更新日:2024/01/30(公開日:2021/08/25)

オンライン服薬指導とは?実施の流れやポイントを解説

2019年度の医薬品医療機器等法の改正により、2020年9月から一定の要件のもと、オンライン服薬指導が全国的に解禁となりました。さらに2022年3月には法改正が行われ、従来よりもオンライン服薬指導の規制が緩和されています。

これを機会に導入を検討しているという医療機関も多いのではないでしょうか。オンライン服薬指導は、患者側、薬剤師側双方にメリットがある一方で、まだ課題も残ります。また従来のルールと現行のルールについて正しく理解し、適切に運用しなければなりません。

そこで今回は、オンライン服薬指導について、概要やメリット、課題、円滑に進めるためのポイントなどを紹介します。

この記事の内容
  • オンライン服薬指導とは、ビデオ通話などを利用してオンラインで服薬指導を行うこと
  • 2022年3月に法改正が行われ、従来のルールよりも規制が緩和された
  • オンライン服薬指導は患者・薬剤師の負担軽減、病院での感染予防など多くのメリットがある
  • 一方で医薬品の配送、患者の通信環境やITリテラシー、システムとの連携など課題も残されている
  • オンライン服薬指導を円滑に進めるには、適したツールを採用しポイントを押さえて実施することが重要

オンライン服薬指導とは

オンライン服薬指導とは、ビデオ通話などを利用して、服薬指導をオンラインで行うことです。そもそも服薬指導とは、薬剤師が患者に対して、くすりの服用方法や使用上の注意の説明などを行うことで、薬剤師は、処方箋に基づいて患者に薬剤を交付するとき、服薬指導を行うことが義務付けられています。

2019年度の医薬品医療機器等法(以下、薬機法)の改正により、改正前は原則不可とされてきた処方箋に基づく調剤時のオンライン服薬指導が、改正後の2020年9月1日から実施可能となりました。実施可能となったオンライン服薬指導は、「オンライン診療による処方箋に基づいた遠隔服薬指導」と「在宅医療による処方箋に基づく遠隔服薬指導」の2つに分かれます。

「0410対応」と「オンライン服薬指導」の違い

改正薬機法によるオンライン服薬指導の解禁が2020年9月に予定されていた矢先、新型コロナウイルス感染症が拡大しました。この影響ではじまったのが、「0410対応」です。

2020年4月10日に厚生労働省から「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」の通達が出され、時限的・特例的措置としてのオンライン服薬指導が実施可能となりました。

本来、オンライン服薬指導は、僻地に住む人や通院が困難な人に最良の医療を提供することが目的でした。しかし、0410対応は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止が目的という違いがあります。

また、0410対応では、本来認められない音声のみ(電話)での指導や、初回の薬剤交付でもオンライン服薬指導が実施できるなど、条件も緩和されています。

さらにこうした動きを受け、2022年3月31日には「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令」が公布・施行されました。これにより従来の薬機法に基づくルールが緩和され、「0410対応」と「オンライン服薬指導」の違いは少なくなっています。おもな改正点は次のとおりです。

  • 薬剤師の責任・判断により初回からオンライン服薬指導を実施可能とすること
  • 服薬指導計画の見直し
  • オンライン診療・訪問診療において交付された処方箋以外の処方箋においてもオンライン服薬指導の実施を可能とすること

また0410対応は2023年7月31日で終了しているため、今後は改正後の薬機法に基づくルールに沿ってオンライン服薬指導を行う必要があります。両者の違いは次のとおりです。

  薬機法に基づくルール(改正後) 0410対応
実施方法 初回でも、薬剤師の判断と責任に基づき、オンライン服薬指導の実施が可能 初回でも、薬剤師の判断により電話・オンライン服薬指導の実施が可能
通信方法 映像及び音声による対応(音声のみは不可) 電話(音声のみ)でも可
薬剤師 かかりつけ薬剤師・薬局により行われることが望ましい かかりつけ薬剤師・薬局や、患者の居住地にある薬局により行われることが望ましい
処方箋 同右 どの診療の処方箋でも可
薬剤の種類 同右 原則としてすべての薬剤(手技が必要な薬剤については、薬剤師が適切と判断した場合に限る)
調剤の取り扱い 同右 医療機関からファクシミリ等で送付された処方箋情報により調剤可能(処方箋原本は医療機関から薬局に事後送付)
服薬指導計画 服薬指導計画と題する書面の作成は求めず、服薬に関する必要最低限の情報等を明らかにする 特に規定なし

引用元:「令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)|厚生労働省」をもとに作成

必要な条件や施設基準

従来のルールではオンライン服薬指導を行う薬局側には、オンライン診療あるいは在宅医療による処方箋に基づくオンライン服薬指導なのかによってそれぞれ異なる施設基準が設定されていました。しかし、今回の改正によってそれらの施設基準は削除されています。

また従来はオンライン診療または訪問診療の際に交付された処方箋に対するオンライン服薬指導であることが条件でしたが、現在はこれらに限らずどの診療の処方箋であってもオンライン服薬指導を実施することが可能になっています。

参考:令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)|厚生労働省

対象となる患者

従来のルールでは、患者は利用する薬局の薬剤師から同一の薬に対する対面での服薬指導を一度は受けたことがなければオンライン服薬指導に移行できませんでした。しかし現在は法改正により、対面での服薬指導を受けたことがない患者に対しても薬剤師の判断と責任のもとにオンライン服薬指導を実施できるようになっています。

同時にこれまで処方されていた薬剤またはこれに準じる薬剤に対するオンライン服薬指導しかできないというルールも緩和され、原則としてすべての薬剤に対して可能になりました。

薬剤師への診療報酬

オンライン服薬指導による薬剤師への服薬指導料(点数)も、法改正に伴い次の通り見直されています。

オンライン診療による処方箋に基づくオンライン服薬指導の場合

(新)

イ 原則3月以内に再度処方箋を提出した患者 45点

ロ イの患者以外の患者 59点

在宅医療による処方箋に基づくオンライン服薬指導の場合

(新) 在宅患者訪問薬剤管理指導料 在宅患者オンライン服薬指導料 59点

出典:令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)|厚生労働省

おもな算定要件には、以下が定められています。

  • オンライン診療による処方箋に基づくオンライン服薬指導の場合

    • 処方箋受付1回につき所定点数を算定する
    • イの患者であっても手帳を提示しないものに対してはロにより算定する
  • 在宅医療による処方箋に基づくオンライン服薬指導の場合

    • 患者1人につき月4回(末期の悪性腫瘍の患者及び中心静脈栄養法の対象患者にあっては、週2回かつ月8回)に限り59点を算定する
    • 保険薬剤師1人につき週40回に限り算定できる

オンライン服薬指導導入のメリット

オンライン服薬指導を取り入れると、さまざまなメリットがあります。ここでは患者、薬剤師双方から3つのポイントを紹介します。

患者の通院・時間軽減

オンライン服薬指導を導入することによる患者側の大きなメリットは、移動時間や待ち時間の負担が軽減されることです。以前は、対面での服薬指導が義務付けられていたため、オンライン診療を受けた場合でも、郵送されてきた処方箋を保険調剤薬局まで出向いて提出する必要がありました。

しかし、オンライン服薬指導を利用すれば、患者はビデオ通話などのオンラインツールを使い、自宅など好きな場所で服薬指導を受けられます。オンライン服薬指導は予約制の場合も多く、移動時間だけでなく待ち時間も大幅に軽減されます。

移動による負担がなくなることで、家から近い、ではなく、信頼できる薬局の利用が可能になり、薬局選びの選択肢も広がります。

薬剤師の負担軽減

在宅医療においては、訪問に伴う薬剤師の負担も軽減されます。従来、通院が困難で在宅医療を受けている患者に対しても、服薬指導は対面で行うことが義務付けられていました。このため、通院・保険調剤薬局への訪問が難しい患者に対しては、薬剤師が自宅を訪問する必要がありました。

しかし、オンライン服薬指導を導入すれば、薬剤師は医療機関や保険調剤薬局から患者に服薬指導が行えます。ビデオ通話では、必要に応じて画面越しに残薬の確認もできるため、指導の質が損なわれることもありません。

病院における感染予防

患者と医療従事者双方のメリットとしては、医療機関で発生する感染症への感染リスクを軽減できることが挙げられます。

オンライン服薬指導は、オンライン診療または在宅診療と組み合わせて行われます。診療から服薬指導まで、オンラインまたは在宅と遠隔で完結させることができ、患者は医療機関へ出向く必要がありません。

とくに免疫機能が低下している人や高齢者など、感染症への感染が多大なリスクになる患者が対象の場合、オンライン服薬指導の導入は、患者の安心感にもつながるでしょう。

オンライン服薬指導の流れ

オンライン服薬指導の基本的な流れは次の通りです。

  1. 診療
    まずは患者が対面もしくはオンラインで医療機関の診療を受けます。
  2. 処方箋の受付
    患者がオンライン服薬指導を希望した場合、医療機関が処方箋を調剤薬局へ送付します。もしくは患者が受け取った処方箋を希望する調剤薬局へ送付し、オンライン服薬指導を申し込みます。調剤薬局は処方箋や保険証データ、問診データを受け取り受付を行います。
  3. オンライン服薬指導の実施
    調剤薬局は薬の準備を行ったうえで、予約された日時にPCなどの情報通信機器を利用してビデオ通話を開始します。対面で行うのと同じようにオンラインで薬の使用方法、注意点、副作用などについて説明し、服薬指導を実施します。
  4. 会計
    服薬指導が終了したら患者の自己負担額を提示します。患者はクレジットカードや銀行振込、オンライン決済サービスなどの利用可能な決済方法を選択し、会計を行います。
  5. 薬の配送
    患者は近くの調剤薬局での受け取り、もしくは自宅への配送が選択できるため、患者の選択に応じて薬を配送します。

オンライン服薬指導の課題

メリットの多いオンライン服薬指導ですが、導入するにあたり残る課題もあります。ここでは3つのポイントを説明します。

医薬品の配送

一つ目の課題は、医薬品の配送についてです。オンライン服薬指導を行った場合、薬を患者に手渡しできないため、保険調剤薬局から患者の自宅に配送することになります。この際のガイドラインについて、薬機法改正によるオンライン服薬指導では明確に定められていません。

配送料金の負担は薬局がする場合もあれば患者が負担する場合もあるなど、対応が分かれています。配送手段についても、安全に届けられることを考慮する必要があります。

また、薬の種類によっては、配送中の温度や湿度など、品質の保全について細やかな配慮が必要になるケースもあり、取り扱いについて十分な検討が必要です。

患者の通信環境やITリテラシー

オンライン服薬指導がスムーズに行えるかどうかは、患者の通信環境やITリテラシーといった要因に依存します。より対面に近い状態で指導を行うには、タイムラグがなく画質も鮮明であることが必要ですが、山間部や離島では通信インフラが整備されていない場合もあります。

また、特に高齢者には、アプリやシステムの操作に慣れていない人も多く、場合によってはアプリのダウンロードから使用方法まで、丁寧に説明しなければならないこともあります。オンライン服薬指導を円滑に行うためには、導入するツールの操作性に配慮することも大切です。

電子お薬手帳などシステムとの連携

オンライン服薬指導を行う際は、お薬手帳も「電子お薬手帳」など、オンラインに対応したものを活用する必要があります。電子カルテや薬歴システムなどと連携できるシステムなら、より効率的にオンライン服薬指導が行えるでしょう。

対面での服薬指導では、お薬手帳への記録は薬剤師が行いますが、オンライン服薬指導の場合、患者が記入する必要があります。記入漏れやミスを防ぐためにも、電子システムを活用し、患者の服薬状況などを正確に把握することが必要です。

オンライン服薬指導を円滑に進めるためのポイント

オンライン服薬指導は患者と医療機関双方の利便性を向上させるため、今後さらに導入が進んでいくでしょう。しかし、オンライン服薬指導を円滑に進めるためには、いくつか注意点もあります。ここでは4つのポイントについて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

オンライン服薬指導のメリットと課題の理解

今回ご紹介したように、オンライン服薬指導には多くのメリットがある一方で課題も残っています。とくに課題については、それぞれの医療機関の状況によって影響は異なるでしょう。まずはオンライン服薬指導の一般的なメリットと課題について理解したうえで、ご自身の医療機関で発生しうる影響について考えてみてください。

事前に問題点を解消したり、トラブル発生時の対応策などを考えたりしておくことで、オンライン服薬指導の導入・実施を円滑に勧められます。

薬剤師と患者の信頼関係

オンラインでのコミュニケーションは対面よりも希薄になりやすい傾向があります。患者のなかにはオンラインでのやりとりに慣れておらず、不安を感じる方もいるでしょう。そのため日頃から患者に誤った認識や理解不足がないか注意してコミュニケーションを行い、服薬状況を継続的・一元的に把握するようにします。患者に安心感を持ってもらうため、できるだけ強い信頼関係を築けるように配慮しましょう。

患者の安全性を確保するための体制整備

患者の容態が急変した場合などに安全性を確保するには、適切な体制を整備しておくことが重要です。薬局は緊急時に備えて、処方医とスムーズに連絡が取れる体制を整えておきましょう。またオンライン服薬指導から対面での服薬指導に切り替える場合などに、情報の伝達漏れによる悪影響が発生しないよう、情報共有のシステムや体制を整備しておくことも大切です。

薬剤師と医師・歯科医師との連携

薬剤師は服薬指導の際に、患者の薬の使用状況や体調についてヒアリングをします。こうしたフィードバックや対面診療・調剤を確保する点からも、医師や歯科医師と適切に連携する必要があります。とくに長期的な治療を続ける患者の場合、継続的な服薬指導により些細な容態の変化に薬剤師が気付くケースもあるでしょう。医師と連携が取れていれば、より適切な治療のヒントになる可能性もあります。そのため薬剤師と医師は継続的に連携体制を確保すべきです。

オンライン服薬指導ツールには「ビデオトーク」

オンライン服薬指導に欠かせないビデオ通話ツールには、NTTコム オンラインが提供する「ビデオトーク」がおすすめです。

ビデオトークは、携帯電話番号にビデオ通話用のURLを記載したSMSを送信するだけで繋がることのできるビデオ電話ツールです。アカウント登録やアプリのインストールは不要のため利用者側の負担が非常に少ないことが特徴で、ITリテラシーの低い方でも簡単に利用できます。

ビデオトークはすでに医療機関に導入されており、来院が難しい遠方の患者のオンライン診療などに活用されています。

オンライン服薬指導の導入を検討している方は、ぜひくわしい資料をご覧ください。

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