2023/12/14

帳票、書類の電子化

2021年改正の人材派遣契約の電子化とは?電子化のメリットや注意点を解説

人材派遣をする際の文書には、派遣元企業と派遣先企業の間で取り交わされる個別契約書(労働者派遣契約書)などがあります。従来、労働者派遣契約は書面によって交わされてきました。しかし、法律の改正があり2021年から、電磁的記録による作成が認められるようになりました。「電子契約に切り替えたほうがいいのだろうか」「電子化については理解しているが、実際にどのようなメリットがあるのだろう」など、疑問を持つ方もいるかもしれません。そこで、人材派遣契約に関する電子化について、根拠となる法律やメリット、導入の際のポイントについて解説します。

この記事の内容
  • e-文書法と連動して、2021年に労働者派遣法が改正されたことで、人材派遣契約の電子化が認められた
  • 電子化が可能となったことで、紙へのプリントアウトや郵送などにかかっていたコストが削減できるように
  • 人材派遣契約の保管も容易になった
  • ただし電子契約書のサインには本人証明が必要などの注意点を理解しておくことが必要
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2021年の改正により電子化に対応した労働者派遣法とは?

労働者派遣法は正式名称を「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」といい、1986年に施行されました。

制定の目的は第一条にて以下の記載があります。

「労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の保護等を図り、もつて派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする。」

つまり、派遣労働者の権利を守り、労働者派遣事業が適切に行われることが目的です。企業は労働者派遣法の遵守が必要であり、違反をすると行政処分となる可能性があります。

労働者派遣法では派遣労働者を受け入れる期間なども定められているほか、契約に関する記載もあり、書面で必要事項を記載することが定められていました。

労働者派遣法は今までも複数回、改正が行われてきましたが、2021年の改正により、人材派遣契約の電子化が認められるようになりました。

引用:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

書類や帳簿の電子化について詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
コロナ禍で注目を集める電子化のメリットや方法とは

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人材派遣契約の電子化とは?

人材派遣は人材を派遣する派遣元企業と、人材を受け入れる派遣先企業、そして人材がそれぞれに契約を行います。ここでは、企業間で行われる労働者派遣契約について、2021年の改正によって認められた電子化について解説します。

人材派遣契約は書面で作成する必要があった

通常、人材派遣に必要な労働者派遣契約は、派遣元の担当者が書面にし、派遣先企業の担当者が郵送または直接会って受け取っていました。人材派遣に関する契約書は書面で残す必要があるというのは、労働者派遣法 第26条および労働者派遣法施行規則 第21条3項が根拠となっています。

労働者派遣法(契約の内容等)
第二十六条 労働者派遣契約(当事者の一方が相手方に対し労働者派遣をすることを約する契約をいう。以下同じ。)の当事者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者派遣契約の締結に際し、次に掲げる事項を定めるとともに、その内容の差異に応じて派遣労働者の人数を定めなければならない。

引用:e-Gov|労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第二十六条

労働者派遣法施行規則 第二十一条
3 労働者派遣契約の当事者は、当該労働者派遣契約の締結に際し法第二十六条第一項の規定により定めた事項を、書面に記載しておかなければならない。

引用:e-Gov|労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則 第二十一条

労働派遣法第26条においては、労働者派遣契約について、詳しく締結に必要な項目を定め、労働者派遣法施行規則 第21条3項では、それらを「書面に記載しておかなければならない」としています。「書面で残す必要がある」とされていたことから、これまで紙の文書をもって契約が行われてきました。

しかし、労働者派遣法施行規則 第21条3項が改正されたことで、現在では電子化が可能です。以下、派遣契約書類の電子化について説明します。

改正により人材派遣契約の電子化が可能に

人材派遣で取り交わされる個別契約は、締結されている期間が短いケースがとても多く、契約締結や更新の回数が増える傾向にありました。何度も契約締結が繰り返されることで、事務の負担が大きくなっていたのです。時間やコストのロスも多いことから、以前より電子化を希望する声は多くあったと言います。

そこで、2021年に労働者派遣法および、民間が取り交わす文書の電磁書類について定めたe-文書省令の改正により、人材派遣契約の電子化が可能となりました。

e-文書法・e-文書省令とは?

労働派遣法において労働者派遣契約の電子化が可能となったのは、e-文書省令と関連付けられます。

改正によってe-文書省令に、「21条第3項の規定による書面の記載」が追加されたことで、労働者派遣契約の電子化も可能になりました。e-文書省令とはe-文書法の施行に伴い、厚生労働省が制定したものです。

e-文書法とは、一つの法律を指すのではなく「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」と「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」を指しています。

民間業者が行う商法や税法で定められている文書について、電子化での作成、保存、閲覧を可能としている法律です。

また、e-文書法に基づき、厚生労働省所管の文書について、電子保存の範囲や要件を定めたのが、通常、e-文書省令と言われる「厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令」です。

参考:e-Gov|厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令(平成十七年厚生労働省令第四十四号)

人材派遣契約の電子化(電子契約システム導入)によるメリット

多くの企業では人材派遣契約の電子化をする際は、電子契約システムを導入しています。電子契約システムは人材派遣契約に特化したシステムのため、短時間で簡単に作成ができ、申請や契約、保管も手軽にできます。ここからは、人材派遣契約の電子化がもたらすメリットについて解説します。

コスト削減

契約書を電子化すると、紙代やインク代、配送費用や人件費など多くのコストが削減できます。

今までは派遣元企業の担当者は紙で契約書を作成するか、パソコン上で作成したものをプリントアウトし、派遣先企業などに郵送する、もしくは直接合って渡すのが一般的でした。しかし、電子化が進められると、派遣元はシステム上の契約書に必要事項を記入し、そのままメールかクラウドを使って派遣先企業に送れます。もちろん、プリントアウトの必要はなく、封筒代も切手代もかかりません。

契約書管理の負担減

紙で契約書を作成する場合、保管庫や専用の棚を用意する必要がありました。人材派遣の契約期間は短いため、更新するごとに何度も契約書を作成する必要があり、控えを保管するだけでも、負担は大きかったと言えます。

電子化を実現すると、契約書はサーバーに保管できるため、保管スペースをとらないほか、検索性も向上するため管理の手間が省けます。

契約業務の効率化

クラウド上でやり取りができるため、リードタイムが削減でき業務効率化が実現できます。

導入する電子契約システムによって多少、できることが変わるものの、基本的には契約書の作成や申請、契約などにかかっていた時間が大幅に短縮できます。

また、今までは派遣元と派遣先の担当者が互いの都合や時間をすり合わせてやり取りをしなければなりませんでしたが、クラウド上であれば派遣元も派遣先も都合の良いタイミングで契約書の作成・確認・返送が可能です。

契約業務の負担が減ったことで、空いた時間をコア業務に充てられます。

テレワークへの対応

人材派遣契約書を電子化すれば、どこでも契約の締結が可能になります。郵送したり手渡しをしたりする必要がありません。

これまで人材派遣会社の社員は取引先を回ったり、自宅でテレワークをしたりしていても、書面の作成と郵送のためにわざわざ出社しなければなりませんでした。しかし、電子化によって出社の必要はなくなり、担当者のテレワークも可能です。

労働者派遣契約の電子化は企業にとってだけではなく、働く社員の従業員満足度も向上させ、業務の質向上も期待できます。

書類を電子化するメリットや電子化の進め方についてはこちらでも詳しく紹介しています。
書類の電子化に向けての課題、メリットや電子化のやり方・手順を徹底解説

人材派遣契約を電子化する際の注意点

人材派遣においては、派遣元と派遣先の企業間で取り交わされる労働者派遣契約のほか、派遣元と労働者の間で取り交わされる雇用契約などもあります。どちらも今、電子化が進んでいますが、電子化する際には法律の遵守が必要です。例えば、以下のような点に注意をしてください。

  • 相手企業も電子化に対応しているかをあらかじめ確認
  • 契約書サインには本人証明が必要(電子署名及び認証業務に関する法律第三条)
  • 就業条件明示書類の電子化には相手の希望(同意)が必要(労働基準法施行規則第5条第4項)
  • e-文書法における保存要件の遵守

参考:e-Gov|電子署名及び認証業務に関する法律 第三条
参考:e-Gov|労働基準法施行規則 第五条 第四項

自社に合う電子契約システムの導入が重要

電子契約システムにはさまざまな種類があるため、自社の目的に合うものを導入する必要があります。

例えば、契約書の作成に役立つテンプレート機能や関係者への共有に便利なリンク機能、対面での契約時にも活用できる対面署名機能などを備えた電子契約システムもあります。

無料のサービスもありますが、セキュリティや機能性を考えた場合には有料サービスの利用がおすすめです。

人材派遣契約は電子化により効率化できる

人材派遣においては企業間で契約書をやり取りする必要がありますが、以前は書面として作成し、郵送で送るなどの対応が必要でした。しかし2021年に法律の改正があり、人材派遣契約の電子化が可能となりました。電子化はコストや工数の削減を実現し、企業にとって大きなメリットをもたらします。

一方、法律を遵守しなければならず、導入について難しさを感じている企業の担当者も多いかもしれません。しかし、電子契約システムを導入すれば、思いのほか簡単に電子化を実現できます。人材派遣契約のみならず、今後も電子化は推進される見通しなので早い内に対応しておくことをおすすめします。

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