
2026/03/17
半導体に代表されるハイテク製造業において、歩留まり向上や品質改善、プロセス最適化といった製造現場における問題解決を、現場自らが「自走」するためのデータ分析プラットフォームは、競争力を左右する重要な鍵となっています。その有力な選択肢であるSpotfireが、約2年ぶりとなる長期サポート版「14.6 LTS」をリリースし、同時に2026年からの国内向け新ライセンス体系を発表しました。
本記事では、2026年1月に実施したセミナーで解説したSpotfire 14.6 LTSの新機能と、2026年1月から適用される新ライセンス体系について改めてご紹介します。
2026年1月より、日本国内においてSpotfireは新しいライセンス体系が導入されています。今回の刷新により、製品構成は全部で5つのライセンスへと大幅に簡素化されました。特に、その1つであるSpotfire Industry Pro(旧Spotfire Data Science)は、複雑な問題解決が求められる産業へのソリューション強化に軸足を置いた戦略を強く印象付ける新製品であり、半導体産業やエネルギー業界向けに特化した業界特有の機能が新たに追加されているのが特徴です。
| Spotfire Analytics | インタラクティブな視覚化と高度な分析機能を提供します(従来のSpotfire Analystライセンスに相当)。 |
|---|---|
| Spotfire Industry Pro(旧Spotfire Data Science) | 「Spotfire Analytics」の機能に加え、業界特有のニーズへの対応、機械学習やモデリングなどのデータサイエンス機能を提供します。 |
| Spotfire Enterprise | 組織全体での分析の自動化、ガバナンス、共有を可能にします。 |
| Spotfire Enterprise Advanced Data Science | 異なるデータソースを統合・保護するためのデータ仮想化機能を提供します(Spotfire Enterprise のアドオン)。 |
| Spotfire Enterprise Data Streams | リアルタイムのデータストリーミングを Spotfire®環境に取り込む機能を提供します(Spotfire Enterprise のアドオン)。 |
表1:新しいライセンス体系
新たなライセンス体系の主要なライセンスは、以下の3つに集約されます。
Spotfire Analyticsは、従来のSpotfire AnalystやBusiness Authorライセンスに相当するライセンスです。これまで通りに、インタラクティブな視覚化と高度な分析機能を提供します。
新製品であるSpotfire Industry Proは、「Spotfire Analytics」の機能に加え、個別業界特有のニーズへの対応、さらに機械学習やモデリングなどのデータサイエンス機能を提供します。すでにv14.6でリリースされている機能に加え、2026年はインパクトのある様々な産業特化機能、統計&ML機能、AI強化、ビッグデータ対応の機能開発が進んでおり、是非トライアルをお勧めしたい製品となっております。もし、未来のSpotfireに興味がある方は、個別にご連絡いただければと思います。
最後に、Spotfire Enterpriseは、組織全体での分析の自動化、ガバナンス、共有を可能にします。従来のSpotfire Serverライセンスや関連サーバーコンポーネントのおける各サービスに相当します。
Spotfire v14.6LTSは、一世代前の14.0LTS以降、110以上の新機能と90件以上のユーザー要望対応を実現しています。その中から、目玉となる機能強化・改善ポイントについて、Analyticsライセンス、Industry Proライセンス、Enterpriseライセンスに分けて解説いたしました。簡単に振り返ってみたいと思います。
Spotfire Analyticsでは、まず製造業のお客様がよく利用されるボックスプロットの機能が大きく強化されました。中でも 「Y 軸の複数スケール対応」は、トレリス利用時にスケールがつぶれてしまう課題を解消できる点として、多くの要望が寄せられていた改善項目です。
また、ビジュアライゼーション・プロパティパネルという新しいグラフ設定・編集用パネルが導入され、より効率的に分析を進めることができるようになりました。例えば複数のグラフに対して、同時に同じ色設定を反映させることが可能です。
さらに、全体の方向性として、WindowsとWebのユーザー体験が統一される方向に開発が進んでいます。具体的には、Windows/Web双方で追加・編集可能なグラフが共通化されつつあるほか、外部接続についても、Webから利用できるデータソースが拡充されています。
Action Mod と呼ばれる新たな概念も導入されました。Visualization Mod というカスタムビジュアライゼーションの仕組みはご存じの方も多いと思いますが、これはまさにその「アクション版」です。Spotfire 上のさまざまな操作(たとえば Python データ関数の実行、データの再ロード、グラフの色の変更など)を、1つの Mod という軽量なモジュールとして部品化できます。作成したModはライブラリで共有・再利用できるため、従来のようにIronPythonスクリプトを個別にコピーして組み込む必要はなくなり、再利用性と保守性が大きく向上します。
また、Action Modを使うことでGuided analytics(誘導型分析)をも実現できます。例えば、
といったように、分析手順そのものを“ボタン化”でき、Spotfire をまさにアクションできる分析アプリへ進化させることができます。
Spotfire Industry Proでは、前述のAnalyticsの機能に加え、ハイテク製造業をはじめとする特定の産業領域における複雑な課題解決を強力に支援するための拡張機能を豊富に用意しています。
目玉の1つがIndustry Pro Add-Onsです。「アドオンブラウザ」を通じて、製造業やエネルギー業界向けのVisualization ModやAction Modを追加できる仕組みで、対象ライセンスのユーザーのみがアクセスでき、dxpファイルに組み込んで利用できます。どのようなModが用意されているかは、下記のSpotfire Communityサイト上で公開されています。
https://community.spotfire.com/files/category/7-visualizations/
ここで「 Industry Pro 」とタグが付いているModは、同ライセンスのユーザのみが利用可能です。例えば、半導体製造で不可欠な「ウェハマップの可視化」や「不良のウェハ面内領域解析」用のAction Modが公開されています。
これらの大きな特長の1つは、Spotfire 本体をバージョンアップしなくても、新しい可視化やアクションが順次追加されていく点です。さらに、各Spotfireバージョンとの互換性は製品側で管理されているため、ユーザーは安心して最新の機能を使い続けることができます。また、新たなModが継続的に追加されていく点も大きな魅力で、業界ニーズやユースケースの広がりに合わせて機能が進化し続ける仕組みとなっています。
Spotfire Industry Proでは、いくつかのデータ関数が組み込まれている点も特徴です。時系列解析や地理空間分析、欠損値分析など、あらかじめパッケージ化された業界横断の高度な分析を支援します。
そして最大の目玉が、ビジュアル上でのさらなる洞察獲得を支援する新機能Reference Elementsです。ビジュアライゼーション上に、ベンチマークや許容範囲、管理限界線、目標値といった基準となる指標を、ライン・マーカー・バンドとして重ね合わせることができ、データの解釈を直感的に支援します。
この機能を使って開発したダッシュボードは、閲覧する多くのユーザーがリッチな可視化体験を享受できます。つまり、ぜひダッシュボード開発を担うユーザにご活用いただきたい機能です。
Spotfire Industry Proについては、2026年に多くの目玉機能が投入される予定です。乞うご期待ください。
Automation Servicesでは、スケジューリングがこれまでより柔軟に設定できるようになりました。 毎時・毎日・毎週・毎月・複数月ごとなど、目的に応じた細かなスケジュール設定が可能です。さらに、ループ処理とスクリプト処理に対応し、「ForEach〜ForEachEnd」のタスク間で繰り返し処理を実行でき、その中でIronPythonスクリプトを動かすこともできます。これにより、例えばパーソナライズされたレポート配布が可能になります。フィルターを自動で切り替え、各ユーザーのメールアドレスへレポートを順番に送信する、といった処理を自動化できます。
モニタリング機能も強化されています。システムのピーク負荷時においても、スケジュール更新や Information Servicesジョブなどのステータスおよび進捗状況を正確に把握できるよう、新しいUIが導入されました。さらに、スケジュール更新や自動化サービスのジョブ状態が変化した際(例:失敗時など)に、メールやHTTP通知を自動送信する機能も追加されています。これにより、異常の早期検知と迅速な対応が可能となり、運用管理の負荷を大幅に軽減します。
また、Spotfireの機能ではありませんが、弊社が提供するNTT CPaaSと連携し、SMSで関係者に通知するサービスも展開しています。Spotfireシステムの異常時だけでなく、工程や品質の異常時にも“確実に届く”ラストワンマイルを提供できる点が特長です。ミッションクリティカルな領域におけるアラート基盤として、ぜひご検討いただければと思います。
Spotfire は、数ある分析ツールの中でも、そのユニークさをさらに高め、より業界に特化した問題解決を支えるツールへと進化しています。こうした進化にあたっては、実際の利用ユーザーに寄り添った製品開発が不可欠であることから、開発元でもお客様と次世代機能を共同設計していこうという動きが進んでいます。ぜひ、このような共創プロジェクトにご関心をお持ちのユーザー様がいらっしゃいましたら、一度お話をさせていただけますと幸いです。
執筆者
NTTドコモビジネスX株式会社
データサイエンティスト
石田 佳之
NTTコミュニケーションズ(現:NTTドコモビジネス)に入社以来、データ分析・AI領域の業務に従事。ソーシャルメディアを活用した大手旅行会社・通信会社の評判分析や、訪日外国人の動向分析を担当した後、大規模データ分散処理基盤の構築・開発や機械学習プロジェクトにリーダーとして参画。
現在は、「Spotfire」を中心とした分析・可視化製品を担うデータサイエンティストチームの責任者として、製造業を中心とした企業のデータ活用を推進し、カスタマーサクセス活動および統計解析・機械学習を活用した高度分析プロジェクトを主導している。