2024/03/12

オンライン診療の始め方とは?流れと注意点、事例を解説

ビデオ通話ツールを使って診療を行う「オンライン診療」は、コロナ禍で注目を集め、導入を進める医療機関が増えました。オンライン診療はクリニック側にも患者側にも多くのメリットがあるため、これから導入を考えているクリニックも多いのではないでしょうか。

この記事では、オンライン診療の始め方と流れ、導入時の注意点やメリット・デメリットなどを詳しく解説します。実際にオンライン診療を導入したクリニックの事例も紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。

この記事の内容
  • オンライン診療を導入するには、ビデオ通話ツールの選定・ネットワーク環境の構築・研修の受講・届出の提出・診療計画の作成といった対応が必要になる
  • オンライン診療を実施する際は、患者さんから同意を得ることや毎回実施可否の判断をすること、初診は原則かかりつけの患者さんのみ、といった点に注意する
  • オンライン診療は「通院が不要で受診のハードルが下がる」「診療がスムーズになる」「院内感染を防げる」など、クリニック側にもメリットが多い

オンライン診療とは?

オンライン診療とは、スマートフォンやタブレット、パソコンなどを使ってビデオ通話形式で診療を行うことです。インターネットを利用することで音声や映像がリアルタイムで届くので、医師と患者が離れた場所にいても問題なく診療できます。

オンライン診療の制度が始まった当初は、離島や僻地に住んでいる人などが主な対象でした。しかし、制度が整うにつれてオンライン診療はさまざまなシーンで用いられるようになり、新型コロナウイルス感染症の流行時にも大いに役立ちました。

オンライン診療は「通院が不要」「感染対策に有効」など、多くのメリットがあります。コロナ禍で注目を集めたこともあり、オンライン診療の導入を進める医療機関も少なくありません。

オンライン診療の始め方と流れ

オンライン診療を導入するには、ツールの選定や通信環境の整備、研修や届出など必要なステップを順に進めていく必要があります。具体的には、以下のような流れになります。

  1. ビデオ通話ツールの選定と導入
  2. ネットワーク環境の構築と通信機器の入手
  3. 厚生労働省が指定する研修の受講
  4. オンライン診療に関する届出
  5. オンライン診療の対象を決定する
  6. 診療計画書を作成する

それぞれのステップでどのような対応が必要になるのか、以下で詳しく見ていきましょう。

1. ビデオ通話ツールの選定と導入

オンライン診療に必須なのが、ビデオ通話ツールです。ビデオ通話ツールは多くの製品・サービスが提供されているため、どのツールを導入するのか選定しなければなりません。

オンライン診療を目的にビデオ通話ツールを導入する場合、汎用的で広く使われているツールを利用するか、オンライン診療専用のシステムを利用するかの大きく2つの選択肢があります。

オンライン診療専用のシステムは、ビデオ通話だけでなく診療の予約や受付、支払いなど必要な機能が揃っているのが特徴です。一方、汎用的なビデオ通話ツールは手軽に導入でき、比較的安価で利用できるというメリットがあります。

2. ネットワーク環境の構築と通信機器の入手

ビデオ通話ツールを利用するには、ネットワーク環境と通信機器が必要です。ネットワーク環境が不安定だったり通信機器のスペックが低かったりすると、音声や映像が乱れる原因となりオンライン診療に支障が出る可能性があるため、注意してください。

導入するビデオ通話ツールによっては、推奨の動作環境が指定されています。パソコンやタブレットのスペックやOSに指定がある場合は、それを満たす通信機器を用意しましょう。

3. 厚生労働省が指定する研修の受講

厚生労働省は「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を策定していて、このなかでオンライン診療の実施に際して研修を受講することを義務付けています。研修はe-ラーニング形式で、インターネット上でいつでも受講できるため早めに受講しておきましょう。

研修は全5科目、講義時間はトータルで3時間弱です。受講費は無料で、申込時に医籍登録番号が必要になります。下記の厚生労働省のサイトから研修プログラムの概要の確認と申し込みができるので、詳細はこちらで確認してください。

参考:オンライン診療研修実施概要

4. オンライン診療に関する届出

保険診療を行う場合は、地方厚生局へオンライン診療に関する届出を提出する必要があります。提出が必要になるのは、以下の2点です。

  • 基本診療料の施設基準等に係る届出書
  • 情報通信機器を用いた診療に係る届出書添付書類

様式は厚生局のサイトからダウンロードできるため、必要事項を記入して管轄の地方厚生局に提出してください。

参考:地方厚生(支)局所在地一覧

5. オンライン診療の対象を決定する

次に、オンライン診療の対象を決めましょう。厚生労働省が策定した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」には「オンライン診療の初診は原則としてかかりつけ医が行う」など適用対象についての記載があるため確認しておいてください。

また、一般社団法人日本医学会連合による「オンライン診療の初診に関する提言」では、オンライン診療の初診に適さない症状の例が記載されています。オンライン診療の対象を決定する際は、これら政府公式の資料を参考にしてください。

参考:オンライン診療の適切な実施に関する指針

参考:オンライン診療の初診に関する提言

6. 診療計画書を作成する

オンライン診療を実施する際には、患者さんからの同意を得て診療計画を伝えるための書類が必要です。そのための同意書と診療計画書のフォーマットを作成しておきましょう。

診療計画書には、具体的な診療内容や診療の方法、対面診療に切り替える場合の条件や急変時の対応方針などを記載します。同意書には注意事項や禁止事項などを明記してください。

公益社団法人日本医師会による「オンライン診療入門〜導入の手引き〜【第1版】」には、オンライン診療についての同意書と診療計画のサンプルが掲載されています。各書類の作成時には、こちらもぜひ参考にしてください。

参考:オンライン診療入門〜導入の手引き〜【第1版】

オンライン診療を実施する際の注意点

オンライン診療を実施する際には、対面診療時と違った注意が必要です。具体的には、以下のような点に注意してください。

  • オンライン診療への合意
  • オンライン診療に関する実施の可否の判断
  • オンライン診療の限界を正しく理解する
  • 初診オンライン診療は原則としてかかりつけの患者さんに対してのみ行う

上記4つの注意点について、以下で詳しく解説します。

オンライン診療への合意

オンライン診療の実施に際して、医師と患者さんの間で事前の合意が必要になります。特に注意すべきポイントは、「患者さんがオンライン診療を希望している」という内容を明らかにしておくことです。

オンライン診療についての同意書には「同意書と診療計画に同意のうえ、オンライン診療を希望します」といった文言を明記して、患者さん本人もしくは家族・代理人に署名をもらうようにしてください。

オンライン診療に関する実施の可否の判断

オンライン診療に合意した患者さんであっても、オンライン診療を実施するかどうかは医学的な観点から毎回確認しなければなりません。前回はオンライン診療で問題なかったとしても、当日の症状によってはオンライン診療が適さない場合もあります。

オンライン診療が適切でないと判断した場合は、対面診療に切り替えるなど速やかに適切な診療方法に変更してください。

オンライン診療の限界を正しく理解する

オンライン診療は利便性が高い反面、対面診療と比較して察知できる状態に制限があります。実際に対面すれば把握できることも、パソコンやタブレットの画面越しではわかりづらいこともあるでしょう。

オンライン診療では、このように「把握できる内容には限界がある」という点を正しく理解したうえで取り組むことが大切です。患者さんやその家族に対してもオンライン診療の限界については事前に説明し、理解を得ておかなければなりません。

初診オンライン診療は原則としてかかりつけの患者さんに対してのみ行う

「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では、患者さんの心身の状態に関する適切な情報を得るために、医師と患者さんの間で信頼関係を築いておく必要があると明記されています。そのため、オンライン診療の初診は原則としてかかりつけの患者さんに対してのみ行ってください。

ただし、医学的情報が十分に把握できるなど医師が可能と判断した場合には、初診からオンライン診療を実施できます。初診からのオンライン診療を行うとする際には、診療前相談を行ってください。

参考:オンライン診療の適切な実施に関する指針

オンライン診療のメリット

オンライン診療には、クリニック側と患者側の双方にとってメリットがあります。ここでは、オンライン診療のメリットについてクリニック側・患者側のそれぞれの視点から見ていきましょう。

クリニック側のメリット

オンライン診療のクリニック側のメリットには、以下のようなものがあります。

  • 通院や治療の継続率アップが期待できる
  • 新たな患者さんの獲得につながる
  • 診療をスムーズに行える
  • 院内感染を防げる
  • 事務作業の負担を軽減できる

物理的にクリニックを訪れる必要がなく患者さんの負担が減るため、結果として通院や治療の継続率が高まるのがメリットのひとつです。また、居住地にかかわらず診療を受けられるので、新たな患者さんの獲得にもつながるでしょう。

オンライン診療なら、問診と診療を別日に設定することも可能です。事前に問診を行い、診察日までに診療方針を立てるようにすれば、よりスムーズに診療ができます。

そのほか、対面診療と違って院内感染のリスクがなく、受付から会計、予約までオンラインで完結するため事務作業の負担が少なくなるなど、多くのメリットがあります。

患者側のメリット

患者側のメリットとしては、以下が挙げられます。

  • 通院や受診のハードルが低い
  • 引っ越しをしても治療を続けられる
  • 予約が取りやすくなる
  • 他の患者さんの存在が気にならない
  • 受付や会計に待ち時間がかからない

オンライン診療の大きなメリットは、実際にクリニックを訪れる必要がなく通院や受診のハードルが下がる点です。「病院までの移動が負担」「移動時間も加味するとなかなか病院に行けるタイミングがない」といった人でも、オンライン診療なら診療を受けやすいでしょう。また、引っ越しをしても通院を続けられます。

導入するシステムによっては24時間の予約受付が可能なので、患者さんの都合が良いタイミングで予約を取りやすいのもメリットのひとつです。そのほか、オンライン診療なら待合室などで他の患者さんと顔を合わせることがないため、プライバシーが気になる患者さんでも診療を受けやすいというメリットもあります。

また、受付や会計のために順番待ちをすることがないのも、患者さんに喜ばれるポイントのひとつです。

オンライン診療のデメリット

オンライン診療には、以下のようなデメリットもあるため注意してください。

  • オンライン診療に適さない疾患もある
  • 診断時の情報が少ない
  • 通信トラブルが起きる可能性がある
  • 患者さんによってはオンライン診療のほうがハードルが高いことがある
  • オンライン決済の導入が必要

オンライン診療はビデオ通話ツールで診療をすることになるため、適さない疾患がある点や検査ができず診断時の情報が少なくなるのがデメリットです。加えて、ビデオ通話ツールは通信トラブルが起きると使えなくなり、診療そのものが行えない事態に陥ることもあります。

パソコンやスマートフォンの操作が苦手な患者さんは、ビデオ通話ツールを使いこなせない可能性がある点にも注意しなければなりません。また、通院しないため現金による支払いが難しく、オンライン決済の導入も同時に進める必要がある点も把握しておきましょう。

ビデオ通話を活用したオンライン診療の事例

ビデオ通話ツールを活用してオンライン診療を導入したクリニックの事例を2つご紹介します。これからオンライン診療を導入しようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

社会医療法人財団石心会第二川崎幸クリニック

外科系外来施設として外科系の疾患を幅広く診療している第二川崎幸クリニックでは、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけにオンライン診療を導入しました。当初は保健所の健康観察業務をサポートのために活用していましたが、グループ病院の発熱外来の手が回らなくなったことでオンライン診療対応の幅をさらに広げています。

グループ病院と共通の予約センターに電話をしてきた患者さんに対して、オンライン診療でも良いと確認が取れた人のみ第二川崎幸クリニックで対応するようにしたところ、グループ病院の負担軽減に成功しました。

また、外来の患者さんの診察に加えて職員が感染した際には優先的にオンライン診療を行うことで、職員の不安を軽減し混乱を防げたのも実感できた効果のひとつです。

Dクリニック東京(医療法人社団ウェルエイジング)

AGAの外来治療を中心に手掛けるDクリニック東京は、専門クリニックであることから遠方から来院する患者さんも多く、月1回の通院でも負担になっていました。そこで、患者さんの負担を軽減するためにオンライン診療の導入を決めています。

専門的な医療機器や、医師が直接患部に触れる必要がないケースも多く、オンライン診療でも問題なく対応できています。患者さんからも「クリニックに行けるタイミングを待たずに早く治療を始められる」と好評です。

同クリニックは全国展開しており、東京で導入したあとにマニュアルをまとめ、地方拠点への導入を進めました。コロナ禍では、東京よりもむしろ地方のほうがオンライン診療が盛んに行われていたそうです。

オンライン診療の始め方を理解しよう

オンライン診療は患者さんが自宅にいながら診療を受けられるので、「通院の負担がない」「他の患者さんの目が気にならない」など多くのメリットがあります。クリニックにとっても診療の効率化や院内感染対策につながるなどメリットが多く、コロナ禍で導入を進めるクリニックが増えました。

快適なオンライン診療には、患者さんが使いやすいビデオ通話ツールが求められます。NTTコム オンラインが提供する「ビデオトーク」は専用のアプリやアカウントが不要で、SMSに届いたURLをタップするだけでビデオ通話が始められるサービスです。ビデオ通話ツール導入の際には「ビデオトーク」をぜひご検討ください。

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