2025/08/27
製造業におけるデータ分析や可視化は、単なる技術的な作業ではありません。
歩留まり改善、品質向上、予兆検知といった業務目的を達成するための「手段」であり、分析ツールは日々の現場業務に自然に違和感なく組み込まれる必要があります。
こうした業務への“エンベッド(=埋め込み)”を実現するには、現場の業務フローや情報の粒度に合った可視化手法が重要になります。Visualization Modは、そのための拡張手段としてSpotfireに用意されているフレームワークで、カスタムの可視化を開発する仕組みです。
今回は、このVisualization Modを活用し、製造業のお客様と共同で開発中の「スケジュールチャート」カスタム開発事例についてご紹介します。現場の業務要件を反映したこの可視化は、製造現場での業務に自然に馴染む可視化を実現し、日常の判断や改善活動を支える基盤となりえます。
Visualization Modは、TypeScriptやNode.jsなどを用いて、Spotfireで標準機能では表現できないカスタムの可視化を実現するための開発フレームワークです。これにより、標準ビジュアライゼーションよりも目的にかなった分析・可視化を実現することができます。
Visualization Modについての詳細は、こちらの記事でも紹介しています。
開発元であるCloud Software Group社がSpotfireのコミュニティWebサイトであるSpotfire Community上で、様々なサンプルmodを公開しており、コミュニティへのユーザー登録を行えば自由にダウンロード・利用できます。
従来、製造現場では、生産計画や進捗管理、生産性・稼働率の把握、さらには装置停止時のトラブルシューティングといった目的で、設備や装置の稼働・停止、品種や治工具の切替といった経時的な状態変化を可視化するケースがあります。
例えば、Spotfireを製造現場でデジタルサイネージとして共有したり、自社開発のダッシュボードとして活用されるお客様も少なくありません。
これらの可視化は、タイムライン上の変化を直感的に把握する必要があるため、標準的な散布図や棒グラフを工夫して表現しているお客様が多いですが、どうしても見づらくなる課題がありました。
また、Spotfire Communityには、すでにCloud Software Group社よりガントチャートmodが提供されています。しかしこのmodを、上述した製造現場での目的に沿って活用する上で、①日付単位でしか可視化ができない、② 1つのレーンのみで特定の対象の状態変化を表現できず複数レーンに分断されてしまう、③データソースが最大100行に制限されている、などの機能上の課題がありました。
そこで、製造業のSpotfireご活用企業様と協力し、必要な機能要件をヒアリングしながら、一から新たにModの実装を開始しました。アジャイル開発方式で、現在も改良を重ねています。我々は、このビジュアライゼーションを「スケジュールチャート(仮)」と命名しています。
開発した「スケジュールチャート」は、装置ごとの稼働・停止・治具交換などの状態を、時間単位の粒度で、1つのレーン上に直感的に表示できます。
これにより、製造現場で現場のエンジニアが違和感を覚えることなく、状態把握や異常検知、現場の意思決定を早めることにご活用いただけます。
開発において常に意識しているのは「Spotfire のユーザー体験を損なわないこと」です。Web標準技術であるJavaScript による開発は、ある意味無限の可能性を秘めていますが、Spotfire らしいユーザー体験が損なわれた Mod は、結局ユーザーに受け入れられず、現場への定着や継続利用につながりません。
Spotfireの強みであるインタラクティブ性やグラフ同士の連動、フィルタリングなどを、従来のビジュアライゼーション同様の体験で活用できることを配慮しながら開発を進めています。
この「スケジュールチャート」事例は、先日開催したSpotfireのユーザー会でも紹介しました。
Spotfireリーダーが語るデータ活用の最前線!特別セミナー&交流会2025」開催レポート
当日、多くのユーザーから反響をいただき、「自社でも使いたい」「他工程でも応用できそう」といった声が寄せられました。
こうした反応からも、「スケジュールチャート」自体の汎用的なニーズに加え、現場に即した可視化のご要望の高さがうかがえます。
弊社では、製造業をはじめとする現場の声を直接伺いながら、課題解決に向けた伴走型の支援を強化しています。「こんなことはできないか?」といったアイデア段階のご相談も大歓迎です。現場のデータ活用に関するお悩みやご要望がございましたら、ぜひお聞かせください。
また、今回のコラムでご紹介した「スケジュールチャート」にご興味をお持ちいただけましたら、実際の動きをお見せするオンラインデモや、トライアル環境のご提供も可能です。
執筆者
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社
データサイエンティスト
石田 佳之
大学院で統計を学んだ後、NTTコミュニケーションズ(現・NTTドコモビジネス)に入社。ソーシャルメディアを用いた大手旅行会社や通信会社の評判分析や、訪日外国人の動向分析に従事後、大規模データ分散処理基盤の構築・開発、機械学習プロジェクトにリーダーとして参画。
現在は、TIBCOのアナリティクス製品の活用支援に加え、統計解析や機械学習を活用した分析案件を主導。