2023年10月13日(金)開催 【事例登壇】
ファンのリアルなクチコミに拘るスープストックのソーシャルリスニング
〜VOCの発見から炎上リスク対策まで~
セミナーレポート

概要

食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」では、SNS投稿をファンのリアルなクチコミとして捉えて、VoCの分析やネガティブな投稿にも向き合っていらっしゃいます。2023年4月に全店で離乳食の無料提供を発表すると、SNS上で賛否様々な意見がなされました。しかし、「世の中の体温をあげる」という理念に基づいた毅然とした声明文を発出し収束、お客さんに対し真摯に向き合う姿勢が評価され、スープストックトーキョー一同として2023年10月、日経クロストレンドによるマーケター・オブ・ザ・イヤー2023に選出されました。本セミナーは、同社の広報責任者安藤様によるソーシャルリスニングの取り組みのご紹介や、弊社ソーシャル事業責任者の渡邉によるスープストックに関するSNSへの投稿データのスパイク分析等のご説明を通じた対談形式で行いました。

ソーシャルリスニングの概要

まず、冒頭に渡邉より「ソーシャルリスニングとは何か」についてご説明しました。まず、ソーシャルリスニングについて「攻め」=企業側の発信と「守り」=リスク検知や炎上対策などの一般的な使われ方を紹介。2023年度に弊社で独自に実施した調査結果から、約6割の企業が毎日から週2回程度は投稿を収集していること、その目的として、マーケティング活用とリスク対策はほぼ同じ比率である事など、近年特にソーシャルリスニングへの取り組みが一般化している状況をご説明しました。

スープストックトーキョー様に関する投稿分析と、ソーシャルリスニングの取り組み

続いて、スープストックトーキョーの安藤様より、「世の中の体温をあげる」という企業理念を基に、ブランドに触れることでお客さまはもちろん、社員や生産者の方全ての「心の体温を上げる」ことの連鎖を真剣に考えられていることや、ファンイベントなどの全社での取り組みを紹介いただきました。このような取り組みが、アプリや店舗、そしてSNSを通じて伝わることで世の中の体温をあげることにもつながっている、そのような視点を重視されています。

直近半年間の「スープストックトーキョー」へのSNSへの投稿を弊社が分析すると、平常時はおおよそ毎日100件程度の投稿があり、お歳暮の時期で5倍ほど、七草粥の提供時には8倍ほどのスパイクが確認されました。

スープストックトーキョー様としては「お客さまの体温が上がったか?」を定性的に測定する方法として、日常的にSNSの投稿を収集している事、例えば七草粥をお客様にお出しする際に「一年間ご健康でお過ごしください」というふうな声かけを行っており、それに対するお褒めの声や、ネガティブな投稿であっても、「体温をあげる」ことにつながる投稿であればレポーティングし、店舗のスタッフにも共有しているという取り組みが紹介されました。

離乳食に関する投稿推移

続いて弊社渡邉より、離乳食サービスの提供に関する投稿の推移をご報告しました。

4/18の最初の離乳食サービスの提供を行う旨の投稿については、特に投稿量が急激に伸びたわけでは無く、テストマーケティング時の投稿傾向と同じく、離乳食の提供は嬉しい、店舗の接客がよい、等のポジティブな投稿がほぼすべてでした。

翌日の4/19から投稿が拡散され始めると、子供が来店することで騒がしくなる、や、狭い店舗でのベビーカーの使用など、賞賛の声以外の否定的なコメントが投稿され、トレンド入りし、まとめサイトで取り上げられました。その後、子育てのしやすさ、寛容性等についての言及など、スープストックトーキョー様以外への話題の拡大しており、話題が発展していくというソーシャルメディアの特徴が顕著にみられました。

4/20になると大手メディアに取り上げられ、さらに投稿は拡散し、「吉野家コピペ」の内容が改変されるなど主旨とは異なる投稿が加わり、約12万件と爆発的に拡散が増えました。

4/26にサイトで声明文を発表すると、真摯な姿勢を貫いたことに対する称賛の声を中心に約4万件の投稿がなされました。

投稿量の落ち着きを見せるのは5/6頃ですが、スープストックトーキョーへの言及は、1日平均300件程度と過去平均を上回る投稿量で落ち着いたものと推測されます。

投稿の拡散時の対応

投稿の拡散から声明文の発表までの対応を安藤様よりお話しいただきました。テスト販売時点での反響がとてもよかったこともあり、初日の18日は好意的な投稿が多く、また店舗に寄せられる声とも合致していたため、安心してみられていたそうです。しかし翌日に投稿が増え始めたため、幹部へ状況のレポーティングを実施。並行して、店舗への影響の確認を徹底するという行動がとられました。

初動は検知したものの、脊髄反射的に反応を起こすことは、過去の事例を見ても良くない影響があることを理解していた為、まずは静観をしようと、社内での意識統一を図られました。

19日に投稿量の増加を検知してから、離乳食の提供開始となる25日までの間に、代表の松尾様を含めて様々な議論がなされたとの事です。

「世の中の体温をあげる」という理念に基づいた行動であること、お子様連れでの来店に対するバリアを感じていらっしゃる方の悩みを解決できることで、そのような方の体温があがることにつながる事なので胸を張ってやろう、という基本方針は20日の段階で決まったそうです。

一方で、様々な投稿の節々や、議論に触れることで胸を痛めた方もいらっしゃることは把握されておりました。スープストックトーキョーとしてどのような発信を行うかについては、慎重な議論がなされ、離乳食の提供開始後の26日に声明文という形での発信を決定されたとの事です。

SNSでは様々な意見が投稿される中、メールや感想をお寄せいただくフォームからは離乳食の取り組みに対する賛同の声は多く寄せられました。また、データに表れているように日常の投稿も増加しており、企業理念に対する共感性が上がったのかなと感じられたそうです。

まとめ – スープストックトーキョー様のソーシャルリスニングの特徴

最後に、渡邉よりスープストックトーキョー様の特徴として、以下の点を取り上げました。

・企業理念が浸透している点

企業理念に基づいてファンの声を日常的に共有し、活用している点と、リスクについても同様の態度を貫いていることが大きな特徴であり、このことは一般的にはなかなか実践することが難しい点であることが挙げられます。

・条件反射的な対応をとらない

リスクを検知した際にも条件反射的な対応、謝罪などを行わず、丁寧に、しっかりと伝わる文章で発表を行われていました。

・日常業務への活用

日常的にソーシャルメディアへの投稿を社内へ共有を行っており、社内全体の理解があったこと、そのために想定していなかった事象が発生したときの対応に関する意識合わせも共通認識のもとになされたものと思われます。

弊社では、SNSの投稿分析や投稿を検知し、アラートを行うソーシャルリスニングツールの提供などを通じ、様々な企業様のVoC・リスク対策をご支援しています。炎上対策やVoC、ファンのご支援など様々なテーマでのセミナーを定期的に開催しておりますので、お気軽にご参加下さいませ!