東京海上グループの中核をなし、グローバルに事業展開する東京海上日動火災保険株式会社。日本初の保険会社として1879年に設立した同社が、時代のニーズに合わせてCX改善に取り組もうと考えたときに注目したのが、モバイルウェブを活用した顧客へのアンケート収集でした。ここでは導入の経緯やその後の活用方法、導入効果について、同社CX・プロセスデザイン部の松川氏、奥田氏、大橋氏、鈴木氏にお話を伺いました。
― はじめに、CX・プロセスデザイン部の業務内容についてお聞かせください。
松川氏 : CX・プロセスデザイン部は、弊社保険サービスにおける更なるCX向上を目指し2020年に新しく発足した部署です。多様化するお客さまのニーズに対応していくためには、個々のお客さまの顧客体験価値に目を向ける必要がありました。CX・プロセスデザイン部では、お客さまに心地よいCXを提供するために、Webサイトの導線やコンテンツの改善など、さまざまな施策に取り組んでいます。そのなかで、商品・サービスに関するお客さまの問い合わせ窓口であるカスタマーセンターの運営も当部で行なっておりまして、東京・岐阜・福岡の3拠点で約270名のオペレーターを含む総勢約400名の従業員が在籍しています。このカスタマーセンターでモバイルウェブのWebアンケートサービスを導入しました。
― 日々多くのお客対応をする大規模カスタマーセンターを管理・運営するうえで大切にしていることはありますか?
松川氏 : 1998年に開設したカスタマーセンターは、長い歴史のなかでノウハウを蓄積してきました。そして現在も、お客さまに感動を与える応対を目指して常に品質向上に努めています。現状を分析して品質改善を推し進めるために非常に重要なのは「お客さまの生の声に向き合うこと」です。そのために、以前から年に1回、お問い合わせいただいたお客さまに対して電話によるアンケートを実施してきましたが、もう少しアンケートの頻度を高めてより多くのお客さまの声を収集し、向き合いたいという思いがありました。
― モバイルウェブ のWebアンケートを導入いただく前、カスタマーセンターのアンケート収集でどのような課題があったのでしょうか?
鈴木氏 : 「お客さまアンケートの頻度を高めたい」と考えていましたが、従来の電話アンケートではそれが難しく、いくつかの課題感をもっていました。
従来の電話アンケートでは、お客さまに本来のご案内が終わった後で5分間ほどお時間を頂戴してアンケートにご協力いただくフローとしており、頻度も年1回に留まっていました。
― お客さまに手間をかけさせることでCXが低下してしまっては本末転倒ですよね。
鈴木氏 : そうですね。また、フリーコメントを収集するために、電話アンケートではお客さまに30秒間コメントを吹き込んでいただくようにしていましたが、時間制限もあり、お客さまの伝えたいことや真意が伝わりにくいという課題もありました。
同時にNPS(※)の指標取得では11段階評価を採用することが望ましいと言われていますが、電話アンケートでは5段階評価という点も気になっていました。また、オペレーターがアンケート用のIVRにお繋ぎする方式で行っていたためランダム性に欠け、アンケート結果の質として十分でないという点も課題でした。
※ NPS:「Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)」の略称で、顧客ロイヤルティ、顧客の継続利用意向を知るための指標
― アンケートを行うオペレーターの負荷という点で課題はありましたか?
鈴木氏 : その点も大きかったです。以前は電話で本来の応対が終わった後で「これからアンケートにご協力いただけませんか?」とお客さまに伺い、了承を得たうえで実施していましたが、年に1回のアンケート期間中、アンケートに関する電話対応だけでおおよそ50時間ほどオペレーターのリソースを費やしていました。
― 課題解決のためにモバイルウェブをお選びいただいた決め手を教えていただけますか?
松川氏 : モバイルウェブのWebアンケートはSMS(空電プッシュ)でアンケートフォームのURLを送信してお客さまにアンケートにお答えいただきます。これは、鈴木が説明した従来の電話アンケートにおけるさまざまな課題をすべて解消できると考えました。NTTグループのインフラとしての信頼性はもとより、短納期に対応していただける点も心強かったですね。機能に対して費用感がリーズナブルな点も後押しとなり、社内決済のハードルもクリアできました。
― 導入を進めるうえで課題などはありませんでしたか?
奥田氏 : 弊社ではご契約者の膨大な個人情報を扱っているため、新たなシステムを導入する際は非常に厳しいセキュリティ基準をクリアしなければなりません。その点で、NTTコム オンラインの営業担当者さまには大変ご尽力いただき、ミーティングを重ねながら一つひとつ課題をクリアしていきました。
IT部門の許可が下りるまでには時間を要しましたが、その後は遅れた分を巻き返すべく、驚くほど早く導入を進めていただきました。
― 現在のSMSを利用したWebアンケートの活用状況について教えていただけますか?
奥田氏 : 以前は年1回の実施にとどまっていましたが、現在は年間を通じて、自動車保険や火災保険など、窓口ごとにさまざまなアンケートを実施しています。カスタマーセンターには月間で約10万件のお問い合わせが入りますが、そのうち10%にあたる約1万件のコールに対して、切電後、翌営業日にSMSを一斉送信しています。
― 導入後の効果はいかがでしたか?
鈴木氏 : 電話アンケートのときは1回(約2週間)の実施で約1300件のアンケート結果を収集していましたが、SMSによるアンケート収集に切り替えてからは、約2週間で約1.4万件発信し、倍近い約2500件の収集ができました。SMSだとお客さまはいつでも好きなときに回答できるため、お客さまの負担低減につながったと思います。
同時に、以前は年に1回のアンケート実施でトータル50時間のオペレーターロードがかかっていましたが、アンケートの実施回数を増やしながらもそのロードを大幅に削減できました。
また、モバイルウェブのWebアンケートでは11段階評価に加え、文字数制限のないフリーテキストが入力できるため、より精緻で恣意性のないデータを収集できるようになりました。
奥田氏 : もう一点、モバイルウェブのWebアンケートの特徴としてコールとアンケートの結果を紐付けられるという点も非常に魅力です。どのオペレーターのどの応対に対して、どんな評価が返ってきたのかを細かく分析することで、課題が鮮明に見えるようになりました。同時に評価の高いアンケート結果をオペレーターにフィードバックすることで、働く方のエンゲージメント向上にも繋がると思います。
― WebアンケートとともにビジュアルIVRもご活用いただいているようですね。
大橋氏 : はい。コンビニエンスストアでもスマートフォンでも、気軽に加入できる「1日自動車保険」のお客さま向けに、モバイルウェブのビジュアルIVRを活用しています。お問い合わせいただいたお客さまに対してSMSをお送りし、URLのリンクからビジュアルIVRのページに誘導して、そこからFAQや手続きページなどのコンテンツへご案内しております。
ビジュアルIVRは、電話口で長時間音声ガイダンスを聞いてお待ちいただくこともなく、またカスタマーセンターの営業時間に関係なく、いつでもご自身のスマートフォンで自己解決いただけるツールとして有効ですね。
また、管理する側としては、操作が簡単で編集の自由度が高いといった操作性・柔軟性も気に入っています。
― 最後に、今後のモバイルウェブの活用や事業における展望などを教えていただけますか?
松川氏 : 我々の取り組みはまだ始まったばかりですが、お客さまの生の声を収集しやすくなったり、お客さまやカスタマーセンターの負荷が低減されたりと、さまざまな良い効果が出始めています。今後はデータ分析のナレッジを蓄積しながら、オペレーターの育成プログラムの見直しや、業務プロセスの改善など、さまざまな施策を行い、さらなるCXの向上を目指していきます。
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/
東京海上ホールディングスの中核事業会社として損害保険事業を展開。お客様の信頼をあらゆる事業活動の原点におき、「安心と安全」の提供を通じて、豊かで快適な社会生活と経済の発展に貢献することを目指す。