム(TLPP)です。
入会から満2年以上の会員を対象にご家族やご友人などを無料で同伴できる施設利用券やお一人様でも無料でご利用可能な施設ご利用券(ご招待券)をご継続の特典として提供を始めました。
各店舗の利用実績より、これらの施設利用券のご利用者が一定以上いらっしゃることを確認できたため、施設利用券の利用用途の拡充や電子化によるコスト削減・効率化が次なる課題の一つとなりました。
従前の施設利用券は印刷や封入、対象会員への発送を外部委託にしているため、当然、郵送料のほか、外注費などのコストがかかっていました。
また、施設利用券は「ご入会日(月)から満2年以上」で、各会員様のそれぞれにとって節目の入会月にお届けするため、当社としては、毎月平均1万人ほどの進呈対象者(ご継続者)のご継続確認、リストアップ及び集計・データ化し委託業者に依頼する必要がありました。
この作業に丸一日かかっていましたが、1度の発送で300通くらいは宛先不明で戻ってきてしまうのです。入会を継続しているものの、転居したことを店舗に伝え損ねているお客様も少なからずいらっしゃるためです。
また、郵送を拒否していらっしゃる会員様もいるため、別途、61店毎に振分、店舗納品を行いそれぞれの店舗、それぞれの対象者ごとに来館時にお渡しするなどのマンパワー的な業務もともなっていました。
そのため、コスト削減や業務効率アップ、対象会員への確実な提供など、施策を実施するなかで浮き彫りになった問題や課題は、電子化で解消できそうなものが大半だったのです。
当社では、施設利用券の電子化に先駆けて、会員専用Webサイト「iTIPNESS」を立ち上げていました。
パソコンやスマホ、携帯電話から新着情報やプログラムスケジュールを確認できるほか、各種の予約や目標設定したうえで予定管理や身体に表れた変化の記録・確認にも活用できるというサイトです。
施設利用券を電子化するうえで、私たちはこの「iTIPNESS」をプラットフォームにしたいと考えていました。
また、先述のとおり、施設利用券の進呈対象は既に入会していただいているお客様になります。つまり、施設利用券の電子化のためには、カスタマイズに応じてもらえる柔軟性や技術力、顧客情報を扱ううえで安心して任せられる信頼性などが、IT事業者に対する必須条件だったのです。
この条件に十分見合う事業者として社内の情報システム部から紹介されたのが、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションさんでした。
2015年1月から「モバイルウェブ」を導入しましたが、当初段階では、従来の進呈方式を希望なさる声も多かったため、紙の施設利用券と電子施設利用券を併用していました。この対策として取り組んだのが、「iTIPNESS」との連動です。
ログインすれば、会員サイト内のマイページ上で施設利用券を取得できるように「モバイルウェブ」をカスタマイズしていただきました。
各店舗には、店頭にいらしたお客様のWeb入会手続き用にタブレットを置いていますが、このタブレットでも施設利用券を取得できるようにもなりました。
スタッフが直接操作法をご案内できるため、携帯端末をお持ちでない方やパソコンやスマホが苦手というお客様にも好評でした。こうして、2017年からは全面電子化に踏み切りました。
コスト削減はもちろん、施設利用券がフックになって「iTIPNESS」の登録者数が増え、リストアップ作業の負担軽減や進呈漏れ件数の低減なども実現。従前の課題・問題の多くを縮小・解消することができました。
この取り組みは、同伴チケット・施設利用券の郵送による進呈でスタートしましたが、「モバイルウェブ」導入に合わせ、会員ご本人にメリットを感じていただけ、施設利用以外でもご利用いただけるような利用範囲を拡大した施設利用券に変更、同伴チケットを廃止し、1本化に統一することにしました。
一部会員種類の方が夜間・日曜日、登録店以外の施設利用をできたり、会員種類を問わずタオルや水着などのレンタルを選択できるといった使用を可能にしたことです。
以前は1割から2割程度だった施設利用券の利用率は、現在約3割にまで増加しています。そして、本来の狙いである継続会員の確保についても、増加傾向を確認できています。
チケット(紙)だったころは、実際は何人のお客様の手元に届いたのか、お届けからご利用までのタイムラグがどれくらいあるのかといった点やご本人が利用したのか?ゲストの方が利用したのか?などの検証がかなり困難で精度を欠き、作業を増大させていました。しかし、完全電子化を実現した今は、ログ解析によって状況をすべて把握することが可能になりました。
お客様のニーズを正確にとらえたうえで、抑えることに成功したコストを有効活用し、長く会員を続けることに喜びや張り合いを感じていただけるような仕掛けやインセティブを強化していきたいですね。
「健康で快適な生活文化の提案と提供」を企業理念として、首都圏・東海・関西地区で61店舗の総合フィットネスクラブを運営している。自治体や一般企業などを対象に、運動施設の管理や来訪者への指導といった受託事業も展開中。