2026/07/15

ユーザーが語る実践のリアルと、Spotfire AIが拓く未来——「特別セミナー&交流会2026」開催レポート

はじめに

データ分析の世界には、教科書には載っていない知恵が数多くあります。

実際の製造現場で、どのような課題や問題に直面し、どのようにデータと向き合い、どうやって突破口を見つけたのか。同じツールを活用していても、現場ごとに磨かれる工夫は異なります。そこには、自社だけでは気づけなかった発見が詰まっています。

そうした一社一社のノンフィクションな実践知を持ち寄り、共有し、親睦を深める場として、今回で3年目を迎えたSpotfireユーザー会。今年はユーザー企業様による事例登壇が2社に増え、これまでにも増して見応えのある内容となりました。

本記事では、当日の様子を振り返りながら、会場の熱気や参加者の声をお届けします。

イベント概要

イベント名 Spotfireユーザー様向け特別セミナー&交流会2026
開催日 2026年6月18日(木)
会場 NTTドコモビジネスX株式会社 本社
セミナールーム
参加者数(企業数) 71名(35社)

プログラムハイライト

プログラム 講演タイトル 登壇者
基調講演 Spotfire for Semiconductors Brad Hopper 氏
デモ① Spotfire AI demo Jingchuan Lin 氏
デモ② Sputter Deposition Advanced Process Control (APC) Caleb Jang 氏
ユーザー事例登壇① データレビューへのSpotfire活用 旭化成エレクトロニクス株式会社 緒方 様
ユーザー事例登壇② HDDの歩留まり改善品質向上へのSpotfire活用 東芝デバイス&ストレージ株式会社 高見 様

開発元が語る、進化し続けるSpotfireの最前線

セミナーの前半では、開発元であるCloud Software Group, Inc.(以下、CSG社)のSpotfireビジネスユニットによる3つの技術セッションをお届けしました。

①基調講演: Spotfire for Semiconductors/Brad Hopper 氏

最初のセッションでは、Vice President of Vertical MarketsであるBrad Hopper氏が、半導体・ハイテク製造などの産業に特化した新製品「Spotfire Industry Pro™」を紹介しました。

業界ネイティブな多層ウェハマップ機能を使い、プロセス・欠陥・電気テストといった異なる領域のデータをシームレスに重ね合わせる。それにより空間パターンを分析し、歩留まり低下の根本原因を迅速に特定する——これは、半導体製造現場が長年抱えてきた「原因究明の時間がかかりすぎる」という課題に、直接応える内容でした。

さらに、生成AIやAIエージェントと連携しながら現場のエキスパートのデータ分析や意思決定を支援する新たなAI機能、データを移動させることなくDatabricks等のデータプラットフォーム上で大規模データを高速に処理する「プッシュ・コンピュート(Push-Compute)」、サンプリング周期の異なるセンサーデータを自動で整列・補間する時系列分析機能など、今後のロードマップも示されました。

膨大かつ複雑な製造データを、いかに短時間で原因究明や改善につなげるか。その課題に対し、Spotfireがより実践的な支援へと進化していることが示されたセッションでした。

デモ①: Spotfire AI demo/Jingchuan Lin 氏

続くPrincipal Data ScientistであるJingchuan Lin氏のセッションでは、Spotfireの最新のAI活用として3つのデモが披露されました。

  • 対話形式でグラフの生成・修正からコード生成までを実現する、Spotfire Copilotの最新バージョン
  • ボタン一つで不良パターンを自律的に検出・特定する、エージェント駆動型のワークフロー
  • 歩留まり低下の原因をAIが自動で推定し、次の一手まで提案する仕組み

3つのデモを通じて示されたのは、AIがすべての意思決定を代行するのではなく、人の知見を起点に、分析や判断を支援していくという考え方でした。AIが原因候補や次の一手を提示し、現場の専門家が自らの知見に基づいて検証・判断する。そうした「Expert in the loop」の考え方が、これからの分析スタイルとして提示されました。Spotfireが示していたのは、AIが現場の専門家に取って代わる未来ではなく、現場の専門家の知見を信じ、その判断をより強力に支援する未来でした。

デモ②:Sputter Deposition Advanced Process Control (APC)/Caleb Jang 氏

3つ目のセッションでは、Lead Solution EngineerであるCaleb Jang氏が、問題が起きてから対応する「リアクティブな製造」から、予測に基づいて先回りで制御する「プロアクティブな運用」への変革をテーマに講演しました。

半導体のスパッタリング工程では、ターゲット材の摩耗に伴って成膜条件が変化し、膜厚などの特性ばらつきが歩留まり低下につながることがあります。セッションでは、こうした製造現場で起こりうる課題を背景に、Spotfire Copilotへの自然言語での指示や、ワンクリックで実行できる時系列予測により、専門的なモデリング知識がなくても、過去のプロセスデータから将来の変動を予測するモデルを構築できる様子が紹介されました。

これにより、加工前に仕上がりを予測・シミュレーションし、最適なプロセス条件を先回りで算出するAPC(Advanced Process Control/高度プロセス制御) の考え方とともに、その結果品質のばらつきを抑え、歩留まりを大幅に向上できる——という比較結果も共有されました。

異常発生後の対応にとどまらず、予兆を捉えて事前にプロセス条件へ反映する。 APCの考え方をSpotfire Copilotや時系列予測と組み合わせることで、より実践的に活用できる可能性が示されたセッションでした。

ユーザー登壇――現場のノンフィクションが語られた時間

セミナーの後半は、ユーザー企業様による事例登壇です。今年は2社が登壇し、それぞれの現場で積み上げてきた知見を語っていただきました。

ユーザー事例登壇①:データレビューへのSpotfire活用/旭化成エレクトロニクス株式会社 緒方 様

半導体を主としたエレクトロニクス製品メーカーである同社では、製品開発時における歩留まりやCpkの確認、検査規格の決定、半導体検査データの解析などにSpotfireをご活用されています。また、製造側ではすでに自動レポートの仕組みが整っている一方で、さらに深い解析が必要な場合にはSpotfireを活用しているといいます。製品開発時には、さまざまなデータを可視化することで、データの見落としや解釈の相違を防ぎ、再報告の削減や、次のアクションまでのスピード向上につなげています。

紹介された活用ケースとそのテクニックは3つです。

  1. 検査結果等の分布状態の可視化と数値化:棒グラフによる分布可視化と統計処理
  2. ウェハマップと分布図の可視化連携による原因推定:散布図と棒グラフの連携
  3. 製造装置等の有意差分析と可視化:Data RelationshipsとBox Plotの連携

特に会場の反応が大きかったのは、Spotfireで分析した結果を会議で見せたところ、ベテラン社員が一目で「どの工程に異常があるか」を見抜いたというエピソードです。データを可視化することが、ベテランの経験知を引き出すきっかけにもなる——この話には、来場者からは感心と共感の声が上がっていました。

また、緒方様が触れた「前処理が一番の課題」という話も、多くの参加者の共感を呼びました。データ分析でつまずきやすいポイントは、どの会社にも共通しています。「自社だけが苦労しているわけではない」と知れることも、この日の収穫の一つだったようです。

ユーザー事例登壇②:HDDの歩留まり改善品質向上へのSpotfire活用/東芝デバイス&ストレージ株式会社 高見 様

1967年からHDDの製造を続けてきた同社では、近年のAIブームを背景に、これまで以上に高容量・低消費電力のHDDが求められています。技術的に難しい領域に踏み込む中で、歩留まりと品質の向上が大きな課題になっているといいます。

紹介された取り組みは5つです。

  1. 検査機のポートマップ
  2. 欠陥の見える化
  3. 特性データのトレンド・相関のテンプレート化
  4. 歩留まり低下原因の調査
  5. 品質改善

特に来場者の関心を集めたのは、大量かつ複雑な製造工程に紐づくデータテーブルをSpotfire上にインポートする際の工夫です。大量データの読込み時間を削減するために、過去の確定データは「Spotfire内部に保持」して読込処理を軽量化し、日々の最新データは「データベースからSQLで自動取得」して組み合わせる——この現場の実践知には、多くの参加者が深く頷いていました。

さらに、ハードディスクの欠陥見える化の事例内で紹介された、ディスクの円形形状を散布図上で再現するために使用された計算式を「自社のデータでも実際に試してみたい」という参加者も多く、会場からの質問も上がっていました。 セッションで聞いた知見がその場の理解で終わらず、各社の現場に持ち帰って実践いただく——そんな確かな手応えを感じさせる一幕となりました。

両社の登壇に共通していたのは、決して「綺麗に整った成功事例」だけではなく、現場の最前線で試行錯誤しながら積み上げてきた、生々しいリアルな実践知だったという点です。

会議の場にSpotfireを直接持ち込み、侃々諤々の議論を交わしながらその場でデータを動かして根本原因を突き止めていく——。こうした現場起点のスタイル一つひとつに、実務で磨かれてきた圧倒的な説得力がありました。

同じツールを手にしながらも、企業の文化や直面する課題によって、活用の切り口がまったく違う。この「違い」を間近で聞きながら、自社へのヒントを得られることこそ、ユーザー会というコミュニティならではの代えがたい価値だと言えます。

技術展示に人が集まった、もうひとつの見どころ

特別セミナー終了後は、Spotfire Copilot、Push Computeを体感できる技術展示コーナーを設けました。交流会までの合間に多くの参加者が集まり、セッションで紹介された高度な機能を実際に動く画面で確認できる機会とあって、人気スポットとなっていました。

実際のアンケートでも「Spotfire AI Demo」「Copilotとの連携」といったキーワードが多数挙げられており、口頭の説明だけでは伝わりにくい「自然言語によりAIエージェントの自律的な振る舞い」を、自分の目で確かめたいという関心の高さが現れていたように思います。

交流会で生まれた、もうひとつの学び

セミナー終了後には、軽食とお酒を用意し、ユーザー同士の交流の場を設けました。ここでもユーザー会らしい光景が広がっていました。登壇者と参加者、あるいは参加者同士が、グラスを片手にセッションでは語りつくせなかった裏側の工夫や、自社の課題について語り合う時間となっていたようです。

回収されたアンケートにも「同業他社のデータの集め方が参考になった」「同じような使い方をしている会社があると知れて励みになった」といった声も寄せられていました。セッションで得た知識が、交流会での対話によってさらに深められていく流れが自然にできていたことがわかります。

参加者の9割が製造業という、業種の重なりが大きい今回のメンバー構成も、この空気を後押ししていたのかもしれません。普段は競合関係にある企業同士でも、Spotfireという共通言語を通すことで、互いの課題や工夫をオープンにすることができます。これこそがコミュニティという「場」ならではの価値です。

「自社だけが苦労しているわけではない」と知ること。それ自体が、参加者にとって大きな収穫になっていたのではないでしょうか。普段の業務では接点のない他社のエンジニアと、共通言語を通じて本音で語り合う——これこそが、単なるセミナーだけでは得られないユーザー会が提供できる最大の価値です。

Spotfireが育てる、もうひとつの価値

今回のユーザー会を振り返ると、開発元CSG社が提示したAIを軸にした未来のビジョン、ユーザー企業が明かした泥臭くもリアルな実践知、活況だった技術展示、そして交流会での本音のやり取りという、「4つの異なる学びの形」が一つの会場に同時に存在していたことが見えてきます。

参加者の満足度や数多くのアンケートコメントが示すように、Spotfireはすでに多くのものづくりの最前線で、片時も欠かせないツールとして深く根づいています。
しかしこの日生まれていたのは、ツールの便利さだけではありません。同じ課題に向き合う仲間がいると知ること、自分の知らない使い方に触れて視野を広げること、そして次に試してみたいアイデアを持って帰ること——それこそが、ユーザー会というコミュニティが持つ本当の価値だといえるでしょう。

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