2020/12/17

帳票、書類の電子化

電子化は必要?見積書の本来の役割と書き方

サービスの提供や商品を販売する際、作成する書類の中に見積書があります。しかし、必ず見積書が発行されるとは限りません。事業形態によっては特に必要としないケースも見られます。中には、発行すべきかどうか迷っている会社もあるでしょう。この記事では、そもそも見積書とは何か、本来の役割と一般的な書き方、保管義務などについて解説していきます。

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そもそも見積書の役割とは

はじめに、そもそもなぜ見積書を発行する必要があるのか、本来の役割や記載される一般的な内容について説明していきます。

見積書は契約に関わる内容確認をする書類のこと

商品を販売したりサービスを提供したりするとき、そこに契約が発生します。契約とは商品やサービスなどを引き渡すことで、相手がその対価を支払うと承諾したときに成立するものです。それが物であるときには「売買契約」で、工事などを請け負うときは「請負契約」になります。小売店で物を購入するときも同じで、そこには「売買契約」が発生します。ただし、小売店のように金額が明確に提示されている場合は、顧客がレジに商品を運んだ時点で契約が成立したとみなすことができますから、あらためて契約書を作成する必要はありません。

しかし、顧客に応じて金額が変化する商品やサービスなどについては、契約の前に金額を明確に提示して相手の承諾を得る必要があります。相手に理解してもらい承諾を得るには、金額だけでなく納期など契約に関する内容を示す必要が出てきます。見積書とは、契約の前に金額など契約に関わる内容のすべてを確認する書類のことです。

見積書に記載される一般的な内容

どのような契約内容になるかで、見積書に記載する内容も違ってきます。見積書は「売買契約」や「請負契約」以外に「賃貸借契約」など物や場所の賃貸借にも関わるものです。そのため、見積書に書かれる内容もどのような契約を交わすかで違いが出るのは当然といえるでしょう。例えば「売買契約」に必要な見積書なら、単価や数量、合計金額、納期などを記載するのが一般的です。これが工事になると、金額や期間、工数、納期などが必要になります。

建物の建設などの工事になれば、内訳書も必要です。細かい材料の名称や数量、人件費など工事に関わる材料や経費をすべて明記しなければなりません。一旦見積書に記載した内容で顧客が承諾し、発注を受ければ、その時点で契約が成立したとみなすこともできます。そのため、見積書は間違いのないように正しく計算して書くことが重要です。ただし、大規模な工事になれば見積書を提示した後は契約書を取り交わすのが一般的で、万が一金額に間違いがあれば契約前に修正しても失礼はありません。

他にも、提供するサービスや請け負う工事によっては、含まれない金額についても明記した方がいいでしょう。例えば、商品の場合、顧客が受け取りに来るのと配送する場合では内容に違いが出てきます。そもそも配送料を無料としているなら明記する必要はありませんが、別途かかる場合は「送料は別途になります」などわかりやすく書いておくと、顧客に伝わりやすくなります。

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見積書は相見積に利用するときにもあると便利

ここでは、受け取る側としての見積書の役割について解説していきます。何か大きな物を購入するときやリフォームなど工事を発注するときは、できるだけ相見積を取る方がいいでしょう。相見積とは、最終的にどこから商品を購入するか、または工事を依頼するか検討するために、複数の業者から同じ内容の見積もりを取ることをいいます。どのような場合でも、あらかじめ金額が明確に提示されていないものを発注するには、見積書を取ることを忘れてはいけません。

相見積のメリットは、金額や内容を比較検討する以外に「適正価格」を理解できることにあります。業者の中には、相場よりも高い金額を要求してくるケースも見られ、1社だけで判断するのは危険です。もちろん、良心的で誠実な業者は多いですが、相見積で他の業者と比較することで、悪質な業者がまぎれているかどうかの判断材料にできます。金額だけでなく、納期や工期が他社に比べて大きく違う業者もいます。納期も工期も早い方がよいと考えがちですが、中には在庫処分や手抜き工事などもありますから、注意が必要です。

もちろん、だからといってあまりにも時間がかかり過ぎるのも困ります。相見積を取ると、他にもさまざまな情報を得ることは可能です。例えば、業者ごとの値引率やアフターサービスなどの違いまで、会社ごとの力の違いなども見積書だけで比較できるのは面白い点といえます。見積書に目を通してみて、疑問に感じたことはすぐに確認しましょう。そして、納得できるかどうかで判断するとよい業者選びができます。

見積書を作成した方がよいケースとは?

前述したように、見積書を作成した方がよいケースとは、金額があらかじめ明確になっていない商品やサービス、工事などの発注を受けるときです。中には時間がなく、見積書を作成しないまま受注を受けてしまう業者もあるかもしれません。または、親しい間柄だとついつい書類の作成をおろそかにすることもあるでしょう。たとえ、口頭での説明で顧客が了承した場合でも、見積書を発行しないまま受注を受けるのはトラブルのもとになります。

こちらが説明をしたつもりでも、相手によっては解釈に違いが出ることもあります。実際には追加工事が必要なものやオプションになっているものでも、すべて初回の金額に含まれていると解釈されることも少なくはありません。お互いにズレが生じていることに気づかず進めてしまい、いざ請求書を発行してみると「聞いていた金額と違う」といったトラブルに発展することも出てくるでしょう。たとえ相手の勘違いや聞き漏らしであっても、書面がなければ強く出ることは難しくなります。

その点、見積書をきちんと作成しておけば、相手の予算に見合っているかどうか受注前に気づいてもらえます。可能であれば値引きするなどの対応もできますし、トラブルに発展する心配はないでしょう。どこまでが金額に含まれるのか、要望通りにするには総額いくらになるのか、あらかじめ理解してもらえます。そのうえで、お互いが気持ちよく取り引きを開始できます。受注によるトラブルをなくし、顧客との良好な関係を構築するうえでも見積書は必要です。

見積書がなくてもよいケースとは?

商品や提供するサービスに明確な金額や条件があらかじめ提示してあるなら、見積書がなくても特に問題にはなりません。見積書は「契約に関わる内容を確認する」ための書類です。ですから、顧客自身がサービス内容や金額を見てすぐ理解できる場合は、見積書がなくてもトラブルが起こることはないでしょう。その一例としてお店があります。何か販売するとき、通常は商品ひとつひとつに金額を明記するのが一般的です。顧客はその金額と現物を見て購入するかどうかを判断できるため、購入を決めた時点で承諾したことになります。

ところが、金額が明確にされていないのに、見積書が存在しないケースもあります。その一例が医療費です。入院費用や手術費用などは、通常は前もって見積書が作成されることはありません。せいぜい、おおよその金額を告知される程度ではないでしょうか。あらかじめはっきりした金額を知りたい場合でも、医療費については見積書の提出は難しいといえます。医療費の場合、治療や手術の経過次第では、はじめの予想と変わってしまうことがあるためです。処置の方法や投与する薬品などに違いが出てくると、見積書とは相違が出ることになります。しかし、金額が変わるからといって、治療をおろそかにするわけにはいきません。医療費は命に関わる重要なものです。そのため、実際に治療が終わるまで明確な金額を出すことができず、見積書を出さないのが一般的になっています。

見積書の保管義務は何年?

多くの書類に保管義務があるように、見積書にも保管しておく期間が設けられています。ここでは、見積書の保管義務について説明していきます。

見積書の保管年数は?

見積書の保管年数は、個人か法人かで保管期間は違ってきますから注意しましょう。見積書の保管期間は、個人の場合で5年間、法人の場合で7年間です。これは、発行日を起算日とするものではありません。個人は「見積書を発行した年の確定申告期限日」で法人は「見積書を発行した年の法人税申告期限日」が起算日です。それぞれの起算日から5年間、または7年間は見積書を保管しておかなければなりません。また、個人の場合は青色申告も白色申告もどちらも同じ条件です。

見積書を紙で保管するメリットとデメリット

見積書を紙で保管すると、パソコンやタブレットなどのデバイスがなくても閲覧できるのがメリットです。手書きや通信環境を整えていないパソコンで作成した見積書なら、万が一データを第三者に閲覧されたり改竄されたりする心配もありません。ただし、量が増えるとそれだけ保管場所が必要になるというデメリットがあります。また、こまめに整理しておかないと、いざ探すときにも時間がかかるでしょう。

見積書を電子化して保管するメリットとデメリット

見積書を電子化しておけば、場所を取らずに保管できるのがメリットです。パソコンのハードディスクや自社サーバー、またはクラウドサーバーなど複数の場所に保存しておけば、万が一データが壊れたときでも安心できます。クラウドサーバーを利用すれば、外出先でも閲覧したり修正したりすることもでき、便利です。ただし、電源が使えないときや通信環境が整っていない場所では閲覧すらできません。万が一クラッキングされたときは、見積書の改竄や閲覧をされる心配が出ることもデメリットです。

基本的な見積書の形式と書き方

最後に、見積書の基本的な形式と書き方について説明していきます。

件名、宛名、発行者など基本情報

件名と宛名、そして発行者などは基本的な情報です。件名には工事名や利用するサービス名などが入ります。例えば「〇〇様改築工事」「テナントビル新築工事」といった書き方が一般的です。宛名とは発注者の名称や社名、または個人名で、発行者とは受注を受けた社名を入れます。また、通常は発行者の部分に担当者名も添えます。担当者名は、後で金額の根拠や納期などの確認が必要になったときのために必ず入れておきましょう。

作成した日付や通番

作成日とは見積書を作成した日付のことです。後で混同しないよう、必ず年月日で書くことが原則ですが、西暦を用いるか年号を入れるかは特に決まりはありません。ただし、社内ルールに則って作成しておくとまとめやすくなります。通番も同様で、社内ルールで記入するのが一般的です。通番は、後で見積書を整理したり顧客の問い合わせで確認したりするときに利用できます。

商品名に数量または工数

商品名または工事名、数量、工数は顧客にどのような内容なのか理解してもらううえで重要な情報です。この部分こそ、見積書の基本部分といってもいいでしょう。数量は単位を間違えると誤解のもとになりますから、正しく記入することが大切です。

納期や工期

納期や工期も、見積書を作成するうえで外すことはできません。この部分を明確に記入しておくことで、顧客が発注する判断材料にできます。記入する際の注意点としては、実際にかかる期間よりやや長めで設定しておくことです。天候や物流などさまざまな事情で遅れが出ることも考慮しておきましょう。

小計と消費税、総合計

税込金額かどうか判別できないのは、顧客とのトラブルの原因になります。内税であれば必ずその旨明記しておきましょう。ただし、通常は小計した後に消費税を記入するのが一般的です。もちろん、税率も忘れてはいけません。総合計は小計と消費税などを合算したすべての金額です。

有効期限と捺印の重要性

有効期限とは見積書に書かれている内容の有効期限のことを指します。「いつまでならこの金額と条件で受けることができますよ」ということを顧客に提示することです。有効期限は必ず記入するようにしましょう。例えば、見積書を作成してから実際に顧客が発注するまで2カ月間かかったとします。しかし、発注までの時間が長いと、その間に材料費や消費税、運送費などの経費が値上がりすることもあります。ところが、有効期限が書かれていないと、そのままの金額や条件で受けざるを得ないこともあるでしょう。そうしたトラブルを回避するうえで、有効期限は重要です。さらに、捺印も入れておけば相手も安心できます。

備考欄に入れる内容は?

備考欄は注意書きなどを添えるときに使います。何か付け加えておきたいときなどに作っておくと便利です。

見積書は契約内容を確認するうえで重要なもの

見積書は、契約を交わすうえで相手に納得してもらうために必要な書類です。特に金額がわかりにくい仕事を受けるときには、必ず見積書を作成することが必要です。もちろん、受注だけでなく発注側になるときも見積書を取ることを忘れてはいけません。見積書は保管しておく年数が決められています。保管場所や閲覧などの利便性を考えて、電子化するなどの対処をしておくといいでしょう。

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