更新日:2023/03/28(公開日:2020/10/08)

法令遵守(電子帳簿保存法、インボイス制度など)

インボイス制度とは?電子インボイスのメリットや従来の請求書からの変更点

インボイス制度の導入が決まったものの、従来の納品書や請求書と何が違うのかよくわからないという人も少なくないでしょう。そもそも、インボイス制度はなぜ導入されるのでしょうか。インボイス制度には、軽減税率や仕入税額控除が大きくかかわっています。ここでは、インボイス制度の詳細や、従来の請求書との違い、電子インボイスのメリットなどについて、軽減税率や仕入税額控除を交えて紹介します。

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インボイス制度・電子帳簿保存法対応編
送信者向けの「インボイス制度とは」「保存義務」「請求書変更例」の概要や対応方法を解説

インボイス制度の導入理由とその実態とは

インボイス制度とは、事業者が商品の仕入れや販売をする際の請求書や納品書の記載方法、発行・保存に関わるルールです。ここでは、なぜインボイス制度が導入されるのか、従来と何が変わるのかなどについて、順を追って紹介します。

インボイス制度の導入理由は軽減税率

インボイス制度が導入される理由とは何でしょう。これは、2019年10月に施行された消費税増税に伴い軽減税率が導入されたことで、2つの消費税率が混在するようになったためです。従来は商品の種類にかかわらず税率が一律だったため、税額の計算は単純でした。しかし、軽減税率の導入によって、一般的な商品の税率が10%なのに対し、軽減税率が適用される商品の税率は8%と、異なる税率が混在するようになりました。身近なところでは食料品などが軽減税率の対象となっています。

軽減税率は、生活必需品にかかる税金を安くすることで、低所得者の負担を軽減することを目的として導入されました。しかし、10%と8%の税率が混在することで、商品の仕入れ・販売時の税額計算が複雑になったのも事実です。インボイス制度では、これらの商品の税率と税額を明確に記載した、適格請求書と呼ばれるインボイスが発行されます。これにより、ミスや不正を防いで取引の透明性と、正確な経理処理を行うのが目的です。

インボイス制度の対象は売上1000万円超の課税事業者

インボイス制度は、売上が1000万円を超える課税事業者が対象となります。免税事業者は対象となりません。免税事業者とは、売上高1000万円以下で納税免除を受けている事業者です。そのため、納税にかかわる書類を作成する必要がなく、インボイス制度の対象とはなりません。しかし、インボイスは消費税率と税額を明確にするだけでなく、仕入税額控除を受けるためにも必要です。仕入税額控除とは、消費税を2重に支払うことを避けるため、商品を販売する際に請求する消費税額から、仕入れを行なった際に支払った消費税額を差し引くことができる制度です。

課税事業者はこの差額を消費税として納税します。しかし、インボイス制度導入後には、インボイスを発行・保存することが仕入税額控除を受ける要件となります。つまり、免税事業者はインボイスを発行することができないため、仕入税額控除を受けることができなくなるのです。しかし、売り上げが1000万円以下の免税事業者でも課税事業者として登録・納税することでインボイスの発行が可能になり、仕入税額控除を受けることが可能になります。

導入はいつから?適格請求書の発行は税務署へ登録申請が必須

インボイス制度は2023年10月1日から導入され、正式名称を「適格請求書等保存方式」といいます。ここでいう適格請求書とは、取引のある事業者が発行した請求書や納品書、領収書などです。これらの書類には、商品の仕入れ、または販売などの際にどの税率が適用され、税額がいくらになるかの情報が記載されます。発行した側は複写を、発行を受けた側は原本を7年間保存しなければなりません。

適格請求書を発行するには、税務署へ登録申請を行わなければなりません。登録申請を行えるのは課税事業者です。申請後は税務署による審査があり、問題がなければ事業者登録番号が通知されます。適格請求書発行事業者の登録申請の受付は、2021年10月1日から始まっています。インボイス制度が開始される2023年10月1日までに登録を完了させたい場合には、6カ月前までに税務署に申請書を提出しなければいけません。

取引先が免税事業者だと税金の負担が多くなる

消費税は、生産から流通の各段階で商品への付加価値に応じて公平に負担されるものです。そのために、先述の仕入税額控除という制度があります。しかし、インボイス制度の導入後は、仕入税額控除を受けるためには、仕入時に適格請求書を発行してもらわなければなりません。ところが、仕入れ先が免税事業者だと、適格請求書を発行することができず、仕入れ元となる事業者は仕入税額控除を受けられなくなってしまいます。つまり、取引先が適格請求書を発行できない免税事業者の場合、仕入れ元事業者の税金の負担が多くなってしまうのです。

これは、免税事業者を取引先にもつ課税事業者だけでなく、免税事業者にとっても不利な状況といえるでしょう。なぜなら、課税事業者は仕入税額控除が受けられないことを理由に、免税事業者を取引先にもつことを避ける可能性がでてくるからです。免税事業者から仕入れをした際の仕入税額控除は、2023年10月に一気に廃止されるわけではありません。しかし、2029年10月までには段階的に廃止されるので、免税事業者は課税事業者となることも検討しなければいけなくなるでしょう。

インボイス制度と適格請求書の詳細については、以下の記事でも解説しています。

インボイス制度と適格請求書において留意すべきこと
https://www.nttcoms.com/service/naviexp/column/20220112/

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従来の請求書と適格請求書との違いは?

従来の請求書は、請求書等保存方式と呼ばれるものでした。では、インボイス制度とは何が異なるのでしょうか。また、その過渡期に経過措置として導入される、区分記載請求書等保存方式とはどういったものなのでしょう。ここでは、これらを比較しながら紹介します。

従来の請求書は請求書等保存方式

消費税率が一律だったときに採用されていたのが、請求書等保存方式です。ここでは、仕入税額控除を受けるために、請求書や納品書といった第3者が発行した書類を経理書類の証拠として保存することが義務付けられました。当時は、税率が一律であったことから、適用税率や税額の記入は義務ではありませんでした。請求書等保存方式では、発行者および受領者の名称や、取引年月日、内容や対価が記載されていました。ここで、対価の記載方法は、税抜き価格と消費税を記載するか、税込み価格と消費税を記載するかのどちらかです。いずれにしても、消費税額がいくらになるかが明確に記載されていることがポイントです。

請求書等保存方式では、免税事業者による消費税の請求が優遇措置として認められていました。つまり、本来消費税を納める必要のない免税事業者が、自社の商品を取引先に販売する際に、消費税を上乗せして請求していたのです。これは、免税事業者であっても仕入れを行う際には消費税を支払わなければならず、販売の際に消費税を上乗せしないと、仕入れの際の消費税が自己負担となってしまうためです。

2023年9月までは区分記載請求書等保存方式

軽減税率の導入された2019年10月1日から、インボイス制度の始まる前日の2023年9月30日までは、区分記載請求書等保存方式が適用されます。請求書等保存方式との違いは、軽減税率に対応しているかどうかです。具体的には、請求書や納品書、帳簿などの経理に関わる書類の中に、軽減税率に当てはまる品目があれば明示し、8%と10%の税率ごとに分けた合計金額を記載する必要があります。つまり、税率ごとに区分経理を行わなければならなくなりました。

区分記載請求書等保存方式では、軽減税率に対応した区分経理を行い、それらの書類を発行・保存することを条件に、仕入税額控除を受けることができます。インボイス制度が導入される直前、2023年9月30日までは、免税事業者から仕入れを行なった際も、仕入税額控除を100%受けることが可能です。ただし、軽減税率の対象品目を取り扱う免税事業者は、課税事業者と同じように、区分記載請求書等保存方式にのっとった請求書や納品書を発行しなければなりません。

2023年10月からは適格請求書等保存方式(インボイス制度)

適格請求書等保存方式になると、適格請求書発行事業者の名称、登録番号の記載が新たに加わります。もちろん、軽減税率対象品目と税率ごとの合計金額も記載しなければなりません。区分記載請求書等保存方式との大きな違いは、インボイス制度では、請求書などの適格請求書を発行できるのが、税務署に登録を済ませた適格請求書発行事業者だけになるという点です。そして、インボイス制度が導入されると、免税事業者からの仕入れを行なった際の仕入税額控除が段階的に廃止されます。

控除額は、2026年9月までは80%、2029年9月までは50%と段階的に減額され、2029年10月からは完全廃止される予定です。免税事業者は、自社も仕入れ税額控除が受けられなくなるだけでなく、商品の販売先となる課税事業者も税金の負担が大きくなってしまうため、課税事業者となるかどうかの判断を迫られるでしょう。

適格請求書の電子化を検討しよう!

国はインボイス制度を導入することは決めたものの、電子化するかどうかについては直接関与しない方針です。ただし、適格請求書は紙だけでなく、データ形式による交付も認められています。つまり、電子インボイス化の判断は企業に委ねられているといっていいでしょう。

電子インボイスによる交付方法は大きく分けると、以下の4種類です。

  • 記録用媒体(光ディスク・フラッシュメモリなど)による交付
  • EDI取引による交付
  • 電子メールによる交付
  • インターネット上のWebサイト経由での交付

これらの方法を通じて電子インボイスが広がることで、取引の透明性確保や不正防止、税額計算の効率化などにつながると期待されています。

すでに電子取引やペーパーレス化などを進めている企業では、適格請求書も電子化する方針です。それ以外でも、大手会計ソフト制作会社を代表とした電子インボイスの推進協議会が発足するなど、各方面で電子化への動きが高まっています。

電子インボイスの世界標準規格は「Peppol(ペポル)」

このように注目を集めるインボイスの電子化ですが、電子化を実際に導入するには、インボイスを発行する側と受領する側が、互換性のあるソフトを使用していなければ実現できません。そのためには、仕様の標準化が必要です。

デジタルインボイス推進協議会(EIPA)は、電子化による運用効率化を図るため、日本国内における電子インボイスの標準仕様として「Peppol(ペポル)」を採用すると発表しました。

Peppolは電子文書(発注書・請求書など)をネットワーク上でやり取りをするための世界標準規格であり、以下の3つの規格が定められています。

  • 文書仕様
  • 運用ルール
  • ネットワーク

現在、Peppolはヨーロッパ各国・オーストラリア・シンガポールなど、世界40カ国以上で普及している状況です。

このPeppolを採用すれば、各企業が同じ規格で電子インボイスをやり取りできるようになるので、業務効率化やコスト削減につながることが期待されています。

紙発行によるインボイスのデメリット

インボイス制度では、金額にかかわらず、すべての適格請求書を7年間保管しておかなくてはなりません。これは、インボイスを発行する際にも、受領する際にも義務付けられているため、保管・管理しなければならない適格請求書はかなりの数にのぼることが予測されます。また、買掛金のデータと突合したり、仕入税額控除の申請をしたりする際にも、素早く必要な適格請求書を照合できなければなりません。

こうした面で、紙で適格請求書を発行することはデメリットが多いといえるでしょう。たとえば、紙の場合には、保管場所を確保しなければなりません。そして、保管の際にかかる手間や、印刷代やフォルダー代などのコストなども考慮しなければならないでしょう。必要な書類を探すのにも時間がかかります。また、買掛金などの帳簿データと適格請求書のデータを突合する際も、手作業を強いられるので、そのための人件費、時間などは莫大なものになる可能性があるでしょう。

データ発行によるインボイスのメリット

紙ではなく、電子インボイスにするメリットはたくさんあります。たとえば、適格請求書をデータとして保存する場合、紙のように場所を取ることがありません。紙を使わないため、印刷代や紙代といったコストも削減できるでしょう。それに、ソフトを使用して適格請求書を作成できるので、煩雑な複数税率の計算の人為ミスが削減されることが期待されます。これは、正確さを求められるインボイス制度では大きなメリットといえるでしょう。

ほかにも、必要な適格請求書に容易にアクセスできるほか、突合などの作業も人間が行う場合に比べて圧倒的な速さで終えることができます。また、コンピューターを使ってどこからでも適格請求書にアクセスできるので、リモートワークへの対応も可能です。電子化を新たに導入しようという場合には、システムへの投資や社員の教育などが必要となります。しかし、その後のメリットは、これらの費用や手間を上回る効果があるといえるでしょう。

電子インボイス導入時の注意点

電子インボイスを導入するにあたって、企業が注意すべきポイントをまとめたので、しっかり押さえておきましょう。

電子データ保存のルールを教育する

自社・取引先どちらが発行したかを問わず、電子インボイスは「電子帳簿保存法」に基づいて保存しなければなりません。そのため、事前に電子データの取り扱いに関するルールを策定して、システムの不具合やヒューマンエラーによるデータ消失を防ぐ必要があります。

また、社員にルールを教育・周知することも大切です。パスワードの設定やデータ送信時のチェック手順作成、情報セキュリティの指導など、情報漏えいのリスクを軽減させる対策にも取り組みましょう。

電子インボイスに対応していない取引先もある

コスト・IT環境・人的リソース・業務影響など、さまざまな理由から電子インボイスに対応していない取引先が存在する可能性もあります。このようなケースでは、紙と電子インボイスの両方で交付しなければならないため、経理の業務負担が増えてしまうことが難点です。

スムーズにやり取りするためには、取引先のニーズを踏まえて自社の方針を決定し、適したシステムを導入する必要があります。また、電子インボイスに移行する際は、取引先から承諾を得ることも大切です。

電子インボイスの導入は電子帳簿保存法に対応したツールを

先述したように電子インボイスを電子データとして保存する場合、電子帳簿保存法に準じた方法で保存することになります。そのため、電子帳簿保存法の要件に対応した電子帳票システムを導入したいところです。電子インボイスを発行できることはもちろん、業務効率化やコスト削減にもつながります。

なお、自社の環境によっては既存システムの改修、取引先との調整が必要になる可能性もあるため、汎用性の高いシステムを選択することが大切です。さらに、2024年1月から電子取引に関するデータ保存が完全義務化されるので、システムの導入・調整をはじめとする各対応は早めに進めましょう。

また、電子帳簿保存法の改正についても、以下の記事で詳しく紹介していますので、ご確認ください。

2022年電子帳簿保存法改正!請求書保存のポイントを網羅
https://www.nttcoms.com/service/naviexp/column/20211013/

電子インボイスの対応には「ナビエクスプレス」

電子帳票システムと一口にいっても多種多様ですが、業務効率化やコスト削減を実現したいなら、NTTコム オンラインが提供している「ナビエクスプレス」がおすすめです。

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    データは24時間いつでも人手を介さず配信できるため、ヒューマンエラーを防止できます。
  • セキュリティ
    各種セキュリティ機能を搭載しているため、大切なデータをしっかり保護できます。

このようにナビエクスプレスを利用すれば、数多くのメリットを得ることができます。

インボイス制度導入までの準備はしっかりと

2023年のインボイス制度導入に当たり、さまざまな変更が段階的に取り入れられています。課税事業者はもちろん、免税事業者や免税事業者を取引先としている課税事業者も何らかの準備が必要になるでしょう。事業者にとっては必須の請求書や納品書に関わる変更にスムーズに対処するためにも、適格請求書発行事業者の登録や電子インボイスの検討などをしておくことをおすすめします。

また、電子帳票システムの選定も重要です。NTTコム オンラインの「ナビエクスプレス」は多機能かつご利用実績も豊富なので、ぜひご検討ください。
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