マスターデータとは?
定義やMDMの重要性について解説
マスターデータは、顧客や商品などの、企業の業務を支える基盤となる重要データです。業種や企業によって名称が異なることもありますが、トランザクションデータや分析データと区別され、業務に不可欠な核となるデータのことを指します。
マスターデータとは?
マスターデータとは、企業や事業部が日々の業務を遂行する上で不可欠なデータです。一つひとつの取引や作業のコアとなる情報である「ビジネスエンティティ」に関するデータです。何をマスターデータと呼ぶかは業界によって異なり、さらに企業それぞれでも異なる場合があります。
一般的な業務システムのデータは、主に3種類です。
- トランザクションデータ:トランザクションデータは業務の実態を反映したデータで、個々の業務アプリケーションによって生成されます。日常業務の中で生成され、また参照されるデータです。
- 分析データ:分析データは、トランザクションデータを計算・分析することで生成されるデータです。
- マスターデータ:マスターデータは、業務のコアとなる「ビジネスオブジェクト」を表すデータです。トランザクションデータはマスターデータを引用して生成され、またデータ分析についても、分類軸などのマスターデータを考慮します。
次の文章は日常的な業務を表しています。これを例に上記の3つのデータタイプを説明します。
「バイヤーXは、YYYY年MM月DD日に、SKU Yを10個、合計$5000で注文しました」
「バイヤーX(顧客)」と「SKU Y (製品)」の部分がマスターデータであり、この2つがなければ業務が成立しません。この業務の中心となるデータです。この業務に付随する他の項目がトランザクションデータ(金額、日付、購入数量、請求書番号、税金識別子など)を構成します。さらにもし「バイヤーX(顧客)」が注文するサイズや価格の平均を知りたい場合は、蓄積されたデータセットを分析します。ここで出てきたものが分析データとなります。これら3種類のデータはすべて連動しています。日々の業務をスムースに回すためには、上記3つのすべてがデータとしてもシームレスに連携していなくてはなりません。
あらためてマスターデータを定義すると、業務データの主体となるデータのことです。 マスターデータは企業の重要なデータ資産であり、買収先のもつ顧客マスターを目的として企業買収が起きることもあります。
マスターデータの分類
マスターデータの最も一般的な分類は次のとおりです。
- パーティ:個人や組織あるいは法人などの人の集まりを意味しています。役割によってマスターは細分化され、マスターには組織の階層などを含みます。例:顧客、従業員、ベンダーなど
- 製品:取引される対象の商品。自社で製造するものを製品・仕入れるものを商品と呼び分ける場合もあります。また有形物だけでなく無形物も含まれることがあります。
- 会計:資産、口座、証書など
- 場所:販売地域、支店、住所
マスターデータは複数の業務プロセスおよび業務アプリケーションで共有されるべきデータです。したがって、マスターデータを標準化し、互いに同期が取れた状態に適切に管理することはシステム同士が有機的に連携する上で非常に重要です。
マスターデータは通常、トランザクションとは分離して管理されます。例外は請求書や領収書などにその時だけ記載される顧客や製品などで、他のどこでも管理していない場合です。
マスターデータと扱われるデータの中に「リファレンスデータ」が混入している場合がありますが、リファレンスデータはマスターデータからとは別に管理することが推奨されています。たとえば住所マスターに含まれる郵便番号の部分がリファレンスデータです。
マスターデータ管理とは
マスターデータ管理(MDM: Master Data Management)は、業務全体を横串で連携して各システムの持つマスターデータを統合および運用すること、およびそのためのソフトウェアや、ツール、そして運用プロセスすべてを含みます。MDMソフトウェアの役割は、正典となる全社共通のマスターデータを作成し、維持することであり、またマスターデータへの信頼とアクセス性を確保することでもあります。
製品や顧客、それに関連するさまざまなマスターデータの適切な管理によって、データの整合性・完全性・精度を確保することは重要です。ツールは一過性ではなく、継続的に高品質で整合のとれたデータを維持する必要があります。MDMはデータサイロを撲滅し、名寄せを行い、エラーを修正し、排除し、信頼できるワークフローを確立することでマスターデータを整流化します。
MDMの役割はデータ本体を管理するだけではありません。マスターデータや項目の意味や説明を整備し、人間がつねにマスターデータを把握できている状態を保つための運用も含まれています。マスターデータは企業におけるコアとなるデータ資産であり、管理をやめたデータは徐々に分散し、混乱していってしまいます。マスターデータには、人との関わりを含めた継続的な整理と品質向上が欠かせません。これによって、いつでもデータ分析の品質と経営における予測力が高まります。
適切なマスターデータ管理が行われていれば、以下の質問に容易に答えることができるでしょう。
- 最大の「顧客」は「どこ」の「誰」ですか?
- 最高の利益率の「製品」は「何」ですか?
- あるプロセスを完了するまでにかかわる「従業員」は「何人」ですか?
MDMがない事の弊害
マスターデータの管理をしない、MDMがない場合に発生する問題の例です。
データの重複
マスターデータ管理をしない場合、ぞれぞれの部門がバラバラのアプリケーションで自部門のマスターデータを独自管理することになり、データの重複 (冗長なデータ)が発生します。同じ顧客でありながら営業は営業部門CRMで管理し、経理は会計ソフトウェアで管理している場合、そのデータは2箇所に重複して存在しています。これは運用コストの増加だけでなく、業務の煩雑さや混乱を招きます。
データの不整合
データの手入力や変更がデータ不整合の原因の多くを占めます。入力自動化やチェックなどの対策が欠かせません。また、上記のような複数システムにわたるデータの散在と重複もデータ不整合の大きな原因です。
業務効率の低下
マスターデータが複数のシステムにそれぞれ登録され、冗長になっている場合、部門をまたいだ業務フローで問題が発生します。システムごとにマスターデータの版数が別々だった場合、注文から出荷、請求、入金などそれぞれの業務でそれぞれ微妙に異なるマスターデータを使っていることになります。これが、正しく完了するはずだった業務にエラーを生じさせ、誤配送や誤請求などにつながります。マスターデータ管理がMDMシステムに一元化されていれば別々の版数の問題が生じることもなく、費用やビジネスリスクを削減できます。
ビジネス変化への対応力
現代は日進月歩のテクノロジーや無数の環境変化によって、ビジネスモデルの変更も日常茶飯事となっています。破壊的(disruptive)な突発事態に対しても備えておく必要があるでしょう。何らかの混乱が起きることは不可避ではありますが、マスターデータに問題がある場合、混乱はさらにエスカレートするおそれがあります。
ツールではなくマスターデータを管理することのメリット
適切に管理されたマスターデータは、企業活動のあらゆる面およびステークホルダーを支援し、最終的なビジネスのアウトプットを向上します。
- B2BおよびB2C、どちらの業態であってもビジネスイニシアチブを推進し、生産性の向上に貢献する
- 法規・規制に対するコンプライアンスを確保し、製品リリースをより円滑にする
- 優れたパーソナル顧客体験を実現し、販売促進および顧客関係の改善に役立つ
- マーケティングにおける精緻な顧客セグメンテーションとレポーティングに役立つ
- マスターデータを通じて、すべてのデータセットとサブセットに対するコントロールを高度化する
- 機器、場所、使用状況、保守実績などのデータによって、より正確なトレーサビリティをもたらし、コストを最適化する
- 最も有効かつ最新の製品情報をターゲット顧客や取引先に提供する
全社のマスターデータが人物・場所・製品について正確かつ詳細、そして唯一のデータソースであると保証できることは、業務で使うデータをすべて信頼できることとイコールです。業務で使われたデータはその後、さまざまな検討の場において活用され、よりよい意思決定に向けて再度活用されます。
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