2021/12/01

帳票、書類の電子化

経理は電子化が進まない?経理部門の電子化と課題

経理部門の業務は、基本的に紙を使う仕事が中心です。請求書や納付書は書類で送付されることが多く、経理担当も手ずから書名や押印をしなければなりませんでした。しかし、こうした紙でのやり取りは、業務効率を阻害する大きな要因のひとつでもあるため、最近では経理業務を電子化する大きな流れが起きています。そこで今回は、経理業務を電子化する際の注意点や、電子化のメリット・デメリット、また課題などについて解説します。

なぜ経理業務の電子化が注目されているのか

経理部門に限らず、業務の電子化は既に各分野で行われています。IT技術の進歩や政府による働き方改革の推進、また環境問題に対する意識の高まりなど、さまざまな要因から各業務の電子化が進められてきました。会議やミーティングの資料や、会社パンフレット・製品カタログ、またチラシやポスターといった販促物など、既に電子化やペーパーレス化が導入されている業務も少なくありません。一方、経理部門の業務に関しては、長らく紙媒体から脱却できない事情がありました。

まず、請求書や領収書は紙で発行するものという商習慣が理由のひとつとして挙げられます。今まで紙で発行し、何ら不自由なかった作業に、わざわざ変更を加えることに抵抗を感じる人が多かったのです。また、法律の問題も経理部門の電子化やペーパーレス化を阻んでいた要因のひとつです。以前の法律では、データを電子化するにあたっては、原本を長期に渡って保管する義務があったなど、関連法の整備が進まない状況下で電子化に二の足を踏んでしまう企業が多くありました。しかし、最近になって、こうした状況に変化が起こっているのです。

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電子帳簿保存法の改定

2000年前後に起こったIT技術の急激な進歩によって、帳簿類を電子データ化して保存する機運が大きく高まりました。これに対応するため、政府は1998年に電子帳簿保存法という法律を制定します。これは、これまで紙媒体での保存が義務付けられていた国税関係の帳簿類の全部、または一部に関して、電子データでの保存を認めた法律です。この法律によって、経理部門においてもさまざまな書類が電子保存できるようになりました。電子帳簿保存法の対象となる経理部門の代表的な書類は以下の通りです。

  • 請求書
  • 納品書
  • 領収書
  • 経費精算書
  • 総勘定元帳
  • 仕訳帳
  • 補助元帳
  • 伝票
  • 貸借対照表

しかし、電子帳簿保存法では、帳簿類の電子保存を認めることに一種の条件が付されています。すなわち、電子化されたデータに関する書類は原則として7年間は保存しなければならないという規定です。この条件によって、書類の電子化はできても、結局は原本を紙のまま保存しなければならず、一種の二度手間のような状況になってしまったのです。その結果、法律的にはできるようになっても、実態として電子化への移行はなかなか進みませんでした。

そうした中、2016年と2018年に相次いで電子帳簿保存法の改定が行われることによって、状況は大きく一変します。まず、2016年の改定では、原則7年間の原本保存の義務が撤廃されました。この改定によって、原本を保存する必要がなくなったので、帳簿類の電子化に関する足枷がなくなり、経理業務を電子化するハードルがかなり低くなったといえます。2018年の改定では、保存形式の対象が広げられ、スマホで撮影されたデータも電子データと認められるようになりました。

さらには、2022年の改定で、電子保存に関する承認制度が廃止されます。それまで、対象となる帳簿や書類をデータ保管する際は、事前に管轄の税務署に申請して承認を受けなければなりませんでした。つまり、税務関係に関する書類については、誰でも簡単に書類を電子化できるわけではなかったのです。しかし、この改定によって、わざわざ承認を受けなくても税務関係の書類を電子化できるようになります。このように、関連法が次々と整備されたことで、書類の電子化が各方面で推し進められる大きな流れが生まれているのです。

コロナ禍の影響

新型コロナウイルスの感染拡大によって、各業界がテレワークの導入を推進しています。ところが、経理部門の業務は旧態依然として紙媒体の仕事が大部分を占めていたため、テレワークに移行したくても難しい側面がありました。結果として、経理担当者は会社に出社して書類を整理するなど、従来の働き方しかできず、社会的な要請に大きく後れを取る形となってしまったのです。

こうした状況もまた、経理部門に電子化の波が押し寄せる要因のひとつだといえます。つまり、テレワークというニューノーマルな働き方に合わせるために、経理部門でも電子化を導入しなければならないという空気感が醸成されたのです。

メリットもデメリットも!良い面と悪い面を総合的に判断しよう

経理業務を電子化・ペーパーレス化することには、さまざまなメリットがあります。たとえば、経費削減や業務効率化、はたまた環境保全など、いろいろな恩恵を享受することができるでしょう。その一方で、導入や運営のコスト面、業務に対する慣れの問題など、デメリット面も付きまといます。経理部門の電子化を検討する際は、メリットとデメリットの両方を鑑み、総合的な視点から導入すべきかどうかを考えることが大切です。以下、経理業務を電子化するメリット・デメリットについて見ていきます。

電子化のメリットその1:経費を削減できる

書類の電子化を推し進めれば、まず経費を大幅に削減できるというメリットがあります。書類などの紙媒体を用いる場合、紙そのものを用意するのも、また印刷したり切手を貼ったりすることにも経費がかかります。膨大な量の書類を扱う場合、紙代や印刷代だけでもかなりの費用となるでしょう。書類を電子化すれば、こうした諸経費はほぼ発生しなくなります。紙代や印刷代はもちろん、インク代や送付用の封筒代、また切手代やプリンターの維持費などもかかりません。毎月かかっていた経費を削減できるので、この点は電子化の大きなメリットだといえます。

電子化のメリットその2:労働生産性の向上につながる

紙の書類を作成したり保管したりする業務は、手間と時間を大きく浪費するものです。たとえば、紙の請求書を発行する際、まず請求書と封筒を用意しなければなりません。次いで、請求書に必要事項を印刷し、封筒に書類を入れます。それから、住所などの情報を記入し、郵便局に投函してようやく作業完了です。書類を電子化すれば、こうした一連の作業をまとめて遂行できます。請求書の作成はデータをそのままシステムに取り込めば良いですし、データの送付もメール添付などで済ませることが可能です。それまで手間と時間がかかっていた作業を大幅に削減でき、別の作業に従事する時間を作ることも可能となるでしょう。

電子化のメリットその3:データのほうが管理しやすい

紙媒体を用いる場合、管理の上でミスが起きやすいという側面があります。担当者が紛失してしまったり、間違えて処分してしまったりといったリスクもゼロではありません。また、保管状態が悪く、紙が劣化してしまえば、復元するのも困難です。その点、電子化すればクラウド上で一元的な管理ができ、紛失や処分といったリスクを考える必要がありません。電子データには紙のような劣化の心配もないため、紙媒体より保管しやすいという点もメリットです。

電子化のデメリットその1:初期費用がかかる

書類を電子化するためには、導入のための準備を整えなければなりません。扱う書類が少量であれば、社内の人間で対処できるでしょうが、大量の書類をデータ化するには外部サービスの活用も考えていかなければならないでしょう。特にセキュリティ面の対策は電子化にあたって必須であるため、セキュリティ面のシステム構築には相当の費用と時間を要する可能性があります。

電子化のデメリットその2:業務の変化に対応しなければならない

従来の紙媒体が主流だった業務が電子化に移行すれば、業務そのものが依然とは違った形になることが予想されます。特に書類の送付に関しては、対面ではなくオンラインでのやり取りが中心となるため、従来の商習慣を抜本的に改革しなければなりません。また、データの管理や保管業務も、紙媒体の時より細かい分類での管理が必要です。

このように、書類の電子化にはメリットとデメリットの両面があります。電子化が社会の流れだからといって、それだけで導入を進めるのではなく、電子化が抱える課題についてもしっかりした知見を持っておくことが肝心です。以下、電子化のメリットや課題について詳細に記載した記事をご紹介いたします。
(関連記事:書類の電子化に向けての課題、メリットを徹底解説

課題を解決しよう!経理業務を電子化するポイント

法律が整備され、社会情勢の後押しもあって、業務の電子化やペーパーレス化は多くの分野で進んでいます。しかし、電子化には課題が多いことも事実です。そうした課題を解決しないまま、導入を推し進めてしまうと失敗するリスクも高くなってしまいます。そのため、業務を電子化するにあたっては、取り組みを始める前に課題を解決することが先決です。それでは、電子化のためには具体的に何から始めれば良いのでしょうか。ここでは、経理業務を電子化するポイントについて解説します。

社内業務フローの整備

電子化が導入されれば、経理業務は根本から改革を迫られることになるでしょう。今まで慣れていたやり方が通用しなくなるので、かえって担当者の負担が増大し、業務量が増えてしまう恐れもあります。そのため、いきなり導入するのではなく、導入する前に社内業務フローをしっかり整えておくことが大切です。慣れない作業をスムーズに遂行するためには、仕事の流れや業務のプロセスをわかりやすく示した業務フローの作成が鍵を握ります。シンプルでわかりやすく、関係者が理解しやすいフローをあらかじめ作っておけば、現場の混乱を最小限に抑えた円滑な導入が可能となります。

取引先の理解を取り付ける

請求書や納付書の電子化は、取引先にも大きな影響を与えることになります。取引先から理解を得られなければ、せっかく電子化のシステムを導入したのに、結局は請求書や領収書を封筒に入れて郵送するということにもなりかねません。また、あらかじめ理解を得ていたとしても、請求書や領収書をメールで受け取る方法を取引先自身が理解していなければ、請求処理や支払処理が滞ってしまう恐れがあります。ですから、電子化の取り組みは、自社内だけの問題ではなく、取引先も含めた全体的な課題であることをしっかり認識することが大切です。

取引先に対しては、電子化にあたってあらかじめ案内状を送付するなどして、理解を取り付けておきましょう。また、オンライン上の書類送付に関して何らかの問題が生じた場合は、取引先に対してしっかりサポートすることも重要です。とはいえ、自社内の電子化に理解を示してくれない取引先もいるでしょう。その際は、電子化のメリットや取り組み方法をきちんと説明し、自社内の取り組みに協力してもらえるように努力する必要があります。電子化を成功させることができるかどうかは、取引先との関係性が鍵を握っているといっても過言ではありません。一方的に押し付けるのではなく、理解や協力を得られるように話し合いながら、お互いに折り合いを付けられる部分を探っていきましょう。

電子化のルールを確認しておく

書類の電子化には厳格なルールが定められています。特に電子データの保存方法については、e-文書法という法律で細かく規定されています。もちろん、領収書や請求書といった経理関連書類もe-文書法の対象です。e-文書法によれば、電子データを保存する際は以下の要件を守らなければならないとしています。

見読性

見読性とは、電子化されたデータがしっかり見て読めることです。スマホやタブレット、パソコン上でも内容が明瞭に確認できなければなりません。

安全性

電子データは第三者に改ざんされる恐れがあります。そうしたリスクに対する備えを求める要項が安全性です。具体的には、データの消去や変更の事実を追跡できるログを残すことが求められます。

機密性

文書のデータ化にあたっては、特定の人しかアクセスできないようにしておく必要があります。許可されていない人のアクセスは制限しなければなりません。

検索性

必要なデータは簡単に検索して探せるようにしておく必要があります。そのための仕組みづくりが、保存要件のひとつです。

このように、文書の電子化には法律的なルールが存在します。紙媒体から電子化に移行する際は、こうしたルールをあらかじめしっかり理解しておくことが肝心です。

経理部門も電子化を!準備を整えて電子化に移行しよう

電子化に成功すれば、業務の効率化や経費削減、管理の簡便化などさまざまなメリットがあります。もちろん、課題やデメリットがあることも事実なので、導入にあたっては取引先の理解や関連法の学習などひとつひとつ課題を解決していく必要があります。業務フローの改善や導入予算の試算など、導入前の準備が何より肝心です。メリットや課題を理解して、まずはしっかりと準備を整えましょう。

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