ファーストパーティーデータ(1st Partyデータ)とは?収集・活用の方法を紹介

目次

デジタル情報社会における競争では、顧客データの価値がますます高まっています。そして、顧客データのなかでも重要性を増しているのがファーストパーティーデータです。ファーストパーティーデータを活用することで、企業は顧客の行動や嗜好に基づいてターゲットを絞り込み、より効果的なサービスやプロモーションを提供することができます。

この記事では、企業が自らのビジネス戦略やマーケティング戦略を立てる上で不可欠な要素となるファーストパーティーデータの概要から、具体的な収集・活用の方法までを紹介いたします。ぜひご一読ください。

記事の要約
  • ファーストパーティーデータとは、企業が自社で収集・保有する顧客データである
  • ファーストパーティーデータは信頼性、コスト、プライバシーリスクの点で優れている
  • ファーストパーティーデータを収集・活用するには相応の手順がある
  • 自社の目的に合ったツールを導入する必要がある
  • ファーストパーティーデータの運用がマーケティング成功のカギになる

ファーストパーティーデータ(1st Partyデータ)とは?

まずは、ファーストパーティーデータの概要と類似要素であるゼロパーティーデータについて解説します。さらに、セカンドパーティーデータ、サードパーティーデータとの違いについても説明します。

ファーストパーティーデータとは「自社で収集・保有している顧客データ」

ファーストパーティーデータとは、企業や組織が自社の顧客との関わりの中で直接収集した顧客データのことを指します。例えば、ある企業が自分のWebサイトでユーザーがどのページを訪れたか、何をクリックしたかなどの情報を直接収集した場合、それがファーストパーティーデータとなります。また、顧客からのアンケートや登録フォームを通じて得た情報も相当します。収集には一定の準備が必要となりますが、企業が保有する顧客データの中で最も直接的で、他の企業やプラットフォームから提供されたものよりも信頼性が高い点が特徴です。

ファーストパーティーデータの一種である「ゼロパーティーデータ」

ゼロパーティデータとは、ファーストパーティーデータの中で顧客が自らの意志で提供・共有したデータを指します。例えば、アンケートへの回答、プロファイルの設定、好みや関心を示す設定、特定のプロモーションやサービスに対するフィードバックなどが含まれます。顧客が自発的に自らに関する情報を提供したものなので、直接的な意向や嗜好が反映されていることが特徴です。顧客データおよびファーストパーティーデータの中でも最も高い信頼性と正確性を持つデータであり、マーケティングにおいて重要な役割を持ちます。

セカンドパーティーデータ(2nd Party Data)との違い

セカンドパーティーデータは、他の企業や組織が収集したデータで、直接の関係がある企業との取引や提携によって取得されたデータを指します。これは通常、同意に基づくデータ共有の形態であり、一方の企業が他方の企業からデータを入手することで得られる情報です。データの信頼性は提供元や収集・分析したデータの質に依存するため、ファーストパーティーデータに比べて正確性が劣る恐れがあります。また、データの所有権は提供元の企業が持つという違いもあります。

サードパーティーデータ(3rd Party Data)との違い

サードパーティデータは、企業や組織以外の第三者が収集したデータを指します。通常、データベンダーやデータブローカーなどが提供するもので、これは直接の関与なしに外部から購入または取得されるデータです。セカンドパーティーデータと同じく、データの信頼性は提供元やデータの質に依存します。また、ファーストパーティーデータであれば自社のみが利用できますが、サードパーティーデータは多くの企業が広告ターゲティングや市場調査など、幅広い目的で同じデータを利用する可能性があります。

ファーストパーティーデータが重要な理由

ファーストパーティーデータが重要視される背景には、コストはもちろんですが、社会的責任や倫理における側面もあります。プライバシー侵害やコンプライアンス違反を防ぐという観点でもファーストパーティーデータが重要とされているのです。

Cookieやプライバシーの保護規制が強化されている

Cookieとは、Webサイトがユーザーのブラウザに一時的にデータを保存するための小さなテキストファイルを指します。主にWebサイトのユーザーエクスペリエンスを向上させたり、ユーザーに関連する情報を記憶したりするために使用されるのが一般的です。Cookieの取り扱いについては、ユーザーのプライバシーを保護し、個人情報を適切に管理するため、日本では改正個人情報保護法、アメリカではCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)、ヨーロッパではGDPR(EU一般データ保護規則)による法規制が存在します。

これに応じて、Apple社はSafariブラウザでITP※を導入しCookieのトラッキングを制限、Google社では、2024年後半からサードパーティーCookieを順次廃止などの対応を行っています。

※ITP:インテリジェントトラッキングプリベンション

低コストで鮮度の高いデータを取得できる

セカンドパーティーデータやサードパーティーデータは、他社から受け取るデータなのでその分コストが高くなります。また、データは鮮度が重要なので繰り返し取得する必要があり、そのたびにコストがかさむことになります。一方、ファーストパーティーデータは自社で収集するため、コストパフォーマンスの高いデータです。自社で1度仕組みを構築すれば、最新の情報をリアルタイムでいつでも収集でき、継続的な更新に伴う追加コストは発生しません。データの鮮度を確保しながらも効率的にコストを抑えることが可能になるのです。

プライバシーリスクを軽減できる

プライバシーリスクとは、個人のプライバシーに対する損害や不利益の可能性を指します。企業や組織には個人情報を適切に管理しプライバシーリスクを最小化する責任が求められています。ファーストパーティーデータであれば情報の出どころが明確で、自社のプライバシーポリシーに基づいて収集した情報だけを利用するため、プライバシーリスクを軽減できます。その他のデータの場合は具体的な収集方法が明確でないため、無自覚にコンプライアンス違反を犯す恐れがあります。

ファーストパーティーデータの収集経路

ファーストパーティーデータはオフライン・オンラインどちらでも収集できます。それぞれのタッチポイントでデータを収集することで多様なデータを集めることができます。以下は、オンライン・オフラインそれぞれのデータ収集経路です。

オンラインのデータ収集経路

  • ソーシャルメディア上で行った行動の追跡や投稿内容の収集
  • Webサイト内に設置したタグによる行動の追跡
  • 広告をクリックしたり表示したりした際のデータの収集
  • スマートフォンアプリ内でのユーザーの行動や位置情報などの収集
  • 問い合わせのメールやチャット、資料請求などに伴う入力フォームによる収集

オフラインのデータ収集経路

  • 電話や郵送を通じて商品やサービスを注文する際のデータ収集
  • イベントやセミナーに参加した際のデータ収集
  • 展示会やセミナー、講演会等でのアンケート
  • 実際の店舗での購買履歴など

ファーストパーティーデータを収集・統合する方法

ファーストパーティーデータを収集する際は、あらかじめその収集方法や統合方法までを検討してから着手しましょう。下記に主な収集・統合の方法を紹介します。

Webトラッキングを行う

Webトラッキングは、Webサイトやアプリ内でユーザーの行動を追跡し、その情報を収集する技術です。これにより、企業は顧客行動データを把握し、より効果的なサービスや広告を提供することができます。ページビューや訪問履歴、地理的位置、利用しているデバイスやブラウザの種類、他のWebサイトや広告からのリンクによってサイトに訪れた経路の情報、検索エンジンからの流入時に使用された検索キーワード、サイトでの滞在時間など、さまざまなデータが収集できます。

トラッキングとは?活用のメリット・追跡方法・危険性や今後の潮流を解説

CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)を活用する

CRMとは、企業と顧客の関係性の最適化に関する戦略的なアプローチや技術を指します。既存顧客との関係強化が主な目的で、自社サイトなどから得たファーストパーティーデータを基に顧客のセグメンテーションやコミュニケーション履歴の管理、One to Oneマーケティングなどを行います。顧客に焦点を当てることでカスタマーエクスペリエンスを向上させ、企業と顧客とのコミュニケーションをより効果的に管理することが可能です。CRMはさまざまな業界や規模の企業で採用されており、テクノロジーを活用した新しいCRMツールも進化を続けています。

CDP(カスタマーデータプラットフォーム)を活用する

CDPは企業が複数のデータソースから収集した顧客データを一元的に統合・管理し、それを活用して一貫性のある顧客体験を提供するためのプラットフォームです。マーケティングやカスタマーサポートなどさまざまな部門で使用されており、顧客を中心に置いたアプローチの強化に役立っています。WebトラッキングツールやCRM、EC管理ツール、BI(ビジネスインテリジェンス)など、あらゆる経路から収集したデータを統合・管理することが目的で、ファーストパーティーデータをより有効に活用するために効果的なツールでもあります。

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ファーストパーティーデータを収集・活用する手順

ここからは、ファーストパーティーデータを収集・活用する手順を具体的に解説していきます。データの収集に闇雲に着手するのではなく、合理的な手順に沿って質の高いデータを獲得しましょう。

1|データ収集の目的を明確化する

まずは、ファーストパーティーデータを活用する目的やゴールの設定を行います。目的やゴールを明確化することで、収集すべきデータの種類や収集・分析の方法、導入すべきツールの選定などの指針が見えてきます。また、一連の過程においてはステークホルダーとの連携が欠かせません。関連する部門やチームと協力し、ニーズや期待に基づいてデータ収集の方針を定めることで、より効果的なデータ活用が可能となります。

2|データ運用に適した人材確保とツールの導入を行う

ファーストパーティーデータを適切に運用するには、データを扱える人材と効率的に収集・管理できるツールが必要となります。収集に着手する前に、データ分析やツール活用、データセキュリティに精通した専門家やエンジニアなど、適切な人材の採用や専門部署の設置などを進めましょう。それと並行して、CRMやCDP、その他自社の特性に合ったツールも導入します。ツールによって顧客情報を一元管理し、異なるデータソースからの情報を統合することで一貫性のあるデータセットの構築が可能になります。

3|顧客に利用目的とメリットを伝えてデータを収集する

顧客からデータを収集する場合は、同意を得る必要があります。データの利用目的が不明確で、顧客にとってのメリットも無ければ、顧客がデータを提供しない可能性は高くなります。どのような目的でデータ活用を行うかを明確に伝える透明性が重要です。データを収集し活用することで、顧客にパーソナライズした情報をより届けられることをアピールするなど、メリットをきちんと感じてもらうためのコミュニケーションを図りましょう。また、キャンペーン情報の提供やクーポンの配布など、インセンティブを提示することもファーストパーティーデータをスムーズに収集するためのポイントです。

4|仮説を立て施策を実行する

ファーストパーティーデータを収集したら、集まったデータを目的に沿って分析して仮説を立てます。例えば、解約の原因や施策の成果が出ない理由、ロイヤルカスタマーの特徴など、重要な要素をピックアップして仮説を立てましょう。次にデータ分析を通じて得られた仮説に基づいた施策を立案し、実行します。ここで重要となるのが、1回の施策に時間をかけすぎず小規模・迅速に実施することです。そうすることで、特定の施策が期待通りに機能するかどうかを素早く確認し、効果的な指標を特定できます。また、小規模な実施であればリスクが低く、不確実性がある場合でも大きな損失を被ることはないでしょう。

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5|効果測定と改善を繰り返す

施策を実施した後は、結果となるデータを可視化して効果測定を行います。成果が出ていなければ、仮説そのものが正しかったのかどうかを改めて吟味し、仮説が誤っていた可能性があれば新たな仮説を立てます。こうしたプロセスを繰り返すことで、より正確な顧客理解が進み、施策の精度も高まっていくでしょう。結果に基づいて素早く修正を加え、学習することが重要です。失敗から得られる教訓を早期に把握し、戦略やアプローチを迅速に改善しましょう。

ファーストパーティーデータの活用方法

ファーストパーティーデータを得た後は、その活かし方が重要になります。以下、ファーストパーティーデータをどのように活用すればよいか、主要な例を紹介します。

顧客のセグメンテーション

顧客の年齢や性別などの基本的な属性や、Webサイト上での行動データ、アプリの使用状況、キャンペーンメールへの反応など、目的に応じてセグメンテーションを行い分析の材料にしましょう。購買履歴や特定の商品への関心度など詳細な情報を考慮することも重要です。こうした顧客のセグメンテーションが、施策をパーソナライズするための重要なステップとなります。精度の高い分析を行うには、顧客データの分析に優れたツールを導入することが有効です。分析結果をわかりやすく視覚化しながら多様な分析を行うことが可能となります。

施策のパーソナライズ

ファーストパーティーデータから顧客セグメンテーションを行うと、施策のパーソナライズが実現できるようになります。セグメントごとに深堀りした顧客ニーズに基づき、パーソナライズしたコンテンツを提供したり、特定のセグメントの不満を可視化して改善策を打ったりなどができます。信頼性の高いファーストパーティーデータを使うことで、より高精度なパーソナライズが可能となるでしょう。顧客のニーズが多様化し、データ活用が一般的になりつつある現代では、競争力を維持するために施策をパーソナライズすることがますます重要になっています。

広告の最適化

ファーストパーティーデータの分析により顧客理解を深めると、顧客のニーズや嗜好にあったターゲット広告の内容やメッセージを最適化できます。また、顧客の中でも注力すべきセグメントも明確になるため、インパクトの大きなセグメントに広告費を集中し、ROAS(ロアス:広告の費用対効果)を高めることが可能です。また、投資するセグメントを絞り込むことで、広告クリエイティブの質も向上します。さらに、定期的なデータ更新とフィードバックを取り入れると、市場の変化に迅速に対応しながら広告戦略を継続的に最適化できます。

ファーストパーティーデータを活用する際の注意点

ファーストパーティーデータを効果的に活用するためには、気を付けなければならないこともあります。ここでは、ファーストパーティーデータの活用に着手する前に押さえておきたい主な注意点を紹介します。

十分なデータ量を用意する

ファーストパーティーデータは信頼性の高いデータではありますが、自社が独自で収集しなければならないため十分なデータ量を確保しづらいケースもあります。データ量が少ない場合は、一つひとつのデータの信頼性が高くても全体として精度が低くなる恐れがあるので要注意です。また、必要なデータ量は目的により異なるので一概には言えません。単純な傾向を把握するだけであればそれほど多くのデータがなくても問題ありませんが、複雑な予想モデリングや機械学習を行う場合は大量のデータが必要となるでしょう。

コストパフォーマンスを考慮しておく

ファーストパーティーデータはほかのデータに比べると低コストで収集できますが、ツールの利用やデータの管理、保守などにコストがかかります。データ活用の目的を基に、収集の仕組みや具体的な活用方法までイメージし、目標の達成度合いを定量的に計測するためにKGI・KPIなどの指標の設定を行っておきましょう。データ活用により得られる成果より、かけたコストのほうが大きくならないよう慎重にシミュレーションを行い予算を決定する必要があります。

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自社の目的や規模に合ったツールを導入する

ツールの導入においては、目的に応じたものを導入することが重要です。データ収集や分析の効率化が目的であれば顧客データの分析ツール、顧客情報の管理を重視するのであればCRM、多様なデータを一元管理したいのであればCDPなど、目的に合ったツールを選択しましょう。ツールを選ぶ際の特に重要なポイントは、分析機能の豊富さや使いやすさです。多角的な分析ができるか、専門知識がなくても使いやすいUIであるかなど細部までしっかり検討しましょう。また、サポート体制の充実度も重要です。

ファーストパーティーデータの収集・活用に効果的な「Mixpanel」

「Mixpanel」は、ユーザー行動を理解するための機能が集結したプロダクト・アナリティクスの分析ツールです。ファーストパーティーデータの収集・活用にも適しており、柔軟で高度なデータ分析を提供します。

主な分析機能として、ファネル分析、フロー分析、リテンション分析などが挙げられます。これらにより、離脱の原因は何か、リピートの理由は何かなどビジネスにおいて重要な回答を導き出すことが可能です。また、施策の効果を評価し、改善点を見つけることにも役立ちます。

Mixpanel内にデータを保管することも可能ですが、既に使用しているデータベースやデータウェアハウスとの連携も可能です。既存のデータをそのまま活かすことはもちろん、現状使用しているCDPから、イベントデータを直接取得することもできます。

Mixpanel のプライバシープログラムについてはこちらをご参照ください

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コネヒト株式会社様は、子育てQ&Aアプリ「ママリ」を運営している会社です。月額制のプレミアムプランの会員を増やすことを事業上の目標の1つとし、長年大幅な変更を加えていなかったプレミアムプランの案内ページの改修にMixpanelによる分析を活用しました。

ページのリニューアルとテストを行いMixpanelで分析した結果、最もコンバージョン率の高い訴求が判明。さらに、アプリ利用の継続率をmixpanelで追跡し、施策に対するセグメント別の反応分析を詳細に行いながら継続率をチェックするなど、Mixpanelを多様に活用し、スピーディな意志決定を実現しています。

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ファーストパーティーデータの運用はマーケティングの成功に寄与する

本記事では、ファーストパーティーデータの概要や重要性、そして収集・活用の方法について解説しました。ファーストパーティーデータの価値を十分に引き出すカギは、いかにデータを運用するかにあります。スピーディな意思決定や新しい立案を行いながらマーケティングを成功させるためにも、適切な分析ツールによる多角的・総合的な分析が欠かせません。

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