データガバナンス

データガバナンスとは

データガバナンスとは、データを効果的に取得することから、管理し活用するまでの全体に関わる活動であり、その目的は、企業におけるデータの価値を最大限に発揮することです。データガバナンスは、誰がいつどのデータを使用できるかを制御することで、企業全体にわたってビジネスデータの品質とセキュリティを担保します。データマネジメントとデータガバナンスは同じ意味で使われることが多いのですが、これは誤りです。データマネジメントは、データの管理の技術的な側面であり、データガバナンスは、誰がどのデータをいつ使用できるかなど、データの管理の業務面・運用面を意味します。

「企業にとって最も重要な資産はデータである」この有名な言葉は、データの価値を明確に示しています。デジタライゼーションの進展に伴い、あらゆる企業が膨大な量のデータにアクセスできるようになりました。この膨大なデータを合理的に活用することが、企業の成功のカギとなります。データを合理的に活用するには、データが高品質・高信頼でなくてはなりません。まさにそれがデータガバナンスの存在理由です。

データガバナンス戦略は、ビッグデータを扱うすべての企業にとって必要不可欠なものです。そもそも共通プロセスの整合性と責任分担の明確化は、企業にとって役立つものだということです。また、企業が慎重に管理する必要があるデータを明らかにすることによって、コンプライアンス遵守のために必要な事項が必然的に導き出せるようになります。

データガバナンス戦略が成功し、フレームワークが構築されることで、企業はより優れた意思決定に繋がる高品質のデータを得ることができます。

データガバナンスを実際に導入するに当たっては、さまざまなタスクがあります。

  • データの価値と、品質基準の定義
  • データの取得、クレンジング、保存、検索の方法の定義
  • データマネジメントのための役割分担と責任の明確化
  • データの使用可否に関するポリシーとワークフローの作成
  • データ運用全般に対する継続的なモニタリングおよびフィードバックの収集

データガバナンスは、あらゆる業種に適用されます。例えば、eコマース企業は、膨大な量の顧客データを所有しており、、購入履歴、顧客の嗜好、レビューなどが含まれます。適切なデータガバナンスのシステムを導入することで、これらの価値ある情報の収集、保存、検索を標準化することができ、さまざまな部署がこのデータを活用し、より優れた意思決定を行うことができます。例えば、マーケティング部門は、このデータを使って、高度にパーソナライズされた広告を作成し、顧客に商品をレコメンドすることができます。また、データガバナンスにより、データの説明責任を確保し、データのプライバシーが強化され、データ漏えいが減少します。

なぜデータガバナンスが必要なのか

多くの企業でデジタルまたは物理的に大量のデータが保存されているものの、そのほとんどにおいて形式が標準化されていません。また、企業はデータの年齢やデータソースなどをもってデータの信頼性を常に確認するといったことができません。そのため、従業員やビジネスリーダーが、データ品質の懸念からデータに基づいた意思決定を躊躇してしまう…といったことはよくある話です。データガバナンスは、企業のデータを信頼性の高いものにするためのプロセスです。また、高品質の情報を全社的に利用できるようにします。これにより、すべての部門がデータに基づいた意思決定を行うことができるようになります。また、データガバナンスは、ビジネスのDXも推進します。

データガバナンスを導入する方法

大企業にデータガバナンスを導入することは、複雑な作業に見えるかもしれません。膨大な量のデータ、異なるシステム、データの作成と利用に関わる多くの人々、これらすべてがデータガバナンスを困難にしています。データガバナンスの最善のアプローチは、ワンステップごとに進めていくことです。

フェーズ1:データガバナンスの土台作り

まずはデータガバナンスの土台作りとして、以下のような質問に答えるという基本的なところから始めることが肝要です。

質問1「なぜ」

企業はまず初めに、データガバナンスのビジョンとミッションを定義する必要があります。また、データガバナンス・プログラムにおけるゴール(収益の増加、より優れた意思決定、透明性の確保など)を設定する必要があります。また、プログラムの成功をどのように評価するかも決めなければなりません。明確なビジョンがあれば、従業員やその他の関係者は、データガバナンスの取り組みが日々の業務にどのような影響を与え、どのように役立つのかを理解することができます。

質問2「誰が」

役割と責任を割り当てることは、非常に重要なステップです。このステップでは、データガバナンスのフレームワーク実装に関わるさまざまなタスクについて、誰が主な責任を負うかを定義します。多くの場合、企業は3層のアプローチを採用してデータガバナンスチームを立ち上げています。このアプローチでは、運営委員会(Steering committee)、データガバナンスオフィス、データガバナンス・ワーキンググループの3つが主要な構成要素になります。これらのグループは共に、データガバナンスフレームワークの実装における次のステップの決定に関わります。

質問3「どのように」

データガバナンスチームは、自社の現在のデータ資産を分析することから始める必要があります。毎日、膨大な量のデータが企業を出入りしています。このようなデータをすべてデータガバナンスのフレームワーク内に置こうとするのは、良い考えではないかもしれません。したがって、データガバナンスチームは、フレームワークに含めるデータ資産を絞り込む必要があります。例えば、eコマース企業では、最初は購入履歴のみをデータガバナンス計画に含めるといった選択があります。次のステップは、許容されるデータ形式を定義し、全社的なデータワークフローとポリシーを設定することです。これは、段階的データガバナンス導入の一例です。

フェーズ2:データガバナンス計画の実行

ステップ1:データの可用性を確保

データガバナンスチームは、データを管理し標準化することで、データの可用性を高めるのが目標です。大企業では、データはCRMやEMS、販売記録、さらにはパートナーシステムなどにサイロ化されて分散しています。このようなデータをすべて一元化し、容易に利用できるようにする必要があります。企業はまず、データ統合の仕組みから設計する必要があるかもしれません。

ステップ2:データガバナンスを導入するためのデータの完全性を確保

クリーンで標準化され、信頼性の高いデータ資産は、データガバナンスフレームワークの重要な要素です。クリーンなデータとは何か、信頼性の高いデータとは何かを定義するために、まずは日常的にデータを利用しているチームに尋ねることから始めましょう。その結果を元に、以下のステップでデータのエンハンスメントに取り組んでみてください。

プロファイリング:データ資産は、そのすべてが意思決定に使われるとは限りません。例えば、顧客の住所は重要だが性別には意味がないというケースがあります。データ資産の重要な部分を見極め、重要でないそれ以外の部分を無視します。

データの変換と標準化:データガバナンスにおける最大の壁の1つは、データ形式の多様性です。命名規則からデータの属性に至るまで、さまざまな相違がある可能性があります。データガバナンスのフレームワークには、データを変換し標準化するためのツールが含まれます。これには、データタグの追加、属性の正規化、命名規則の標準化などの機能があります。

データのエンリッチメント:データガバナンスチームは、データ資産のエンリッチメントに取り組むべきです。エンリッチメントには、複数種類のデータを1つの場所にまとめることや、データの不足を補ったり、メタデータを追加したりすることが含まれます。

ステップ3:説明責任とデータポリシー遵守の徹底

データガバナンスの取り組みは、データガバナンスチームだけに限られるものではありません。データガバナンス計画を成功させるためには、全社的な取り組みが必要です。どのデータ資産にも、そのデータの完全性に説明責任を持つオーナーを設定する必要があります。これらの所有者は、ポリシーやワークフローを活用して、データ資産が常に高い品質を維持できるように努めます。このステップでは、データガバナンスを受け入れるために、企業のデータカルチャーを変えることも必要です。データガバナンスは、単なる一過性のプロジェクトではありません。継続的なプロセスなのです。

ステップ4:継続的なフィードバックとモニタリング

データガバナンスのためのシステムとワークフローには、継続的なモニタリングとフィードバックが必要です。データガバナンスのフレームワークは、技術面と人の両輪でできているためです。技術面ではアップグレードやバグ修正が必要で、人には常にモチベーションとリマインダーが必要です。フィードバックシステムは、データガバナンスの取り組みが目標を達成しているかどうかを評価するために不可欠です。目標の未達成はデータガバナンスのフレームワークに見直しが必要であることを示しています。

データガバナンスのフレームワークを導入することは、反復的なプロセスです。継続的なモニタリングとフィードバックを通じてのみ、改善することができます。

データガバナンスチームと役割

データガバナンスの中心は人です。データガバナンスのフレームワークを導入するためには、部門を越えたさまざまなチームが不可欠です。そのチームには以下のようなものがあります。

  • ステアリングコミッティ:データガバナンスの取り組みを推進、監督するハイレベルなチームです。運営委員会は、多くの場合、財務、マーケティング、販売、生産部門における上級管理職で構成されます。運営委員会には、企業内のすべての部門のステークホルダーが含まれていなければなりません。ステアリングコミッティには、予算配分、方針決定、そしてプロジェクト優先度の決定権者が参加します。
  • データガバナンスオフィス:データガバナンスの取り組みを指導する中間管理職チームです。このチームの主な役割は、デジタルガバナンスリーダー、コーディネーター、テクノロジーの専門家です。このチームは、データの標準化方針、データガバナンスのワークフロー、プロセスを共同で作成します共同で作成します。また、IT部門と連携し、データガバナンスのシステム面の課題にも取り組みます。
  • データガバナンス・ワーキンググループ:このグループは、データガバナンスオフィスの勧告に従って活動します。このグループには通常、データオーナー、データ品質責任者、データスチュワード、データアーキテクト、アナリストが含まれます。データガバナンスは、さまざまなチームや個人間の協力が必要とされる、全社的な取り組みです。

データガバナンスの導入価値

データガバナンスシステムの導入には、多くの価値があります。

  • より良い意思決定:データガバナンスにより、意思決定者はクリーンで信頼性の高いデータにアクセスすることができます。その結果、意思決定者は一貫性があり、自信をもった意思決定を行うことができます。
  • 従業員の生産性向上:全社で標準化されたデータを利用できるため、それぞれのチームでの作業重複を回避できます。誰もがデータフレームワークの恩恵を受け、全体的な生産性を高めることができます。
  • データのセキュリティ確保:データガバナンスでは、データの説明性が高まります。各データ資産にはデータオーナーが存在し、明確なライフサイクルが設定されます。これにより、データ漏洩やデータ悪用の可能性を低減することができます。
  • データのマネタイズ:データガバナンスにより、企業は収集・生成したデータの価値を最大限に引き出すことができます。信頼性が高く、標準化され、分類されたデータは、新たな収益の創造に役立てることができます。
  • データ規制違反の回避:データ保護規制が強化される一方で、企業の中にはデータの流れをコントロールしきれず、データ保護規制に違反してしまう場合あります。高度に成熟したデータガバナンスのフレームワーク内では、すべてのデータ資産が説明可能であり、管理され、所有されています。

データガバナンス実現を阻む問題と取り組み方

問題1:データ価値の過小評価

企業において、高品質なデータの真の可能性が過小評価されることはよくあることです。従業員は目の前の業務や出来事に忙殺され、長期的なメリットを見過ごしてしまうことが多いのです。

解決策:データガバナンスにおける明確なビジョンとミッションの確立

データガバナンス計画の必要性と価値を理解するには、なぜそれを行うのかの全体像を完全に把握する必要があります。データガバナンスのミッションと目標は、抽象的なお題目ではダメで、実用的でシンプルなものにすべきです。

問題2:システム部門への丸投げ

データガバナンスを情シスに丸投げしてしまうケースがよくあります。情シスがデータガバナンスに関係するのは確かですが、数多くいる社内ステークホルダーの一つに過ぎません。

解決策:データガバナンスに向けたビジネス部門と情シスの協業。

データガバナンス計画の実行および維持の主体を情シスではなく業務部門にします。情シスはシステムを構築するだけで、業務部門が業務のやり方やフローを自ら改革するのです。

問題3:データサイロとシステム間の不整合

データサイロは、データガバナンスにおける大きな問題です。多くの企業では、データ部門ごとに分断され、データ形式もバラバラです。データガバナンスのフレームワークを導入していても、標準化されたデータに合わない可能性があります。

解決策:データの中央集権化と文化の転換

データガバナンスを実現するための重要なステップは、データサイロからデータを移動させ、一元化されたデータガバナンスのフレームワークに取り込むことです。また、データガバナンスは単なるプロジェクトではなく、継続的な活動です。したがって、高品質のデータを文化にまで押し上げる必要があります。

問題4:データガバナンスとデータプライバシー

データガバナンスのフレームワークの価値の1つは、横断的に高品質のデータを利用できることです。しかし、適切に管理されなければ、容易なアクセスは、データプライバシーの問題につながる可能性があります。

解決策:データの厳格な所有権と説明責任の設定

データガバナンスシステムでは、データをアクセスレベルによって区分けする必要があります。例えば、ヘルスケア分野における顧客の医療記録は、センシティブデータとして扱われるべきです。データガバナンスシステムを通じて顧客データを利用する企業は、どのようなデータを保存し、利用しているかを顧客に適切に開示できるようになります。それらのデータの二次利用はあってはなりませんし、ある目的のために収集されたデータは、目的外の使用が許されません。

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