2026/03/05
動物病院がオンライン診療(相談)を導入するには?法規制や始め方を解説
来院負担の軽減や新たな収益機会として注目されているのが、動物病院のオンライン診療(相談)です。しかし、法規制や実施条件、準備すべき内容が分からず、導入を迷っている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、動物病院がオンライン診療を始めるメリットや、農林水産省の指針に沿った基本的な考え方、必要なツールまで分かりやすく解説するので、ぜひ参考にしてください。
- オンライン診療とは、スマートフォンやタブレット端末でビデオ通話を行い、遠隔で診察や処方などを行う診療形態のこと
- ペットのオンライン診療の市場は世界的に拡大傾向にあり、日本でもニーズが高まっている
- ペットのオンライン診療に関しては農林水産省が指針を公表しており、「初診は原則かかりつけ獣医師が行う」「必要に応じて対面診療に切り替える」など、基本的な考え方が示されている
- オンライン診療に必須となるのはビデオ通話システムで、決済や予約受付は必ずしも専用システムがなくても対応可能
動物病院が行うオンライン診療(相談)とは?
動物病院が行うオンライン診療(相談)とは、スマートフォンやタブレットなどの情報通信機器を活用し、遠隔で飼い主とつながりながら診察や処方などを行う診療形態です。
来院が難しいケースにも対応できることから、人の医療分野ではすでに普及が進んでおり、動物医療においても需要が高まっています。
農林水産省は令和6年12月に「愛玩動物におけるオンライン診療の適切な実施に関する指針」を公表しました。この指針では、オンライン診療を「情報通信機器を通して、愛玩動物の診察及び診断を行い、診断結果の伝達、処方等の診療行為を映像と音声を用いてリアルタイムで行うものである」と位置付けています。
出典:農林水産省「愛玩動物におけるオンライン診療の適切な実施に関する指針」
ペットのオンライン診療の市場動向
ペットのオンライン診療は、国内外で需要の拡大が見込まれている分野です。世界のオンライン獣医相談市場は、2024年の約12億米ドルから2033年には約54億6,000万米ドル規模へ成長すると予測されており、今後も普及が進んでいくでしょう。
日本では少子高齢化が進み、ペットは単身者や高齢者にとって生活を支える大切な存在です。こうした背景から、移動の負担を抑えられるオンライン診療の利便性は高く評価されています。
さらに、IT技術の進化によって一般的な診療から緊急対応まで幅広く対応できるプラットフォームが登場している点も、利用の広がりを後押しする要因のひとつです。
動物病院がオンライン診療を始めるメリット
動物病院がオンライン診療を導入すると、さまざまなメリットが期待できます。
まず、来院せずに相談や診察が受けられるため、飼い主やペットの移動負担が軽減され、これまで受診を控えていた層にもアプローチが可能です。その結果、新規患者の獲得や顧客数の増加につながる可能性があります。
また、遠方に住んでいる患者にも対応できるため、商圏の拡大が見込める点もメリットのひとつです。さらに、先進的な取り組みは他院との差別化につながり、ブランディングや顧客満足度の向上にも寄与するでしょう。
加えて、オンライン相談をメニュー化することで収益源が増え、売上単価の向上も期待できます。
ペットのオンライン診療の実施に関する基本的な考え方
ここでは、ペットのオンライン診療を行う際の基本的な考え方を、農林水産省の指針に沿って紹介します。以下で、具体的なポイントを確認していきましょう。
初診からのオンライン診療は原則かかりつけの獣医師が行う
オンライン診療の初診は、日頃から対面診療を行っており、既往歴や予防情報、健康状態などを把握しているかかりつけの獣医師が担当することが原則とされています。
ただし、一定の条件を満たす場合は、例外として認められることがあります。
双方の合意に基づいて診療を行う
オンライン診療は、獣医師と飼育者の双方の合意に基づいて実施されます。飼育者の希望が前提であり、獣医師側の都合のみで一方的にオンライン診療へ切り替えることは適切ではありません。
獣医師の責任でエビデンスに基づいた診療を行う
適切なオンライン診療の普及のために、実施時には安全性・有効性・必要性を十分に確認する必要があります。診療行為に対する責任は獣医師にあり、エビデンスに基づいた診療を行うことが求められます。
オンライン診療による診療が適切でない場合は速やかに対面による診療に切り替える
オンライン診療を実施するかどうかは、獣医師が慎重に判断する必要があります。診療に十分な情報が得られない場合や、適切な診断が難しい場合は、オンライン診療は適切とはいえません。
傷病の状態を正確に把握できないと判断した際にはオンライン診療を中断し、速やかに対面診療へ切り替えることが求められます。
安全性や有効性についての評価を定期的に行う
オンライン診療は、対面診療よりも得られる情報が限られます。その特性を踏まえ、獣医師は安全性や有効性を定期的に評価し、適切な運用体制を維持する必要があります。
医薬品の適正使用を行う
オンライン診療であっても、医薬品を処方する際には、保管方法や投与方法、副作用、獣医師の指示の遵守等について、飼育者へ事前に十分な指導を行う必要があります。こうした指導を通じて、医薬品の適正使用に努めなければなりません。
また、特に安全管理が必要な医薬品は処方してはならないことも、農林水産省の指針に明記されています。
インフォームドコンセントを徹底する
オンライン診療を行う際は、飼育者に対してメリットだけでなく、不利益が生じるおそれのある点についても事前に説明し、理解と同意を得る「インフォームドコンセント」を徹底する必要があります。
適切なネット環境を整え、セキュリティ対策を十分に行う
ネットワークが不安定で映像が途切れるなど、適切な診療が難しい場合はオンライン診療を行ってはいけません。また、文字や写真、録画動画のみのやり取りで診療を実施することも認められていません。
さらに、飼育者およびペットの獣医療情報が漏えいや改ざんされないよう、通信環境や情報の取り扱いにおいて十分な情報セキュリティ対策を講じる必要があります。
出典:農林水産省「愛玩動物におけるオンライン診療の適切な実施に関する指針」
出典:農林水産省「愛玩動物におけるオンライン診療の適切な実施に関する指針について」
ペットのオンライン診療の活用シーン
ペットのオンライン診療は、対面診療を補完する手段としてさまざまな場面で活用できます。代表的な活用シーンには、以下のようなものが挙げられます。
- 術後の経過観察
- 慢性疾患に関する日常的な相談
- サプリメント処方の相談
- セカンドオピニオン
- 検査結果の伝達 など
例えば、術後の様子を確認したり、慢性疾患の状態を継続的に把握したりする場面では、オンラインで状況を共有できると飼い主の負担軽減につながります。検査結果についても来院せずに伝えられるケースがあり、スムーズな情報共有が可能です。
また、動物病院が苦手で強いストレスを感じやすいペットや、開院時間内に来院しづらい飼い主への対応にも役立ちます。さらに、通院のハードルが下がることで相談のきっかけが生まれやすくなり、自己判断による治療中断の防止も期待できます。
ペットのオンライン診療の流れ
ペットのオンライン診療は、一般的に次の流れで進めます。
1.飼い主がオンライン診療の予約を取る
2.予約日時になったら、スマートフォンやタブレットでビデオ通話による診療を行う
3.獣医師側で請求金額の入力や処方薬の準備を行う
4.飼い主がオンライン決済を行う
5.薬やフードの販売がある場合は後日発送
オンライン診療では、受付から会計までを来院なしで完結できます。診療時にはカメラ越しにペットの状態を確認し、症状をヒアリングしたうえで対応を判断します。診察後は会計処理と処方の準備を行い、必要に応じて薬やフードを患者の自宅へ発送します。
動物病院がオンライン診療を始めるために必要なツールとは?
オンライン診療を始めるには、予約受付・診療・支払いといった一連の流れを院外から行える仕組みの整備が必要です。ここでは、導入時に検討したい代表的なツールを紹介します。
ビデオ通話システム
ビデオ通話システムは、リアルタイムで音声と映像をやり取りできるツールで、オンライン診療を行ううえで欠かせない存在です。写真や録画映像のみでの診療は認められていないため、ビデオ通話環境の整備は必須と考えておきましょう。
ビデオ通話に加えて予約や決済機能をまとめて備えたオンライン診療専用サービスもありますが、一般的なビデオ通話ツールを活用して始める方法もあります。既存のカルテ管理や会計フローを大きく変更せずに導入できるため、院内オペレーションへの影響が少なく、「ツールを用意すればすぐに始められる」という手軽さが大きなメリットです。
決済システム
飼い主が来院しないオンライン診療では、決済システムがあると料金の請求を円滑に行えます。診療後に内容や金額を入力すると飼い主へ通知され、クレジットカードなどで支払えるため、会計の手間を減らせるだけでなく未収金リスクの軽減にもつながります。
ただし、必ずしもオンライン決済の導入が必要というわけではありません。開始当初は、請求書の郵送や後日の来院時に支払ってもらう方法もあります。まずはオンライン診療の流れを整え、必要に応じて決済システムを追加するという段階的な導入も選択肢のひとつです。
予約システム
オンライン診療の予約をWebで受け付けたい場合は、予約システムの導入が必要です。飼い主が自分で空き時間を確認して予約できるため、診療時間外でも受付が可能になり、電話対応の負担軽減にもつながります。
一方で、導入初期は電話やメールで予約を受ける運用でも問題ありません。「まずオンライン診療を始めてみたい」という場合は、ビデオ通話のみでスタートし、必要に応じて予約システムを追加する方法も現実的です。決済システムと同様に、段階的な導入も検討してみてください。
動物病院のオンライン診療に関するよくある質問
オンライン診療を新たに導入しようとすると、さまざまな疑問が生じるものです。最後に、動物病院のオンライン診療に関してよくある質問に回答するので、参考にしてください。
Q.オンライン診療のみで診療が完結しても問題ない?
A.オンライン診療は、対面診療と適切に組み合わせて行うことが基本です。オンラインのみで必要な情報が得られ、結果として来院せずに完結する場合もありますが、触診や詳細な身体検査ができないため十分な情報を得られないケースも少なくありません。
そのため、オンライン診療の導入後も、状況に応じて対面診療へ切り替える前提で運用することが重要です。
Q.薬の処方はできる?
A.オンライン診療でも薬の処方は可能で、後日動物病院から郵送するなどの方法で対応できます。ただし、すべての薬が対象になるわけではありません。特に安全管理が必要な医薬品など、一部はオンライン診療のみで処方できないものもあるため、注意が必要です。
Q.ペット保険は利用できる?
A.オンライン診療で処方された薬や診療内容は、ペット保険の補償対象外となる場合があります。補償範囲は保険会社や契約内容によって異なるため、一律に利用できるとは限りません。ペット保険の利用に関しては事前に飼い主へ案内し、契約中の保険会社へ確認してもらう必要があります。
Q.本人確認・ペット確認はどうすればよい?
A.オンライン診療では、ビデオ通話の画面越しに本人と対象のペットを確認します。具体的な確認方法としては、以下のようなものが挙げられます。
- 保険証や診察券を画面に提示してもらう
- ペットをカメラに映してもらう
- 名前・生年月日・登録情報を確認する など
これらの方法を組み合わせることで、対面診療に近い形で本人確認が行えます。
Q.電子カルテは必要?
A.オンライン診療だからといって、必ず電子カルテを導入しなければならないわけではありません。農林水産省の指針でも電子化が必須とはされておらず、既存の紙カルテで運用することも可能です。現状の院内オペレーションに合わせて、無理のない記録管理の方法を検討しましょう。
動物病院のオンライン診療「すぐに始めたい」ならビデオトークがおすすめ
人の医療分野で普及が進むオンライン診療は、動物医療の現場でもニーズが高まっています。農林水産省の指針では「原則としてかかりつけの獣医師が行うこと」「オンライン診療が適切でない場合は速やかに対面診療へ切り替えること」など、基本的な考え方が示されており、導入時にはこれらを十分に確認しましょう。
オンライン診療は、必ずしも予約・決済・カルテまで一体化したシステムを最初から整える必要はありません。まずはビデオ通話システムがあれば、予約は電話、支払いは郵送や後日精算といった形でも運用でき、比較的スムーズに導入できます。
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