更新日:2022/12/08(公開日:2020/11/26)
領収書の電子化
領収書の電子化はなぜ必要?メリットや導入ポイントを解説
ビジネス帳票のペーパーレス化が進む中、領収書についてもデータ保存する流れができあがりつつあります。ただし、これまで紙の領収書に慣れ親しんできた人からすれば、電子化する意味やメリットを理解できないのではないでしょうか。この記事では、領収書の電子化におけるメリットやデメリット、導入する際の心得などを解説します。
領収書の電子化とは何か?電子帳簿保存法やWeb領収書も紹介
税制改正でデータ保存の条件が緩和
企業や個人事業主にとって、経費を計上するために領収書はとても大切です。そのため、備品代や人件費はもちろん、飲食代においても領収書をもらうことはビジネスパーソンの習慣になっています。逆に、取引の領収書を発行する機会も少なくありません。そして、これまでの様式では、紙の領収書を経理部で保管する流れが定番でした。もちろん、1998年に成立した「電子帳簿保存法」によって、領収書をデータで管理することも可能ではありました。ただ、実際には紙の領収書からデータへの移行は積極的に進められてこなかったのです。
しかし、令和2年度の税制改正により、そういった流れにも変化が訪れています。従来の税制では、電子取引の取引情報に関して、徹底的に電磁的記録を保存することが義務でした。しかし、改正後は発行者のタイムスタンプが押された電磁的記録を受け取ったときに、保存の義務が発生します。また、電磁的記録を修正、削除した事実を証明できるシステムにて、データのやりとりをした記録も保存する決まりです。こうして、電磁的記録を保管する条件が緩和されたことにより、領収書をデータ管理するハードルが低くなったといえるのです。
電子帳簿保存法の重要性
ここで、再び注目されるようになったのが電子帳簿保存法です。電子帳簿保存法では、ビジネスシーンの帳票類をデータで扱う際のルールが明確化されています。この法律の目的は、「データ化された帳票を再び印刷して保存する」などの、無駄な作業を減らすためです。電子帳簿保存法を確認すれば、一度データ化された帳票を、データのままでずっと保存し続ける方法が記載されています。また、その条件にあてはまる帳票、要件も書かれているので、ペーパーレス化を目指す企業には無視できない法律となっています。
当初、電子帳簿保存法では、一からデータとして作られた帳票だけが保存を認められていました。しかし、2005年の法改正を経て、印刷された紙帳票をスキャンすることも許可されます。2020年10月の時点で、電子帳簿保存法が認めている帳票データの保存方法は「DVDやCD」「COM」「スキャナー」です。また、電子署名のない帳票や、スマホで撮影した帳票も認められるようになりました。しかも、「法人や青色申告者は領収書を7年間保存しなくてはならない」というルールさえ緩和され、キャッシュレス決済ならデータ帳票しか必要ありません。こうした各法律の変化は、ビジネスシーンに大きな影響をもたらしています。
Web領収書とは何か
経理の手間をさらに軽減する形式として、「Web領収書」も支持を集めています。Web領収書とはその名の通り、領収書をWeb上で作成、発行、管理できるシステムです。システム上から取引先に領収書を送付することもでき、ペーパーレスの時代の経理から重宝されるようになりました。Web領収書が広まりつつある大きな理由は、なんといっても「作業がスムーズ」であることです。従来の紙の領収書は、手書きから印刷まで、面倒な作業が少なくありませんでした。繁忙期ともなれば、経理は膨大な数の領収書を発行しなくてはなりません。手動に頼ることでミスが起きやすくなる危険性もありました。
しかし、Web領収書はシステムの画面上から必要項目を入力するだけで作業が完了します。取引先の了承さえあれば印刷をする必要すらありません。SNSに対応しているWeb領収書もあり、送付する労力もかからなくなっています。そして、「経費削減」という面からも、Web領収書を導入する企業、個人事業主は増えてきました。紙の領収書を送付するには切手代がいります。単価は安くても、数が多くなれば決して無視できない金額です。作成から送付までをシステム上で完結させられるWeb領収書なら、余計な経費を払わずに済むのです。
2022年に電子保存が義務となった
2021度に行われた税制改正における「電子帳簿保存法」の改正は、2022年1月1日より施行されました。これにより、電子取り引きでやり取りされた領収書含む帳票類の紙保存ではなく、電子データ保存が必須になりました。ただし、猶予期間が設けられ、2023年12月31日までに行われた電子取引については電子データをプリントアウトして保存し、税務調査などで提示や提出が可能です。
猶予があるとはいえ、ペーパーレス化推進の流れは止められないため、企業および現場の担当者は、早い段階で領収書をはじめとする帳票類の電子化や適切な保存、管理に着手する必要があります。
2023年10月1日に開始予定のインボイス制度により、経理業務のさらなる混乱が予想されるため、できるだけ早めに帳票の電子化に対応しておいた方が良いでしょう。専用のソフトやアプリなどを活用した運用の仕組み作りを始めることをおすすめします。
領収書を電子化するメリットとデメリットとは?
メリット
いざ領収書をデータで保存するなら、メリットを知っておきましょう。そうすれば、より効率的に領収書に関する作業をこなせるようになるからです。
保存の正確性
紙の帳票は、どうしても年月とともに劣化していきます。時間が経過して必要になったとしても、内容を確認できなければ意味がありません。一方、電子化された領収書であれば、バックアップさえ取っておいたなら、ずっと保存し続けられます。そもそも法人税法により、帳票類の保存期間は7年間と定められています。発行した領収書は少なくとも、7年は処分できません。こうした長さを考えても、データ化するのが安全だといえるでしょう。
クラウド会計システムとの連携
効率化を目的として、「クラウド会計システム」を導入する企業、個人事業主は増えてきました。実際、クラウドだとコストを抑えられるうえ、操作性も手軽な場合が少なくありません。作成する帳票類のカスタマイズも柔軟にこなせます。しかし、クラウド会計システムを使っているにもかかわらず、帳票の印刷にこだわっていると、変化に対応しきれない場面が少なくありませんでした。データ化すれば印刷を考えなくてすむので、システムとの連携がスムーズです。
スペースの余裕
7年も帳票類を保管するのであれば、専用のスペースを用意しなければなりません。ときには、保管のためだけにビルの一室を使っている企業もあるのです。決して資本に余裕があるわけではない中小企業、個人事業主にとって、スペースの確保は重要な問題です。しかも、ただ保管するだけではなく、どの帳票がいつ発行されたのかまで分かるように整理しなければなりません。こうした作業まで加わってくると、企業の負担はかなり大きくなります。データで領収書を保管すれば、スペースに余裕ができるだけでなく、整理整頓も簡単だといえます。
取引先に合わせられる
仮に取引先が帳票類を電子化した場合、自社でアナログな方法を続けていれば取引そのものに支障をきたすでしょう。そもそも、電子化には環境問題への配慮も込められています。取引先がエコロジーを意識していたとすれば、紙にこだわることで相手の心証を害しかねません。システムによって領収書を作成するようになれば、これらの問題は解決されます。まだ紙の領収書を求めている取引先に関してのみ、データを印刷すれば対応できるでしょう。
デメリット
わずかながら、領収書の電子化にはデメリットもともないます。ただ、工夫によって克服できるケースも珍しくありません。デメリットをメリットがはるかにしのぐ場合は、思い切って電子化に踏み切るのも得策です。
初期費用
システム上で領収書を発行、保管するにあたり、どうしても初期費用はかかってきます。しかも、特殊な業務内容が含まれている企業であれば、パッケージだと対応できません。既存のシステムにカスタマイズを加え、オリジナルの仕様を生み出す必要があります。それだけの費用を痛手だと考える企業、事業主もいるでしょう。そのかわり、一度、帳票類をデータ化してしまえば、今後は印刷や郵送のコストがなくなります。保管にかかる時間も大幅に短縮されます。長い目で見れば、データ化は初期費用を投資するだけの価値がある決断だといえるでしょう。
パソコンやネットワークのトラブルに影響される
データ化の安全性は絶対的なものではありません。仮に、端末が故障してしまえば画面上で領収書を管理、確認できなくなります。また、インターネットの調子が悪いと、先方に送付することも難しいでしょう。ただ、日々のメンテナンス、バックアップによってトラブルを最小限に抑えられます。多くの場合、パソコン関係の問題には前兆があるため、未然に防ぐことはできます。それに加えて、悪意ある第三者がシステムに侵入できないよう、セキュリティ対策も施したいところです。
領収書を電子化する前に保存要件を理解する
税制改革により、領収書やレシートの電子保存が義務化されましたが、知っておきたいのが保存要件です。領収書やレシートの保存方法としては電子取引と、紙で受け取った領収書やレシートのスキャナー保存がありますが、それぞれについて確認しておく必要があります。
電子化した領収書を受け取り保存する場合
電子化した領収書の保存要件は真実性の確保と可視性の確保に分けられるので、それぞれ見ていきましょう。
真実性の確保
領収書は紙でもらったものをスキャナー保存する方法と、電子で受け取る場合があります。電子で受け取った場合、以前は電子保存、出力して保存の両方とも認められていましたが、2022年1月以降は、電子保存のみが認められるようになります。
電子化した領収書を保存する場合には、以下の措置のいずれかを行う必要があります。
- タイムスタンプが付された後に授受を行う
- 取引情報の授受後、タイムスタンプを付す。保存者または監督者情報を確認できるようにしておく
- 記録事項の訂正・削除を行ったら、その記録が残るシステムや訂正削除を行えないシステムを利用する
- 正当な理由がなく訂正・削除がされないよう、事務処理規定を定める
参照:国税庁(Ⅱ 適用要件【基本的事項】)
これまでは事前に税務署長の承認が必要でしたが不要とされ、担当者の負担が減りました。
可視性の確保
電子書類を保存する際には、速やかに閲覧ができるように可視性の確保も必要です。可視性確保のために定められた保存要件は以下の通りです。
<見読可能性の確保> |
---|
帳簿に関する電磁的記録の保存などをする場所は、電磁的記録の電子計算機処理ができる電子計算機やプログラム、ディスプレイ、プリンタ、操作説明書を備え付け、電磁的記録をディスプレイの画面や書面に、整然とした形式かつ明瞭な状態で速やかに出せるようにしておく |
<検索機能の確保> |
取引年月日、勘定科目、取引金額など、その帳簿の種類に応じた主要な記録項目を検索条件として設定できること |
日付又は金額にかかわる記録項目については、範囲を指定して条件を絞ることができること |
二つ以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること |
参照:国税庁(電子帳簿保存法が改正されました)
紙の領収書を電子化して保存する場合
紙の領収書をスキャニングして保存する際には以下の要件を満たさなければなりません。
<真実性の確保> |
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入力期間の制限。書類の受領等後又は業務の処理にかかる通常の期間は最長2カ月+7営業日まで |
一定水準以上の解像度(200dpi以上)、カラー画像(赤・緑・青それぞれ256階調以上(約1677万色)による読み取り |
タイムスタンプの付与 |
解像度および階調情報、画像の大きさ情報の保存 |
ヴァージョン管理(訂正、削除の事実や内容の確認) |
入力者等情報の確認 |
<可視性の確保> |
スキャンした文書と帳簿との相互関連性の保持 |
電子計算機処理システムの開発関係書類等の備付け |
電磁記録の記録事項に関して、取引年月日その他の日付などについて検索ができるようであること |
14インチ以上のカラーディスプレイ、4ポイント文字の認識など、見読可能装置の備付け |
検索機能を確保すること |
税務署長による承認 |
さらに詳しい条件は参照元である国税庁HPでご確認ください。
領収書の電子化にあたって導入ポイントを押さえよう
業務フローを考える
本格的な導入作業へと移る前に、まずは領収書をシステム化し、データ管理する業務フローを検討しましょう。アナログな方式とシステムでは、作業工程が増えたり減ったりします。事前にしっかり業務フローを把握しておかないと、導入の段階になってからパニックになりかねません。たとえば、従来では、領収書を取引先から受領し、経理に送ってその後の手続きを行ってもらうのが一般的でした。しかし、システムを導入してしまえば、処理が簡単になるので営業など、他部署でも簡単に終わらせられます。「どの部署が」「どこまでのフローを」「いつのタイミングで」担うのか、筋の通った流れを考案しなければなりません。
また、データ化された領収書にはタイムスタンプが必須です。タイムスタンプとは帳票類に刻む印で、発行日時が記載されています。領収書データはフォーマットさえ分かれば手軽に複製できてしまうため、タイムスタンプがあることで発行日時を特定できるのです。また、タイムスタンプには「この時間から修正されていない」という意味もあります。領収書を受領した段階でタイムスタンプを押せば、それ以降は勝手に改ざんできません。ただ、タイムスタンプをいつ、誰が押すのかも領収書のデータ化では重要なテーマです。
システムと備品を用意する
業務フローが見えてきたところで、いよいよシステムの構築に入ります。あらかじめ「経費削減」「業務の効率化」など、システム化の目的をはっきりさせておくと、システム選定はスムーズになります。ただ、既存のシステムが自社の業務フローにしっくりこないことも珍しくありません。その場合は、ベンダーにカスタマイズを依頼したり、オリジナルのシステムを開発してもらったりします。そこまでの作業を依頼するのであれば、予算はもちろん、ベンダーの実績、対応力も判断材料に含まれるでしょう。
システムと同時進行で、データ化に関係する備品も揃えていきます。パソコンやスマホは、今使っている機種で対応できるのかをチェックしておきましょう。紙の帳票を読み込んでデータ化する作業が発生するなら、スキャナーも購入します。データの領収書に切り替えてから不足している備品が出てこないよう、何回も業務フローをシミュレーションしておくことが肝心です。
データ化した後の注意点
システム内で領収書を管理し始めたら、紙の時代よりも杜撰になってしまうケースが少なくありません。なぜなら、経理が従来の習慣から脱却できず、システムの操作をなかなか受け入れられないからです。しかし、領収書は税制に関わるうえ、社会的信用も左右する帳票です。導入初期に問題が発生するのは仕方ない部分もあるにせよ、いつまでも現場が混乱していてはなりません。社内で研修会、セミナーを行うなどして、一刻も早く新しいやり方を浸透させることが大事です。
次に、領収書データを取り扱うことは社会的信用を試されている状態ともいえます。確かに便利な面は多いものの、一歩間違えれば個人情報が流出したり、データが悪用されたりして自社のみならず取引先にも迷惑をかけてしまいます。この機会にプライバシーマークを取得するなど、情報の取り扱いについての意識を高めましょう。社内でも、保存されているファイルに閲覧制限を設けるといったルールの整備が不可欠です。
そのほか、電子化をきっかけにして、これまで保存してきた紙の領収書をシステムに取り込んでから、破棄することもあるでしょう。この際、税理士などの第三者がデータをチェックしなければなりません。紙からデータに置き換える際、内容を改ざんしていないと証明できるようにするためです。このチェックが終わるまでは、紙の領収書も証拠の一部なので捨てずにおきましょう。紙のほうがデータよりも証拠としての効力が強いケースもあるので、一部の領収書は残しておくのも賢明です。
領収書の電子化とスムーズな運用には「ナビエクスプレス」
領収書をはじめとした帳票類の作成や管理、運用では、電子帳票システムの導入をおすすめします。電子帳票システムの「ナビエクスプレス」では、導入により以下のメリットが生まれます。
- 紙の書類のやり取りと異なり、月々の発送費用を抑えられ、業務の簡略化により人件費もカットできる。
- 手作業で起きやすかった誤送付や封入ミスなどが減少する。
- スピーディーに請求書や領収書などを配信できるので、取引先への情報伝達時間が短縮し、リードタイムが削減できる。
また、ナビエクスプレス導入により以下のような成功事例があります。
- 発送コストに課題のある都内百貨店において「約86%のコストカット」に成功
- 取引先の要望で領収書を電子化した外資系医療機器メーカーにおいて「ユーザビリティの向上と業務効率化」に成功
電子取引の領収書含む帳票類における「電子保存義務化の猶予期限」は2023年12月31日に迫っています。早急な電子化対応を検討している企業やコスト削減・業務効率化に課題を感じている担当者の方は、「ナビエクスプレス」の導入をおすすめします。
領収書を電子化してわずらわしい業務から解放されよう
ビジネスを続けていく以上、領収書の保存は切り離せない業務です。いつまでも紙で保存していてはスペースの問題が生まれるだけでなく、取引先とも連携しにくくなります。また、作業効率が悪くて、コストと時間を無駄にしかねません。領収書を電子化するシステムを導入し、発行から保存までのプロセスを簡略にすることが大事です。
高いセキュリティと万全のサポート、導入後の高い効果から多くの企業に採用されているナビエクスプレスの導入をぜひご検討ください。
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