2020/11/06

帳票、書類の電子化

賃貸契約書に印紙は必要?電子化解禁によるメリットは?

土地と建物を貸したり借りたりするには、賃貸借契約の締結が必要です。しかし、賃貸借契約書を取り交わすためには不動産会社に借主が出向く必要があります。確認が必要な書類も多く、大幅に時間を取られることも少なくありません。この問題を解決するために国土交通省が進めているのが、契約書の電子化です。この記事では、賃貸借契約書の収入印紙の問題や、電子化することで考えられるメリットなどについて解説していきます。

賃貸契約書とはどのようなものか?

はじめに、賃貸借契約書とはどのようなものか説明します。また、賃貸借契約の際に併せて用意する重要事項説明書との違いについても解説していきます。

土地や建物を賃貸借する際の契約書

賃貸借契約書とは、所有者から借りた「そのもの」を返すために交わす契約書のことです。賃貸借契約書は、主に土地や建物を賃貸借する際に使用されます。ただし、土地や建物を誰かに貸したり借りたりするときに必ず賃貸借契約書を用意しなければいけないわけではありません。賃貸借契約書が必要となる条件は、賃料が発生することです。賃貸借契約を締結すると貸主から借主に対して「賃料債権」が、借主から貸主に対しては「賃借権」が発生します。

しかし、賃料をともなわずに土地や建物を貸したり借りたりする場合、そこに「賃料債権」は発生しません。ですから、例えば親族間のような近しい間柄で土地や建物の賃借を無償で行うケースなどは、賃貸借契約書は必要ないということになります。また、賃料が発生しない場合の契約を「使用貸借契約」といいます。通常、賃料が発生する賃貸借であれば賃貸借契約書を用意し、貸主と借主間の合意のもとで締結するのが一般的です。たとえ親しい間柄であっても、賃料をともなう賃貸借には必ず賃貸借契約を締結した方がいいでしょう。

賃貸借契約書に盛り込まれる内容とは?

賃貸借契約書には、土地や建物を賃貸借するにあたってあらかじめ決めておきたい内容が盛り込まれています。土地にも建物にも共通する内容は貸主と借主の氏名、それぞれの連絡先、賃貸借期間に賃料などです。他にもさまざまな取り決めが書かれていますが、細かい内容については貸主の判断によって決められることもあります。ただし、賃貸借契約書といっても土地と建物では内容が異なりますし、法律によって盛り込まなければならない内容もあるため注意が必要です。

土地の賃貸借契約書

土地の賃貸借契約書には、賃貸借の対象となる土地の所在地や地目、土地の用途に賃料と賃貸借期間などが盛り込まれます。用途にもよりますが、土地を賃借する場合は建物など何らかの建造物を造って使用するケースは多いでしょう。契約期間が終了したときは、賃借中に使用した建造物を解体してから土地を返還するのが一般的です。原状回復にともなう費用負担や残留物の処理など、明け渡し時に発生しやすい問題についても盛り込まれます。他に含まれる内容は、借主に問題が見られたときの解除条件やトラブルが起こった際の管轄裁判所、連帯保証人などです。

建物の賃貸借契約書

建物の賃貸借契約書については、国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」をもとに説明していきます。賃料や賃貸借期間、明け渡しの際に生じる原状回復の費用負担などは、土地の賃貸借契約書と特に変わりはありません。建物の賃貸借契約書では、建物の所在地に加えて名称や建て方、構造などが明記されるという点が土地の場合とは異なります。また、マンションなど集合住宅の場合は建物の回数に戸数なども盛り込まれます。他には、水回りや空調、照明などの設備内容に、ペット飼育可能かどうか、貸主や管理者の連絡先などを含むのが一般的です。

通常、建物の賃貸借契約を締結する際は、不動産会社へ支払う仲介手数料や前家賃などが発生します。仲介手数料や前家賃などは賃貸借契約書に含む必要は特にありませんが、盛り込まなければならないのは敷金です。2018年3月の「賃貸住宅標準契約書」の改訂にともない、建物の明け渡しが行われたときは、貸主は借主に対して敷金の返還義務を負うことになっています。そのため、賃貸借契約書にもその旨を明記しなければなりません。また、連帯保証人が負担する保証限度額や居住中の修繕、設備の滅失による賃料の減額などについても明記する必要があります。

賃貸借契約書と重要事項説明書との違い

賃貸借契約書の締結にともなって用意される書類の中に「重要事項説明書」があります。賃貸借契約書との違いは「賃貸借契約を取り交わす前に建物の状況について説明する書類」であるという点です。つまり、重要事項説明書を確認してから賃貸借契約書を締結するという流れになります。重要事項説明書は、貸主に渡すだけではいけません。必ず書かれている内容のすべてを読み上げ、一つずつ納得してもらう必要があります。これは、宅地建物取引業法35条で決められていることで、宅地建物取引主任者であれば知っていなければいけないことです。

例えば、抵当権が付いている建物の場合、契約期間中に競売になるケースも出てきます。そうなれば貸主が変わることもありますし、引っ越しを余儀なくされるかもしれません。借主が建物についてきちんと理解できていないと、後になってトラブルに発展することも出てきます。重要事項説明書は、貸主に「このような建物ですが、契約しますか?」と改めて意思を確認する重要な書類なのです。

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賃貸借契約書に収入印紙が必要になるケース

賃貸借契約書には収入印紙が必要になるケースがあります。収入印紙が必要になる契約書は何かを調べるのは、印紙税法一覧表を見ることで確認は可能です。しかし、条件に応じて変わってくるため注意した方がいいでしょう。一体どのようなときに必要になるのか、また不要なのはどのような契約書なのか説明していきます。

建物の賃貸契約書は原則として収入印紙が不要

収入印紙とは、文書に発生する「印紙税」のことです。印紙税は納税手段の一つであり、課税対象となるものに対しての文書にのみ必要になります。国税庁のホームページを見ると、建物の賃貸借契約書は課税対象にはならないと明記されています。そのため、建物の賃貸契約書には原則として収入印紙は必要ありません。また、賃貸借契約書の中に建物の所在地や敷地面積などが明記されていることがあります。これは、使用収益の範囲を明らかにすることが目的となりますが、その場合も建物の賃貸契約書であることには変わりません。ですから、この場合も収入印紙の貼付は不要です。

土地の賃貸契約書は原則として収入印紙が必要

どのような文書が課税対象となり収入印紙が必要になるかは、印紙税法一覧表がもとになります。印紙税法一覧表を見ていくと、土地の賃貸契約書は第1号の2文書の「地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書」に含まれており、収入印紙が必要です。土地の賃貸契約書に貼付する収入印紙の額は、契約書に書かれている契約金によって変わります。例えば、契約金が10万円を超え50万円以下のものは400円、50万円を超え100万円以下であれば1000円といった具合です。ただし、契約金が記載されていないものは200円とされています。また、1万円以下の場合は非課税ですが、条件によっては非課税にならないケースもあるため確認した方がいいでしょう。

建物の賃貸契約書に土地が含まれる場合は?

建物の賃貸借契約書の中には、土地についても所在地や面積が記載されていることがあります。これは、建物の賃貸契約書の項目で説明した通り、記載されているだけなら収入印紙を貼る必要はありません。ただし、建物の賃貸借契約書に書かれている土地でも、個別に賃貸借契約を結んでいるなら話は別です。この場合は、印紙税法一覧表の第1号の2文書にある「土地の賃借権の設定に関する契約書」に該当します。そのため、収入印紙を添付する必要性が出てきますから、間違えないように注意しましょう。

賃貸借契約の電子化とは?考えられるメリットとデメリット

説明したように、宅地建物取引業法の第35条では「重要事項説明書」の確認は対面で行うことが義務づけられています。他にも「主要な契約内容を記載した書面」についても、同じく宅地建物取引業法の第37条で書面の交付が必要です。これに対して、国土交通省は2019年から賃貸契約における重要事項説明書等の電子化による公布を実験的に行ってきました。これは、IT利活用の裾野拡大の一環として実施されたもので、今後は賃貸借契約の電子化に向けてさまざまな準備が進められていくでしょう。

賃貸借契約の電子化はいつから?

2020年10月時点では、賃貸借契約の完全電子化についてはまだ明確な開始時期は発表されていません。しかし、実験を行ってきた国土交通省によれば、目立つようなトラブルもなく、賃貸借契約の電子化による大きな影響は見られないとしています。そのため、電子化の実施が見込まれているのは2021年以降です。また、電子化にともなう課題として電子署名などの専門業者の参入をあげていますが、支援するシステムを開発する事業者は増えつつあります。今後は、賃貸借契約に必要な書類がPDFやJPGなどで公布されるという機会が浸透していくのではないでしょうか。

賃貸借契約の電子化によって変わること

賃貸借契約の電子化が進めば、これまで対面で行うことが義務となっていた重要事項説明書等の確認をオンラインで行うことも可能です。国土交通省の実験を受けて不動産業界も規制の緩和を進めており、対面をともなわない契約を導入する動きが見られています。宅地建物取引業法の第35条、そして第37条においても改訂される可能性が出てくるでしょう。そうなれば、これまでのように不動産会社に足を運ばなくても賃貸契約を結ぶことが可能になります。

これまでも、建物や土地を賃借したいときには不動産会社のホームページや不動産情報サイトでの閲覧が可能でした。しかし、実際に契約をするとなれば不動産会社に出向き、何枚もの書類に目を通して署名捺印をしなければなりません。実際に物件を確認するには現地に行かなければなりませんが、電子化が進めば何度も足を運ぶことはなくなるでしょう。不動産会社や貸主は紙の書類が減少するため、保管するスペースを減らすことができます。

賃貸借契約を電子化するメリット

利用者が契約にかける時間を縮小できる

賃貸借契約を結ぶまでには、いくつかのステップがあります。建物の場合で説明をすると、まず借主が物件を探し、気になる建物があれば内覧をします。次に賃貸借契約の締結へと進んでいくわけですが、契約をするには不動産会社に出向くのが一般的です。さらに、連帯保証人が必要な場合は連帯保証人にも一旦契約書を渡し、署名捺印してもらうという手間がかかります。書類に何らかの不備があれば、もう一度やり直すということも出てくるでしょう。しかし、電子化すればこれらの作業にかかる時間が大幅に縮小されます。

業務時間の縮小とコスト削減が可能になる

契約のためにわざわざ時間を割かなくていいのは、借主だけではありません。不動産会社にとっても業務時間が縮小できるという点が大きなメリットです。賃貸借契約にかける時間が削減される分、さらに契約件数を増やすことも可能になります。また、遠方で都合がつきにくい人や、仕事や家事などで時間が取れない人も契約しやすくなるでしょう。アプリを活用すれば空き時間を活用できますし、場所も選びません。さらに、書類をすべてPDFやJPGにすることで印刷物を大幅に減少でき、コストの面においてもメリットは大きいといえます。賃貸借契約書などをデータ化すれば必要なときに探しやすく、管理も楽です。

非課税扱いで収入印紙がかからない

電子化によって賃貸借契約を締結するには、まず電子署名とタイムスタンプを添付した契約書をPDFにして送信します。相手が受け取って内容を確認したら、同じように電子署名とタイムスタンプを添付して返送してもらいます。これだけで賃貸借契約の締結が完了です。実は、契約書を電子化すると非課税という扱いになり、収入印紙を添付する必要はありません。これは、課税対象となるのが「課税文書の作成」が条件となっているためで、印紙税法基本通達第44条に書かれています。つまり、電子化することで収入印紙がなくても契約は可能なのです。

賃貸借契約を電子化するデメリット

デメリットとしては、データの改ざんなどがあげられます。ただし、データの改ざんについてはブロックチェーンを採用するなど、システム開発事業者によってさまざまな対策が取られています。もう一つのデメリットとしては、電子化に対応できない人には賃貸借契約自体がかえって面倒になる可能性があることです。電子化することで利用できない人が出てくるのは避けなければなりません。この問題を解決するには、必要に応じて従来の契約方法を取り、不動産会社や貸主側では賃貸借契約書をデータ化しておくという方法を取るのもいいでしょう。

賃貸借契約書の電子化でコストカットや時間の有効活用が可能!

賃貸契約を締結させるには、対面による重要事項説明書の確認などさまざまな時間がかかります。また、賃貸借契約書には収入印紙が必要なケースもあるなど、注意点が多いというのも現状です。しかし、契約書の電子化によって説明や確認などがオンラインで済み、時間やコストを大幅に減らすこともできます。データの改ざんなどいくつか課題はあるものの、賃貸借契約の電子化はメリットが大きいといっていいでしょう。