
更新日:2025/05/22(公開日:2021/08/31)
帳票、書類の電子化
支払明細書とは?電子化するメリットや事例、書き方を解説
支払明細書は主に商取引の一環としてやり取りされる書類です。必ずしも発行する義務はありませんが、ビジネスシーンでは特に広く活用されており、実際に自分で作成したことがある人も多いのではないでしょうか。支払明細書には定められた形式もなく、書き方は自由です。とはいえ、ビジネス上のマナーとして、基本的な形式は知っておきたいところ。
そこで今回は、支払明細書の基礎知識から書き方の基本などについて解説します。電子化するメリットや事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
- 支払明細書とは、取引の内容や支払った金額を確認するために発行される書類のことで、商取引や給与、配当金や公共料金の支払いなど、さまざまな種類がある
- 支払明細書に決まった様式はなく、記載項目の条件を満たせば適格請求書としても利用できる
- 支払明細書を電子化すると、業務効率化やコスト削減、テレワークの推進など、多くのメリットがある

支払明細書とは何をするための書類?
支払明細書とは、取引の内容や支払った金額を確認するために発行される書類のことです。主に商取引において活用されることが多い書類ではありますが、利用されるのは必ずしも法人同士による商取引の場面だけではありません。たとえば、クレジットカードで買い物をした際、購入した商品の名称や購入金額、カードを利用した日付など、カードの利用履歴に関する情報が細かく記録された書類が発行されます。その書類が支払明細書と呼ばれるものです。
また、仕事のために個人利用したバスや電車などの運賃は、領収書や明細書をその場で発行してもらうことが難しい場合があります。そのため、後日自分で書類を作成して経費として計上するといった場合があります。このときに作成する書類も支払明細書です。企業によって支払明細書の扱いはさまざまですが、書き方によっては領収書と同じ効果を持つ書類として利用することができます。
代金をともなうやり取りの場合、お金がいつ支払われるのか、またどの程度の金額が支払われるのか、しっかり確認することが求められます。領収書や明細書は、その確認のために発行される書類です。ただし、取引の際の支払明細書は、法律によって発行が義務付けられているわけではありません。実際、企業間の取引でも、納品書や請求書のやり取りのみで支払明細書が発行されないケースもよくあります。クレジットカードの利用履歴も、現在ではデジタル化が進んでいつでもネット上で確認できるようになったため、わざわざ書類の支払明細書を紙で発行しない場合も少なくありません。支払明細書は、あくまで確認不足によるトラブルを避け、取引の安全性を担保するために任意で発行される書類だといえます。
支払明細書と領収書・請求書の違い

支払明細書は、領収書や請求書といったその他の書類と混同されがちです。しかし、細かい点では違いがあるため、それぞれの特徴や役割を把握しておきましょう。
ここでは、支払明細書と領収書・請求書・支払い通知書との違いを解説します。
領収書との違い
支払明細書と領収書の顕著な違いは、「既に支払いが行われているかどうか」という点にあります。支払明細書を発行する段階では、まだ支払い自体は行われていません。支払義務が発生した際に、料金や取引の内訳を確認するのが支払明細書の目的です。
これに対して、領収書は主に支払いが行われた後に発行されます。支払いが実行されたことを証明する書類であり、「支払証明書」と言い換えることもできます。
領収書の基本や作成方法については以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。
関連記事:ビジネスマナーとしても重要!領収書 書き方について
請求書との違い
支払明細書と請求書も似て非なる書類です。支払明細書が確認のために発行されるのに対して、請求書はその名の通り料金を請求するために作成されます。両者の違いは支払いの要求があるかどうかであり、その中で確認のための書類である支払明細書には、相手方に支払いを督促するような効力はありません。
何らかの取引が行われる場合、まず取引内容の確認や金額の確認のために支払明細書が発行されます。それをもとに、支払いの期日や支払先が記載された請求書が作成され、取引の相手方に対して料金の支払いを要求します。その後、料金の支払いが実行されたら、それを証明するために領収書が発行されるというのが一般的な取引の流れです。
請求書の基本や作成方法については以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。
支払い通知書との違い
支払い通知書と支払明細書はいずれも支払いの内容を記載する書類ですが、発行対象に違いがあります。支払い通知書は企業間取引(BtoB)において使用されることが多いのに対して、支払明細書は取引先だけでなく、消費者や従業員など幅広い対象に対して発行されるのが特徴です。
ただし、支払い通知書と支払明細書に明確な定義はなく、企業によっては同じ意味で用いられているケースもあります。
支払い通知書の基本や記載項目などについては以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。
関連記事:支払通知書とは?役割や請求書との違いや電子化するメリット
金額や取引内容を確認!支払明細書の種類
支払明細書には、取引に関する履歴を記録したものや、給与や賞与を支払う際に発行するものなど、さまざまな種類があります。この段落では、支払明細書にどのような種類があるのか、その詳細をいくつかに分けて説明します。
給与や賞与、退職金に関する支払明細書
会社が従業員に給与や賞与を支払う際に支払明細書が発行されます。給与明細書や給与支払明細書と呼ばれることもありますが、形式的にはいずれも支払明細書と同じです。給与や賞与を支払う際に支払明細書を発行する目的は、支払いを受ける側が金額を誤認しないようにすることにあります。そのため、明細書には給与や賞与の計算過程までしっかり記載されている場合が多いです。
また、退職金も給与や賞与と同じように支払われる金額や計算過程の明示が求められる項目の金銭です。そのため、会社によっては、退職金を支払う際にも支払明細書が発行されるケースがあります。ただし、発行が義務付けられているわけではないため、発行の仕方に関しては会社規定に準ずる場合がほとんどです。退職金に関する支払明細書は、一般的に退職金支払明細書と呼ばれます。
業務委託に関する支払明細書
仕事の種類によっては、他社や個人に業務を委託する場合もあるでしょう。その際も支払証明書を発行するのが一般的です。支払う報酬の内訳や具体的な金額を記載することによって、業務委託にまつわる金銭的なトラブルを防ぐのが支払明細書の目的です。
配当金に関する支払明細書
企業が株主に対して配当金を支払う場合も、支払明細書を作成することがあります。一般的に「配当金支払明細書」と呼ばれるこの書類は、単なる明細書ではなく「支払通知書」としての機能を兼ねている場合があるため、その際は通常の支払明細書とは書式が変わってくるので注意が必要です。
公共料金の支払いに関する支払明細書
給与や退職金、業務委託に関する支払明細書は、主に支払う金額を確認するために発行されます。一方、クレジットカードの支払いや、水道料金・電気料金などの公共料金の支払いの際にも支払明細書が発行されます。この場合の支払明細書は、支払う金額を確認するというより、取引内容を確認するのが目的です。利用者に対して金額や履歴を明示することで、双方に勘違いが起こらないようにするために発行されます。
支払明細書の書き方

支払明細書は、作成が法的に義務付けられている書類ではありません。そのため、書式に関しても定められたものがなく、会社規定に従う場合やネット上のテンプレートを参考に作成する場合が多いです。ただ、書き方に決まりがないとはいえ、適当に書いても良いというわけではありません。支払明細書は取引の相手方に発行するものであるため、明細書を受け取る側が見やすいように作成するのが基本的なマナーです。それでは、支払明細書は具体的にどのように作成したら良いのでしょうか。以下、支払明細書の基本的な書き方について見ていきます。
1.書類名に「支払明細書」と記載
支払明細書を作成する際は、まず一目見ただけで支払明細書だということがわかるようにしておくことが大切です。支払明細書は領収書や請求書と書式が似ており、混同してしまうこともあります。そのため、まずは書類の一番上の部分に「支払明細書」と記載し、他の書類と間違えることがないように対策しておきましょう。書類名に「支払明細書」と書いておけば、他の書類と取り違える心配もなくなります。請求書に添付する際は、「請求書兼支払明細書」と記載して、書類の種類が明確にわかるようにしましょう。ちなみに、請求書兼支払明細書の場合は、支払い期日の記載も必要になります。
2.発行した日付を記載
次に、書類を作成または発行した日付を記入します。「支払明細書」と明記した右横などに記入するのが基本です。発行した日付をしっかり記載しておくことで、いつ発行した書類なのか明確になるので、月締めの取引をまとめる際などにも便利です。また、日付の記載は西暦ではなく和暦が基本なので覚えておくと良いでしょう。
3.相手方の企業名や個人名を記載
相手が法人の場合は、「○○株式会社様」などのように、会社名を記載します。個人名の場合でも、「○○様」などと敬称を付けて記載します。書類の発行先を明記することは、誰に対して作成したのかはっきりさせるためであり、発行先に対する最低限のマナーです。会社名や個人名の後の敬称は、「様」の他に「御中」などでも大丈夫です。ただし、「○○株式会社様御中」などのように、「様」と「御中」を同時に使うのは間違った敬語の使い方となるので気を付けましょう。
4.発行する側の企業名・個人名を記載
相手方の企業名・個人名を記載したら、次は発行する側の企業名・個人名を記載します。支払明細書には決められた書式がないとはいえ、この発行する側の企業名・個人名の記載がなければ、そもそも支払明細書として扱うことができなくなってしまいます。発行元の情報は企業名・個人名だけではなく、電話番号と担当者名もしっかり明記することが重要です。発行先が支払明細書について問い合わせたいとき、連絡先や担当者の氏名がわからないと困ってしまいます。そのため、発行元の企業名と同時に、電話番号やメールアドレスなどの連絡先も忘れずに記載しましょう。
5.会社印を捺印
発行元の情報を記載したら、企業名や住所と重なるように会社印を捺印します。会社印の捺印があることで、書類が正式に発行されたものであることの証明となり、より信頼に値する文書となります。ただ、書類ごとに捺印するのは面倒なので、電子印鑑を事前に準備しておくと捺印の手間が省けて非常に楽です。電子印鑑なら、相手先に対しても安心感を与えやすく、切手代を節約できるなど経費削減にもつながります。
6.取引内容を記載
取引内容とは、商品名やサービス名、納品した商品の個数、消費税を含まない単価などのことです。その他、数量と単価を合わせた金額や、税抜きの合計金額を表した小計、消費税、税込金額の合計など、取引内容に応じた項目をいくつか記載します。取引内容の内訳や最終的に支払う合計金額などは、一目でわかるように表で作成して明記するのが基本です。
以上に挙げたような項目を記載していれば、支払明細書として最低限の体裁が整っているといえるでしょう。ただ、記載項目に制限や強制はなく、記載したい項目を増やしても構いません。たとえば、書類をより管理しやすくするために、必要に応じて管理ナンバーを記載してみても良いでしょう。支払明細書を多く発行する際は、IDやコードを明記しておくことで管理しやすくなり、他の書類と取り違えてしまうなどのトラブルを防ぐことができます。
適格請求書として発行するために必要な項目
支払明細書は、一定の要件を満たすと「適格請求書(インボイス)」としても利用できます。適格請求書とはインボイス制度に対応した帳票であり、仕入税額控除の適用を受けるために取引先から発行を求められることがあります。
適格請求書として認められるためには、以下の項目の記載が必要です。
- 書類名(例:「支払明細書」など)
- 発行日
- 発行者の氏名または名称
- 適格請求書発行事業者の登録番号
- 取引先の氏名または名称(宛名)
- 取引年月日
- 取引内容(商品名やサービスの内容など)
- 適用税率
- 税抜金額
- 消費税額
- 税込金額
上記の項目が正しく記載されていれば、支払明細書でも適格請求書として扱うことが可能です。
支払明細書の保存方法
請求書や領収書、注文書などの書類を発行する際には、控えを作成し、適切に保管するよう法律で定められています。支払明細書については明確な保存期間が法律で定められているわけではありませんが、領収書と同様に重要な取引記録として扱われるケースもあるため、適切に保管しておきましょう。
ただし、支払明細書の用途によっては長期保管が不要な場合もあります。例えば、取引内容の確認など社内利用を目的とした明細書であれば、長期間の保存は不要です。
このように、支払明細書をどのような目的で作成・発行しているのかによって、保管の必要性や保存期間は変わってきます。保存が必要な場合は、紙であれば管理しやすくファイリングし、電子データであればハードディスクやクラウドに保存し、必要なときにすぐに取り出せる状態にしておくと安心です。
電子化も視野に!支払明細書を電子化するメリット

支払明細書を紙で管理している場合は、ぜひ電子化も検討してみてください。支払明細書を電子化すると、業務効率化やコスト削減、トラブル防止など、さまざまなメリットがあります。
以下で、それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
業務効率化につながる
紙で支払明細書を発行する場合、作成した書類を印刷して押印し、封筒に入れて発送しなければなりません。発行枚数が多いほど作業にかかる手間や時間が増え、担当者の大きな負担になっている企業も多いでしょう。
支払明細書を電子化すれば上記のような作業は不要で、パソコン上の作業だけで相手先に送付できます。また、案件を管理する業務システムと支払明細書の発行システムを連携させれば、登録された案件情報を元に自動で支払明細書を発行できるケースもあり、業務の大幅な効率化が可能です。
コストを削減できる
支払明細書は、手書きで作成しても問題ありませんが、手で書くとなると手間がかかるだけではなく、紙代などもかかってしまい、コスト面でもデメリットがあります。一方、電子化してしまえば支払明細書の印刷代やインク代なども節約できるため、コスト削減が可能になる点も大きなメリットです。さらに、郵送費や封筒代などの発送コストも削減できるため、全体的なコスト削減効果が期待できます。
テレワークの推進につながる
支払明細書を電子化してパソコン上で作成から送付までできるようになると、テレワークを推進しやすくなるというメリットもあります。紙で発行する場合は印刷や押印といった工程が必要で、オフィスでなければ対応が難しく、テレワーク推進の障壁になるケースも少なくありません。
支払明細書をはじめとした各種帳票を電子化することで、場所にとらわれずに業務を進められる体制が整い、柔軟な働き方の実現にもつながります。テレワークを本格的に進めたいと考えている企業は、書類の電子化を優先的に検討してみてください。
トラブルの事前防止につながる
明細書の管理をデジタル化すると、管理作業の簡略化によって明細書の発送漏れといったトラブルの防止につながります。送付履歴の確認や再発行の手続きも簡単に行えるようになり、取引先からの問い合わせにも迅速かつ正確に対応できるようになるでしょう。
支払いや請求に関する業務で不手際やミスがあると、取引先に迷惑をかけ、信頼関係に悪影響を与える可能性があります。このような事態を防ぐためにも、支払明細書の電子化は有効な手段です。
取引先からの信頼を得やすくなる
帳票の電子化は時代の流れでもあります。いち早く電子化すれば、むしろ時代を先取りする企業と見られ、取引先などからも信頼を得やすくなるかもしれないなど、大きなメリットのある取り組みだといえます。
さらに、環境への配慮や業務効率化を重視する企業としての評価も高まり、ビジネスチャンスの拡大にもつながるかもしれません。
支払明細書を電子化した事例
ここでは、実際に支払明細書を電子化した企業の事例をご紹介します。
株式会社東急コミュニティー
マンションや商業施設といった幅広い不動産の管理運営を手がける株式会社東急コミュニティーでは、協力会社への支払明細書の発行業務で月間6〜7万件の処理が発生します。従来は紙による発行・送付を行っていたため、月末には丸1日かかることもあり、業務負担の大きさが課題となっていました。
こうした課題を解消するために、同社では明細データをアップロードするだけで送信できるツール「ナビエクスプレス」を導入しました。その結果、支払明細書の自動配信が可能となり、作業時間の短縮と業務負担の軽減を実現しています。また、協力会社の多くがWeb上で明細を確認する方式へと移行したことで、支払内容に関する問い合わせも減少し、業務全体の効率化が進んでいます。
国立研究開発法人 理化学研究所
国立研究開発法人 理化学研究所では、全国7拠点で約400社の取引先に対して毎月支払明細書を発行・送付しており、紙での処理が大きな業務負担となっていました。加えて、在宅勤務の導入も進めていた同研究所では、紙の明細書発行がテレワークの妨げになっているという課題も感じていました。
そこで「ナビエクスプレス」を導入し、支払明細書の電子化を実現しています。現在では各事業所で明細データを確認してアップロードするだけでPDFが自動作成・配信される仕組みとなり、これまで1日かかっていた作業が約2時間で完了するようになりました。
すべての処理がオンラインで完結できるようになったことで、業務の効率化に加えてテレワークの推進にもつながり、働きやすい環境の整備が進んでいます。
支払明細書を電子化して業務効率化をすすめよう
支払明細書は取引の際に作成が義務付けられている書類ではないものの、取引内容や金額を確認するという意味で、ビジネスシーンにおいて重要な位置づけにあります。毎月大量の支払明細書を発行している企業も多いでしょう。
効率的に支払明細書を発行・送付するには、電子化が効果的です。特に、発行から送付まで自動で行えるツールを活用すれば、業務負荷を大幅に軽減できます。
NTTコム オンラインが提供する「ナビエクスプレス」は、支払明細書をはじめ商取引の全帳票を電子化して即日配信できるツールです。現在使用中の明細書のデザインを変えずに配信が可能で、現行の基幹システムから出力されるデータ形式に対応できます。帳票の電子化を検討している方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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